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金鷲旗高校柔道大会男子レポート①1回戦~6回戦

(2015年7月30日)

※ eJudoメルマガ版7月30日掲載記事より転載・編集しています。
①1回戦~6回戦
金鷲旗高校柔道大会男子レポート
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昨年度優勝の修徳高・佐藤竜主将による選手宣誓

五人制抜き試合で高校柔道日本一を争う金鷲旗高校柔道大会は22日、マリンメッセ福岡(福岡市)で開幕。男子は全国から333校が集って覇を競った。

優勝候補筆頭は3月の全国高校選手権を圧勝で制し、史上最強との評もある国士舘高(東京)。これに同大会で準優勝した大成高(愛知)、日体荏原高(東京)をはじめとする他チームが挑みかかるという構図だ。

まずはトーナメントを8つに割った、各パートの勝ち上がりを簡単に追ってみたい。

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男子2回戦、国士舘高の先鋒米山魁人が名城大付高・伊藤和真から大外刈「一本」

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5回戦、国士舘高の次鋒河田闘志が東海大甲府高・5回戦、国士舘高の次鋒河田闘志が東海大甲府高・南條伯彬を攻める

【Aパート】

シード校:国士舘高(東京)、作陽高(岡山)
6回戦(パート決勝)カード:国士舘高(東京) - 作陽高(岡山)

国士舘高と作陽高のシード校2校が順当に決勝進出。

国士舘のオーダーは先鋒から順に、米山魁人、河田闘志、飯田健太郎、竹村昂大、山田伊織の5人。後半投入用の手駒として補欠に田嶋剛希と磯村亮太を取り置いて大会をスタートした。

前半戦の抜き役に指名された形の先鋒米山は十二分にベンチの期待に応える。2回戦は名城大付高(愛知)を5人抜き、3回戦も大阪電通大高(大阪)を5人抜き、4回戦はれいめい高(鹿児島)を4人抜き1分けと、1人で3戦全てを賄う大活躍。関東の強豪東海大甲府との5回戦でも2人を抜き去り、中堅熊野暢彦と引き分けてその独り舞台はようやくストップ。続く試合はついに出番が来たとばかりに次鋒河田闘志が副将南條伯彬、大将鈴木連次を抜き去ってフィニッシュ。国士舘は4戦を戦って18勝0敗2分けと盤石の勝ち上がりでパート決勝進出決定。

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3回戦、作陽高の久野壱虎が慶應義塾高・渡辺大輝から内股「一本」

一方の作陽は2回戦で東北の好チーム本荘高(秋田)、3回戦では神奈川県個人73kg級代表の後藤大介を擁する慶應義塾高(神奈川)と連戦するという、シード校としては初戦からなかなか歯ごたえのあるチームとの連戦。初戦は決戦兵力の安田夢飛と久野壱虎を取り置いて布陣して1年生先鋒の村田大征が1勝1分け、次鋒宇都宮唯人が1分け、中堅星野太駆が1勝、ここで本荘の大将佐藤光に抜き返されたが副将岩崎恒紀がしっかり引き分けて、不戦一人で大枠危なげなく勝利。続く慶應義塾戦は早くも先鋒に安田、次鋒に久野のレギュラー2枚を入れて布陣し、1人を抜いた安田が後藤と手堅く引き分け。以後は久野が2勝1分けで大将までを賄って不戦3人で快勝。4回戦の秀岳館高(熊本)戦は安田が3人を抜いた後に副将寺田克己に2人抜きを許したが、中堅星野が2人を抜き返して不戦2人で勝利。
そして5回戦は開星高(島根)に、1人を抜いた次鋒久野が中堅松村颯祐に、同じく1人を抜いた副将岩崎恒紀が大将河野壮登に抑え込まれて抜き返されるなど大接戦。2勝2敗の大将同士の対決で登場した大将田村の一本勝ちでなんとか事態を収拾して勝ち上がり決定。

この通り作陽の勝ち上がりは圧倒的では全くないが、強いチームにこそ力を発揮するのがこのチームの面白さ。2013年インターハイでは全中制覇の「三銃士」を擁する国士舘を無名集団と言って良い作陽が食って決勝進出を果たしたという因縁もあり、両者の対決は6回戦屈指の好カードとして会場の注目を集めることとなった。

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6回戦、国士舘高の先鋒磯村亮太は作陽・安田夢飛を相手に手堅く試合を展開

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国士舘高の中堅飯田健太郎が作陽高の大将田村淑真から右内股でまず「技有」

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飯田は再び内股で「技有」を奪って勝負を決める

[パート決勝]

国士舘高〇不戦二人△作陽高
(先)磯村亮太〇反則[指導4]△安田夢飛(先)
(先)磯村亮太×引分×久野壱虎(次)
(次)河田闘志×引分×星野太駆(中)
(中)飯田健太郎〇反則[指導4]△岩崎恒紀(副)
(中)飯田健太郎〇内股△田村淑真(大)
(副)竹村昂大
(大)山田伊織

意外な程に「荒れなかった」試合。原因は国士舘の予想以上の手堅と大人しさに尽きる。
後の先の得意な作陽を利する片足の仕掛け、密着の接近戦、そして体を捨てる投げによって生まれる「際」を国士舘は徹底排除。組み勝っての優位に適切な間合いと位置関係の確保、そして足技による崩し、と手堅い組み立てで磯村亮太が安田を「指導4」による反則でまず下し、さらに次鋒の河田闘志と合わせて2つの引き分けを得て、1人差リードで試合の襷を中堅飯田健太郎に託す。

飯田の相手は副将岩崎恒紀。身長182cm体重100kgのスペックが意外なほどに体幹の太いこの選手に対し、飯田は抜群の技の切れ味の一方線の細さも併せ持つ。縺れる場面あれば岩崎の後の先の一発の可能性も想起される相性だが飯田は前衛2人のやり口を引き継ぐかのように、技は繰り出すが体は捨てずという手堅い攻めを繰り返して「指導4」の反則で大過なくこの試合を突破。最終戦で畳に迎え入れた田村淑真に対しては、遠間から足を差し入れて振り上げ捨てる右内股で「技有」、さらに残り49秒での右内股「技有」を得て快勝。結果、不戦二人(3人残し)で国士舘が順当に勝利を決めた。

しかし、上位対戦第一試合と呼ぶべきこの試合で見せた国士舘の出来は必ずしも良いものではなかった。万が一にもミスをしまい、作陽に流れを掴ませまいとの潜在意識はチャレンジの数と質を減じさせ、飯田が決めた1発目の内股「技有」も巧みではあったが、間合いを詰めての破壊ではなく、遠間からの足の差し入れと振り上げ、アフターで自身の体を舞わせて勢いをつけるという安全圏からの長距離射撃だった。試合を荒らしたい作陽に対して手堅く戦った作戦はまったくもって正解と評すべきなのだろうが、戦力の巨大さと以降の試合に勢いをつけねばならない予選ラウンド決勝という対戦段階上の事情を考え合わせると少々物足りない試合。「今日の国士舘は決して良くない」との声も会場のそこかしこで聞かれる、意外な戦いぶりの一番であった。

作陽は国士舘が抱く潜在的な恐怖を利用仕切れず、一太刀浴びせることが出来ないまま敗戦。インターハイでもベスト16で対戦が予想されるこの因縁カード、「来なければ、荒らせず」という今大会の様相を受けて川野一道監督がどのような手を打ち、何を志向して再戦に臨むのか。注目して見守りたい。

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天理高の先鋒西原大史が富士学苑高の先鋒渡辺元気から後袈裟固で一本勝ち

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天理高の副将冨安一真が難敵・上野翔平に払巻込を試みる

【Bパート】

シード校:天理高(奈良)、埼玉栄高(埼玉)
6回戦(パート決勝)カード:天理高(奈良) - 埼玉栄高(埼玉)

天理高(奈良)と埼玉栄高のシード校が順当に6回戦進出。

天理は2回戦で名古屋工高(愛知)を先鋒西原大史の2人抜き1分けと次鋒矢野真我の2人抜きにより、不戦三人(4勝0敗1分け)で勝利。3回戦でも同じ内容で富士学苑高(山梨)を不戦三人(4勝0敗1分け)で屠り去り、4回戦のおかやま山陽高(岡山)戦も西原が3勝1敗、矢野が3試合連続の2人抜きと前衛2人のみで5人を賄い、この試合も不戦三人(5勝1敗0分)で勝利決定。5回戦の津幡高(石川)戦もオーダーを入れ替えずに布陣し、2人抜きを果たした先鋒西原が中堅日光一喜に抜き返されたものの次戦以降は矢野、中堅並里樹が手堅く引き分けを続けて1人差リードを保つ。最終戦は副将冨安一真が全国高校選手権無差別3位の難敵・上野翔平にサイズを生かしてきっかけを掴ませないままこの試合も引き分け、不戦一人(2勝1敗3分け)でパート決勝への勝ち上がりを決めた。最初のハードルとなった津幡戦でいきなりの接戦、それも最終戦は明らかな引き分け志向の試合であり、強さは明らかだが「序盤戦で勢いをつける」というところまでは登りつめられなかった感あり。

一方の埼玉栄は組み合わせにも恵まれ、2年生中心の若いチームらしく勢い十分の勝ち上がり。2回戦は先鋒舛谷拓斗が3人抜き(1敗)、次鋒の高橋拓巳が1人抜き1分けと3年生コンビの活躍で不戦三人(4勝1敗1分)で勝利、3回戦の玉野光南高(岡山)戦は先鋒に入った池田直樹が見事5人を抜き去り不戦四人で大勝し、4回戦の横浜高(神奈川)戦も池田が2人抜き、中堅玉代勢将太には引き分けられたが続いて登場した高橋が1人抜き1分けでこの試合も不戦三人の圧勝。地元埼玉の大宮工高とマッチアップした5回戦ではこの試合から先鋒に入った焼谷風太が強気の仕掛けを続けて3人を抜く。大宮工はここから中堅松本健太が焼谷、高橋を抜き返すが、ここで今大会初出場となった中堅今入晃也が2人を抜いてあっさり事態を収拾。不戦二人(5勝2敗0分)でこの試合を勝ち抜け、強豪天理の待ち受けるパート決勝へと駒を進めることとなった。

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大将対決、埼玉栄高の蓜島剛が天理高・山崎壱盛から大内刈「有効」

[パート決勝]

埼玉栄高〇大将同士△天理高
(先)焼谷風太△裏投〇西原大史(先)
(次)高橋拓巳×引分×西原大史(先)
(中)今入晃也〇内股△矢野真我(次)
(中)今入晃也×引分×並里樹(中)
(副)長濱快飛〇送襟絞△冨安一真(副)
(副)長濱快飛△小外刈〇山崎壱盛(大)
(大)蓜島剛〇優勢[有効・大内刈]△山崎壱盛

埼玉栄が昨年3位の天理を打倒してベスト8進出決定。1人差ビハインドで登場した中堅今入晃也が矢野真我に内股「一本」、タイスコアで畳に上がった副将長濱快飛が冨安一真を送襟絞「一本」に仕留めて流れを作り、蓜島剛と天理・山崎壱盛の大将同士の対決まで襷を繋ぐ。

この試合は蓜島が期待に応えて大内刈「有効」で山崎に勝利。蓜島という大駒1枚の保有が最後は勝敗を分けた形だが、体格差に怖じずに豊富な運動量とスピードで流れを作り、機を見て大技をぶつけ続ける埼玉栄の前衛4枚が作り出した流れの良さも見逃せない。埼玉栄、持ち味の気風の良い柔道で見事決勝パートへ進出決定。

敗れた天理は先行した試合を2つの「一本」で追い抜かれ、最後はエース同士の対決で敗れるという完敗。地元開催のインターハイに向けて一段奮起が必要となる内容だった。

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4回戦、日体荏原高・長井達也が履正社高・大西康裕から支釣込足「一本」

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5回戦、長井達也が静岡学園高の大将川合康平から払巻込「有効」

【Cパート】

シード校:日体荏原高(東京)、東海大相模高(神奈川)
6回戦(パート決勝)カード:日体荏原高(東京) - 東海大相模高(神奈川)

日体荏原は極めて順調に6回戦進出。スターティングの先鋒には増田響、次鋒には73kg級の好選手大吉賢を起用して布陣すると、両者は存分に抜き役としての使命を果たし、2回戦の金沢学院東高(石川)戦、3回戦の京都両洋高(京都)戦と増田が2試合連続の5人抜き。3回戦では2人を抜いたところで登場した履正社高(大阪)の中堅大西康裕に増田、大吉が連敗を喫するも、レギュラーの中堅長井達也が3連勝であっさり事態を収めて不戦二人(5勝2敗0分)で快勝。最初のハードルと目された5回戦の静岡学園戦では先鋒増田の敗退を受け、この試合から投入された次鋒松井海斗が3勝1分けの快走。最後は中堅長井が静岡学園の大将に座ったエース川合康平を抜いて、不戦二人(4勝1敗1分)で勝利を得た。抜き役の6番手と7番手が活躍し、レギュラー選手は傷なしの7勝1分け。理想的な形の勝ち上がりだ。

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2回戦、宮崎日大高の中堅橋本和泉が東海大相模の中堅杢康次郎から大内刈「技有」

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橋本は続いて畳に上がった中尾旭から「やぐら投げ」で「技有」を奪う

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中尾は片襟の払腰「一本」で逆転、なんとか橋本を退ける

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宮崎日大の大将竹下将樹が中尾を横落「一本」で下す

一方の東海大相模は初戦から大苦戦。宮崎日大高(宮崎)を相手に先鋒原伸之介が1勝1敗、続いて畳に上がった次鋒河内優斗は畳に残った次鋒清家裕馬に崩袈裟固「一本」で勝利したものの、続く橋本和泉を相手にチャンスを作れず「指導2」を奪われたまま優勢負け。続いて畳に上がった中堅のエース杢康次郎は余裕を持って試合を進めるが、ジッとチャンスを待ち続けた橋本の乾坤一擲の大内刈を思い切り食って「技有」失陥、そのまま優勢負け。慌てて登場した中尾も橋本に「やぐら投げ」で「技有」を取られ、なんとか逆転の払腰「一本」でこれを収拾、続いて副将赤嶺泰一も抜き去る。しかし次戦は宮崎日大の大将竹下将樹の横落を止め切れず開始15秒であまりにも脆すぎる一本負け。勝敗の行方は大将同士の対決に持ち込まれることとなった。緊張した面持ちで畳に上がった大将辻湧斗は組み手の優位確保と場外への追い込みで手堅く試合を構成、「指導」による勝利でなんとか勝ち上がりを決めることとなった。

宮崎日大は中盤以降から完全に東海大相模を呑んで掛かっており、どのタイミングで投げてどう試合を終わらせるか見極めた上で、懐に呑んだ武器をジッと隠し持ったまま試合を進めるタフさを持っていた。大将竹下も組み手の巧い辻に対して「指導」失陥は仕方がないとばかりに静かに潜航、ここで取ればもはや相手に逆転の暇なしという最終盤に鞘を抜き、激しいケンケン内股による投げ合いを挑む勝負師らしさを見せた。この攻防は投げ合いの末に竹下が体を捨ててのフィニッシュを試み、辻が背中を付く直前に体を入れ替えて上になるという得意の切り返しを見せた末に、判定は場外による「待て」。宮崎日大は惜しくも敗れることとなったが、強豪東海大相模打倒にあと半歩のところまで迫る、それも勝ちを拾おうとするのではなく投げて勝ちに行く素晴らしい試合であった。

というわけで初戦から「大将同士」(5勝4敗0分)という大接戦を演じることとなった東海大相模だが、オーダーを入れ替えずに3回戦の中津北高(大分)戦は不戦四人(4勝0敗1分)、4回戦の秋田高(秋田)戦も不戦四人(5勝0敗)と快勝。勝負どころと目された東海大五高(福岡)との5回戦は先鋒を島田陸に入れ替え、最後は辻が田中英二朗とのエース対決に勝利し、大将同士(4勝3敗1分)のスコアを以て6回戦進出決定。

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6回戦、日体荏原高の先鋒長井晃志が東海大相模高・島田陸から送襟絞「一本」

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日体荏原高・松井海斗が河内優斗を開始21秒の内股「一本」に仕留める

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松井は副将中尾旭からも僅か11秒の内股「一本」

[パート決勝]

日体荏原高〇不戦三人△東海大相模高
(先)長井晃志〇送襟絞(3:15)△島田陸(先)
(先)長井晃志△袈裟固(2:53)〇河内優斗(次)
(次)松井海斗〇内股(0:21)△河内優斗(次)
(次)松井海斗〇優勢[指導2]△杢康次郎(中)
(次)松井海斗〇内股(0:11)△中尾旭(副)
(次)松井海斗〇合技[大外刈・上四方固](1:04)△辻湧斗(大)
(中)長井達也

日体荏原が不戦三人の大差で東海大相模を一蹴。

切り込み隊長同士の対決となった先鋒戦は日体荏原・長井晃志が島田陸の背負投を潰して送襟絞、首の負傷から復帰してまだ日が浅い島田は耐え切れず「参った」を表明し、長井の一本勝ちで日体荏原が先制。

大型選手相手にもどこからでも攻め込め、かつ我慢が利くタイプのファイター長井晃が畳に残り、一方迎え撃つはオーソドックスタイプの重量級選手河内優斗。東海大相模サイドとしては不安が残る顔合わせだが、河内は長井の大外刈をきっかけにクルリと体を捌き、伸びた長井の体を右足車に捉える好判断で「有効」獲得、そのまま袈裟固に抑え込んで一本勝ちを果たす。

曲者・長井を仕留めたことで東海大相模が流れを取り戻すかに思われたが、河内はここで我慢が利かない。決意の表情で畳に登った日体荏原・松井海斗が押し込むように左内股を仕掛けるとあっさり崩れて背中から畳に落ち、僅か21秒の「一本」で再び日体荏原がリードを獲得。松井は続く杢康次郎戦も流れを譲らす「指導」差で勝利、続いて畳に上がった東海大相模の副将中尾旭も開始11秒の左内股「一本」に屠り去り、後ろに3人を余らせたまま早くも東海大相模の大将辻湧斗を畳に引きずり出す。

手堅さと攻撃力、そして後の先の強さを併せ持つ辻の攻略はさすがに困難と思われたが、絶好調の松井の勢いは留まるところを知らず。42秒に左大外刈で「技有」を獲得するとそのまま後袈裟固。試合時間僅か1分4秒、この試合も「一本」で松井が勝利し、日体荏原が準々決勝への勝ち抜けを決めた。最終スコアは不戦3人、4人を畳に残すという意外なほどの大差となった。

日体荏原は松井が実に4連勝、先鋒と次鋒の2人だけで強豪東海大相模の5人を抜き去るという快勝。「最後の夏に賭ける松井たち3年生の意気込みが凄い」という戦前の小久保純史監督のインタビューが改めて思い起こされる、かつて中学カテゴリを席巻した強者松井の大爆発であった。

東海大相模は屈辱の敗戦。ライバル国士舘高に0-4で屈した若潮杯決勝の「勝浦の惨劇」を超えるインパクトの、歴史的大敗であった。自信を取り戻すべき序盤戦で宮崎日大を相手に大接戦を演じ、狂ったリズムを取り戻せなかったと評するべきなのだろうが、その試合内容は「リズムが狂った」という試合展開上の評には収まり切らない、あまりにも脆すぎるものであった。そしてこの「脆さ」が今代の突然変異ではなく、ここ数年続く傾向であることが非常に気に掛かる。育成上の問題なのか、それともやはり精神的なボタンの掛け違いが実力発揮を阻んでいるのか。この屈辱を受けた選手達が2週間後のインターハイで名門・東海大相模らしい戦いを見せることができるのか、成績以上にその内容と「相模らしさ」の発揮の有無に注目したい。

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小杉高の大将北山達也が白鴎大足利高の副将佐俣楓から大内刈「有効」、そのまま縦四方固で一本勝ちを果たす

【Dパート】

シード校:白鴎大足利高(栃木)、福井工大福井高(福井)
6回戦(パート決勝)カード:白鴎大足利高(栃木) - 福井工大福井高(福井)

大将に高校選手権個人無差別の覇者太田彪雅という絶対の大駒を擁する白鴎大足利高(栃木)の課題は周辺戦力の戦いぶり。2回戦の早鞆高(山口)戦はスターティング先鋒の栄を得た2年生の釜石康太が3勝1分けの活躍を見せて順調な立ち上がりに思われたが、次鋒の菊池優充が早鞆の大将伊藤海斗に絞め落とされて一本負けを喫してしまう。昨年優勝候補の一角に挙げられながら初戦のもたつきで流れを失った嫌な記憶が喚起されかねないミスであったが、中堅河村貴文が伊藤を抜き返して傷を最小限に抑えたまま試合終了、この試合は不戦二人(4勝1敗1分)で順当勝ち。以降は3回戦で津名高(三重)を不戦四人(5勝0敗)、4回戦で星城高(愛知)を不戦二人(4勝1敗1分け)とまずまず順調に勝ち上がり、最初の山場の5回戦は先鋒を長島立弥に入れ替えて布陣。副将佐俣楓の1勝1敗を受けて迎えた大将同士の対決で太田彪雅が北山達也を「一本」で下して勝利決定、無事6回戦への勝ち上がりを決めた。

福井工大付福井高(福井)がシード校としてピックアップされた下側の山は荒れ模様。全九州大会王者で今大会も台風の目として期待された延岡学園高(宮崎)を、今季インターハイ県代表を逃している東北高(宮城)が2回戦で打倒したアップセットがその呼び水となった。東北は2人差ビハインドで登場した大将原田優吾が3人抜きの大活躍。大将同士の対決では延岡学園のエース立石勇太からまず「有効」、さらに豪快な大腰「一本」を奪って試合を決め会場を大いに沸かせた。

しかし大殊勲の東北は4回戦で福岡県インターハイ予選2位の沖学園高に苦杯。5回戦はシード校福井工大福井高が沖学園を不戦二人(2勝0敗3分)であっさり下してパート決勝へと駒を進めることとなった。福井工大福井の勝ち上がりは2回戦から順に近大付高(大阪)を不戦二人(4勝0敗1分け)、3回戦で東九州龍谷高(大分)を不戦四人(5勝0敗)、4回戦で和歌山北高(和歌山)を不戦一人(4勝2敗1分)、そして沖学園を不戦二人というもの。

[パート決勝]

白鴎大足利高〇大将同士△福井工大福井高
(先)長島立弥〇優勢[指導2]△利根琢也(先)
(先)長島立弥△出足払〇宮浦司(次)
(次)薄井裕太×引分×宮浦司(次)
(中)河村貴文〇優勢[指導]△中川清志郎(中)
(中)河村貴文△後袈裟固〇ダシドラムイシドルジ(副)
(副)佐俣楓〇優勢[技有・背負投]△ダシドラムイシドルジ(副)
(副)佐俣楓△小外刈〇牧野祐也(大)
(大)太田彪雅〇内股△牧野祐也(大)

白鴎大足利にとっては自軍の大将太田の出動までに相手の戦力を少しでも減らしてしっかり試合を運ぶこと、一方の福井工大福井としては太田に手当する枚数を1枚でも多く残すことがテーマの試合。

1人差ビハインドで登場した福井工大福井の副将ダシドラムイシドルジは河村貴文に払腰「有効」をリードされながらも後袈裟固「一本」で逆転勝利、これを受けた白鴎大足利の副将佐俣楓は払腰「有効」、背負投「技有」と連取して抜き返し、今度は福井工大福井の大将牧野祐也が小外刈「一本」で佐俣を畳から退ける。中盤以降の殴り合いを経て、試合の行方は大将同士の決戦へと持ち込まれた。

この試合は太田が大外返「有効」、さらに右内股「一本」と福井工大福井のエース牧野を圧倒。太田という圧倒的な個の力をきちんと生かした白鴎大足利がぶじ準々決勝進出を決めた。

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2回戦、大成高・横山正尭が嘉穂東高の大将手嶋将伍から隅落「有効」

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大成高は副将並木泰雅が5回戦で出動、東海大浦安高の大将村田圭祐から次々「指導」を奪う

【Eパート】

シード校:大成高(愛知)、修徳高(東京)
6回戦(パート決勝)カード:大成高(愛知) - 修徳高(東京)

大成高は前評判通り余裕を持っての勝ち上がり。スターティングの前衛2枚には先鋒に体重115kgの重量級の横山正尭、次鋒に107kgの清水祐希とサイズのある2枚を抜き役として配置し、2回戦の嘉穂東高(福岡)戦は横山の五人抜きによる不戦四人(5勝0敗)で勝利、3回戦の報徳学園高(兵庫)戦は先鋒戦の引き分けを受けた清水の2人抜き(1分け)、そして中堅友田皓太の出動と1人抜きにより不戦三人(3勝0敗2分)で快勝。4回戦の南筑高(福岡)戦も友田が1人を抜いたところで試合終了、不戦三人(3勝0敗2分)で余裕を持って突破する。

5回戦では一昨年大会の覇者東海大浦安高(千葉)の激しい抵抗に遭遇。1人を抜いた横山が戸羽優弥に抜き返され、清水の1人抜き1分けを経て登場した中堅友田皓太も1人抜きののち大将村田圭祐に抜き返されてしまい、今大会初めて副将並木泰雅の出動となる。並木は村田を手堅く「指導4」で仕留め、大成は不戦一人を以て勝利決定。古賀颯人と前濱忠大の決戦戦力2枚をベンチに取り置いたままパート決勝に勝ち上がることとなった。

下側の山の5回戦では昨年王者の修徳高(東京)が関西の名門東海大仰星高(大阪)と大熱戦。大黒柱の副将佐藤竜が2人を抜いて畳に迎えた東海大仰星の大将深山将剛との一戦の最中に負傷して敗退するというアクシデントがあったが、残された2年生大将の増山香輔が勝利を収めて、傷だらけになりながらもパート決勝進出決定。

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6回戦、古賀颯人が修徳高副将の宮崎雷也から内股「有効」を奪う

[パート決勝]

大成高〇不戦三人△修徳高
(先)古賀颯人〇合技[内股・袈裟固]△福田宝(先)
(先)古賀颯人〇優勢[指導2]△佐々木和也(次)
(先)古賀颯人〇優勢[技有・大外刈]△室和樹(中)
(先)古賀颯人〇払腰△宮崎雷也(副)
(先)古賀颯人△小外刈〇増山香輔(大)
(次)前濱忠大×引分×増山香輔(大)
(中)友田皓太
(副)並木泰雅
(大)神鳥剛

大成はこの試合から決戦戦力である古賀颯人と前濱忠大の軽量2枚を投入。古賀が4人を抜く大活躍を見せてほぼ1人で試合を決めてしまった。際立ったのはその勝利への貪欲さ。圧巻は3戦目の室和樹戦で、身長181cm、体重105kgでしかも相四つ、それも自身の技種が決して大型選手向けではないという本来厳しい対戦相性をものともせずに強気に奥襟を叩いて動かし続け、試合終了直前に大内刈「技有」で投げつけるに至った。

古賀は5試合目を落としたが、この1敗が大成に与える傷は僅少。むしろここまで勝利の執念を植え付けられた選手の怖さを周囲に印象づけて、大成は見事ベスト8進出決定。

【Fパート】

シード校:神戸国際大附高(兵庫)、木更津総合高(千葉)
6回戦(パート決勝)カード:神戸国際大附高(兵庫) - 木更津総合高(千葉)

神戸国際大附は2回戦の石巻工高(宮城)戦を次鋒倉見潤の4人抜きによる不戦三人(4勝0敗1分)、3回戦の千葉商大附高(千葉)戦も奮起した先鋒宮川拓也の3人抜きをテコに不戦三人(4勝0敗1分)で勝利し、4回戦はこの試合から起用された1年生先鋒福井優駿の5人抜きで勝利。勝負どころと目された桐蔭学園高(神奈川)との5回戦は先鋒渡部甲誠に2人抜きを許すが、中堅新井滉燿の2人抜きで持ち直し、最後は大将同士の対決で石山潤平が佐藤城に勝利。接戦をしっかり制してパート決勝進出を決めた。

高校選手権の活躍によりシード校に抜擢を受けた木更津総合高(千葉)は2回戦で同朋高(愛知)に1敗、3回戦で高川学園高(山口)に3敗を喫しながらいずれも5勝を挙げる殴り合いを制して勝ち上がり、4回戦の上宮高(大阪)戦を不戦一人(3勝1敗2分け)で凌ぎ切ると、5回戦では西日本短大附高(福岡)を相手にまたもや5勝4敗0分けという撃ち合いの末に6回戦進出決定。ベスト8入りをかけて強豪神戸国際大附に挑む。

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6回戦、大将対決で神戸国際大附高・石山潤平が山下魁輝の支釣込足を振り返し「一本」

[パート決勝]

神戸国際大附高〇大将同士△木更津総合高
(先)村上優哉〇優勢[有効・上四方固]△長沢大雅(先)
(先)村上優哉△上四方固〇楠竜童(次)
(次)倉見潤〇優勢[指導2]△楠竜童(次)
(次)倉見潤△合技[払腰・崩袈裟固]〇和田樹希也(中)
(中)新井滉燿〇合技[払腰・袈裟固]△和田樹希也(中)
(中)新井滉燿×引分×中村拓夢(副)
(副)田上英也△大外刈〇山下魁輝(大)
(大)石山潤平〇浮落△山下魁輝(大)

取って取られて、という木更津総合高らしい戦い方に、もともと攻撃力の高さが売りの神戸国際大附高が応じてこの試合も派手な撃ち合い。神戸国際大附の中堅新井滉燿が木更津総合のポイントゲッター和田樹希也を「一本」で抜き、次戦を引き分けた段階でどうやら試合の行方は見えたかに思われたが、木更津総合は大将山下魁輝が神戸国際大附の田上英也を大外刈「一本」で抜き去り、大将石山潤平を引きずり出すことに成功。

会場息を呑むこの一番は、石山が相手の技を振り返しての浮落「一本」で勝利して熱戦決着。シード校神戸国際大附が順当にベスト8入りを決めることとなった。木更津総合は中堅に和田、大将に山下とポイントゲッターを分散配置する布陣が嵌ってのベスト16進出だったが、同じく新井と石山をセパレート配置した神戸国際大がそのクオリティの高さで勝ったという様相の6回戦だった。

【Gパート】

シード校:大牟田高(福岡)、前橋育英高(群馬)
6回戦(パート決勝)カード:習志野高(千葉) - 前橋育英高(群馬)

地元福岡の一番手・大牟田高を押し上げることが企図された組み合わせのブロックだったが、ここに習志野高(千葉)という台風の目が仕込まれていた。習志野は4回戦の東海大翔洋高(静岡)で一時2人差ビハインドを負うが、副将勝野祐樹の3人抜き、そして大将対決における篠崎忠史の勝利により4勝3敗1分けで5回戦進出決定。5回戦では高校選手権ベスト4の大牟田を相手に大将篠崎が中堅西田将樹、副将西山瑠生、大将浜野大生という看板3枚を「3タテ」。大将対決では浜野の支釣込足を振り返して「有効」を奪い見事に勝利を決めた。

下側の山では本命なき大混戦を京都学園高(京都)が制してパート決勝進出決定。5回戦ではシード校抜擢を受けた前橋育英高(群馬)を大将同士(3勝2敗2分)の対決で制して6回戦へと駒を進めてきた。

[パート決勝]

習志野高〇大将同士△京都学園高
(先)清水夏輝△合技[内股・袈裟固]〇奥田将人(先)
(次)陳野亮〇小外刈△奥田将人(先)
(次)陳野亮△優勢[指導2]〇増田宙(次)
(中)石渡雅大〇大外刈△増田宙(次)
(中)石渡雅大〇大外刈△井口勇生(中)
(中)石渡雅大△袈裟固〇八木太一(副)
(副)勝野祐樹△内股〇八木太一(副)
(大)篠崎忠史〇優勢[指導2]△八木太一(副)
(大)篠崎忠史〇払腰△松本健太郎(大)

習志野高が乱戦を制して勝利。1人差ビハインドで登場したインターハイ90kg級千葉県代表の篠崎忠史が副将八木太一を「指導2」優勢、そして大将対決で松本健太郎を払腰「一本」で抜き去って勝利決定。千葉県インターハイ予選3位のチームが金鷲旗という大舞台で見事ベスト8進出の快挙を成し遂げることとなった。

【Hパート】

シード校:新田高(愛媛)、比叡山高(滋賀)
6回戦(パート決勝)カード:足立学園高(東京) - 沖縄尚学高(沖縄)

足立学園高(東京)が5回戦でシード校新田高(愛媛)の攻略に成功。1人差ビハインドで登場した中堅山本瑛介が新田の次鋒米澤航春と中堅のポイトゲッター信岡弘太に連勝。新田は副将伊藤好信が山本を下したが、ここから足立学園は副将佐々木卓磨が伊藤、そして高校選手権73kg級の覇者立川新と続く強力2枚に連勝。会場をあっと言わせて6回戦進出決定。

沖縄尚学高(沖縄)は本命なきブロックを勝ち上がり、5回戦ではシード校比叡山高(滋賀)を大将同士の対決で破って決勝進出決定。

足立学園高〇不戦一人△沖縄尚学高
(先)樋口裕大△優勢[有効・隅落]〇崎山寛至(先)
(次)雨森俊成〇腕緘△崎山寛至(先)
(次)雨森俊成〇袖釣込腰△當山有斗(次)
(次)雨森俊成△優勢[指導2]〇上岡繁蔵(中)
(中)山本瑛介〇小外掛△上岡繁蔵(中)
(中)山本瑛介△横四方固〇照屋祐(副)
(副)佐々木卓磨〇小外刈△照屋祐(副)
(副)佐々木卓磨〇合技[小内刈・袈裟固]△那根将貴(大)
(大)島田隆志朗

足立学園はこの試合も副将佐々木卓磨が大活躍。副将同士の対決では独特のタイミングで仕掛ける小外刈で照屋祐から「一本」、さらに大将那根将貴を合技「一本」で下す連勝で勝利決定。足立学園は伝統の巧みな試合運びに山本、佐々木らの一発を盛り、堂々金鷲旗大会のベスト8まで勝ち残ることとなった。

結果決まった準々決勝カードは、

国士舘高 - 埼玉栄高
日体荏原高 - 白鴎大足利高
大成高 - 神戸国際大附高
習志野高 - 足立学園高

の4試合となった。

※ eJudoメルマガ版7月30日掲載記事より転載・編集しています。

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