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ワールドマスターズ・ラバト男子レポート①60kg級、66kg級、73kg級

(2015年6月5日)

※ eJudoメルマガ版6月5日掲載記事より転載・編集しています。
ワールドマスターズ・ラバト男子レポート
①60kg級、66kg級、73kg級
■ 60kg級・高藤直寿が厳しい組み合わせ突破、ワールドマスターズ2連覇で世界選手権出場組に楔打ち込む
【入賞者】 エントリー17名
1.TAKATO, Naohisa(JPN)
2.SAFAROV, Orkhan(AZE)
3.GANBAT, Boldbaatar(MGL)
3.LUTFILLAEV, Sharafuddin(UZB)
5.PAPINASHVILI, Amiran(GEO)
5.UROZBOEV, Diyorbek(UZB)
7.DASHDAVAA, Amartuvshin(MGL)
7.ENGLMAIER, Tobias(GER)

第3シード配置でスタートしたリオ世界選手権金メダリスト高藤直寿が見事優勝。初戦からイルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)とマッチアップ、次戦ではリオ世界選手権で決勝を争ったダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)が待ち受けるという厳しい組み合わせだったが、ムシュキエフ戦は開始29秒に鋭い右袖釣込腰を決めて一本勝ち、ダシュダバー戦は圧力志向の相手に「指導」3つを失ったが、出足払「有効」、横車「有効」、抱きつきの左大内刈「有効」と合計3つの攻撃ポイントを奪って快勝。準決勝では前戦で第2シードのアミラン・パピナシビリ(ジョージア)を下したシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)を左小内刈「有効」、さらに右への「やぐら投げ」で「技有」と圧倒、最後は横三角から崩上四方固に抑え込むと観念したルトフィラエフが「参った」を表明して決勝進出決定。

決勝の相手は前戦でチェリャビンスク世界選手権王者ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)との腰の差し合いを制し裏投「有効」、横四方固「一本」と圧倒して勝ち上がって来たリオ世界選手権銅メダリストのオルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)。

高藤はサファロフの鋭い「韓国背負い」をさばくと、打点の高い右袖釣込腰であわやポイントという場面を作り出すなど攻勢。サファロフの肩越しクロス組み手を左大内刈で切り返した直後の2分33秒、サファロフに「指導1」。

直後サファロフがタイミング良く左内股巻込。高藤跳ね上がりあわやポイントかと思われたが、辛くも腹這いに着地してノーポイント。高藤としては冷や汗をかいた場面だったが、サファロフにとってはこの内股巻込が最後の見せ場となった。以後、圧殺に戦術を切り替えたサファロフは肩越しのクロス組み手に奥襟と釣り手を深く入れて高藤の頭を下げさせに掛かるが、高藤はいずれも迷わず左大内刈で切り返して対処。前者は崩れたサファロフが体を捻って必死に回避、後者は高藤がケンケンで追い切って攻防を終えてむしろ高藤の優位は緩やかながら加速。

残り18秒でサファロフのクロス組み手に対して「指導2」、高藤には「極端な防御姿勢」の「指導」が与えられ、そのまま試合終了。高藤が「指導」2回による優勢で決勝を制し、2013年大会に続くワールドマスターズ2連覇を決めた。

今夏の世界選手権に出場しない高藤に課せられた今大会の最大のミッションは優勝によるランキングポイント700点の獲得のみ。内容云々よりも着実にポイントを積み重ねて五輪出場に向けて楔を打っておくことが何より大事な大会であったが、しっかりその目的を達成した大会と評して良いだろう。

もう少し踏み込んで、焦点距離を変えながら3点を評価ポイントとして挙げたい。

一つは前述の通り、何よりしっかり勝ち切ったこと。Aシードにチェリャビンスク世界選手権王者ガンバット・ボルドバータル、アミラン・パピナシビリ、ベスラン・ムドラノフ(ロシア)、Bシードにダシュダヴァー・アマーツブシン、イルガー・ムシュキエフ、オルカン・サファロフにホバネス・ダフチャン(アルメニア)ら世界選手権で表彰台を争うプレイヤーがズラリと並んだこのハイレベルトーナメントを制した価値は大きい。アジア王者キム・ウォンジン(韓国)の参加がなかったこと、昨年不可解な判定で敗れたムドラノフとの手合せがなかったことなど「満点」には少し材料が足りなかったかもしれないが、自身不在の世界選手権に向けて「一番強いのは高藤」という楔を打ち込んだことは、700ポイント獲得の事実と併せて以後に必ず効いてくるはずだ。

もう一つは、内容が良かったこと。決勝の「指導2」優勢は評価の分かれるところであろうが、準決勝までの勝ち振りはまずまず。リオの圧勝ぶりを考えれば物足りないが14年夏以降の不調を思えば上出来というのが率直なところではあるが、技の切れ味と動きの端々にまで染みた躍動感は、久々に高藤らしさを感じさせるものであった。昨夏の世界選手権での敗戦以降唯一出場した国際大会であるグランプリ・デュッセルドルフの出来が今ひとつであったこと、4月の選抜体重別は元気のないまま初戦で一本負けしていること、そして今夏の世界選手権への不出場が決まっている状況にあって、今回この「らしさ」が発揮出来るかどうかは高藤の以後のキャリアに向けて非常に重要だった。3大会連続の低調、かつ以後はメインイベントへの出場の予定なしとなれば高藤の不調は1年近くの長きに渡るものと烙印を押されること必定、不調も1年となればそれは地力への疑問と発展することもこれまた必至で、リオ五輪に向けた勢力図構成に与える影響は甚大であった。それがワールドマスターズ2連覇という実績を得、かつ内容的にも強さを見せつけた上で世界選手権からは「抜け」、今夏の世界選手権の勝者が「まだ高藤がいる」と顔をひきしめざるを得ない状況を作ったのだからこれは大きい。

最後の一つは、相手の奥襟や一方的な肩越しクロス組み手などの圧殺ファイトに対して大内刈の切り返しという具体的な対抗手段が一つ見られたこと。世界選手権優勝時は大技一発の切り返しでこれらを無力化して来た高藤であるが、昨年からは短躯の高藤に対してはやはり圧殺が利くとばかりにパワーファイトを挑む選手が増えていた。これはやはり高藤が試合の端々に圧力に対する弱さを見せる場面があったからに他ならないが、この流れにひきずられず、むしろそのクロス組み手を相手のピンチに変換するという絵を見せておいたのは、これもこの後の対戦に必ず効いてくるはずだ。このご時世、「クロスには大内刈」という高藤が徹底した今回のポリシーはあっという間に知れ渡って研究されてしまうことにはなるが、圧力に屈しない姿勢と、常に新たな手立てを取り入れる貪欲さを見せておいたことはプラスと考えるべきだろう。

ネガティブファクターはやはりこの「圧力」に関するもので、準々決勝ではダシュダヴァーの圧力に「指導」3つ、準決勝では首抜きの咎で「指導」2つ、決勝も「指導」1つを失っているという事実だ。対戦相手の立場に立って考えれば今回高藤が見せた隙は逆にここ一点しかないはずで、以後も「圧」をめぐる攻防をしっかりケアしていくことが必要だ。不安材料としては、投げまくったと評すべき準決勝までの相手が全てケンカ四つで、「指導」優勢に留まった決勝のみが相四つであったことも併せて指摘しておきたい。

ほか、階級全体で注目しておくべきは、不振が続くモンゴル勢の中にあって今回ガンバットに復調の兆しが見られたこと。ガンバットは準決勝までトーナメントに勝ち残り、3位決定戦で実現したパピナシビリとの注目対決では袖釣込腰「有効」と「指導2」のダブルビハインドから隅返「技有」に横四方固「一本」(パピナシビリが「参った」)を奪い返して逆転勝利、見事表彰台に上ることとなった。モンゴル選手はどう見ても試合に「駆り出される」回数が多くそれがこのところの低空飛行を生んでいる印象だが、フォーカスすべきここ一番でしっかり力を見せたということはやはり地力が高いということ。モンゴル勢に関してはワールドツアーの成績ではなく世界選手権などのビッグゲームの成績に拠って評価しておくのが安全かと思われる。

3位決定戦もう1試合のウズベキスタン勢対決は24歳のルトフィラエフが13年世界ジュニア選手権2位のディヨーベク・ウロズボエフを圧倒、合技「一本」で勝利した。

チェリャビンスク世界選手権で銀メダルを獲得し今大会優勝候補の一角だったムドラノフはトビアス・エンゲルマイエル(ドイツ)に小内刈と袖釣込腰で2つの「技有」を奪われ初戦で姿を消した。

準々決勝以降の試合結果と高藤の勝ち上がりは下記。

【準々決勝】

ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)○内股(1:26)△ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)
オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)○袈裟固(5:00)△トビアス・エングルマイエル(ドイツ)
シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)○優勢[有効・大内刈]△アミラン・パピナシビリ(ジョージア)
高藤直寿○優勢[有効・大内刈]△ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)

【敗者復活戦】

ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)○小外掛(3:34)△トビアス・エングルマイエル(ドイツ)
アミラン・パピナシビリ(ジョージア)○裏投(3:29)△ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)

【準決勝】

オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)○横四方固(3:49)△ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)
高藤直寿○崩上四方固(4:47)△シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)


【3位決定戦】

シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)○合技[浮落・一本背負投]△ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)

ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)○横四方固(4:52)△アミラン・パピナシビリ(ジョージア)

【決勝】

高藤直寿○優勢[指導2]△オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)VS

【日本選手勝ち上がり】

日本代表選手:高藤直寿(東海大4年)
成績:優勝

[1回戦]

高藤直寿○袖釣込腰(0:29)△イルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)

高藤が左、ムシュキエフが右組みのケンカ四つ。開始早々右袖釣込腰「一本」で快勝。強敵ムシュキエフを一蹴。

[準々決勝]

高藤直寿○優勢[有効・出足払]△ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)

リオ世界選手権決勝の再現カード。ケンカ四つ。ダシュダヴァーの「襟隠し」に「指導」。ここから高藤は出足払「有効」、横車「有効」と連取するが、頭を下げられてしまい「指導3」まで失う。しかし攻撃姿勢を崩さず、腰に抱き着いて左大内刈「有効」を追加してフィニッシュ。

[準決勝]

高藤直寿○崩袈裟固(4:47)△シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)

ケンカ四つ。左小内刈で「有効」を先取、さらに右への「やぐら投げ」で「技有」追加。首抜きの咎で立て続けに「指導」2つを失うが、終盤に寝技のチャンスを得て横三角。頭をロックして所謂三角固の形で「抑え込み」が宣告されるとルトフィラエフがあきらめ「参った」。

[決勝]

高藤直寿○優勢[指導2]△オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)

左相四つ。サファロフ鋭い「韓国背負い」を見せるが高藤も切れ味のある右袖釣込腰で対抗、これは投げ切れなかったが準決勝までの好調を維持している印象。サファロフのクロス組み手をその形のまま左大内刈に切り返した攻防の直後、サファロフに「指導1」。
サファロフ打開を期して内股巻込、「韓国背負い」と取り味のある技を連発するが、高藤いずれも回避。手立てを変えたサファロフはクロス、奥、と釣り手で深い位置を叩いて圧力を掛けに掛かるが高藤2度とも左大内刈で打開。1度目はサファロフが体を捻って畳に落ち、2度目は高藤がケンケンで追いかけたまま攻防が終わり、直後の4分42秒サファロフに2つ目の「指導」。一発を狙うサファロフの肩越しクロス組み手を高藤今度は背負投に切り返し、ここで試合終了。

■ 66kg級・ザンタライアが来た!圧勝でワールドマスターズ初制覇
【入賞者】 エントリー17名
1.ZANTARAIA, Georgii(UKR)
2.SHERSHAN, Dzmitry(BLR)
3.DAVAADORJ, Tumurkhuleg(MGL)
3.TAKAICHI, Kengo(JPN)
5.KORVAL, Loic(FRA)
5.PULYAEV, Mikhail(RUS)
7.OATES, Colin(GBR)
7.SHIKHALIZADA, Nijat(AZE)

第3シードに配置されたゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)が4戦して3つの一本勝ちという圧勝でワールドマスターズ初制覇。
2回戦で早くもダビド・ラローズ(フランス)とマッチアップするという決して楽ではない組み合わせ、しかも内股を返されて「有効」ビハインドという厳しいスタートだったが、突っ込んで来た相手に左内股を浴びせて「技有」を獲得し逆転。この優勢勝ちで波に乗ると、準々決勝はニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)を右小外掛「技有」で叩き落として横四方固に抑え込み、観念した相手が「参った」。準決勝は今大会最大の強敵ダバドルジ・ツムレクフレグ(モンゴル)を得意の左釣腰で叩き付けて一本勝ち(4:08)。

決勝は前戦で第1シードのミハエル・プルヤエフ(ロシア)に一本勝ちしているズミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)に対し、1分15秒過ぎに相手を釣り手側に呼び込みながら腕を捕まえ、二本足を踏ん張ったまま打点高く左外巻込。シェールスハンは背に載せられたまま釣り手側に重心を動かし、引き戻される形になったザンタライアは思わず両膝を屈して畳についてしまう。しかしを動きを止めずに投げ直しを企図、右足を踏ん張り上げながらあくまで巻き込んで投げ切り「一本」。ザンタライアのワールドマスターズ初優勝が決まった。

周知の通りロンドン五輪後に66kg級に階級を上げたザンタライアは対応に苦しんだが、それでも13年リオ世界選手権、14年チェリャビンスク世界選手権と連続で3位に入賞を果たしている。ワールドツアーでなかなか勝てずに苦しみ、本番でなんとか表彰台に辿り着いた13年、66kg級での「やり方」を覚えて順当に3位を確保した14年と順調にその対応は進んできたという印象だが、今大会決勝で見せた強引かつ自信に溢れた「「投げ切る」様はまるで60kg級時代のそれであった。転向表明から3年、来年に五輪を控えてザンタライアの66kg級対応はいよいよ完成の域に近付きつつあるのではないだろうか。存分に力を発揮する準備が出来たザンタライアが次はいかなるパフォーマンスを見せるか、アスタナ世界選手権に注目。

高市賢悟は準々決勝まで勝ち上がったが、日本勢の宿敵ダバドルジ・ツムレクフレグに敗退。右手で左脇下を握りに来た相手に対応する中で高市が右釣り手で首を抱え、ダバドルジが左で横から脇を差す形が一瞬現出。高市間髪入れずに右内股に打って出たがそのまま股中で回される形で振り回し返されてしまい、畳に背中を押しつけられて「一本」。確かに高市にとっては良い形だったが、ダバドルジとしても自身の力が最も出しやすい「脇を差す」組み手であった。まったくの一瞬ではあったが、典型的な「自分は良いが相手はもっと良い」というリスクを受け入れてしまったがゆえの、高市らしくない敗戦。1回戦でも「指導1」の辛勝だった高市、今大会は不出来かと思われた。

しかし以後の高市はこの敗戦で目が覚めたかのように好パフォーマンスを披露。敗者復活戦を一本勝ちで勝ち抜けると、3位決定戦ではワールドランキング1位を走るミハエル・プルヤエフを鮮やかな右背負投「一本」に仕留めて快勝。表彰台確保で成績をまとめて、アスタナ世界選手権での活躍にひとつ布石を打った形で最低限の仕事は果たした。

もう片方の3位決定戦ではダバドルジがロイック・コーバル(フランス)の戦術性重視の柔道に手を焼きながらも「指導2」対「指導1」で辛勝。コーバルは組み手で粘り、座り込みの左一本背負投で手数を稼ぐという相変わらずの「投げずに勝ちを拾う」戦い方だったが、偽装攻撃の判断で2つの「指導」を食らうというわかりやすい形で敗戦。「指導」を貰った際には両手を挙げて「なぜだ」とアピール、組み勝っては投げに行くのではなく「なぜ反則を与えない」とばかりに主審を見やるなど考え方も試合態度もまことにコーバルらしいの一言。素晴らしい選手を生み出す一方で、競技成績を残すために戦術を磨き上げた結果「指導」奪取マシーンも簡単に作り上げてしまうという、競技偏差値の高いフランス柔道の負の一面を如実に見せてしまった一番だった。

【準々決勝】

ミカイル・プルヤエフ(ロシア)○背負投(0:18)△ロイック・コーバル(フランス)
ズミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)○大内刈(2:13)△コリン・オーツ(イギリス)
ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)○内股返(4:20)△高市賢悟
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○横四方固(3:27)△ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)

【敗者復活戦】

ロイック・コーバル(フランス)○優勢[技有・大内刈]△コリン・オーツ(イギリス)
高市賢悟○背負投(2:19)△ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)

【準決勝】

ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○釣腰(4:08)△ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)

ズミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)合技[裏投・横四方固](4:43)△ミカイル・プルヤエフ(ロシア)

【3位決定戦】

ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)○優勢[指導2]△ロイック・コーバル(フランス)
高市賢悟○背負投(2:03)△ミカイル・プルヤエフ(ロシア)

【決勝】

ズミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)VSゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

【日本選手勝ち上がり】

日本代表選手:高市賢悟(東海大4年)
成績:3位

[2回戦]

高市賢悟○優勢[指導1]△カマル・カン・マゴメドフ(ロシア)

右相四つ。相手が両手で片袖を長時間握っていたため「指導」。これが決勝点となる。

[準々決勝]

高市賢悟△内股返(4:20)△ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)

高市は右組み、この試合のダバドルジは左構え。ダバドルジが右で高市の左脇下を深く握ったところからスタートした攻防の中、高市が釣り手で首を抱え、ダバドルジが脇を差して対抗する形が一瞬現出。高市間を置かずに右内股に打って出るがダバドルジすかさず左にハンドルを切って股中で高市を捌き、叩き付けて内股返「一本」。

[敗者復活戦]

高市賢悟○背負投(2:09)△ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)

ケンカ四つ。相手の返し技に脅かされる場面頻発するが、怖じずに低い右背負投。巻き込むように投げ切って「一本」。

[3位決定戦]

高市賢悟○背負投(2:03)△ミカイル・プルヤエフ(ロシア)

プルヤエフ鋭い左背負投を連発するが高市いずれもノーポイントで凌ぐ。2分過ぎに高市がタイミング良く低い背負投。釣り手を巻かずに相手を固定、手首の柔らかさを生かした高市らしい一撃は見事に決まり「一本」。

■ 73kg級・ロシアの新鋭ヤルツェフが大ブレイク、中矢はタタラシビリに敗れ3位に留まる
【入賞者】 エントリー16名
1.IARTCEV, Denis(RUS)
2.TATALASHVILI, Nugzari(GEO)
3.NAKAYA, Riki(JPN)
3.ORUJOV, Rustam(AZE)
5.DUPRAT, Pierre(FRA)
5.GANBAATAR, Odbayar(MGL)
7.DELPOPOLO, Nicholas(USA)
7.MUKI, Sagi(ISR)

昨年の世界王者中矢力をはじめ非常に役者の揃ったトーナメントだが、優勝したのはノーシード選手、ワールドランキング16位のデニース・ヤルツェフ(ロシア)。1回戦でディルク・ファンティシェル(ベルギー)を右体落「有効」、準々決勝でニコラス・デルポポロを隅落「有効」で破ったところまではこれまでのヤルツェフであれば「ありうる」出来であったが、ここからが凄い。準決勝では第2シードの今季絶好調ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)を右体落「一本」(1:04)、そして前戦で中矢に一本勝ちしているヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)との決勝では開始57秒に素晴らしい切れ味の右内股を決めてこれも「一本」。強豪2人を立て続けに投げてワールドマスターズ制覇の偉業を成し遂げた。

ヤルツェフは24歳、これまでのワールドツアーでは優勝1回(2014年グランドスラム・チュメン)、2位が1回、3位が1回と尖った成績を残していたわけではなく、今月のグランプリ・サグレブ、グランドスラム・バクーでは2大会連続の予選ラウンド敗退。率直に言ってさほど目立っていた選手ではない。
ただし、昨年のチェリャビンスク世界選手権では団体戦の選手に抜擢されて2戦2勝。決勝の日本戦では大野将平に「技有」をリードされながら内股を抱き返して「有効」、さらに片襟の右大外刈「技有」と連取して逆転勝利を収めたというエピソードがある。もともと爆発力がある選手を、ロシアがここに来て本格的に「仕上げて」来ていると考えて警戒しておくべきではないだろうか。

秋本啓之、中矢力、大野将平、そして再び中矢力と世界選手権で日本勢が4大会連続優勝を果たしている73kg級。ワールドツアーの各大会では日本勢おらずばハイレベル大会としての興業成り立たずという感すらあったが、五輪を前にしたここに来てオルジョフやヤルツェフら新興勢力の追撃が凄まじい。特にロシアはこの階級でマンスール・イサエフ、60kg級ではアルセン・ガルスチャンと大外から追い上げさせて本番の五輪で金メダルをかっさらった実績があり、勝たせ方を心得ているという不気味さがある。いよいよ仕上がって来た66kg級王者のラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)、時折凄まじい爆発力を発揮するヴィクター・スクボトフ(UAE)、昨年の世界選手権で銀メダルまで上り詰めたホン・カクヒョン(北朝鮮)など一発勝負の最高到達点の高い人材も育ってきており、一時日本勢圧倒的優位かと思われたリオ五輪おける「不確定要素」は日に日に増えているという印象だ。候補選手のいずれもが既に一度世界を制し「狙われる」立場の日本、その地力の喫水線は五輪まで持つのか。アスタナ世界選手権の日本勢の戦いぶりは今大会の勝ち負け自体よりも五輪に向けた補助線をどの選手がどのように、どの角度で引くのかに注目すべきだろう。

日本の中矢力はハッシュバータル・ツァガンバータル(モンゴル)とピエール・デュプラ(フランス)を相手に2試合連続の一本勝ちと非常に良い立ち上がりだったが、準決勝でヌグザリ・タタラシビリに一本負け。序盤は先手で攻め込んだ中矢がペースを掴んだが、中盤以降は地力に勝ることを確信したタタラシビリの強気の組み手の前に苦しい戦いが続き、最終盤についに陥落。左体落「有効」を失いそのまま抑え込まれてしまった。3位決定戦もガンバータル・オドバヤル(モンゴル)に「有効」をリードされたまま終盤まで試合を引っ張る苦しい戦いだったが、この試合はまったく焦る様子を見せずひたすら丁寧に組み手、技と状況を積み重ねると残り30秒に右小内刈一閃「技有」で逆転。そのまま抑え込んで一本勝ちを果たし銅メダルを確保した。いかにも中矢らしい冷静沈着な逆転劇であったが、逆にそこまで「試合力」の高い中矢が地力で押し切られてしまったタタラシビリ戦の様相なんとも気に掛かる。中矢の地力は、3度目の世界一を獲得出来る高みに未だあるのか、もしそうであれば今回の苦杯の原因はコンディションなのか、それとも他の要因なのか。世界選手権までに残った「伸びしろ」は何なのか。評価の難しい大会であった。

人材が揃い過ぎたせいもあるが、大会は全体として荒れ気味。第1シードのデックス・エルモントは初戦でデュプラにいずれも自身の技を切り返されて隅返「技有」、左小外掛「技有」と連続被弾して敗戦。バクー大会で大活躍した大御所ミコロス・ウングバリ(ハンガリー)は初戦でセージ・ムキ(イスラエル)に袖釣込腰「一本」で敗れ、ロンドン五輪66kg級王者で今季好調の波に乗りつつあったラシャ・シャフトゥアシビリ(ジョージア)は初戦でオルジョフに体落「有効」で敗退。サインジャルガル・ニャムオチル(モンゴル)も初戦でニコラス・デルポポロに左内股を食って僅か34秒で一本負け。スクボトフもタタラシビリに体落「有効」、大外刈「一本」と立て続けに投げられて初戦敗退。厳しい階級、荒れた大会であった。

【準々決勝】

中矢力○片手絞(3:30)△ピエール・ドュプラ(フランス)
ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)○優勢[指導2]△セージ・ムキ(イスラエル)
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・払巻込]△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
デニース・ヤルツェフ(ロシア)○優勢[有効・隅落]△ニコラス・デルポポロ(アメリカ)

【敗者復活戦】

ピエール・デュプラ(フランス)○優勢[有効・外巻込]△セージ・ムキ(イスラエル)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○合技[袖釣込腰・袖釣込腰]△ニコラス・デルポポロ(アメリカ)

【準決勝】

デニース・ヤルツェフ(ロシア)○体落(1:04)△ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)

ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)○袈裟固(5:00)△中矢力

【3位決定戦】

ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○優勢[有効・小内刈]△ピエール・デュプラ(フランス)
中矢力(日本)○横四方固(4:46)△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

【決勝】

デニース・ヤルツェフ(ロシア)○内股(0:57)△ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)

日本代表選手:中矢力(ALSOK)
成績:3位

[2回戦]

中矢力○合技[支釣込足・横四方固](4:32)△ハッシュバータル・ツァガンバータル(モンゴル)

右相四つ。出だしから巴投、背負投などで攻め続けて相手に技を出させずに「指導」2つを先制。抱き合った状態から相手が釣込腰に来たところを一歩前に出てかわし、隅落「技有」。そのまま横四方固に抑え込む。強敵に全く柔道をさせず、快勝。

[準々決勝]

中矢力○送襟絞(3:30)△ピエール・デュプラ(フランス)

ケンカ四つ。相手の頭を下げさせ「指導1」奪取、場外の咎で「指導1」失陥。
3分過ぎに相手の小外刈を捌いて透かし落とすと、一瞬緩め、次いで素早く襟を相手の首に食い込ませる手順通りの送襟絞。相手の背後に回り、跨いだまま絞め上げて「一本」。

[準決勝]

中矢力△袈裟固(5:00)○ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)

ケンカ四つ。中矢は大外刈、送足払に巴投、さらに一瞬ポイントが想起される右袖釣込腰と淡々と技を繰り出し続け序盤は比較的攻勢。しかし中盤からタタラシビリが自信タップリに釣り手で深く背中を抱えるようになり明らかに様相が変わる。中矢の技は掛け潰れが増え、幾度かあったタタラシビリの大内刈をきっかけとする返し合いはいずれもタタラシビリが体の強さで勝る。中矢は非常に苦しい戦い。「指導1」を取り合った終盤、タタラシビリが左体落。釣り手は上から脇下をロック、作用足を外足の膝にまず深く引っ掛け、次いで体を沈めるという強気を段重ねしたこの一撃に中矢為す術なく転がり「有効」。タタラシビリはすかさず左から袈裟固、時折右拳を握りしめて喜びを表現しながら時間の経過を待ち「一本」。

[3位決定戦]

中矢力(日本)○合技[小内刈・横四方固](4:46)△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

ケンカ四つ。1分26秒、組み際に出来たエアポケットをガンバータル的確に狙い、いままでとは組み立てを変えて思い切った左内股。中矢あっという間に回転しこれは「有効」。「一本」と判断されても仕方のないスピードと力強さのある一発。

しかし中矢は淡々と試合を進め、残り2分過ぎからは横落、右大腰と連発してジワジワと展開を手繰り寄せる。残り30秒に右小内刈「技有」で逆転に成功、そのまま横四方固に抑え込んで合技の一本勝ち。淡々と、心の揺れを見せず、丁寧に相手を追い詰める。昨年の世界選手権を彷彿とさせる中矢らしい柔道で3位を確保。

※ eJudoメルマガ版6月5日掲載記事より転載・編集しています。

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