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田知本愛が初優勝、ライバル山部佳苗は準決勝で苦杯・全日本選抜柔道体重別選手権78kg超級レポート

(2015年6月1日)

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。
田知本愛が初優勝、ライバル山部佳苗は準決勝で苦杯
全日本選抜柔道体重別選手権78kg超級レポート
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準決勝、田知本愛が朝比奈沙羅から支釣込足「有効」

第1シードの田知本愛(ALSOK)が順当に決勝進出。1回戦は高校生の冨田若春(埼玉栄高3年)に1分20秒に挙げた「指導」ひとつで勝ち抜けるという辛勝だったが、準決勝は朝比奈沙羅(東海大1年)を相手に快勝。44秒に「取り組まない」咎による「指導」を得ると、しっかり組みあって圧を掛け1分30秒支釣込足「有効」、そこからガッチリ上四方固に抑え込む盤石の形での勝利だった。

第1シードの田知本は良い形で決勝へ進出。敗れた朝比奈はグランドスラム東京決勝で稲森奈見(三井住友海上)に敗れて高校1年生以来張って来た「若手の旗手」の座を明け渡した感あり、さらに今大会ではトップ世代に弾き返されてと一時の勢いがなくなって来た印象。観客席からは、トップ選手である朝比奈に対して逐一指示する関係者の怒声が響き続け、負けの後味の悪さを一層引き立てることとなっていた。負傷等様々な要因があったが、一つ言えるのは朝比奈の勢いが止まった時期と、所属の指導者ではないこの内容薄き「声」が会場に響き渡るようになった時期が重なるということだ。王道の柔道を繰り広げるがゆえに試合の分岐点でことごとく朝比奈に来ていた流れが、いまはその怒声の度に相手に渡るという印象が否めない。「待て」以外に指導者が声を出してはいけないというルールの中、観客席にコーチを置くという抜け道ルートの使用が物議を醸す状況にあって、審判、関係者に与える印象も良かろうはずがない。そもそもこのルールはこのような品格に欠ける、試合場にふさわしくない怒声を制限するためのはずだったはずだ。ルールで規定されていないからと言って抜け道を通り、その本質をないがしろにする行為はこの競技にも、王道志向の朝比奈の柔道にもふさわしくない。朝比奈の輝かしい才能を伸ばすため、潰さないため、関係者には一考を促したい。

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準決勝、グランドスラム東京王者の稲森奈見が山部佳苗を攻める

もう1人の決勝進出者はグランドスラム東京王者の稲森奈見(三井住友海上)。1回戦は後藤美和(日光警備保障)を小外刈「有効」から縦四方固「一本」で下し、勝負どころの準決勝では優勝候補の山部佳苗(ミキハウス)をGS延長戦の末「指導3」で破って決勝に進んだ。

敗れた山部、1回戦では強敵市橋寿々華(大阪府警)を小外刈と横四方固の合技「一本」(1:26)で勝利して噂されていた負傷の影響は最小限かと思われたが、この試合は本戦で2度の双方同時「指導」を受けるなど膠着から抜け出せず。ライバル田知本と矛を交わすことなく畳を後にすることとなった。

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田知本と稲森による決勝

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田知本は積極的に大外刈、払腰を見せる

決勝は田知本が左、稲森が右組みのケンカ四つ。田知本巧みに相手の釣り手をずらしながらの左払腰に左大外刈、左内股巻込と意欲的に技を継続。稲森いずれもいなし、止めて前進行動を続けるが田知本の技数着実に積み上がり、1分23秒稲森にのみ「指導」が宣告される。

田知本、左小外掛に左払腰と攻撃継続。稲森は2分32秒に肘を脇下に差し込んでの右内股を放つが効なく、田知本が左小外刈から内股巻込に潰れた直後の2分47秒には稲森に2つ目の「指導」。

このまま走り抜けたい田知本は片足になるリスクのない左体落を軸に攻撃姿勢を崩さず。稲森引き寄せながらの右内股を放つが田知本呼吸を合わせて左技を放ち、かちあって稲森の技は効かず。残り10秒を過ぎ、田知本の送足払を受けた稲森が膝車、さらにケンケンの右大内刈へと技を繋ぐが体を入れ切れず、田知本は最後まで揺るがず。このまま試合は終了となり「指導2」の優勢で田知本が選抜体重別初優勝を飾ることとなった。

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試合は「指導2」による優勢で田知本の勝利

リオ五輪を翌年に控え「勝たねばならない」年にあっていよいよ田知本が為すべき仕事を果たし始めたという印象の大会。勝つべき大会を、しかも未だ獲った経験がなく優勝することが本来未知の領域にあるはずの大会を、全ての選手が田知本の柔道を熟知しターゲットにしてくるという包囲網を突破してしっかり勝ち切ったという文脈で、その勝利は賞賛に値する。

ただし、1回戦で「指導1」、決勝で「指導2」とその勝ちぶりは決して抜群とは言い難い。これをどう見るか。

出場叶わなかったロンドン五輪後、田知本は突如上り調子の波に乗った。グランドスラム東京にグランドスラム・パリと超ハイレベル大会に連勝し、結果は勿論、なにより攻撃性に満ちたその内容は関係者を唸らせるものであった。
あの時の田知本には、突如獲得した攻撃性と「投げ」へのこだわりというわかりやすい上積みポイントがあった。両襟ファイターという「一本」が取りにくいはずの構造的問題を隠してしまうだけの突進力と技のキレ味、人が変わったような積極性があった。
しかし選抜体重別を初めて制した今回、良くも悪くも田知本の柔道は順行運転、ハッキリした上積みは見えにくかった。これを、具体性を持った変化がなくても勝ち切るだけの地力の高さと安定感を獲得したと見るのか。それとも世界と戦う上で、尖った長所、具体的な「勝つ根拠」が足りないと考えるべきか。

よりこの大会に寄せて言えば。尖った部分なく総合力の高さで勝つのであれば、グランドスラム東京で見せたような「波」があってはならないと見るのか、それともフォーカスしたこの大会にきっちり勝ったことで「平均点」はむしろ高いとみるべきなのか。残念ながらこの日の戦いだけでここに評価を下すことは難しい。この大会の総括すら、以後の国際大会と世界選手権から後付けで照射されるものとして持ち越さねばなるまい。

国内の勢力図ということでいえば、グランドスラム東京で一気に世代交代を図らんとする稲森、朝比奈の若手が台頭し、欧州国際大会で田知本と山部の牽引役2人がこれをひとまず押し返した、という流れを概ね踏襲した構図の大会であった。少なくとも若手2人がグランドスラム東京で作り出した「リオを前にした一気の世代交代」という青図はいったん撤回。
ただし、前述の通り、昨年の世界選手権代表2人に世界の頂点を伺う力があるとされるこの階級の選手の評価は、とりわけ「危なげなく、特徴薄く」勝ててしまえるところまで地力が到達した田知本の評価は、あくまで海外の戦いに求めねばならない。ライバルが極端に絞られる国際大会、そして世界選手権での王者・田知本の戦いぶりに期待したい。

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初優勝の田知本愛

【入賞者】

優 勝:田知本愛(ALSOK)
準優勝:稲森奈見(三井住友海上)

田知本愛選手のコメント
「ずっとこの大会に勝ちたかった。いつも『惜しかった』と言われて、今度こそ優勝したかったし、もう一度世界選手権で戦うために頑張りました。妹が勝ったので、負けるわけにはいかないなとも。ここまでやってきた自信があった。世界選手権では今度こそ一番高いところにあがりたい」

【一回戦】
田知本愛(ALSOK)○優勢[指導1]△冨田若春(埼玉栄高3年)
山部佳苗(ミキハウス)○合技[小外刈・横四方固](1:26)△市橋寿々華(大阪府警)
稲森奈見(三井住友海上)○縦四方固(3:13)△後藤美和(日光警備保障)
朝比奈沙羅(東海大1年)○GS指導2(GS1:06)△井上愛美(九州旅客鉄道)

【準決勝】

田知本愛○上四方固(1:52)△朝比奈沙羅
稲森奈見○GS指導3(GS3:13)△山部佳苗

【決勝】

田知本愛○優勢[指導2]△稲森奈見

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。

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