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「獣人柔道」西潟健太がついに日本一、決勝で王子谷剛志を捻じ伏せ初優勝飾る・全日本選抜柔道体重別選手権100kg超級レポート

(2015年6月1日)

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。
「獣人柔道」西潟健太がついに日本一、決勝で王子谷剛志を捻じ伏せ初優勝飾る
全日本選抜柔道体重別選手権100kg超級レポート
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1回戦、西潟健太が岩尾敬太を必殺の浮落「一本」に沈めて講道館杯決勝のリベンジ

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役者の揃った階級。今季の欧州シリーズ最重要大会グランプリ・デュッセルドルフを制し世界の注目を浴びる世界選手権銀メダリスト七戸龍(九州電力)、昨年の全日本選手権覇者でアジア大会も制した王子谷剛志(旭化成)のシード選手2人に加え、充実の内容で東京選手権を制した原沢久喜(日本中央競馬会)、そして九州選手権で七戸を倒し爆発的な力を示して優勝を飾ったばかりの実業王者西潟健太(旭化成)。上川大樹(京葉ガス)は負傷のため欠場したが、まさしく日本一を競うにふさわしい陣容だ。

4人は揃って準決勝に進出。1回戦で注目されたのは西潟が講道館杯決勝で敗れた岩尾敬太(京葉ガス)とマッチアップした因縁対決。岩尾はグランドスラム東京ではラファエル・シウバ(ブラジル)を倒して3位に入賞するなどアップセット因子を濃く持つ選手であり、ともに今大会は飛び道具的なニッチにある2人がいきなり顔を合わせるというある意味贅沢、反面非常にもったいないカード。

講道館杯決勝では西潟の勝利寸前の残り2秒にそれまで劣勢の岩尾が大内刈「有効」を挙げて勝利している。今大会優勝候補の一角に挙げられ、かつまだ結果としては何も成し遂げていない西潟が初戦で戦う相手としては実は最も嫌な選手ではないかと思われたが、この試合は「指導」3つずつを奪い合った残り1分に西潟得意の「ハンドル投げ」が炸裂。岩尾の巨体を捻り倒す浮落「一本」(4:03)で西潟が準決勝への勝ち上がりを決めることとなった。

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七戸と西潟による準決勝は七戸が右、西潟が左組みのケンカ四つ。西潟はここまで七戸に4連勝、直近2回は一本勝ちを果たしているという相性のハッキリした対決。

西潟は両襟で相手を引き寄せて圧を掛け、一方これまで西潟の近い間合いからの「ハンドル」に辛酸を舐めさせられて来た七戸はこれに抗してなんとか間合いを取ろうとする。連敗中の七戸の慎重さと、この大一番でポカをせず相性をしっかり結果に反映させたい西潟の意図がクロスし、序盤は予想外に静かな展開。1分36秒七戸に「取り組まない」咎の「指導」が宣告され、3分3秒には双方に積極的戦意に欠けるとの判断での「指導」、さらに直後の3分17秒には七戸のみに同じく消極的との判断で「指導」が与えられる。この時点での反則累積は西潟が「2」、七戸が「3」。

西潟は左構えからアイデンティティの一端である逆方向への大外巻込を見せるが、七戸がこれを織り込み済みであると悟ると自ら矛を収める。続く攻撃は両襟を掴んだ左右への「ハンドル」、これに七戸は頭を下げてしまい防戦一方。

七戸は西潟の一発を回避することに気を遣い過ぎた序盤戦の戦いから抜け出せず、どうしても攻めのきっかけがつかめない。残り1分を過ぎて前へのあおり、最終盤では片襟を差しての右大外刈と打開を図るが前者はいなされ、後者は大外返を食い掛けて自ら伏せることを強いられる。このまま試合は終了となり、「指導3」対「指導2」で西潟が勝利を収めることとなった。海外からは間違いなく日本のエースと目されているはずの七戸、決勝の畳に上がること叶わずここで敗退。

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原沢-王子谷のライバル同士による準決勝

準決勝第2試合は王子谷と原沢による同学年のライバル対決。
両者右組みの相四つ、好調原沢が右内股で大きく王子谷を崩すところからスタート。54秒には原沢の側に「指導」が与えられるが、以後も原沢は引き出しながらの右内股に相手の裏に進出しての右大外刈、さらに右内股と取り味のある技を連発。対する王子谷は相手の全てのアクションの都度に必ず自らも前進するという高校時代から貫く「王子谷のポリシー」で対抗する。2分過ぎに王子谷が奥襟を得て大内刈、しかし原沢は動き鋭く右大外刈に変換し、続いて王子谷が斜めから放った右大外刈も体を入れ換えてかわす。スコアは王子谷リードだが有効打と展開はやや原沢優位。

この流れが続くシークエンスで具体的なスコアに結実する。原沢が右大外刈で真裏に進出、思わず「入った!」と観衆が腰を浮かしかかるこの大技に続いて思い切り右内股。ともに一瞬ポイントを想起されるこの技をいずれも王子谷凌ぎ切るが、直後の3分2秒ついに王子谷に「指導」。

しかし王子谷はこの悪い流れを受け入れない。「指導」失陥から間を置かず、得意の支釣込足。いったんノーステップで足を当てておき、さらにステップを切って再度の蹴り崩しという二段攻撃の前に原沢崩れて「有効」、3分32秒。原沢はこのポイントを追いつくことが出来ず、残り20秒では場外の咎で2つ目の「指導」を貰って試合終了。王子谷が「有効」優勢による勝利を決め、決勝の畳へと進むこととなった。選抜体重別と全日本選手権の連勝に世界選手権代表の望みを掛けていた原沢は失意の敗戦。

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決勝、西潟はパワー自慢の王子谷に対しても両襟で圧を掛ける

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西潟が左大外刈で王子谷を畳に叩き落とすが、これは場外

決勝の巨漢対決は西潟が左、王子谷が右組みのケンカ四つ。王子谷が右内股、右大外刈と攻めるがこの攻撃を受けた西潟は鉈を振るうような左大外刈で王子谷を捕まえ落とす。王子谷の巨体が畳に沈み、体勢は文句なしの「一本」だったがこれは「待て」の後でノーカウント。西潟の強さに満場どよめく。

王子谷は釣り手を下から突いて、引き手は襟を求めて探る。どちらかというと組み合いたい西潟に対して王子谷が慎重に手順を踏んで自分の形から入ろうといるように見受けられたが、主審は西潟に対し「取り組まない」判断の「指導」を宣告する。経過時間は1分4秒。

奮起した西潟は両襟を高く狭く握って前へ。王子谷は釣り手の肘をこじ入れようとするが西潟許さず前進。王子谷はその釣り手をずらしのけて鋭く右体落を放つが西潟揺るがず。

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西潟が組み手とは逆の右払巻込、耐える王子谷を捻じ伏せ「有効」

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2分30秒を過ぎると西潟の優位が加速、両襟の大外刈で王子谷を下げさせて前進に次ぐ前進。腰を切り返しての左内股フェイントで相手を追い詰めて餌を撒き終えると、3分46秒に組み手とは逆の右払巻込。耐えた王子谷を捻じ伏せて投げ切り「有効」を獲得すると、そのまま押さえつけて得意の袈裟固。4分9秒「一本」が宣告されて西潟の勝利が決まった。

西潟は選抜体重別初優勝。決勝はまさしく「力で捻じ伏せた」と形容して然るべき、これぞ西潟スタイルという戦い。粗削りなまま左右に大技で振り回し、「胸固め」とでもいうべき袈裟固で抑え切る。まさしく「獣人柔道」全開の日本一奪取劇であった。

社会人になって増量、突如開眼した西潟はキャリアも柔道スタイルも「異形」。出世のスケジュールは勿論だが、その風貌も、そして立ち姿からして、若い世代から成績を残して強化に呼ばれ続け、ウエイトトレーニングで鍛え上げて均整の取れた体を持つ昨今の選手とはまったく違う。巨人だがどちらかというと撫で肩、膝は伸び気味で立ち姿はむしろ腰高に見え、足はベタ足。爪先も膝も外に向かって開いた「顔は変わったがあれさえ見れば西潟とわかる」と関係者が冗談交じりに語る、極端なガニ股。どれも柔道選手かくあるべしというセオリーからは外れているが、しかしこの膝が外に開いたガニ股ゆえに、同じ立ち位置から左右に大技が利くというのだからまったく柔道は面白い。

日本人離れした、そして海外の強豪たちとも毛色の異なる「西潟流パワー柔道」がどこまで登りつめるのか、今後も目が離せない。ファンとしてはまったく面白い役者が現れてくれたと快哉を叫ぶべきであろう。

そして主役として現在日本の重量級を戦う七戸や原沢と同じく、西潟も少年時代から全国大会のトップを争うような競技柔道を叩き込まれたエリートでは全くないということを関係者は揃って胸に刻みこむべきだろう。現在の重量級で魅力的な柔道を繰り広げているのは誰か、そして彼らはキャリアの序盤でいかなる環境にあり、ここまで登りつめるだけの原資を獲得したのか。我々は将来の七戸や西潟、原沢たちに偏狭な競技戦術を教え込むことでその角を矯めてしまっているのではないのか。小中学校における競技力向上は結果的に日本柔道の天井を低くしたのではないか、と改めて考え込んでしまう、晩成の巨人・西潟による優勝劇であった。

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ついに日本一の座を手にした西潟健太

【入賞者】

優 勝:西潟健太(旭化成)
準優勝:王子谷剛志(旭化成)

西潟健太選手のコメント
「去年2回日本一のチャンスを逃していましたし、なんとしても優勝したかった。4月からは王子谷が同じ会社に入ってきて、自分は主将。負けられないと思いました。(七戸戦は)これまで何度か対戦して勝っているので。形は良くないですがしっかり勝ったということで良かったです。自分はまだまだこれから。やっているからには世界一を目指します」

七戸龍選手のコメント
「自分の柔道が全然出来なかった。仕方がないです。ケンカ四つの対応が甘かった。全日本選手権まで時間がないですが、やるしかない。今日は組み勝っていた時間がなく、本当に悔しいです」

【一回戦】

七戸龍(九州電力)○優勢[指導3]△上田轄麻(明治大4年)
西潟健太(旭化成)○浮落(4:03)△岩尾敬太(京葉ガス)
王子谷剛志(旭化成)○優勢[指導2]△高橋和彦(新日鐵住金)
原沢久喜(日本中央競馬会)○優勢[指導3]△百瀬優(旭化成)

【準決勝】

西潟健太○優勢[指導3]△七戸龍
王子谷剛志○優勢[有効・支釣込足]△原沢久喜


【決勝】

西潟健太○袈裟固(4:09)△王子谷剛志

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。

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