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橋本壮市が世界王者2人を破って初優勝、代表選考の制度設計あらためて問われる「対象者の直接対決なし」・全日本選抜柔道体重別選手権73kg級レポート

(2015年5月18日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版5月18日掲載記事より転載・編集しています。
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橋本壮市が世界王者2人を破って初優勝、代表選考の制度設計あらためて問われる「対象者の直接対決なし」
全日本選抜柔道体重別選手権73kg級レポート
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1回戦、ペースを握った橋本壮市が支釣込足で秋本啓之を大きく崩す

秋本啓之(了徳寺学園職)、中矢力(ALSOK)、大野将平(旭化成)と3人の世界チャンピオンが同時出場する73kg級は世界が注目する最激戦階級。しかしこの3人はいずれも決勝に辿り着けずに敗退。

まず秋本が初戦で橋本壮市(パーク24)に苦杯。「指導」ひとつをリードしていたが2分55秒の組み際に橋本が仕掛けた一本背負投の形に腕を抱えた左大外落を食って「有効」失陥。そのまま取り返せずに試合終了となった。奇襲技一撃の偶発事故というよりは、本人が試合後に「相手の柔道に合わせてしまった」と振り返った通りペースは常に橋本の側にあり、そのポイント奪取はあるべきシナリオの範囲内、逆に秋本に逆転の気配は薄かったという一番。これで今夏の世界選手権出場が絶望的となった秋本、ライバルが世界選手権の覇者2人であることを考えると悲願である五輪出場も非常に厳しい状況となってしまった。昨年来アジア大会、グランドスラム東京と優勝以外は許されない狭い一本道を見事に渡り切って命を繋いで来た秋本だが、いよいよ選手生活の重大な分岐点を迎えることとなった。秋本はベテランらしく淡々と、しかし悔しさを滲ませながら「次に繋がらない結果。結果を受け止めてしっかり次を考えたい」と語って悄然と畳を後にした。

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準決勝、土井健史が中矢力から出足払で2つ目の「有効」獲得

そして準決勝では中矢と大野が相次いで陥落。

中矢は土井健史(ダイコロ)を相手に先んじて仕掛けた巴投が偽装攻撃と判断され1分31秒「指導」ビハインド。直後の1分47秒、土井の出足払を思い切り食ってストンと畳に落ち「有効」までも失ってしまう。中矢は右小外刈に右背負投と激しく追うが土井は山場を作らせず、中矢の反撃は残り26秒に至ってようやく2つ目の「指導」を得るに留まる。明らかにこのペースでは勝利に届かない中矢が逆転を狙って前に出た4分46秒に再び土井の出足払が炸裂、2つ目の「有効」となる。このまま試合は終了し「有効」優勢を以て土井の勝ち抜けが決定した。
敗れた中矢、試合後は「ポイントを取られて以後は狙い過ぎた。力不足。しっかり修正したい」と落ち着いて語ったもののその表情に悔しさは隠せず。「仕掛けるのが遅かった」と無念さを滲ませていた。

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準決勝、橋本壮市が大野将平から「一本大外」で「有効」を得る

逆側の準決勝で大野を破ったのは秋本に勝利したばかりの橋本。右相四つの相手に対し釣り手を振り立てるなり、前戦同様に組み手と逆の左で放った「一本大外」の奇襲がまたも成功、1分16秒「有効」を獲得。追い掛ける大野は前に出て累計3つの「指導」を得るが、3つ目の「取り組まない」反則が宣された時点で残り時間は僅か11秒。結局「有効」による優勢で橋本の決勝進出、そして大野の敗退が決まった。
試合後の大野は「持ち味を殺された」と悔しさ露わ。「勝ち続けてこそチャンピオン。自分は甘い」と試合を総括し、ショックを隠し切れない様子だった。

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決勝、橋本はまたもや「一本大外」に打って出るが予期した土井は動ぜず

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土井は右体落で反撃

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GS延長戦、橋本の膝車に土井は大きく崩れて尻もち

大荒れの末に迎えた決勝は土井が左、橋本が右組みのケンカ四つ。橋本はこの試合も左の「一本大外」を放つが心得た土井は動ぜず、片襟を差した右背負投を中心に攻め込む。1分36秒に橋本が組みつきながらの巴投、土井余裕を持って捌くが直後橋本の攻勢を認める形で土井に「指導」が宣告される。追いかける土井は右への体落で攻め、一方の橋本は組み手で再三良い形を作るものの技出しが途切れてしまい、橋本が相手の股中に足を突っ込む「サリハニ状態」の膠着を作り出したところで橋本に「取り組まない」咎の「指導」が宣告される。このままポイントの積み上げなく、試合はGS延長戦へ。

延長戦開始早々、土井が釣り手で背中を捕まえに来るところを橋本が釣り手を「小手投げ」にロックしながらの右内股に捉えて大きく崩す。崩れた土井をそのまま抑え掛かるが「待て」。
続く展開は腰の差し合い、ここから橋本が相手の膝裏に爪先を入れる膝車を放つとアクセントの効いたこの技に土井は大きく崩れて尻もち。さらに橋本は上下に相手を激しくあおっての巴投で主導権を握る。

直後、土井が襟を隠したところを橋本委細構わず左一本背負投。主審はこの技を見極めたところで橋本の展開優位を確定、GS1分7秒土井に「指導」が宣告されて試合終了。橋本、見事全日本選抜体重別選手権初優勝を決めた。

この日は完全なる「橋本の日」、決勝は僅差だったがここまでに世界王者2人を破った主役級の出来に勝利の神様が優勝という正当な対価を与えたという恰好の結末だった。

大物と目されながらなかなか成績を残せなかった大学時代を経て、昨年は実業個人に優勝、そして選抜体重別というビッグタイトルを得た橋本はここに至りキャリア最高の出来を見せている。寝技の中矢、投技の大野という存在感抜群の世界王者2人が君臨する73kg級にあって、この先どこにアイデンティティを求め、どの方向に伸びようとするのか。もはや戦果だけでは評価されない感のあるこの階級にあって、以後の橋本のパフォーマンスの「方向性」に注目したい。

トーナメント全体としては「大荒れ」と評するしかない階級だった。

五輪、世界選手権の代表挑戦資格が厳しく定められ国際大会の成績が最重要視される現状の中、資格がないことがハッキリしている選手も含めて全階級一律8人を参加させて勝敗を競わせるという選抜体重別の制度は、少なくとも代表最終選考会という観点においてはもはや相当な無理がある。ロンドン五輪で徹底的な批判にさらされた本番までのスケジュールの短さも含め、選手の負担が重い「無理筋」の制度を、長年開催を続ける間に牡蠣殻のようにくっついた様々なものを守るために「やめられなくなった」と評されても仕方のない、矛盾に満ちた制度となりつつある。

その中にあって、世界王者3人がひしめき、かつ全員が国際大会で文句のない成績を収めて来たこの73kg級は「もはや直接対決で白黒をつけるしかない」という、数少ない、最終選考会としての選抜体重別の開催意義がある階級であった。しかし結果的には選考における決定的な材料として必要だったはずの世界王者による直接対決は1試合もなし。むしろ、世界大会に向けて調整するべき代表候補たちが、「一刀を浴びせる」ことだけを目標に立ち向かってくるノープレッシャーの選手に食われ、傷を負い、心理的負担を大きくするという選抜体重別が抱えてきた負の側面が存分に表れた階級となってしまった。

世界選手権代表にはまず中矢力、全日本選手権後の最終選考で「2枠目」として大野将平が選出されたが、この間彼らが戦った葛藤、懊悩いかばかりか。改めて、選抜体重別を最終選考会とする長年続いた「慣習」とIJFフォーマットに則らねばならない五輪代表選出方式を両立させるという矛盾、デメリットが浮き彫りとなった階級であった。

入賞者と橋本、秋本、中矢、大野の各選手のコメント、全試合の結果は下記。

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優勝の橋本壮市

【入賞者】

優 勝:橋本壮市(パーク24)
準優勝:土井健史(ダイコロ)

橋本壮市選手のコメント
「大学生の頃から、先輩たちは凄いのに自分が何をやっているんだ、とずっと思って来ました。やっと勝ててとてもうれしいです。今日は60kg級、66kg級とパーク24の選手が勝って、最後に自分が負けるわけにはいかなかったので凄いプレッシャーでした。これからは目の前の試合を一つ一つしっかり勝っていきたい」

秋本啓之選手のコメント
「残念です。相手の柔道に合わせてしまいました。相手の方がしっかり研究して来ていましたし、その中で二つしっかり持てなかった。次に繋がらない結果だと思います。結果を受け止めて、しっかり次を考えたい」

大野将平選手のコメント
「悔しいです。持ち味を殺された。相手を捕まえられなかった。序盤にポイントを取られて、冷静に取り返そうとしたが出来なかった。勝ち続けてこそチャンピオンなので、自分は甘いし、まだまだ弱いです。自分の柔道を考え直したい。(対戦相手の対策はやっているか?)相手の研究はほとんどやっていません。自分の良いところを出して相手の良いところを封じる、自分を高めることで勝利したいと思っています」


【一回戦】

中矢力(ALSOK)○合技[内股・袈裟固](3:48)△西岡和志(京葉ガス)
土井健史(ダイコロ)○背負投(0:07)△西山雄希(了徳寺学園職)
橋本壮市(パーク24)○優勢[有効・大外刈]△秋本啓之(了徳寺学園職)
大野将平(旭化成)○優勢[有効・内股]△中村剛教(大阪府警)

【準決勝】

土井健史○優勢[有効・出足払]△中矢力
橋本壮市○優勢[有効・大外落]△大野将平

【決勝】

橋本壮市○GS指導3(GS1:07)△土井健史

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