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【ROAD TO 高校選手権】第28回松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会マッチレポート②準決勝~決勝

(2014年12月29日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版12月29日掲載記事より転載・編集しています。
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②準決勝~決勝
【ROAD TO 高校選手権】第28回松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会マッチレポート
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準決勝、修徳の先鋒佐々木和也が作陽・安田夢飛から大外刈「一本」

■準決勝

修徳高 ②代-2 作陽高
(先)佐々木和也○大外刈(1:07)△安田夢飛
(次)佐藤竜○優勢[技有・背負投]△義見祐太
(中)室和樹△上四方固(2:39)○星野太駆
(副)福田宝×引分×田村淑真
(大)増山香輔△優勢[技有・小外掛]○岩崎恒紀
(代)佐藤竜○GS技有・肩車(GS5:08)△田村淑真

ともに育成力の高さとチーム作りの上手さが売りの両校、新チームによる初対決。

先鋒戦は修徳・佐々木和也が右相四つの安田夢飛に対し鋭い右大内刈と右小内刈で楔を入れると間髪入れずに右大外刈の大技。その思い切りの良さ自体が武器になるような気風のいい一撃に安田は受けた瞬間真裏に崩れ、1分7秒「一本」で試合終了。修徳がまず1点を先制。

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佐藤竜が義見祐太から背負投「技有」

次鋒戦も修徳のエース佐藤竜が背負投と、あたかもその背負投が手順の一手目であるかのような寝技の攻撃を繰り広げて攻勢権確保。1分4秒にひときわ深く入り込んだ右背負投で「技有」を奪って優勢勝ち。

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星野太駆が室和樹の巻き込みを抱き込んで返し「有効」

この時点で2-0、中堅戦を引き分ければほぼほぼ修徳の勝利確定という状況だが、この試合は星野太駆が右相四つの室和樹に対して一貫して組み手を支配。しかしなかなか具体的な技が出ず、組み勝つが勝負に行けない星野、巻き込みで展開を切ることを続ける室という状況の膠着が続く。互いの手の内を良く知る両指揮官も「来たら切り返せよ」(修徳・大森淳司監督)、「やれるな?」(作陽高・川野一道監督)と自軍の選手に声を掛けつつ相手を牽制。

2分15秒、星野が組み勝ったところで我慢できなくなった室が耐えきれず払巻込。星野待ち構えて首を抱えこむように制して返し「有効」奪取、そのまま崩上四方固に抑え込んで一本勝ち。作陽が1点を返して希望をつなぐ。

副将戦は福田宝の右袖釣込腰を田村淑真が左内股で切り返すというケンカ四つの攻防が続く。体格に勝る田村がペースを掴みかけたところでタイムアップとなりこ、の試合は引き分け。

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岩崎恒紀が増山香輔から大外刈でまず「有効」奪取

2-1、修徳リードで迎えた大将戦は作陽・岩崎恒紀が開始早々にケンケンの右大外刈を刈りこんで「有効」奪取。その後は動的膠着が続いたが、残り1分を超えたところで岩崎が引き手を抱き込むとこれまで前に重心を掛けて頑張っていた増山突如下がり、岩崎この機に乗じて右小外刈を撃ち込んで「技有」を奪う。
残り数秒、後のなくなった増山が遮二無二抱き着くが岩崎呼び込んで思い切り内股で放る。「一本」かと思われたがこれは終了ブザーの後と判断されノーポイント。岩崎の「技有」優勢による勝利で大将戦は終了。

スコア2-2、内容差もつかずこの試合は代表者1名による決定戦(GSのみ)に持ち込まれる。

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田村が押し込んで決めにかかったところを、ほとんど尻餅をつく寸前だった佐藤は踏み止まって肩車に呼び込み「技有」

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代表戦は修徳・佐藤竜が右、作陽・田村淑真が左組みのケンカ四つ。
体格に勝る田村が主導権を握り続けて鋭い左内股で攻め込むが佐藤はことごとく透かして、自身は肘をたたんでの右背負投で攻める。1分40秒過ぎには田村が組み際の「韓国背負い」、さらに左大外刈から内股と技を繋いで良い場面を作る。

佐藤の際の強さを良く知る田村は安易に体を捨てることをせず、しっかりしたフォームの技出しを続ける。確実にフィニッシュできる体勢、ここぞというところに至るまでは決して冒険をせず、かつそのタイミングを探るかのように取り味のある技を連発する田村のクレバーな戦いぶりに佐藤はなかなか隙を見いだせない。

2分30秒過ぎに田村が左内股。さすがに捕まえたと判断したかもろとも飛んで空中で高く脚をさし上げるが、佐藤はなんとこれも自身空中に浮きながら体を捌いて透かし両者落下。あわや佐藤のポイントというところで「待て」。この際の強さが無言の圧力となり、田村はさらにフィニッシュに慎重にならざるを得ない。

4分35秒、一計を案じた田村がこれまでと逆の右大外刈。佐藤捕まり掛けるが凌ぎ切り「待て」。

直後、佐藤が思い切り支釣込足。田村これをタイミング良く押し込み返す。呼び込みこそ甘いがいわゆる「ナオスペ(高藤直寿スペシャル)」の形のこの切り返しに佐藤、後方に大きく体勢を崩す。

誰もがこれはさすがに決まったと思う決定的なチャンス。これまで我慢に我慢を重ねた田村もここぞとばかりに突進するが、なんといったん両足が畳から浮いた佐藤は片膝をついて崩れながら尻もちをつく直前に踏みとどまりその田村の突進を迎え入れて肩に担ぐ。田村が警戒に警戒を重ねていたはずの佐藤の「際の強さ」の真骨頂、この異次元の切り返しにさすがに田村も体を残せずこれは肩車「技有」となる。

熱戦5分8秒で試合は終了。佐藤の驚異的な技一撃で修徳は2年連続の決勝進出決定。

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作陽高。この日は中国新人大会で敗れた崇徳高を倒しベスト4に食い込んだ

修徳はミスも、長所もともにさらけ出しながらそれでもしぶとく生き残ったといういかにもこのチームらしい試合ぶりでの勝利決定。

敗れた作陽。今代は小粒の評価否めず、かつ負傷で主戦2人が離脱中。「(早い段階で負けると思ったので)実は昨日の夕方も今朝もガッチリ稽古をしてきたんです」と川野監督自らが明かす、まだ育成の端緒の段階のはずのチームがこの日はまるでインターハイ直前のようなキリリと巻き上がった試合を披露、松尾杯というビッグゲームで3位入賞という好成績を得るに至った。「昨日までとは違うチーム。今日、強くなったんですよ」と川野監督は驚きの表情を隠さず、冬季の関東遠征はこの時点で既に手応え十分という様子だった。

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米山魁人は体格差をものともせず、長井達也から左内股で「技有」「有効」と連取

日体荏原高 - 国士舘高
(先)長井達也 - 米山魁人
(次)長井晃志 - 田嶋剛希
(中)藤原崇太郎 - (棄権)
(副)松井海斗 - 河田闘志
(大)東部雄大 - 竹村昂大

事実上の決勝とも目される東京勢対決。
主力3枚を帯同せず、さらにこの日起用予定の1枚を失った国士舘の陣容を見渡すと、この時点でレギュラーが確定しているのは大将の竹村昂大のみ。あとは「残り1枠」を争う選手でチームを構成している。「名前」で言えば中学カテゴリの優勝経験者をズラリと並べた日体荏原のほうが遥かに上だ。

が、この前提条件は日体荏原にとってはなかなかに辛いもの。しっかり勝って当然、もし苦戦するようなら勝利しても上積み出来るものが少ないという足し算要素の少ないゲーム。1月末に控える東京都予選に向けて試合場外に控える国士舘のレギュラー陣に圧を掛けるには圧勝するしかなく、そこまでを以て「成功」と考えるならばミッションの難易度は非常に高い。

レギュラー格同士が戦う大将戦はともかく、自軍のエース格が敵方のバイプレイヤーと戦う先鋒戦と副将戦、チーム内での序列が近い次鋒戦はしっかり勝っておきたいところ。

ところが先鋒戦。国士舘の米山魁人は体格において遥かに上の長井達也に対してむしろ余裕を持って試合を展開。ケンカ四つで自身より身長が高い長井に対して釣り手を上から叩いて背中を抱え、相手の腕を殺すと1分26秒に相手を外側で回しこむ左内股。頭を下げられた長井あっさり転がり「技有」。

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長井が腕挫十字固を狙う。この攻防は「一本」に終着

直後長井に「指導1」。米山続く展開でも全く同じ形からの左内股で再び長井を転がし「有効」奪取。さらに縦四方固、腕挫十字固と上から目線の寝技を展開するが長井なんとか逃れて「待て」。米山、大量リード。

しかし長井は残り1分を過ぎてから右内股に組み手の逆の左への外巻込となりふり構わず攻め始め、組み合っては両襟で圧を掛け、ジワジワと米山を追い詰めに掛かる。

残り時間が15秒を切ったところで、米山は両襟を嫌って切り、左内股に逃げる。ところが長井はこれを潰すと横四方固を狙い、次いで腕緘を試みる。パワー自慢の長井に絡みつかれた米山は立って逃れようとするが長井は下からの腕挫十字固に連絡してグイグイと拘束を強め、あくまで取りきる覚悟。残り時間の少なさを考えてしまったか米山は中途半端な体勢で耐えるミスを犯してしまい、残り6秒で完全に肘が極まる。米山たまらず「参った」を表明、長井が逆転の「一本」を得て日体荏原が1点を先制。

もし長井が不覚を取ることになればそのまま東京予選が事実上「終わった」ことにもなりかねなかった大ピンチ。長井が有り余るパワーを以てこれを無理やり収拾したという一番だった。

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田嶋剛希が長井晃志から引込返「技有」

というわけで最悪の事態を回避して先制点を挙げた日体荏原に対し、次鋒戦でまたもや強烈なパンチ一撃。開始38秒、国士舘の田嶋剛希が引込返一閃「技有」獲得。

というわけで最悪の事態を回避して先制点を挙げた日体荏原に対し、次鋒戦でまたもや強烈なパンチ一撃。開始38秒、国士舘の田嶋剛希が引込返一閃「技有」獲得。

もはや行くしかない長井晃志は組み際の右大外刈、さらにそのまま刈り足を深く畳に置いての右背負投と鋭い技を連発。一本背負投崩れに腕を抱えて、あるいは奥襟を叩いて、あるいは肩を押してと形を変えながら右大外刈を撃ち込み続ける。田嶋過剰に反応して場を温めてしまうことがないよう静かに対応を続け、残り43秒の時点での「指導2」までにその反撃を抑える。

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長井晃志が右一本背負投で「技有」を取り返す

しかしその直後、長井晃志は組み際に右一本背負投に飛び込んで「技有」奪取。この時点で攻撃ポイントはタイとなり、残った反則ポイント「2」差で長井がリードすることになる。田嶋一転運動量を増して反撃、左袖釣込腰で攻め込み3分44秒には縦回転に長井を転がすがポイントには至らず「待て」。そのままタイムアップとなり、日体荏原が2-0とリードを得ることとなった。

中堅戦は、本間を失った国士舘にバックアップの用意がなく、藤原崇太郎の不戦勝ち。この時点で日体荏原の勝利が確定。

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河田闘志が松井海斗から内股巻込「有効」

しかし敗戦確定で却って腹が据わったか、副将戦は河田闘志がケンカ四つの松井海斗に対しこれまでの煮え切らない試合ぶりが嘘のような攻撃的な試合を披露。右内股、右内股巻込で一方的に攻め、2分35秒にも思い切った右内股巻込。松井が突き落として逃れたかに思われたが河田倒れながら脚で松井を回し制して背中で押し込み「有効」を獲得。そのまま入り込んだ後袈裟固は松井が鉄砲返しで逃れたものの、以後ポイントは動かず。この試合は「有効」優勢で河田の勝利。

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東部雄大が左払腰「技有」で逆転に成功

そしてレギュラー同士の対戦となった大将戦は東部、竹村ともに左組みの相四つ。
開始からアグレッシブに攻め続ける東部は再三思い切り奥襟を叩く。竹村はこの叩くアクションに合わせた支釣込足で応戦。

1分28秒、竹村が左大外刈から左内股と技を繋ぐ。東部抱えて裏投を狙うが体勢を崩し、竹村相手を滑り落とすように小内刈でその上に被り「有効」奪取。

怒気を発した東部、思い切り奥襟を叩く。竹村はこれまでと同様に支釣込足を合わせるが東部そのタイミングを狙い済まして左払腰。片足になりかけていた竹村耐えきれず大きく崩れ、東部は膝を突きながら体落の形でフィニッシュ、竹村転がり「技有」。国士舘ベンチからは「なんで支えばっかり行くんだ!」と怒声一発。

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竹村昂大が「一本」を奪って乱戦に決着

竹村、この失点から逆に立ち直り厳しく試合を構成。残り41秒に左内股で「技有」を奪って逆転すると、最終盤には後のなくなった東部のメンタルの揺れに付けこみ支釣込足、崩れた東部が手をついて耐えると右大外刈の形で外脚を蹴り上げて決めをフォロー。残り0秒、この技が鮮やかに決まって「一本」。

ここで5戦が終了。最終スコアは3-2、日体荏原が決勝へと駒を進めることとなった。

日体荏原高 3-2 国士舘高
(先)長井達也○腕挫十字固(3:54)△米山魁人
(次)長井晃志○優勢[僅差]△田嶋剛希
(中)藤原崇太郎○不戦
(副)松井海斗△優勢[有効・払腰]○河田闘志
(大)東部雄大△支釣込脚(4:00)○竹村昂大

勝ったのは日体荏原だが、その結果に比して得たものは少ないという一番と評したい。

前半の3人で3点を奪取はした。が、まず先鋒戦と次鋒戦は相手がレギュラーの当落線上の選手で、かつ内容はほとんどの時間帯でビハインドを負い続けた末の逆転。そして中堅戦は勝利感の極めて少ない不戦勝。

日体荏原は3試合で3点を得たわけだが、この試合時間7分54秒のうち、ビハインドを追い掛けねばならない精神的に不利な状態は実に5分18秒、タイスコアであった時間は最初に失点するまでの1分26秒。おまけに3試合目は不戦勝ちで、本来12分あるはずの3試合をこなして、リードを得ていた時間はまこと僅少。これまで負け続けて来た王者に挑まねばならぬ立場、圧倒的な地力を示して王者にプレッシャーを掛けねばならぬ立場であるはずの日体荏原だが、3-0というスコアに比して国士舘に与えたダメージはまことに少ない。全くなかったと言ってもいいくらいだ。おまけに後半二戦は国士舘に連敗を喫して(しかも副将戦は中心選手が取られ、大将戦のレギュラー対決は逆転負けである)スコアを整えられてしまい「見た目」のアドバンテージまで失ってしまった。

むしろ補欠、あるいは当落線上の選手を使ってレギュラー格の3人にポイント失陥という「傷」をつけた国士舘の方が得たものは大きかった。国士舘は強い、やっぱりこちらが不利をかこちながら追い掛けねばならないという苦しい時間帯をタップリ味あわせたという点だけでも、十分この試合を戦った意義はあったはずだ。

勝った日体荏原に得るもの少なく、負けた国士舘の方が次戦に向けてプレッシャーを掛けることに成功したという、勝ち負けだけでは判断しがたい興味深い一番であった。


結果決まった決勝カードは、

修徳高 - 日体荏原高

となった。

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決勝が開始される

■決勝

修徳高 - 日体荏原高
(先)増山香輔 - 長井晃志
(次)福田宝 - 藤原崇太郎
(中)佐藤竜 - 長井達也
(副)室和樹 - 松井海斗
(大)佐々木和也 - 東部雄大

広がる戦線全てのポジションで、日体荏原が有利。取れるところを確実に取っていくだけで試合が成立してしまうはずの巨大戦力だ。次鋒戦、副将戦の勝利を織り込んだ上で、残りポジションのいずれかで得点の上積みを狙っていきたい。

修徳としては唯一ポイントゲッターとして通用するはずのエース佐藤竜でなんとか得点したいところだが、ここに長井達也がマッチアップしてしまった。担ぎ技が中心の佐藤は上位対戦においては相手が一定以上前のめりに「来てくれる」ことが勝負成立の絶対条件であり、無理やり自分の形を作って投げつけるタイプの選手ではない。周辺戦力での日体荏原優位が確定している中で長井が必要以上のリスクを負うとは思えず、さりとて剛力の巨漢長井を相手に無理やり取りに行くのは至難の技だ。事前に得点を織り込めるポジションはなく、チーム全体で長い防衛線を張りながらどこかで勝負に出て1点もぎ取り、そのまま試合を終わらせる以外に挑み方が考えられない。仕掛けるべきは先鋒戦、中堅戦、そして力関係を覆す切れ味のある一発を持った佐々木を送り込む大将戦。

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増山と長井が攻め合い先鋒戦は引き分け

1年生対決となった先鋒戦は修徳・増山香輔が左、日体荏原・長井晃志が右組みのケンカ四つ。修徳にとっては数少ない勝負ポジション。
増山は左小外刈に左大内刈、長井は右内股で攻め合うが引き手争いの時間が長く、双方なかなか取り味のある技を放つ形を作れない。
1分半過ぎから増山が両襟で圧を掛け、長井は一旦引き手争いにステージを戻すが前段の形が効いて増山が長井を追いこむことに成功、1分53秒長井に場外の「指導」。

奮起した長井は出足払に右背負投、右内股と放ち、2分50秒には鋭い出足払で相手を崩し、増山が反撃を試みた左大内刈も返し掛かるなど以後の時間帯は攻勢。どうしても得点が欲しい増山は残り20秒で腹をつけての抱分に打って出るがタイミングが外れて力を出し切れず自滅。そのままポイントの動きなく試合は終了し、先鋒戦は引き分け。

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藤原淡々と攻撃を重ね「指導」

次鋒戦は修徳・福田宝が右、藤原崇太郎が左組みのケンカ四つ。
福田は肘抜きの右背負投に右袖釣込腰で攻めるが藤原冷静に潰して揺るがず。1分8秒福田の右袖釣込腰が偽装攻撃と判断され福田に「指導」。攻め時と判断した藤原は左大外刈を2連発、さらに左内股と技を繋ぎ、1分37秒には福田に2つ目の「指導」が宣告される。

藤原は左腰車、さらに一方的に引き手の袖を支配すると釣り手を振り立てながら左体落に左内股と大技を撃ち込み続ける。福田はそのリアクションで右袖釣込腰、これはこの試合初めて取り味のあるタイミングで入って藤原を逆側に抜け落としたが主審は展開の推移を冷静に見極め、直後の2分32秒福田に「指導3」を宣告する。

藤原は以後も攻撃の手を緩めず、「出し投げ崩し」も織り交ぜながら福田に反撃の糸口すら与えない。結果「指導3」の優勢でこの試合は藤原が勝利することとなった。日体荏原、先制に成功。

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佐藤竜が左袖釣込腰、ここから右へ逃れた長井の腕を両手で拾って「有効」

中堅戦は修徳・佐藤竜、日体荏原・長井達也ともに右組みの相四つ。
佐藤は巴投から三角絞め、長井の釣り手をずらしておいての右大内刈、さらに左一本背負投で腹中に潜り込んでと組み合っての対話を拒否して猛攻。1分50秒には右背負投で背中に長井を載せる場面を作り上げ、長井に「指導1」。

直後の攻防、長井が釣り手を切り離そうとしたその際に合わせて佐藤が左袖釣込腰。長井は逆側に体を逃がして回避するが佐藤は膝を着きながら右横に抜けた長井の右腕を拾って引き落としこれは「有効」となる。経過時間は2分4秒、残り時間は1分56秒。

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長井、残り数秒で隅返を決め「有効」

奮起した長井は再開するなり迫力十分の右大外刈、佐藤なんとか回避して降り、組み手をやりなおしてワンハンドで一方的に引き手を確保して危機を逃れる。この技以後は長井なかなか見せ場を作れず、3分すぎには釣り手を持ちかえようとしたところを佐藤に右一本背負投に潜り込まれてしまう。

最終盤、佐藤が巴投。被った長井は関節技を狙うが佐藤十分警戒しており「待て」。
この時点で残り時間は15秒。ついに修徳ベンチから佐藤に「もう(行かなくて)いい」の声が飛ぶ。

ところがこの声が佐藤の組み手の管理を甘くしたか、長井に上から帯を与える失策。佐藤過剰に反応せず距離を調整しながら長井の技を注視。長井に間合いを調整させて時間を消費させ、その上で技種を見極めてインパクトをずらすか、技の際に隙間を作って回避しようと狙ったであろうこの行動だが、長井はその駆け引きに乗らず遮二無二隅返。思った以上に長井の体の力が強かったか、まっすぐその力を受けてしまった佐藤たまらず体側から畳に落ちてこれは「有効」。

ポイント宣告と同時に終了ブザーが鳴り響き、試合終了。残り0秒で長井が追いつき、この試合は引き分けに終わった。

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松井はあっという間の縦四方固で一本勝ち

副将戦は修徳・室和樹が右、松井海斗が左組みのケンカ四つ。
開始30秒を過ぎ、室が内股巻込。松井潰して相手の背につくと、「足三角」で相手の脚を纏めてめくり返して縦四方固。47秒「一本」宣告に至る。松井最初の攻防で、それも足三角という上から目線の技術で試合を終わらせ余裕の勝利。2-0、この時点で日体荏原の勝利決定。

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東部の鮮やかな左足車「一本」

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大将戦は修徳・佐々木和也が右組み、日体荏原・東部雄大が左組みのケンカ四つ。
東部得意の二段小外刈を中心に試合を組み立て、36秒佐々木に場外の「指導」、さらに1分7秒佐々木に2つ目の「指導」宣告。

リードを確定させた東部が1分48秒に動く。ツイと作用足を伸ばして佐々木の膝を固定すると前に引きずり出しながら左足車一閃。前のめりのまま体を固定された佐々木に体を残す材料は残されておらず、この技は鮮やかに決まって「一本」。

最終スコア3-0。圧勝で日体荏原高が松尾三郎杯初優勝を決めた。


【決勝】

日体荏原高 3-0 修徳高
(先)長井晃志×引分×増山香輔
(次)藤原崇太郎○優勢[僅差]△福田宝
(中)長井達也×引分×佐藤竜
(副)松井海斗○縦四方固(0:47)△室和樹
(大)東部雄大○足車(1:48)△佐々木和也

日体荏原が順当に力を示した試合。長井が佐藤に取られる場面はあったが準決勝に続いてこの試合も力技で事態を収拾、無失点で前年度高校二冠の修徳を下すに至った。

というわけで、日体荏原がその豪華陣容にふさわしく松尾杯というビッグタイトルを得るに至ったこの大会。高校選手権に向けて、頂点を争うにふさわしい地力の高さを改めて証明した大会と見出しをつけて良いかと思われる。長井達也がその膂力の出口として関節技という新境地を見出して取り味を上げていること、長井晃志というおそらくは上位対戦でもしっかり仕事の出来るタイプの新戦力の参加と上向きの材料もある。

ただし準決勝の項で指摘した通り、対国士舘という一点で考える限り上積みの少ない大会でもあった。戦略的にも戦術的にもチームとしての戦い方がいまひとつ一貫していない印象があり、これぞという決め所の「際」に対してチームとしてアプローチしている影が見出しにくい。抜け目のなさが売りの国士舘の、主力以外の周辺戦力に取って取られての接戦を演じてしまった因はまさしくこのあたりにある。この陣容にふさわしい成果は日本一しかありえず、そして優勝候補筆頭として世代を快走する国士舘を倒さぬ限り日本一はありえない。強いチームであるのは間違いないがそこまで目線を上げて考えるとその展望は少々厳しいと言わざるを得ない。

小久保純史監督は戦後、「スター軍団を率いてプレッシャーはないか」との質問に「いや、スター軍団は国士舘さんですから」と当然ながら謙遜して見せたが、実は、まずは自軍が優勝して然るべき、中学時代のスター軍団であることを認め、これを前提条件にすべてを組み立てることが、勝利への条件ではないだろうか。
巨大戦力を保有し、かつ戦術性と育成能力の高い国士舘に勝利するには挑んで、競り合おうとするアプローチでは逆に厳しい。戦略性戦術性に長けた国士舘と、その部分に難がある日体荏原。競ろう、競り勝とうとするアプローチはそのまま相手が得意とする土俵に自ら乗るという行為に他ならない。日体荏原のストロングポイントを生かすには実は圧倒的な地力と力、上から目線で戦えるだけの実力を養い、「圧勝しようとすること」こそが結果として国士舘を凌ぐ道なのではないだろうか。

松井海斗、長井達也、東部雄大、藤原崇太郎を擁して小野中学校が全国中学大会を制した際、決勝の国士舘戦のスコアは4-1であった。松井は河田に「指導2」優勢、東部は磯村に大内刈「技有」、一学年下の藤原は川脇翼に「有効」優勢、そして長井達也は開始38秒の内股「一本」で山田伊織を屠っている。 あの時の小野中の、大勝せずば勝利もまた無しとの覚悟溢れる試合ぶりは、前年圧倒的な優勝候補に挙げられながら国士舘フィールドの接戦に持ち込まれて勝利を逸した苦い経験にあったのではないか。

あの圧倒的な力を示し「日本の宝」とまで評する声のあった小野中の主戦がまるごと東京の日体荏原高に進学したのは柔道界の大きな事件であった。そして残念ながら、率直に言って以後彼らが中学時代の輝きにふさわしい結果と内容を残しているとは評しがたい状況にある。中学時代に見せた長井の鉈で断ち割るような重い技、松井の閃光のような内股、藤原のバネだけで相手を吹っ飛ばすような一撃、彼らの素質は明らかだ。過去の姿を追い求めることは必ずしも正解とは限らないが、あの「圧勝しかない」という上から目線、その姿勢と精神を思い出すことは現在何より必要なことではないだろうか。他チームにとっても、圧勝志向の日体荏原と競り合おうとしてくる日体荏原では恐怖感が全く違うはずだ。前者は怖いが、後者は上位対戦校にとっては、おそらく、さほど、怖くないのではないか。

とまれ、日体荏原が、頭一つ抜けた存在の国士舘を追撃し得る数少ないチームであることは間違いない。高校3年間で選手が東京地区スケールにダウンサイズされてしまうことも多かった日体荏原だが、今年こそは一段違う力と結果を見せてもらいたいところだ。以後の健闘と成長に期待したい。

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優勝の日体荏原高。高校選手権では優勝候補の一角

【入賞者】

優 勝:日体荏原高
準優勝:修徳高
第三位:国士舘高、作陽高

優秀選手:長井達也、長井晃志(日体荏原高)、佐々木和也(修徳高)、星野太駆(作陽高)、河田闘志(国士舘高)

日体荏原高・小久保純史監督のコメント
「試合には勝ちましたが、結構取り逃したりしているし逆転も多い。全体に集中力に欠けていた。まだまだ未完成なのでそういうところが出てしまいますし、安定したチームとは言えないと思います。握りが甘く、せっかく持った組み手を切られてしまって良い組み手でいられる時間が少ない。残った時間は多くはありませんが、そこを課題にしっかりやっていきたい。(スター軍団を率いてプレッシャーはありませんか?)いえ、スター軍団は国士舘さんですから。東京予選は激戦ですが、日本一のチームと対戦するのでそこが目安になると思います。何を言われようが勝つしかありません。もちろん目標は日本一です」

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