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順風背に受け王者海老沼も打倒、高校2年生阿部一二三が見事優勝・グランドスラム東京66kg級レポート

(2014年12月19日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版12月19日掲載記事より転載・編集しています。
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順風背に受け王者海老沼も打倒、高校2年生阿部一二三が見事優勝
グランドスラム東京66kg級レポート
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ダバドルジ・ツムルクフレグはエリオ・ヴェルデに絞め落とされて初戦敗退、期待された阿部一二三との対戦は実現せず

優勝候補と目されたダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)とチャールス・チバナ(ブラジル)の2人、そしてアジア大会銀メダリストの高上智史が初戦敗退という波乱の幕開け。

アジア大会を圧勝で制したばかりのダバドルジはもと60kg級の強豪エリオ・ヴェルデ(イタリア)から3つの「指導」を奪って危なげない展開と思われたが、試合終了直前に送襟絞で絞め落とされてよもやの逆転負け。次戦に控える阿部一二三戦を待たずにあっという間にトーナメントから姿を消すこととなってしまい、息を吹き返すと畳の上でしばし呆然。

チバナは遥かに格下のアドリアン・ゴムボツ(スロベニア)に「指導1」をリードした残り51秒に払巻込を食ってあっさり一本負け。突如不調に陥った8月の世界選手権での汚名を払拭出来ないまま畳を去ることとなった。

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アジア大会代表の高上智史はゴラン・ポラックの肩車を食って初戦敗退

高上は中堅選手のゴラン・ポラック(イスラエル)に僅か58秒の肩車「一本」で敗れ、見せ場のないままトーナメント脱落。アジア大会での金メダル奪取失敗に捲土重来を期すべき講道館杯でのダイレクト反則負けによる意外な敗退と代表争いから一歩後退した中で迎えたこの大会であったが、踏ん張りが効かないまま3大会連続のミッション失敗という極めて厳しい結果で2014年度シーズンを終えることとなってしまった。

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阿部がヴェルデを両袖の右大外刈「一本」で畳に沈める

そんな中、高校2年生で講道館杯を制したばかりの新星・阿部一二三が着々とトーナメントを勝ち上がる。2回戦はアロンソ・ウォン(ペルー)を背負投と横四方固の合技「一本」(2:14)であっさり片づけシニア国際大会初勝利。柔道スタイル的にもっとも厳しいと思われた難敵ダバドルジとのマッチアップが予想された3回戦はエリオ・ヴェルデ(イタリア)との対戦となり、得意の両袖からの右大外刈で畳に埋めて一本勝ち(2:38)。

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阿部が世界選手権銅メダリストのザンタライアから右小外刈「技有」

そして迎えた世界選手権3位のゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)との準々決勝は左組みのザンタライアのクロス組み手を右背負投でブレイクし続けて拮抗を確保。残り1分を切ったところで放った右大腰をザンタライア得意の後方宙返りで返されて抑え込まれるピンチに陥ったが、これも数秒で脱出。そして、この攻防の余韻冷めやらぬ中で宣された「始め」の声とともに食いついて右小外刈を打ち込み見事「技有」を獲得、堂々この大一番を勝ち抜くこととなった。

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海老沼匡がアン・バウルに隅返、そのまま流れるように縦四方固へ移行

事実上の決勝と目された準決勝では世界選手権3連覇中の海老沼匡とマッチアップ。この日の海老沼は2回戦でチャン・ミンチエ(台湾)を内股「一本」(2:47)、3回戦でアレクサンドル・ベタ(ポーランド)を崩上四方固「有効」に背負投「一本」(2:48)、準々決勝で韓国のジュニア王者アン・バウルを隅返と縦四方固の合技「一本」(2:41)と3連続一本勝ちとここまで順調な結果は残しているものの、いずれも格下の相手に対して初戦は「指導2」、3回戦は袖釣込腰「有効」を失うなど少々集中力を欠く勝ち上がり。

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海老沼は阿部の右内股を釣り手側に体を捨ててめくり返し「有効」先制

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阿部が右大腰で攻めてペースを掴む。海老沼は頭を支点に回転し必死の防戦

この準決勝は阿部が右、海老沼が左組みのケンカ四つ。開始早々の29秒に阿部が相手の首を抱えての右内股を放つが、海老沼は釣り手側に阿部をめくり返して内股返「有効」を先制。

やはり海老沼の方が一段上かと思われた展開だが、ビハインドを負った阿部は却って攻撃姿勢を加速。組み立てのミスによって47秒に「極端な防御姿勢」で「指導1」を食ったものの、以降は肘抜きの右背負投で度々攻め込み、1分10秒には海老沼の左内股を透かし掛けて場内を大いに沸かす。
2分には思い切った右大腰、海老沼は着地ギリギリで腹這いとなってノーポイントだったが明らかにこの攻防に感触を得た阿部は脇、奥と釣り手を深く入れ続けてジリジリと攻勢権を確保。2分32秒には釣り手一本で前に出続けた海老沼に「指導1」、同時に阿部に片襟の「指導2」が与えられる。ポイント上のリードは海老沼だが、試合の流れは明らかに阿部。

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海老沼の裏投を阿部が右足を差し入れながら浴びせ返し「技有」。

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残り1分を切ったところで阿部が釣り手を肩越しに入れて圧力。海老沼は我慢出来ずに背中に食いつきながら裏投に打って出る。
体を捨てるのが早い海老沼の釣り手がずり落ち、相手との間に隙間が出来る。阿部は海老沼から体を横移動で遠ざけながらこの隙間を利して右足をネジ入れ、思い切りその上に被って大内刈「技有」。経過時間は4分14秒、残り時間は46秒。

逆転を許した海老沼は激しく前に出るがなかなか自身の技を繰り出せる姿勢を作り出せない。ようやく残り9秒で思い切った左内股を放つが阿部は耐えきり、「待て」。そのまま「技有」優勢で阿部の勝利が決まった。

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準決勝、ポラックがプルヤエフの肩車を押しつぶして縦四方固へ移行

阿部の決勝の相手は初戦(2回戦)で高上を破ったポラック。3回戦はフェルナンド・ゴンザレス(アルゼンチン)に2つの「有効」を失いながらも浮落「技有」、大内刈「一本」(4:51)と連取して競り勝ち、準々決勝はチバナ敗退で大混乱となったブロックから勝ち上がって来たダークホースのヴァズハ・マグベラシビリ(グルジア)を大内返「技有」、腕挫十字固「一本」(1:21)で退けてベスト4入り。敗退必至と思われたミハエル・プルヤエフ(ロシア)との準決勝はプルヤエフの肩車を潰したところに体勢がガッチリ噛み合い、そのまま縦四方固で抑え込んでまさかの「一本」(3:43)奪取でアップセット完成。キャリア初のグランドスラム大会決勝へと駒を進めることとなった。

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阿部はポラックの中途半端な右大外刈を見逃さず、引き起こし返して「有効」奪取

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決勝は阿部、ポラックともに右組みの相四つ。
圧力を掛けながら右小内刈、右大内刈で攻める阿部の攻撃をポラックは左への横落でいなし続ける。
しかし2分43秒、阿部が引き手を先に持つとそのプレッシャーに耐えかねたポラックは中途半端な組み手のまま強引に右大外刈。阿部が揺るがぬと感じるや引き手を畳に着いて回り伏せようと試みるが、阿部はこの回避行動を許さず。得たりとばかりに釣り手で肩を押し込み、強引に刈り返して大外返「有効」奪取。

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阿部が大内刈でポラックを激しく追い、アドボードに接触しながら袈裟固に抑え込む

力勝負で完敗したポラックは以後腰を引いて、攻めに出ることが出来ない。もはや余裕すら見える阿部は2分13秒に釣り手を叩き入れながらの右大内刈、背中から落ちてバウンドしたポラックが場外のアドボードに激突するところまで追って投げ切り、すかさず袈裟固に抑え込むがこれは「待て」。

以後もペースは完全に阿部。ポラックが奥襟を叩くことに成功した1シークエンスのみ「極端な防御姿勢」での「指導」を食ったが、大枠危なげなく試合を進めてタイムアップの声を聞く。阿部、「有効」優勢でこの試合に勝利して高校2年生でグランドスラム制覇という偉業を成し遂げた。

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高校2年生でグランドスラム東京制覇という偉業を成し遂げた阿部一二三

もっとも面倒であるはずのダバドルジが早々に敗れ、名前のあるザンタライアは連戦の疲労でパフォーマンス下降中、そして極め付けとして決勝の相手はまさかのダークホース、ポラック。これぞというシニアの刺客と実は1人しか対戦のなかった講道館杯同様、確かに運には恵まれていた。

しかしその「風」に乗ることも間違いなく才能。なにより高校2年生が、それも世界王者海老沼を堂々投げて倒してのグランドスラム制覇を成し遂げたというこの結果はやはり普通ではない。

巷間騒がれる体幹の強さはもちろんだが、その自身最大のストロングポイントを生かすべく近距離からの「肩越し」「脇差し」、間合いを取って(あるいは相手が自身のパワーを回避すべく釣り手を殺してきた場合)は「両袖」と、自身のスタイルに頻出する状況を起点とした技を複数作り込んで来ている戦略性の高さが何よりの勝利の因。世界ジュニア決勝で起こした「投げたのに抑え切らずに逆転を許す」ミスを次戦以降しっかり修正するなど、経験を即座に生かす対応能力の高さも買いだ。

そして講道館杯とグランドスラムに勝つことでしかリオ五輪レースに参加出来ないというこのギリギリの状況にあって、2大会連続で吹いた「順風」。今のところこの人には勝利の神が味方していることは間違いない。突き抜けるべきときに突き抜けてしまえることがこの世界の出世の第一条件であり、その視点から見れば阿部はまさしく十年に一人の逸材。

クロス組み手を背負投で無力化するという答えは一つ見せたものの、スタイル的に近いグルジア、モンゴル勢との対戦でこの先どのような試合を見せるのか。起点の形と繰り出す技の関係が比較的ハッキリしている中で、研究を受けてなおこの力が出し切れるのか、と見守るべき点はまだまだ多いが、そもそも高校2年生がこのような評価の俎上に上がってくる時点で異次元。今後に関してはまことに楽しみと評するしかない。

負けた海老沼は「勝つために一生懸命になりきれない日だった。振り返って見ると自分が負けたがっていたところがある」と涙を見せながらコメント。「今日1日が無駄ではなかったと思いたい」と必死に前を見据えていた。

入賞者、阿部と海老沼のコメント、日本選手の成績と勝ち上がり詳細、準々決勝以降の結果は下記。

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66kg級入賞者。左からポラック、阿部、プルヤエフ、高市。

【入賞者】

1.ABE, Hifumi(JPN)
2.POLLACK, Golan(ISR)
3.PULYAEV, Mikhail(RUS)
3.TAKAICHI, Kengo(JPN)
5.AN, Baul(KOR)
5.EBINUMA, Masashi(JPN)
7.MARGVELASHVILI, Vazha(GEO)
7.ZANTARAIA, Georgii(UKR)

阿部一二三選手のコメント
「世界ジュニアの失敗を生かして落ち着いて戦えたと思います。まだあまり優勝の実感がないけど、とてもうれしい。準々決勝(ザンタライア)は強いと思ったし、投げたはずが抑え込まれてちょっと驚きました。ただ、組み手もしっかり出来ていたし通用するなという感触はあった。準決勝(海老沼戦)は前半に様子を見たり、組み手で相手に合せてしまってポイントを取られた。組み手も上手いし力も強いし、取られた時は正直『無理かな』と思ったけど、そこで自分の良いところ、思い切って前に出る柔道をしようと切り替えました。相手が嫌がっているのがわかったし、圧が掛かっているなと思えたし、何よりやっぱり前に出たことが結果に繋がったと思います。1回勝っただけでは『たまたま』になってしまうので次が大事。選抜も勝ちたいです。」

海老沼匡選手のコメント
「1日、自分の柔道が出来ていなかった。1回戦から苦しくて苦しくて、自分の口からこんなことは言いたくないけど今日1日は柔道が嫌いでした。頭でっかちというか筋肉バカというか、考えるより先に体が動いてしまって、考える柔道が出来ていなかった。メダルに届く稽古をしてきたつもりだったが、中身がなかった。振り返って見ると自分が『負けたがっていた』ところがある。勝つために一生懸命になれなかった。3位決定戦は力が抜けて試合が出来、良い柔道になってきたので今日1日は無駄ではなかったと思いたいです」

【成績上位者】
優 勝:阿部一二三
準優勝:ゴラン・ポラック(イスラエル)
第三位:高市賢悟、ミハエル・プルヤエフ(ロシア)

【日本選手成績】

阿部一二三(神港学園神港高2年) 優勝
高市賢悟(東海大3年) 3位
海老沼匡(パーク24) 5位
高上智史(旭化成) 2回戦敗退

【日本選手勝ち上がり】(~3回戦)

[2回戦]

海老沼匡○内股(2:47)△チャン・ミンチエ(台湾)
阿部一二三○合技[背負投・横四方固]△アロンソ・ウォン(ペルー)
高上智史△肩車(0:58)○ゴラン・ポラック(イスラエル)
高市賢悟○優勢[有効・背負投]△マー・ドゥアンビン(中国)

[3回戦]

海老沼匡○背負投(2:48)△アレクサンドル・ベタ(ポーランド)
阿部一二三○大外刈(2:38)△エリオ・ヴェルデ(イタリア)
高市賢悟○優勢[指導3]△コリン・オーツ(イギリス)

【準々決勝】

海老沼匡○合技[隅返・縦四方固]△アン・バウル(韓国)
阿部一二三○優勢[技有・大内刈]△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
ゴラン・ポラック(イスラエル)○腕挫十字固(1:21)△ヴァズハ・マグベラシビリ(グルジア)
ミハエル・プルヤエフ(ロシア)○後袈裟固(4:55)△高市賢悟

【敗者復活戦】

アン・バウル(韓国)○合技[背負投・背負投]△ミハエル・プルヤエフ(ロシア)
高市賢悟○合技[内股・縦四方固](0:35)△ヴァズハ・マグベラシビリ(グルジア)

【準決勝】

阿部一二三○優勢[技有・大内刈]△海老沼匡
ゴラン・ポラック(イスラエル)○縦四方固(3:43)△ミハエル・プルヤエフ(ロシア)

【3位決定戦】

ミハエル・プルヤエフ(ロシア)○優勢[技有・大外刈]△アン・バウル(韓国)
高市賢悟○横四方固(4:47)△海老沼匡

【決勝】

阿部一二三○優勢[有効・大外返]△ゴラン・ポラック(イスラエル)

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