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日本が金メダル獲得、上位は東アジア勢が占める・アジア大会女子団体戦レポート

(2014年10月3日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版10月3日掲載記事より転載・編集しています。
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日本が金メダル獲得、上位は東アジア勢が占める
アジア大会女子団体戦レポート
【準々決勝】

韓国 5-0 北朝鮮
[52kg級]ジュン・ユンジュン○GS有効・腰車(GS0:51)△キム・ソルミ
[57kg級]キム・ジャンディ○GS有効・外巻込(GS2:05)△リ・チャンゴク
[63kg級]ジョン・ダウン○GS有効・大腰(GS4:45)△キム・スギョン
[70kg級]キム・センヨン○優勢[有効]△キム・ジョンスン
[70kg超級]イ・ジュンギュン○優勢[有効]△ソル・キョン

互いに背負うものが大きすぎる、負けるわけにはいかない南北対決。
最終スコアこそ5-0だが、その結果だけでは様相が見えない大熱戦。互いに組み手争いに混ぜ込んだ殴り合いを辞さず、52kg級枠、57kg級枠の試合はまるでボクシング。突発事態の収拾能力に明らかに欠けるアジア大会仕様の審判団はもはや「勝手にやってくれ」とでもばかりに介入を行わず畳の上は無法地帯。3戦連続のGS延長戦、63kg級枠では本戦と合せて10分近くを戦う競り合いの末に残った結果は地力に勝る韓国の3連勝。最終戦は昨年の78kg級世界選手権覇者ソル・キョンを、キム・ユンキョンに個人戦代表を譲った13年78kg超級世界選手権銅メダリストイ・ジュンギュンが回転式の右払腰で吹っ飛ばして「有効」奪取の優勢勝ち。地元韓国が圧勝で準々決勝進出を決めた。


日本 4-1 中国
[52kg級]中村美里○優勢[指導2]△マー・インナン
[57kg級]山本杏○小内刈(3:51)△ゾウ・イン
[63kg級]阿部香菜○優勢[指導2]△ヤン・ジュインシア
[70kg級]新井千鶴△優勢[指導1]○チェン・フェイ
[70kg超級]稲森奈見○優勢[指導1]△マー・シーシ

日本の初戦の相手は中国。
63kg級枠の阿部はヤン、70kg超級枠の稲森はマーとそれぞれ個人戦で敗れている相手との再マッチアップがあり、70kg枠の新井も強豪チェン・フェイが相手。となると日本の勝利には個人戦を圧勝で制している前衛2枚の活躍が不可欠。

そんな中、52kg級枠の中村は左大内刈、左小外刈で強豪マーを粛々と追い詰め、1分57秒と3分48秒に「指導」を得て手堅く勝利。57kg級枠の山本は中盤に肩固で「有効」を得てこれも手堅く試合を進めると残り9秒で鋭い左小内刈を決めて一本勝ち。

頼れる2枚の連勝で優位に立った日本は、63kg級の阿部が個人戦でまさかの敗退(横車「有効」)を喫したヤン・ジュンインシアとの再戦に挑む。袖を押し込んで早々に左背負投の先手攻撃に打って出るという前戦同様のヤンの作戦に対して阿部は明確な対策を打ち出すことが出来ず、2分37秒双方に「指導1」。しかし残り時間がほとんどなくなったところでヤンにのみ2つ目の「指導」が与えられて阿部の優勢勝ち、そして日本チームの勝利も決定。

70kg級枠の新井千鶴は前日決勝での衝撃的な負けの余韻から立ち直っていないのか、個人戦準決勝での勝利も含め過去2勝しているチェン・フェイを相手に足元の定まらぬ試合。チェン唯一の武器である外巻込を怖れたのか腰を引いて構え、つまりは自身のストロングポイントである姿勢の良さを失い、ゆえに却って崩れる場面が多くなり、勇を鼓して放つ得意の内股もアクションに時間が掛かって相手を斬り伏せるに至らず却って自信を失うという悪循環。周囲から見れば力関係では新井が上、なぜそこまで相手を怖れるのかやや不可解という様相のまま試合は終了し、結果は「指導1」によるチェンの勝利。

続いて畳に上がった稲森奈見はしかし、前日敗れているマー・シーシーとに対して強気の柔道を披露。前に押し込んで39秒場外の「指導1」を獲得。以後もマーの圧力に退かずに大内刈、小内刈と足技を撃ち込みながら展開を保って優勢勝ち。日本は4-1の大差を以て強敵中国の撃破に成功。

【準決勝】

日本 5-0 カザフスタン
[52kg級]中村美里○崩上四方固(1:03)△アイグル・バイクレワ
[57kg級]山本杏○小内刈(0:29)△ナズグル・クバシェワ
[63kg級]阿部香菜○横四方固(1:03)△マリアン・ウルダバエワ
[70kg級]新井千鶴○腕挫十字固(1:11)△ディナラ・クダロワ
[70kg超級]稲森奈見○合技[大内刈・横四方固](1:12)△ザリナ・ライフォワ

中国戦という大きな山場を乗り越えた日本がカザフスタンを一蹴。特にファーストコンタクトを逃がさず抑え込んだ中村、尻上がりに調子を上げる山本の前2枚の安定感は特筆もの。前衛2枚の連勝で出来た流れに乗り、日本は残り3試合もほぼ「秒殺」。阿部はなんとか日本の勢いを止めようと突進してくるウルダバエワを組み止めて崩しあっさり横四方固に固め、新井はディアナ・クダロワを小外刈で崩しておいての腕挫十字固で一本勝ち。稲森はザリナ・ライフォアから「指導」を奪った直後の1分に左大内刈で「技有」獲得、そのまま横四方固で勝負を決める。5戦通じて力に差があるカードの連続ではあったが、日本は完璧と言って良い強さで決勝進出決定。

韓国 4-1 モンゴル
[52kg級]ジュン・ユンジュン△優勢[有効・外巻込]○ムンクバータル・ブンドマー
[57kg級]キム・ジャンディ○優勢[指導2]△ドルジスレン・スミヤ
[63kg級]ジョン・ダウン○大腰(1:47)△バルドルジ・ムングンチメグ
[70kg級]キム・センヨン○優勢[有効・背負投]△ツェンドアユシュ・ナランジャルガル
[70kg超級]イ・ジュンギュン○優勢[有効・外巻込]△バトトルガ・ムンクフツヤ

前衛2枚がモンゴル優位、後衛3枚が韓国の勝利濃厚という対戦配置。
52kg級枠はこの見立て通りにムンクバータル・ブンドマーが「有効」優勢で勝利。
迎えた57kg級の試合ではキム・ジャンディが強敵ドルジスレン・スミヤを相手に「指導」2つのリードを保ったまま試合を終盤まで持ち込む。残り1分を切ってからドルジスレンが崩上四方固に捉えるがキムが逃れ、残り0秒ではドルジスレンの大内刈をキムが返して「技有」宣告。これはタイムアップ後ということでポイントが認められなかったが、結果残った「指導」累積差でキム・ジャンディが殊勲の1勝。

このキムによるアップセットでこの試合の行方はほぼ見えた感あり。63kg級枠ジョン・ダウンの大腰「一本」で勝利を決めた韓国は残り2戦も順当に勝利してゴール。通算スコア4-1で決勝進出を決めた。

【3位決定戦】

中国 3-2 モンゴル
[52kg級]マー・インナン△不戦○ムンクバット・ウランツェトセグ
[57kg級]ゾウ・イン△合技[背負投・崩上四方固](1:50)○ドルジスレン・スミヤ
[63kg級]ヤン・ジュインシュア○袈裟固(3:14)△ツェンドアユシュ・ツェレンナドミド
[70kg級]チェン・フェイ○優勢[指導1]△ツェンドアユシュ・ナランジャルガル
[70kg超級]マー・シーシ○反則[指導4](1:56)△バトトルガ・ムンクフツヤ

モンゴルは52kg級枠に48kg級世界選手権王者のムンクバット・ウランツェトセグを投入するが、ここに中国は選手を入れず不戦勝であっさり先制決定。57kg級枠も力関係通りにドルジスレン・スミヤが合技「一本」を獲得してモンゴルが2-0でリードを得るが、ここまでは双方織り込み済みのシナリオ。

後ろ3枚が強い中国、そして準決勝で見せた通り前重心で後衛3人の戦力が低いモンゴルという盤面の読みは、畳上でことごとく現実的なものとなる。63kg枠のヤン・ジュインシュアはツェンドアユシュ・ツェレンナドミドの横落を潰し「腹包み」から繋いだ袈裟固で一本勝ち、チェン・フェイはツェンドアユシュ・ナランジャルガルに粘られながらも1分56秒に得た「指導」をテコに優勢勝ち。70kg超級枠の一番もマー・シーシがバトトルガ・ムンクフツヤを相手にせず「指導4」で勝利し逆転劇完了。中国が3-2でモンゴルを凌ぎ銅メダルを確保した。

北朝鮮 4-1 カザフスタン
[52kg級]キム・ソルミ○不戦△
[57kg級]イ・ヒョスン○合技(0:41)ナズグル・クバシェワ
[63kg級]キム・スギョン△小外刈(0:40)○マリアン・ウルダバエワ
[70kg級]キム・ジョンスン○袈裟固(1:56)△ディナラ・クダロワ
[70kg超級]ソル・キョン○内股(3:16)△ザリナ・ライフォワ

3位決定戦もう1試合は北朝鮮がカザフスタンを一蹴。70kg超枠ではソル・キョンが左袖釣込腰「技有」、さらに「有効」、最後は内股で高々と宙を舞わせて「一本」とザリナ・ライフォアを子ども扱い。銅メダルを確保して面目を保った。カザフスタンは63kg級枠のディナラ・クダロワが高く抜きあげる小外刈で「一本」を奪い一矢を報うのがやっとだった。

【決勝】

日本 - 韓国
[52kg級]中村美里 - ジュン・ウンジュン
[57kg級]山本杏 - キム・ジャンディ
[63kg級]阿部香菜 - パク・ジウン
[70kg級]新井千鶴 - キム・センヨン
[70kg超級]稲森奈見 - イ・ジュンギュン

盤面配置は日本に優位。52kg級枠、57kg級枠、63kg級枠と得点ポジションが3つあり、それも勝負の流れを作るべき前衛に集中している。個人戦決勝の再現となる70kg級枠が勝負ポジション、13年世界選手権銅メダリストでこの日は個人戦代表漏れの鬱憤を晴らすかのような好パフォーマンスを発揮しているイ・ジュンギュンに稲森奈見が挑む70kg超枠が防衛ポジションということになるが、前3試合を手堅く戦えばまずまず日本の勝利は動かないと見て良い。不確定要素は地元での大会最終戦で宿敵日本を畳に迎える韓国チームの異常なまでのモチベーションの高さと、会場の異様な雰囲気。引き分けなしのIJFルールと後方2試合の力関係を考えると、優位とされる前衛3枚のうちもし1枚でもひっくり返されるようなことがあると、逆にいきなりその勝利は危ういものになる。手堅く戦いたいところ。

初戦は中村がジュン・ウンジュンを相手に1分20秒左小外刈で「有効」、さらに場外の「指導」に、3分1秒には組み際の左大外刈で「技有」まで奪って圧倒的展開。しかしこの「技有」直後、中村に腕挫十字固を極められながら無理やりに立って展開を切ったジュンはあきらめない。技はないが前進に前進を重ねるジュンに対して中村は残り15秒を切ったところで両袖のケンケン大内刈、次いで明らかに展開を切るために浅く右一本背負投。この右一本背負投が自らの首を相手の手首に差し出す形の掛け潰れとなり、ジュンはこの機を逃さず体全体を使って片手絞で絞め上げる。

あまりの体勢の悪さに中村はその形で耐えることしか出来ない。主審は終了ブザーの鳴動に従って「それまで」を宣し、中村が耐えきったかに思われたがその様子がおかしい。主審が近寄ると、中村はガクリと体を動かすと弾かれたように相手の足に抱き付き、「落ちた」状態から覚醒したばかりのような異常なアクション。ビデオ判定の結果、ジュンの絞めで試合時間内に中村が落ちていたことが確認され、「一本」宣告。ジュンの一本勝ちが決まった。

中村の一本背負投は展開上全く必要のないアクションで、油断と言われても仕方がないところ。だかこれは百戦錬磨の中村に選択ミスをさせたジュンの圧力と、ただ1回のチャンスを見事に決めた集中力の高さを褒めるべきであろう。実績と力関係からすればありえない、まさしく大番狂わせの一戦であった。

日本としては衝撃のビハインドスタートだが、続く57kg級枠では山本杏が落ち着き払った柔道を披露。左小内刈で「有効」を奪うと、崩袈裟固でしっかり抑え込んでキム・ジャンディにまったく柔道をさせずに「一本」を奪って試合の流れを日本に取り戻す。続く63kg級枠の阿部香菜も左相四つのパク・ジウンを左大外巻込「技有」から後袈裟固に抑え込んで一本勝ち。日本は2-1とリードして、勝負ポジションである後半戦に試合の襷を繋ぐ。

個人戦決勝の再現となった70kg級枠は新井千鶴にキム・センヨンがマッチアップ。新井はやはり昨日のトラウマがあるのか持ち前の姿勢の良さが出ず、前戦同様腰を引いて防御姿勢での対峙。勇を鼓して放った左大内刈に左内股もその姿勢ゆえにインパクトポイントまで時間が掛かり、ゆえに返され掛かり、次の仕掛けにはさらに一段上の勇気が必要になってしまうという悪循環。しかしそれでも両襟の左内股で山場を作り、1分25秒に「指導」奪取。完全に決めたと思われた縦四方固がなぜか「待て」にされるという理不尽な場面もあったが、残り1分過ぎからは気持ちを立て直し左内股に出足払、左小内刈と良い攻めを繰り出してフィニッシュ。この難しい試合を「指導1」の優勢で勝ち切ることに成功する。メンタルコンディション整わない中、それでも勇気を持って攻めることで無理やり流れを引き戻した新井に勝利という結果がくっついて来たという形の一番。新井にとっては精神的に相当厳しい試合だったと思われるが、その中で為した選択がさらに一段精神的なハードルの高い「攻める」行為であったこと、そして結果を出したということで次に繋がる試合であったと評したい。

日本は新井の得点を以て、この時点で優勝決定。

スコア3-1で迎える今大会最終戦は78kg超級枠の対決。稲森奈見は体格の一段大きいイ・ジュンギュンに対してガップリ奥襟を持ちあって対峙。イが潰れると「フライパン」で強引に持ち上げめくり返し、観客席からは稲森の強気とパワーに驚きの声。49秒には引き手で襟を握った稲森が時計回りにイを捻り倒す場面も現出、ここまでは地力と実績に勝るイに対し、稲森がその強気によって試合の拮抗を保っているという印象。

1分過ぎ、投げずば勝負つけられずとばかりに稲森が相手の腰に抱きつく。裏投か、と満場固唾を飲む投げ合いが一合続いた末に、我慢できなくなったイが大外刈、しかしバランスを崩して自ら膝をついてしまう。
稲森はこのチャンスを見逃さず、寝際の曖昧な体勢となったイの体をめくり落として崩上四方固。ガッチリ抑え切って「一本」。

稲森の世界選手権銅メダリストを「一本」で倒す殊勲で日本は有終の美を飾る。最終スコア4-1で見事アジア大会女子団体戦金メダルの獲得を決めた。

日本 4-1 韓国
[52kg級]中村美里△片手絞(4:00)○ジュン・ウンジュン
[57kg級]山本杏○崩袈裟固(2:31)△キム・ジャンディ
[63kg級]阿部香菜○合技[大外巻込・後袈裟固](2:40)△パク・ジウン
[70kg級]新井千鶴○優勢[指導1]△キム・センヨン
[70kg超級]稲森奈見○崩上四方固(1:31)△イ・ジュンギュン

観客席を埋めた大応援団の声援を背にする地元韓国を相手に、その勢いに飲まれず日本代表が大枠その力をしっかり出したという試合。中村が敗れたことで乱戦気配が漂い始めた畳上にあって、次戦で勝利した山本の働きがまことに大きかった。一本勝ちという結果はもちろんだが、相手に一切チャンスを与えずに一方的にポイントを重ねたその試合ぶりはアップセットに賭ける韓国の希望を折るに十分なもの。マー・シーシーとイ・ジュンギュンに連勝した稲森、チェン・フェイとキム・センヨンというライバル2人と戦った新井ほど対戦相手のレベルは高くなかったが、団体戦優勝のMVPには山本を挙げるべきではないだろうか。世界選手権に2人を送り込んだ上で選ばれた山本のこの強さには、日本の57kg級の層の厚さを改めて感じさせるものがあった。

そして、日本の女子の強さ、層の厚さを改めて感じさせる圧勝劇でもあった。ただし個人戦で力を出し切れなかった選手が団体戦で息を吹き返しての勝利というこの構図は、13年リオ世界選手権の団体戦優勝を想起せざるを得ないものであることも、見逃してはならない。総体としては強い、仲間の存在やチームの勝利に対する責任というバックグランドを背負わせると強い、失敗を糧にする開き直りがあった、個人のチャンピオンシップというプレッシャーから解放されて力を発揮した、と色々な見立てが可能ではあるが、おそらく起こっている現象は同根同種。何故力が発揮出来ないのか、という個人戦の分析を為す上で、いったいに選手が力を発揮する傾向にある女子団体戦という成功ケースの存在は大きい。個人戦のレポートと同様、この現象に対する正面からの検証を期待して、この稿を終えることとする。


【成績上位者】

優 勝:日本
準優勝:韓国
第三位:中国、北朝鮮

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