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キムセンヨンが韓国勢この日3つ目の金メダル獲得、新井千鶴は大舞台に固まり決勝で苦杯・アジア大会70kg級レポート

(2014年9月24日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版9月24日掲載記事より転載・編集しています。
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キムセンヨンが韓国勢この日3つ目の金メダル獲得、新井千鶴は大舞台に固まり決勝で苦杯
アジア大会70kg級レポート
【成績上位者】エントリー11名
1.KIM, Seongyeon(KOR)
2.ARAI, Chizuru(JPN)
3.CHEN, Fei(CHN)
3.TSEND AYUSH, Naranjargal(MGL)
5.KIM, Jong Sun(PRK)
5.MATNIYAZOVA, Gulnoza(UZB)
7.KADYRBEKOVA, Aizhan(KGZ)
7.KUDAROVA, Dinara(KAZ)

優勝は2013年世界選手権銅メダリストのキム・センヨン(韓国)。2回戦でアイザン・カディルベコワ(キルギスタン)、準決勝で強敵ツェンドアユシュ・ナランジャルガル(モンゴル)をいずれも「一本」で下して決勝進出。決勝では現在2連敗中、2月のグランプリ・デュッセルドルフでも横四方固で一本負けを喫している日本の新井千鶴を相手に44秒左への横落で「技有」奪取。以後は新井のショックに付け込み、組み手争いによる動的膠着を作り出すことで時間を消費して最終盤までこのリードを保つと、残り15秒を過ぎてからの新井の追撃を織り込み済みとばかりにしっかり耐えきってタイムアップ。63kg級のジョン・ダウン、81kg級のキム・ジェブンに続いてこの日韓国3つ目の金メダル獲得を決めた。

敗れた新井は明らかに様子がおかしかった。地元韓国の連続勝利に沸く会場の雰囲気に飲まれたか決勝の畳に現れたその表情は蒼白。関係者が「(キムセンヨンは)横落しかないとわかっていた」「(だから)片手ではなくまず二本持てと強く伝えていた」と証言した通り十分警戒はしていたはずだが過緊張ゆえか棒立ちとなり、思い切りこの技を食ってしまった。

しかし失点の時点で残り時間は実に3分16秒。新井の技を持ってすれば、そして明確な追撃プランさえあれば十分逆転は可能と思われたが、新井はショックから立ち直れない。技が来れば避け、組み手が悪ければ直し、引き手を握り合わせられたらこれに応じ、足技が来ればひとまず打ち返し、相手が崩れれば寝技を挑む、と目先の対応を反射的に行う「乱取り状態」を2分30秒に渡って続けてしまう。

我に返った後の残り23秒以降は足を先に差し入れての左内股に左大内刈、そして左大外刈という相手がもっとも嫌がる攻めを繰り出すことが出来ただけに、とにかくこの2分半の浪費が勿体なかった。2分9秒に放ったケンケンの左大内刈(パニック中に新井が繰り出した有効打はこれ一撃のみだった)も含め、キムの決して良くない対応を見る限りでは、チャレンジの回数があと数回多ければ、新井が「一本」に近いポイントを得られた可能性は非常に高い。

先輩阿部の意外過ぎる敗戦、そして眼前で地元韓国が連勝して会場のボルテージが最高潮であったことなど若い新井には気の毒なことも多かったが、それを差し引いたとしても少々星の落とし方が悪すぎた。63kg級の阿部評の繰り返しになるが、中堅以下の強豪が泥沼の連戦を繰り広げ続けるワールドツアーにおいて阿部や新井のような美しく、強く、切れ味鋭い技を持つ選手は異次元の存在。「持たざる」ものたちがどう戦ってくるのか、想定シナリオはいかなるものだったのだろうか。相手にとってもっとも嫌なことは何か、自身が何を以て年上の強豪たちに恐れられているのか客観的な整理はあったのだろうか。早い段階で失点するというような理想のルートではないシナリオ分岐が起こったときにどうすべきか、戦術とそれを遂行すべき「心」の準備は出来ていたのだろうか。4分という極めて短い試合時間の中で「立ち直る」「切り替える」「我に返る」ためだけに2分半を消費した形のこの試合からはその存在を感じ取ることは少々難しかった。

南條充寿監督は就任時に「自立した選手の育成」をキーワードとして掲げていた。63kg級の阿部評と重なるが、まさしく「自立」をスローガンに掲げる中で迎えた今夏の世界選手権とこのアジア大会において、十分な力量と技を兼ね備えた選手が試合でそれを発揮することなく、相手との力関係ではなく自身の内面の問題で潰れていくことが続いたこの状況をどう捉え、どう立ち向かっていくのか。個人の資質や経験値に問題を帰するのではその解決手段や試行錯誤のフィードバックもまたその選手個人というミクロなのものに留まってしまう。これは代表全体、そして代表を生み出す女子柔道という枠組み全体を射程に入れて考るべき問題だ。

南條監督の「自立」というスローガンは間違いなくこの状況の打開を企図して考えられたものだ。畳の中に一人でおっぽり出されて全てを背負わねばならないこの競技において、他と比較にならない成果を挙げねばならぬ日本代表という立場を全うするには「自立」しかない。
全面的に賛成する。が、誤解を怖れずに言えば、現在の競技女子柔道文化には、一人一人の成績、試合ぶりがジャンルの存亡に直結していた最初期の選手たちが持っていた「自立」に辿り着くための明確な理路が存在しない(個人の持っている力で上り詰めてしまう例外はあるが)のではないだろうか。「競技力の向上はイコール自立を養う」というかつてのハシゴは既に外されているのに、そこ辿り着く道を文化全体として用意出来ていないのではないだろうか。
「自立した」「自分で考えられる」「自分で出来る」選手の育成を掲げて1年半、そろそろここに辿り着く具体的な手段とそれを可能ならしめる文化の確保を業界全体で考えるべき時期ではないだろうか。これぞ日本選手という素晴らしい技を持つ新井千鶴が若さゆえ、そしてその若さをフォローする方法論の不在ゆえ散ったこの日の決勝は、そこまで敷衍して物事を考えねばならないほどに、衝撃的なものであった。

【3位決定戦】

CHEN, Fei(CHN)○優勢[指導1]△MATNIYAZOVA, Gulnoza(UZB)
TSEND AYUSH, Naranjargal(MGL)○優勢[有効・大内刈]△KIM, Jong Sun(PRK)

【決勝】

KIM, Seongyeon(KOR)○優勢[技有・横落]△新井千鶴


■日本選手勝ち上がり

新井千鶴(三井住友海上)
成績:2位

【準々決勝】

新井千鶴○片手絞(1:22)△KUDAROVA, Dinara (KAZ)

19秒、下がるクダロワに場外の「指導1」。
新井、二段の左小外刈に左内股と攻め、伏せた相手に「腰絞」。片手で襟、片手は相手の腕を抱えながら決めて「一本」。

【準決勝】

新井千鶴○優勢[指導2]△Chen, Fei(CHN)

チェン・フェイと対峙。7月のグランドスラム・チュメンでは新井が左内股「一本」で勝利しているカード。
左相四つ。19秒チェンに「取り組まない」判断の「指導」。
なかなかきちんと組めない中で左内股、左小外刈と繰り出す釣り手を握らせることを嫌い続けたチェンに1分17秒2つ目の「指導」。以後も左内股、左小内刈と散発ながらも技を切らずにタイムアップ。

【決勝】

新井千鶴△優勢[技有・横落]○KIM, Seongyeon (KOR)

地元韓国勢の連勝によって会場の雰囲気が滾り切った中で両者登場。新井は緊張の表情。
新井は左、キムセンヨンは右組みのケンカ四つ。
引き手争いの中、24秒にキムが新井の左へ得意の横落。警戒していたはずの新井一瞬棒立ち、まともに食って「技有」。コーチから新井に「落ち着け」の声が飛ぶ。

新井は距離を詰めて左内股、左大内刈を仕掛けるべき場面だが、失点に動揺したかキムの引き手争いに応じ、手先の組み手争いで時間を使うキムの作戦に嵌ってしまう。2分9秒に脚を差し入れてのケンケン大内刈で長く相手を追う良い攻撃が1度あったものの、大枠、目の前のことに刹那的に反応するだけの「乱取り状態」を2分以上続けてしまう。

残り23秒となり、我に返ったかのように脚を差し入れての大外刈、大内刈と相手がもっとも嫌がる、あるべき攻めを繰り出し始めるが時既に遅くタイムアップ。過緊張、ミス、思考停止の現状維持とやってはいけないことの段重ねで自滅。膝に手を当てて悔しがる新井を後目に、地元韓国勢の3つめの金メダル獲得に、観衆は大盛り上がり。

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