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日本が地元ロシアに逆転勝利、見事優勝決める・チェリャビンスク柔道世界選手権男子団体戦レポート

(2014年9月1日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版9月1日掲載記事より転載・編集しています。
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日本が地元ロシアに逆転勝利、見事優勝決める
チェリャビンスク柔道世界選手権男子団体戦レポート
ロシア・チェリャビンスクで行われた世界柔道選手権は最終日の31日、5人制で行う団体戦の競技が行われた。

日本チームの勝ち上がりを中心に、男子のトーナメントを簡単に振り返ってみたい。

■1回戦

グルジア 5-0 チェコ
日本 5-0 モンゴル
キューバ 3-2 タジキスタン
ドイツ 5-0 スロベニア
フランス 3-2 ブラジル

グルジアは3連勝であっという間に勝利決定。スターティングオーダーは73kg枠に66kg級五輪王者ラシャ・シャフダトゥーァシビリ、81kg枠はゼバダ・レクビアシビリ、90kg枠は世界ジュニア王者ベカ・グビニアシビリ。強力布陣だが、次戦以降はアヴタンティル・チリキシビリとヴァーラム・リパルテリニの加入が濃厚。やはりこのチームは優勝候補の筆頭格。

キューバは3-2でタジキスタンに勝利。2-2で迎えた大将戦でエースのオスカー・ブライソンがムカマドムロッド・アブドゥラクモノフを大外巻込からの崩袈裟固の合技「一本」で倒して勝利を決めた。

ドイツは73kg級枠にクリストファー・フォエルク、81kg級枠にスヴェン・マレシュ、90kg枠にマルコ・オーデンタール、90kg超枠にディミトリ・ピータースと中堅選手をズラリと並べた渋すぎる布陣。スロベニアとの対戦はフォエルクがロク・ドラクシックに「指導1」で勝利した時点でほぼ勝負あり、5-0で一蹴。

日本 5-0 モンゴル
[66kg級]海老沼匡○小内巻込△ダバドルジ・ツムクフレグ
[73kg級]大野将平○内股△ガンバータル・オドバヤル
[81kg級]永瀬貴規○内股△ニャムスレン・ダガワスレン
[90kg級]西山大希○大外刈△クワスレン・オトゴンバータル
[90kg超級]上川大樹○優勢[指導3]△ナムスライジャフ・バツーリ

日本が昨年敗れた強豪モンゴルを一蹴。モンゴルは前重心の布陣だったが、66kg枠の海老沼匡がダバドルジ・ツムクフレグをいきなり左釣腰で完全に一回転させる。「スーパー一本」が適用されないのが不思議なこの一撃はノーポイントだったがこれで完全に主導権を握ると2分55秒に小内巻込を決めて一本勝ち。そして大野将平がガンバータル・オドバヤルを右小内刈「技有」、右内股「一本」と立て続けに投げつけて快勝した73kg枠の試合を以て事実上試合は終了。日本は以降当然のように3連勝で勝利を決めた。久々世界選手権の畳に戻ってきた西山大希は少々攻撃が遅かったが、優勝した6月のGPブダペスト同様組むだけで相手が勝手に崩れる「位押し」の末に一本勝ち。格が違うという印象。
前日覇気なく敗退し以後の代表選出に暗雲漂う上川はこの試合もあくまでマイペース、安全重視の散発傾向で格下の相手を投げずに終わり、汚名挽回のチャンスを貰ったと意気に感じる気配は僅少。強豪相手に「一本」連発の日本の勢いに少々ブレーキを掛けた感ありだった。

ブラジル 3-2 フランス
[66kg級]チャールズ・チバナ○優勢[技有・出足払]△エイドリアン・ブルギニオン
[73kg級]アレックス・ウイリアム・ポンボダシウバ△優勢[有効・隅落]○ウーゴ・ルグラン
[81kg級]ヴィクトル・ペナウベル○優勢[技有・小内刈]△アラン・シュミット
[90kg級]チアーゴ・カミロ○優勢[有効・小内刈]△アレクサンドル・イディー
[90kg超級]モウラ・ダビド△合技[右内股・縦四方固]○テディ・リネール

日本-モンゴル戦同様1回戦で組まれるのが勿体ない好カード。66kg枠、73kg枠は個人戦の序列通りに勝敗が進行し、タイスコアで迎えた81kg枠の実力者対決はシュミットの左小外刈にペナウベルの右小内刈がカチ合い「技有」でペナウベルが勝利。

勝敗を決定づけたのは90kg枠の一番。カミロが左小内刈「有効」で勝利した試合だが、中途でイディーが裏投でカミロを放り「一本」が宣告されるという大インシデント。これが協議の末「有効」に訂正され、さらに「取り消し」となるという技評価、経過とも不可解な形でノーポイントとなり、カミロ、そしてブラジルの勝利が決定。フランスは大将にスーパーエースのリネールを突っ込み、シュミットを中心とした2番手選手で前を固める層の厚さと到達点の高さを見せた布陣だったが、結果的にはブラジルの前線全体の高さと厚さ、そして不可解な判定に屈した。

■準々決勝

グルジア 4-1 カザフスタン
日本 5-0 中国
ロシア 4-1 キューバ
ドイツ 3-2 ブラジル

グルジアは今大会不調のオクルアシビリが完全に格下のはずのルスラン・アブドラザコフから谷落「一本」で失点するも、先鋒から副将までを4連勝の4-1で快勝。

ロシアは66kg枠を落としてビハインドスタートだったが、73kg枠に起用されたベテランのアリム・ガダノフの裏投「一本」で復調。以降の2戦も勝利し、90kg超枠ではアンドレイ・ヴォルコフがオスカー・ブライソンを肩固「一本」で破るなどむしろ勢いを増して試合終了。4-1でキューバを降して準決勝進出。

日本 5-0 中国
[66kg級]高市賢悟○背負投△ヘ・ヨンロン
[73kg級]中矢力○合技[体落・縦四方固]△サイ・インジガラ
[81kg級]永瀬貴規○内股△ザン・ウェンタオ
[90kg級]ベイカー茉秋○不戦△
[90kg超級]上川大樹○出足払△シェン・ズーホン

3人を入れ換えて臨んだ日本が中国を一蹴。高市賢悟がケンカ四つのヘ・ヨンロンを2分30秒右背負投「一本」に仕留めると以降はあっという間の4連勝。上川大樹もこの試合は右大外刈からの左出足払「一本」で締め、日本は余裕を持ってベスト4入り決定。

ドイツ 3-2 ブラジル
[66kg級]セバスティアン・ザイドル△優勢[有効・背負投]○チャールズ・チバナ
[73kg級]クリストファー・フォエルク○優勢[技有・出足払]△アレックス ウィリアム・ポンボ ダ シウバ
[81kg級]スヴェン・マレシュ○優勢[指導2]△ヴィクトール・ペナウベル
[90kg級]マルコ・オーデンタール○合技[大腰・横四方固]△チアゴ・カミロ
[90kg超級]ディミトリ・ピータース△優勢[有効・内股]○ラファエル・シウバ

ドイツが取るべきところをしっかりモノにして、手堅いシナリオ分岐の末に勝利。前段2戦は力関係の通りに推移して1-1だったが、互いの勝負ポジションである81kg級枠でマレシュがペナウベルに「指導2」対「指導1」で勝利。90kg枠はカミロが右肩車「有効」で先制したがオーデンタールが右大腰「技有」で逆転し、そのまま抑え込んで勝利。ドイツはブラジルの大将シウバの登場を待たずして中盤の3連勝で一気に勝負を決めた。90kg枠戦の、もと世界王者カミロの名前を、ワールドツアー皆勤者であるオーデンタールの現在値が上回ったという様相がそのままこの対戦を評するにふさわしい、ドイツらしいしぶとい一番だった。

■敗者復活戦

カザフスタン 5-0 中国
ブラジル 3-2 キューバ

中国は2試合連続の0-5敗退。カザフスタンは5試合中3試合を1分掛からずの「一本」とまさしく圧勝。

ブラジル 3-2 キューバ
チャールス・チバナ○腕挫十字固(3:06)△ジャニエール・ペナ
アレックス・ウイリアム・ポンポダシウバ○三角絞(4:12)△シルベルト・ソーラー
欠場△不戦○マグディール・エストラダ
ディアゴ・カミロ○不戦△欠場
ラファエル・シウバ△優勢[指導3]○オスカー・ブライソン

互いに欠場が1つあるこの試合は2点先取で勝敗が決まる。
ブラジルはチバナが右相四つのジャニエール・ペナを相手に払巻込を返して谷落「技有」、さらに「跳び関節」を決めて腕挫十字固「一本」。体の重さが誰の目にも明らかだった個人戦の不調が嘘のような意欲的な試合。

ブラジルはさらにポンポダシウバが下がる相手に右大内刈を入れて「技有」、相手の右払腰を潰して三角絞「一本」と圧勝。この時点で3位決定戦への勝ち上がりを決めた。キューバはブライソンがシウバを「指導3」で破って一矢を報いたが時既に遅し。7位で大会を終えることとなった。

■準決勝

日本 4-1 グルジア
[66kg級]海老沼匡○横四方固△アミラン・パピナシビリ
[73kg級]大野将平○優勢[指導1]△ヌグザリ・タタラシビリ
[81kg級]永瀬貴規○GS技有・内股△アヴタンディル・チリキシビリ
[90kg級]西山大希△優勢[指導2]○ヴァーラム・リパルテリアニ
[90kg超級]七戸龍○支釣込足△アダム・オクルアシビ

強豪グルジアを日本が一蹴。海老沼匡が60kg級の強豪パピナシビリを腰車「技有」からの横四方固「一本」(※相手が「参った」を表明)で下した66kg枠、大野将平が粘るタタラシビリから偽装攻撃の「指導」1つで勝ち抜いた、力関係通りの前衛2試合を経て、勝負はグルジアの超強力3枚が控える後半戦へ。

ここで永瀬貴規が個人戦で敗れた、そしてそのまま優勝を飾った王者アヴタンディル・チリキシビリを破る大殊勲。手堅い戦いに終始して自ら展開を失った個人戦の様相が嘘のように、攻めること自体で展開を保つ永瀬らしい試合を繰り広げ、本戦終了の時点でチリキシビリは膝に手を当てて疲労困憊。永瀬あと締めるだけとばかりにGS開始早々に思い切り投げつけ内股「技有」獲得。この時点で日本の勝利が決定。

西山大希はリパルテリアニに敗れたが、最終戦ではオクルアシビリが奥襟を狙って飛びかかるなり、七戸龍が個人戦初戦でも見せていた新兵器である引き手側への支釣込足一閃。自らジャンプした高い位置から畳まで叩き落とされたオクルアシビリが茫然となる素晴らしい一撃はもちろん「一本」。ライバルであるはずのオクルアシビリを問題にせず僅か13秒で勝利決定。日本、これ以上ないほど勢いづいて決勝へ。

ロシア 4-1 ドイツ
[66kg級]カマル・カン・マゴメドフ○GS優勢[指導1](GS1:15)△セバスティアン・ザイドル
[73kg級]ゼリムハン・オズドエフ△浮落(4:47)○クリストファー・フォエルク
[81kg級]ムラート・カバチロフ○反則[※足取りによる](4:52)△スヴェン・マレシュ
[90kg級]キリル・デニソフ○優勢[技有・体落]△マルコ・オーデンタール
[90kg超級]アンドレイ・ヴォルコフ○優勢[技有・浮技]△ディミトリ・ピータース

中堅選手を揃えたドイツ以上に「渋い」としか評しようのない面子を揃えたロシアが、客席の大歓声とVIP席に座るウラジミール・プーチン大統領の熱い視線を背に圧勝で決勝進出決定。各ポジションに隙なくハイランカーを揃えるドイツ相手に事前に勝利を織り込めるのは66kg枠のみ、デニソフが出動する90kg枠もオーデンタールが立ちはだかるという極めて厳しいはずの盤面からすると、意外とも言える大勝だった。

力関係通りに点を取り合って1-1のタイスコアで迎えた中堅戦の残り8秒、マレシュの小内巻込が足取りと判断されてダイレクト反則負けで試合は終了、これで2-1とロシアがリード。90kg枠はデニソフがケンカ四つのオーデンタールに自身の釣り手側への横移動を強いながらの左体落「技有」という素晴らしい一撃を決め、ロシアはこの時点で3点を確保し勝利決定。90kg超枠でもアンドレイ・ヴォルコフが格上のはずのピータースから左引き手で深く背中を握って左方向への浮技を決め「技有」奪取でトドメ。盤面の力関係通りなら2-3敗退がほぼ確実、というよりもそれが為し得る最良のシナリオかと思われていれたロシアはなんと4-1という大差で勝利して決勝進出。

■3位決定戦

ドイツ 5-0 カザフスタン
[66kg級]セバスティアン・ザイドル○優勢[技有・隅返]△イェルドス・ズーマカノフ
[73kg級]クリストファー・フォエルク○出足払(3:19)△イェルトガン・トレノフ
[81kg級]スヴェン・マレシュ○一本背負投(3:18)△リナト・イブラギモフ
[90kg級]マルコ・オーデンタール○支釣込足(2:02)△サマト・イェッセン
[90kg超級]ディミトリ・ピータース○合技[内股・縦四方固](1:21)△ルスラン・アブドラザコフ

準決勝の鬱憤を晴らすかのようにドイツが爆発。カザフスタンにはドイツに抗し得る選手の出場はなかったが、その盤面の力関係以上の圧勝劇となった。

73kg枠のフォエルクは相手の猛攻で「指導」を奪われたが左出足払一閃「一本」。これをきっかけにドイツは殺戮開始、81kg枠のマレシュは右大外刈「技有」、続けて仕掛けた左一本背負投が相手に躱されそうとみるや自らの手で畳を押して乗り込み「一本」。90kg枠のオーデンタールはほとんど右内股に入る形で相手の体を釣り上げ、切り返し直しての左支釣込足「一本」、ピータースも体勢低く構える相手に無理やり抱き着いての右内股で「技有」、さらに抑え込んで僅か1分21秒で勝利。フランス、ブラジルを倒しながら決勝進出を逃すという悔しい大会を5-0の圧勝で締めて銅メダルを確保した。カザフスタンはこのメンバー、そしてこの出場国にあっては出来過ぎと言って良い5位入賞。

グルジア 3-2 ブラジル
[66kg級]シャルワ・カルダワ△裏投(3:12)○チャールズ・チバナ
[73kg級]トルニケ・タタラシビリ○GS反則△アレックスウイリアム・ポンボダシウバ
※「頭突っ込み」による
[81kg級]アヴタンディル・チリキシビリ○不戦△
[90kg級]ヴァーラム・リパルテルアニ○内股(3:11)チアーゴ・カミーロ
[90kg超級]アダム・オクルアシビリ△優勢[指導2]○ラファエラ・シウバ

3位決定戦に相応しい豪華カード。
初戦は個人戦の不調から立ち直ったチバナが相手を完全に腹上に持ち上げ、次いで真後ろに投げるという相手に恐怖を感じさせる時間差あっての豪快な一撃で「一本」。73kg枠はタタラシビリを相手にポンポダシウバが粘って双方「有効」「指導2」を取り合う激戦、決着はGS延長戦に持ち込まれるが、ここでポンポダシウバが左払腰を仕掛けた際にほとんど股中を向くほどの角度で頭を畳に突っ込んでしまいダイレクト反則負け。この試合はタタラシビリが取り、結果として前衛2試合は力関係通りの結果。スコアは1-1。

ところがブラジルは81kg級枠のペナウベルを下げており、チリキシビリの不戦勝でこの試合はグルジアが労せず1点加点。続く90kg級枠はリパルテリアニが右内股「有効」、右内股「一本」と投げまくってカミロを圧倒、この時点で勝負を決めた。

90kg超級はこの2年リネールを追いかけてきた100kg超級の第2グループのリーダ格同士の対決。今大会絶不調のオクルアシビリを、こちらは良くも悪くも持ち味発揮して安定感発揮のシウバが淡々と距離を取りつづけて間合いに入れず、指導2」の優勢で一矢を報いた。最終スコア3-2、グルジアが銅メダル獲得決定。

■決勝

日本 - ロシア
[66kg級]海老沼匡 - カマル・カンマゴメドフ
[73kg級]大野将平 - デニス・ヤルツェフ
[81kg級]永瀬貴規 - ムラト・カバチロフ
[90kg級]ベイカー茉秋 - マゴメド・マゴメドフ
[90kg超級]七戸龍 - アスラン・カンビエフ

盤面は率直に言って日本が有利。ロシアは66kg枠のカンマゴメドフと90kg枠のマゴメド・マゴメドフが粘る可能性があるが、引き分けなし、たとえ「指導1」でも必ず決着をつけるIJFスタイルでは凌ぐことは難しいはず。
力関係通りに66kg枠の海老沼匡と73kg級の大野将平の世界王者2人が勝利すれば5-0圧勝も十分あり得るカードだ。

ところが66kg枠の海老沼匡と今大会個人戦3位のカマル・カンマゴメドフの試合は、カンマゴメドフが異常な気合で大善戦。「やぐら投げ」で海老沼を抱え上げるなど強気に攻めることで拮抗を保ち、凌ぎやすい、また作りなしに力勝負を挑みやすいケンカ四つということもあり終盤まで王者海老沼が奪ったポイントは「指導1」のみ。
そして3分30秒、カンマゴメドフが釣り手を脇に差し、引き手で相手の左襟を握る変則の右大腰。浮き上がった海老沼は持ち前の落ち際の粘りを見せたいところだが、引き手との角度差ゆえに生まれた鋭角高速の落下に反応が遅れる。主審は「一本」を宣告。カンマゴメドフ、なんと王者海老沼から「一本」で勝利。

73kg級枠は大野将平が、個人戦では完全なアウトサイダーのデニス・ヤルツェフと対峙。38秒右内股「技有」を奪って順調かと思われたが、客席の大声援を受けたヤルツェフは必死の形相で前に出、大野の右内股を抱き返して「有効」奪還。これで試合の流れをかき乱すと、3分22秒には片襟の右大外刈を入れて「技有」をもぎとりなんと逆転。大野猛追するがヤルツェフ退かず、試合はこのまま終了。ヤルツェフが「有効」1つの差で勝利し、ロシアが2-0とリードを広げる。日本は海老沼、大野という世界最強の前衛2枚がいずれも投げられて失点という考えられない事態。

81kg枠の永瀬貴規は井上康生監督の「ここからが勝負だ」との激を受け、険しい顔で畳にあがる。しかしこの試合もムラト・カバチロフが格上の、しかも力関係が反映しやすい相四つの永瀬を相手に右大外刈で攻めるという呆れるほど強気の試合を披露。残り30秒ではあわや永瀬を投げ掛けるという場面も作って、試合はGS延長戦へ。
ところが時間が経てば経つほど実力差が出るのがこの競技の常。開始14秒、永瀬が思い切った右大内刈にカバチロフを捉え、体を捨てて決め切り豪快な「一本」。IJF団体戦ルールの過酷さと自身の力を見せつけたこの素晴らしい一撃で、日本はスコアを1-2に押し戻す。

最終戦に控える七戸龍まで試合を繋げば勝利が濃厚の日本はここが勝負どころ。この大事な90kg枠には19歳のベイカー茉秋が出陣。対峙するのはロシアがここ1年ワールドツアーで起用に起用を重ねてきた期待の若手マゴメド・マゴメドフ。
ベイカー、右相四つの相手に腰を低く構える持ち前のスタイルを守勢と評価されてしまい1分過ぎに「指導」を受けるが、この再開直後加速。場外際の右払巻込で「有効」を奪うと後袈裟固に抑え込む。パワー自慢の相手を逃すまいと物凄い形相で力を込めるベイカーの前にマゴメドフ最後は観念「一本」、1分54秒。ついにスコアは2-2、優勝の行方は90kg超枠の最終戦に委ねられる。

最終戦は七戸龍、アスラン・カンビエフともに右組みの相四つ。20秒七戸にやや不可解な「指導」。七戸は得意の左側に軸足をずらす右内股を狙って相手を前に引き出し続けるヒットマンスタイル、この内股を晒した右大内刈で相手を大きく崩して優位に試合を展開、右背負投の奇襲も織り交ぜて投げを狙い続ける。

2分27秒、カンビエフの左大腰を振り返した七戸が右大腰の形で相手を畳に押し付ける。しかし主審はカンビエフの自滅という判断か、あるいは地元ロシアへの配慮かこれをスルー。

しかし冷静さを失わない七戸は、左構えとなった相手との腰の入れ合いから釣り手をクロスに入れて右大内刈を浴びせ込み、2分41秒「技有」奪取。
3分20秒にはクロスに入れた釣り手を帯を握るところまで進出させて隅返「有効」、そのまま相手の上に乗り込んで縦四方固に抑え込む。自国の逆転負けを目の当たりにした会場の大観衆が沈黙して見守る中、3分39秒合技の「一本」が宣告されてこの試合は終了。日本は、2011年に現行制度(世界選手権との同時開催)が実施されてから初の金メダルを獲得することとなった。

日本 3-2 ロシア
[66kg級]海老沼匡△大腰○カマル・カンマゴメドフ
[73kg級]大野将平△優勢[有効]○デニス・ヤルツェフ
[81kg級]永瀬貴規○GS大内刈△ムラト・カバチロフ
[90kg級]ベイカー茉秋○後袈裟固△マゴメド・マゴメドフ
[90kg超級]七戸龍○合技[大内刈・縦四方固]△アスラン・カンビエフ

ロシアの異常な粘りを、日本が冷静さと層の厚さで押し返したという試合。
優勝という結果はもちろんだが、個人戦で力を出せなかった初代表のベイカーと永瀬が演じた好パフォーマンスに、前日の大活躍を経てたった一晩で明らかに一段強くなった七戸の自身を大駒と規定しての頼もしい試合内容と、日本にとっては収穫多き団体戦であった。

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