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金鷲旗高校柔道大会男子マッチレポート④決勝

(2014年8月15日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。
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④決勝
金鷲旗高校柔道大会男子マッチレポート
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今季二つ目の全国タイトル獲得に挑む修徳高

修徳高は金鷲旗大会初の決勝進出。今大会は1年生の増山香輔の活躍で6回戦までを余裕を持って勝ち抜けると、ベストメンバーに布陣を変えた準々決勝と準決勝は大将小川雄勢が盤面に睨みを利かせつつ伊藤祐介と原澤脩司ら前衛4枚が奮戦、結果作陽高と大成高をいずれも大将同士の対決で降して決勝進出を決めて来た。この試合に3月の全国高校選手権に続く今季2つ目の全国タイトル獲得を賭ける。

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3年ぶりの優勝を狙う国士舘高

一方の国士舘高は小川竜昂や遠藤翼を擁して優勝した平成23年大会以来3年ぶりの決勝進出。こちらも修徳高同様序盤戦は組み合わせに恵まれ、スターティングの先鋒に起用された山田稔喜が1人で15人を相手にするなど奮戦。副将山田伊織と大将吉良儀城を温存したまま準々決勝に駒を進めると、東海大五高との準々決勝も両者を使わず不戦二人で勝ち抜け、準決勝も強豪天理高を不戦一人(二人残し)で降す圧勝。大将吉良を座らせたまま決勝まで勝ち上がって来た。

オーダー順は下記。

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決勝が開始される

修徳高 - 国士舘高
(先)佐藤竜 - 飯田健太郎(先)
(次)坂口真人 - 磯村亮太(次)
(中)伊藤佑介 - 竹村昂大(中)
(副)原沢脩司 - 山田伊織(副)
(大)小川雄勢 - 吉良儀城(大)

このカードは6月のインターハイ東京予選以来の顔合わせで、この時は国士舘が4-1の大差で勝利している。国士舘の4点の内訳は磯村が原澤に「有効」優勢、吉良が坂口に小外刈「一本」、飯田が伊藤に「指導3」優勢、山田伊織が佐藤竜に小外刈「一本」、一方修徳の1点は小川が山田稔喜から「指導4」で得たもの。今大会の対戦予想カードとはどれもズレるが、僅か1か月前にここまでの差がついたカードであること、そして準決勝で見せた圧倒的な強さを考えるとこの決勝は国士舘の有利を予想せざるを得ない。

まず1年生にして既にポイントゲッターの風格漂う飯田健太郎と、同じく1年生ポイントゲッターの磯村亮太という国士舘の前衛に座る攻撃型の2枚がどこまでを抜くか。事前予測としては飯田、磯村の2枚で副将原澤まで辿り着いても全くおかしくないところで、修徳としてはまずこの2枚を早い段階で止めてしまうことが第1のポイント。

この2人の後にも攻撃力としぶとさを兼ね備えた竹村昂大、全日本カデ90kg超級王者の山田伊織に大黒柱の吉良儀城を置く国士舘の戦力は分厚いが、修徳の大将には大会随一の大駒小川雄勢が控えているという事情がある。小川を相手にするには複数枚を手当てすることが必須で、もし前衛4枚で1人差、2人差のリードを得ることが出来なければ盤面の力関係は一気に反転してしまう。逆に修徳としては同地区東京で度々矛を交えて手の内を良く知る国士舘相手に大量失点せず、しぶとい試合を続けていけば小川一枚の力を以て勝利することは十分可能。

つまりこの試合の盤面配置は、攻撃力抜群の国士舘の前衛4人が、修徳の前4枚に悪くても1人差、出来得れば2人差をつけて勝利しなければいけないというハンデ戦と読み解くことが可能。大将を除いた「四人制団体」で2人差以上ならば国士舘の勝ち、1人差ならば痛み分けで、タイスコアで終了すれば修徳の勝利と考えてこの前段4枚同士の試合を見守るべきであろう。

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先鋒戦、飯田健太郎が右内股で佐藤竜を跳ね上げ「有効」

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終盤飯田は再び右内股、2つ目の「有効」を獲得

先鋒同士の対決は修徳・佐藤竜、国士舘・飯田健太郎ともに右組みの相四つ。
組みさえすれば一発持っていく力のある飯田が釣り手で奥襟を狙い、佐藤はそれをさせまいと形を変えつつ先手の技を打ち、ガップリ組み合う攻防を拒否したまま試合を進める。1分18秒、組み合うことを嫌った佐藤の左一本背負投が偽装攻撃と判断され、佐藤に1つ目の「指導」。

続く展開、飯田は釣り手を叩き入れながらの大外刈、さらにステップを切って右内股に飛び込むが佐藤うまく潰して寝技に持ち込み時間を消費「待て」、1分52秒。

直後飯田は組みつきながら右内股。佐藤インパクトだけで中空に吹っ飛びその瞬間「一本」が想起される強烈な技だったが、体を縦回転に投げだしたせいか決めに掛けこの技は「有効」となる。飯田は以後も攻撃の手を緩めず、2分33秒には佐藤に2つ目の「指導」が宣告される。

佐藤は組み際の左小内巻込に飛び込むが飯田は高く脚を挙げて佐藤を振り落とし、揺るがず。残り23秒には佐藤を思い切り右内股で跳ねあげる。上がった瞬間「一本」が想起される技であったが、跳ねの強さに比して決めが甘く佐藤身を捻りながら畳に落ちて「有効」。国士舘ベンチからは「なぜ決めないんだ!」と叱責が一声。

結果この試合は「有効」2つで飯田が勝利。国士舘がまず一人差のリードを作り出す。

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修徳・坂口真人が左内股「一本」で飯田健太郎を下す

続く試合は修徳の次鋒坂口真人が左、飯田が右組みのケンカ四つ。
坂口は左内股で先制攻撃。十分の組み手を作り上げるとタイミングを計って内股を2度仕掛ける。坂口の技出しは決して早くはなく「狙い過ぎ」の感も漂うが同様に飯田も十分の形を作ることに拘り、技出しで坂口の後手を踏む。焦れた国士舘ベンチからは「一発行ってみろ!」の声。

1分半を過ぎ、坂口は釣り手を内側から、それも高い位置で確保することに成功。ステップを切って左小内刈、左大内刈と続けざまに入れる得意のコンビネーションで間合いを測ると、牽制の左小内刈を経て左内股一発。坂口の一番の得意技を、もっとも力が出る形でまともに受けてしまった飯田は逆らえず宙を舞い「一本」、1分51秒。

ケンカ四つの際の坂口は、このステップを切った左小内刈を放てる状態、相手の左足に左足でアプローチ出来る状態を作れた時がもっとも強い。昨年のインターハイで王者・東海大浦安の息の根を止める内股「一本」を決めて以来徹底マークに逢い、1年間に渡って相四つにあっては釣り手を潰され、ケンカ四つでは間合いに入れさせてもらえない重囲に苦しみ続けて調子を崩して来た経緯があるが、この試合では同じく一発投げたい攻撃型の飯田が「自分も良いが相手も良い」状態を許した結果、久々その力を思い切り発揮するに至った。

得点、そして内容とも大きく修徳に流れを引き寄せる豪快な一撃。得点差はあっという間にタイにリセットされる。

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国士舘・磯村亮太は両襟を握って坂口真人を攻め続ける

第3試合は国士舘の次鋒磯村亮太が右、畳に残った坂口が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続き、31秒双方に「取り組まない」判断の「指導」が与えられる。

磯村は前戦の飯田のアクシデントを受け、両襟を握っての大内刈で前進して坂口を場外際に追い詰める手堅い試合を展開。1分20秒に2つ目の「指導」を得ると、以後はペースを上げて右大外刈、右大内刈、右小外刈で攻め続けて主導権を渡さず。坂口が反撃を試みたいはずの残り30秒からはもう一段ギアを上げて度々右内股を仕掛け、掛け潰れずに立ち続けたままタイムアップの声を聞く。この試合は「指導2」による優勢で磯村が勝利、再び国士舘が1人差のリードを作り出す。

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伊藤祐介が強気に右釣込腰、相四つの磯村亮太相手にも引かず「指導」を積み重ねる

続く第4試合は修徳の中堅伊藤祐介、畳に残った磯村ともに右組みの相四つ。開始早々に磯村肩越しに釣り手を入れる形で圧を掛けてしまい、過敏に反応した主審早々に磯村にクロスグリップの「指導」を宣告。

試合を見る目の確かさで戦うタイプの伊藤にとってこの「指導1」リードは僥倖。伊藤は相四つ横変形から大技の右釣込腰を2度仕掛けて攻勢を演出。磯村は伊藤が先んじて引き手で襟を掴んで突っ張るために思うように釣り手を掴めず、苦しい試合。横変形で潰しあった2分過ぎには双方に「指導」、2分32秒には磯村にのみ3つ目の「指導」が宣告される。

磯村ペースを上げ、2分46秒には極端な防御姿勢の判断で伊藤に2つ目の「指導」が与えられるが、伊藤は右釣込腰の大技を仕掛ける強気のアクションを止めずにあくまで展開を譲らず。そのまま「指導2」対「指導3」、伊藤の優勢勝ちでこの試合は終了。修徳、再びスコアをタイに巻き戻す。

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伊藤祐介が竹村昂大の左小内刈を捻り返して「有効」奪取

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伊藤は谷落で「技有」も追加、2人抜きを達成

第5試合は中堅対決、修徳・伊藤が右、国士舘の竹村昂大が左組みのケンカ四つ。
伊藤釣り手を外側から回して竹村の肩を包み込んで殺すが、竹村焦らず釣り手を動かして肩の可動域を確保すると左内股で先制攻撃。伊藤は右大内刈に触って展開を保とうとするが竹村鋭く返しを試みてこれを許さず。結果竹村の攻勢を評価する形で1分3秒伊藤に「指導1」が宣告される。

伊藤は前襟に脇差しと釣り手の形を変えながらチャンスを探るが竹村冷静に左内股を打って攻勢継続。
大枠竹村優位のまま進むかと思われた試合だが、2分を過ぎたところでこの構図が崩れる。竹村が左小内刈、相手が崩れたとみてダッシュして場外まで追いかけるが、伊藤膝を屈し、次いで尻餅をつきながらも決めのために伸び切った竹村の体を捻り返して「有効」奪取。経過時間は2分12秒、残り時間は1分48秒。

奮起した竹村は左内股を連発して激しく追撃。伊藤が最後までこれを凌ぎ得るか危ういところと思われたが、伊藤はここでまたしてもタフさを発揮。攻め合いの中で互いに腰を差しあい、竹村が左内股の形で足を差し入れたまま双方動きがストップする膠着が現出。両者とも腹を出し、体の力を十分に伝え得る体勢。僅か一瞬、しかし激しい攻め合いの中では意外とも思われる長い拮抗ののち、伊藤が下から後襟を四指で握り、谷落に打って出る。膝上に相手を載せる古風な「掬い投げ」とも取れるこの技に竹村腹を突きだした体勢のまま剛体となり、仰け反って真裏に倒れ「技有」、2分55秒。

決定的な一撃の前に、さすがに竹村も意気阻喪。残り30秒で伊藤に「極端な防御姿勢」での「指導2」が与えられたが試合はそのまま終了となり、この試合は伊藤の優勢勝ちに終着。伊藤の2人を抜く殊勲で修徳はこの試合初めてリードを作り出す。

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山田伊織が有無を言わせぬ裏投「一本」で伊藤を止める

続く第6試合は国士舘の副将山田伊織が出陣。山田は展開を取り戻すべく早い勝負に出、左小外刈、左内股、左小外刈と全く切れ目なく技を連発。伊藤が避難する手立てを探す暇を与えず、この連続攻撃の流れで相手を腹に乗せて強引な裏投一発「一本」。

ここまで悪くなった流れを取り戻すには圧勝しかないと肚を括った山田がミッション完遂。国士舘、なんとかタイスコアで副将対決を迎えるところまで追いすがる。

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副将対決、山田伊織が原澤脩司を攻め込む

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劣勢の原澤だが、終盤は左大外刈を連発して投げに掛かり展開を保つ

第7試合は副将同士の対決。修徳・原澤脩司、国士舘・山田伊織ともに左組みの相四つ。前述の事前展望に従えば前衛四枚による「ハンデつき四人制団体」の帰趨を決める大一番だ。引き分けなら大駒小川雄勢をタイで送り出せる修徳の勝利、山田が勝利すれば国士舘が2人を以て小川と戦うことが可能となり、前段の戦いは痛み分けということになる。

山田は引き手で襟を掴み、釣り手で幾度も奥襟にアプローチ。原澤はことごとくこれを嫌い、山田は切られる度に挑みかかる。主導権は明らかに山田だが主審は技が出ていないと判断、1分8秒双方に「指導」を宣告。

続く展開、山田は支釣込足で原澤を大きく回して伏せさせ、1分20秒過ぎから左大外刈を2連発、さらに支釣込足、左大外刈と技を集中させて20秒以上にわたって一方的攻勢。原澤に「指導」が宣告されてもおかしくないところだが主審はスルー。

展開の悪さを感じた原澤これを受け入れず、なんと抱きついて左大外刈という大技に打って出る。度胸満点の一撃だが山田は冷静、先に畳に落ちた原澤に被って展開を譲らず。
原澤さらに思い切り良く左大外刈、山田はなんとか防いで「待て」。主導権は山田、しかし原澤が散発ながらも大技で投げに行くことで結果拮抗が保たれるという格好。

なかなか原澤を捕まえられない山田、肩越しの組み手で遮二無二原澤を固定。攻撃せずば「指導」となるリスクを十分理解した山田は足技を止めず、さらに内股、大外刈と攻め込むが主審はここに不感症、機械的に肩越しの「指導」を宣告。累積警告は原澤が「1」、山田が「2」。攻勢のはずの山田がビハインドという事態となる。経過時間は3分8秒、残り時間は僅か52秒。

このままでは負けとなってしまう山田はスクランブル体勢。左内股、左大外刈と連続で仕掛けて奥襟を叩くと、頭の下がった原澤に対し主審は「極端な防御姿勢」の判断で2つ目の「指導」を宣告。ここに至ってようやくスコアはタイに戻り、原澤のリードは約30秒で終了。経過時間は3分41秒、残り時間は19秒。

あくまで得点を狙う山田は思い切った左大外刈に打って出るが、原澤も引かずに畳に降りた山田に体を浴びせてめくり返しを試みる。最後まで見応えのある攻防が続いたこの試合はここで終了ブザーが鳴り響き、引き分けで終了。前衛4人ではスコア差はつかず、優勝の行方は大将同士の対決に持ち越されることとなった。

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大将同士の一番、小川雄勢が開始早々支釣込足で吉良儀城を崩す

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小川が吉良儀城から「有効」奪取、そのまま腕緘で攻める

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終盤、小川が2つ目の「有効」

これが4日間に渡る金鷲旗高校柔道大会の最終試合。優勝が掛かる大将同士の対決は修徳・小川雄勢、国士舘・吉良儀城ともに左組みの相四つ。
吉良はまず釣り手から組み手をスタート、あっと言う間に高い位置で横襟を掴むが小川はすかさずリアクション。まず巻き込みの形で腕を抱き込み、次いでその腕を両手でロックしながらひと呼吸で支釣込足に変化。吉良大きく崩れて畳に伏せ、小川は縦四方固を狙って被さるが吉良は下からめくり返して脱出すると小川の背について送襟絞を狙う。小川が吉良を振り落して再び抑え込みを狙ったところで「待て」。経過時間は37秒。

小川が奥襟を掴むと吉良巧みに肩越しを強いて横車に体を捨てる。しかし中途で隙間が出来てしまい、吉良自ら畳に背を着く形で崩れ「待て」。

中盤、互いが横変形で膠着し1分47秒双方に「指導1」。

2分過ぎ、吉良が先に釣り手で横襟を掴むと、引き手で腹の辺りの襟を掴んだ小川が体を回して吉良の釣り手を抱き込みに掛かる。吉良が小川の背中を抱こうと一歩進んだその瞬間、小川が一段スピードを上げて左払巻込に体を捨てると移動の瞬間を刈り飛ばされた形の吉良は勢いよく転がって「有効」、2分12秒。小川はそのまま被って腕緘を狙い、長い攻防の末に「待て」。

リードを得た小川いったん試合を落ち着けに掛かり、互いが横変形で動きを殺しあった3分7秒双方に「指導2」。

直後吉良が小川の背にアプローチ、果敢に横車を放つが釣り手の胴体拘束が十分ではなく、仕掛けた自身だけが畳に落ちて「待て」。

残り時間20秒。双方横変形で首を殺しあったところから、後のなくなった吉良が一か八かの左大外刈。しかし待ち構えた小川は吉良が足を振り上げる間に一歩その釣り手側に移動、自身の釣り手を離さず吉良の首を固めたまま押し戻し、左払巻込で返して「有効」。

もはや吉良に抗う力は残っておらず、試合はそのまま終戦。小川が「有効」による優勢でこの試合を制し決勝の全試合が終了。修徳が見事この決勝を制し、金鷲旗高校柔道大会初優勝、そして高校選手権に続く今季2つ目の全国タイトルを獲得することとなった。

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優勝決定の瞬間、淡々と試合場を見つめる修徳ベンチ

修徳高○大将同士△国士舘高
(先)佐藤竜△優勢[有効・内股]○飯田健太郎(先)
(次)坂口真人○内股△飯田健太郎(先)
(次)坂口真人△優勢[指導2]○磯村亮太(次)
(中)伊藤佑介○優勢[指導3]△磯村亮太(次)
(中)伊藤佑介○優勢[技有・谷落]△竹村昂大(中)
(中)伊藤佑介△裏投○山田伊織(副)
(副)原沢脩司×引分×山田伊織(副)
(大)小川雄勢○優勢[有効・浮落]△吉良儀城(大)

決勝の勝利の因はなんといっても中堅伊藤祐介の大活躍。次いで形勢不利のはずの試合の流れを一変させる鮮やかな「一本」を挙げた坂口真人の一撃。

そして今大会優勝の最大の要因は、大駒小川雄勢ではなく前衛四枚の責任感の高さ。優秀選手に輝いた伊藤祐介はもちろん、準々決勝で小川に試合を流さずあくまで勝負に出て試合を決定づける「一本」を挙げ、決勝の副将対決では情勢の緩やかな悪化を受け入れず、リスク覚悟の大外刈で投げに行くことで引き分けをもぎ取った原澤脩司の度胸と使命感は鳥肌ものであった。

今季二度目の全国制覇を果たした修徳にあって他チームになかったものは絶対の大駒一枚ではなく、己が勝負に出ないとチームの勝利は掴めないということが骨身に染みた四枚の存在であろう。春以降不調であるいはアウトサイダーではという評すらあった修徳優勝の因はこれに尽きる。優勝するためには何が必要かを全員が体で理解していた、つまりは全国制覇という経験値がチームを大きく成長させた典型ケースのような二冠奪取劇であった。

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胴上げで宙を舞う大森敦司監督

それにしても修徳が今大会に向けて描いた上昇カーブは規格外であった。インターハイ東京予選の大敗を現場で見た者であれば、この金鷲旗の勝利、それもベストメンバーの国士舘を凌いでの優勝という結果を予想することは到底出来なかったはずだ。敗戦時のスコアはもちろんのこと、以後の各種大会を観察する限りでも修徳の雰囲気は決して良くはなく、そのストロングポイントであるチームのまとまりが感じられる状態ではなかった。「大森敦司監督は「お前たちの代だから、と3年生だけの稽古を組み続けた」とだけ説明したが、いったいそこに何があったのか。その手腕には改めて驚嘆せざるを得ない。「勝ち切れない子が大好き」と、競技成績を残していない選手を集めて全国の上位で戦うところまで育て上げ続けて来た、「チーム」としての6年間の育成の成果と言うほかはない。

国士舘は1年生の磯村、飯田を加えて巨大戦力と評される陣容となったが、攻撃型ゆえに役割が嵌ると目された飯田が、まさしくその攻撃を生かすために鷹揚に組み、その失点が歯車を狂わせてしまうこととなった。結果からすると、一点を欲しがったために団体戦では何より避けたい前半の失点を蒙ったということになり、これは1年生にとっては酷な結果であった。団体戦の厳しさを知るがゆえに一貫して新戦力の採用に慎重、むしろ他チームの1年生はどんなに強くとも弱点として潰しに掛かる岩渕公一監督従来の戦術傾向としては異例の起用であったが、これはそれだけ普段の稽古でいかに飯田の強さが際立っているかの証左でもあろう。国士舘のインターハイに向けた立て直し、そして当代随一の素材として評価の高い飯田の今後一層の成長に期待したい。

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優勝の修徳高

【入賞校】

優 勝:修徳高(東京)
準優勝:国士舘高(東京)
第三位:大成高(愛知)、天理高(奈良)
ベスト8:作陽高(岡山)、大牟田高(福岡)、白鴎大足利高(栃木)、東海大五高(福岡)

【優秀選手】

小川雄勢、伊藤佑介(修徳高)
山田伊織、磯村亮太(国士舘高)
神鳥剛(大成高)、古田伸悟(天理高)
安達健太(作陽高)、山口智広(大牟田高)、太田彪雅(白鴎大足利高)、川野義文(東海大五高)


大森敦司監督のコメント
「うれしいです。選手が頼もしく映りました。ありがとうと言いたいです。インターハイ予選で大差で負けて『もう1回ゼロからやろう』と話して、気持ち作りの面を大事にここまでやってきました。7月に入ってからは試合に出る者も出ない者も、とにかく3年生だけの稽古をやりました。自分たちの代に誇りを持てるようになって欲しかったんです。選手も、選手以外の子も皆明らかに変わってきたと思います。準決勝が終わって選手に『小川の代じゃないぞ、一人一人が主役だぞ』と改めて話したのですが、小川に頼らなかったのが何よりの勝因ではないでしょうか。正直、相手の前2人にどこまで行かれるかと思っていたのですが(笑)、選手が頼もしく見えた、この一言です」

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