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グランドスラムチュメン最終日各階級レポート

(2014年7月18日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版7月18日掲載記事より転載・編集しています。
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各階級レポート
グランドスラムチュメン最終日
■ 81kg級
-第2シードのペナウベウが優勝、2位はスティーブンス破った21歳のクベトソフ-

【入賞者】 エントリー 30名
1.PENALBER, Victor(BRA)
2.KHUBETSOV, Alan(RUS)
3.SEMENOV, Stanislav(RUS)
3.VALOIS-FORTIER, Antoine(CAN)
5.PSHMAKHOV, Arsen(RUS)
5.STEVENS, Travis(USA)
7.CIANO, Antonio(ITA)
7.KOKOVICH, Ilya(RUS)

優勝は第2シードのビクトル・ペナウベウ(ブラジル)。2回戦でマーセル・オット(オーストリア)を組み際の右大外刈で「一本」(4:14)、準々決勝はイリヤ・ココヴィチ(ロシア)を「一本」と見紛う勢いの左背負投で投げ落とし「有効」優勢で勝利、準決勝は上位常連のアントワーヌ・ヴァロワフォルティエ(カナダ)を開始12秒の右大外刈「一本」で一蹴して決勝進出。決勝では前戦で第1シードの寝技師トラヴィス・スティーブンス(アメリカ)を破った地元ロシアの21歳アラン・クベトソフの左払腰を隅落で返して「技有」を奪い、危なげなく優勝を決めた。優勝候補筆頭との前評判通り、安定感溢れる試合ぶりだった。

ロンドン五輪5位のスティーブンスは前述の通り準決勝でクベトソフに敗退。片襟の右背負投で「有効」を奪いながら左大腰「有効」を取り返された末にGS延長戦で息切れし「指導2」で敗退。3位決定戦もスタニスラフ・セメノフ(ロシア)に一本負けで5位に沈んだ。

第3シードのヴァロアフォルティエは3位を確保。3位決定戦はアーセン・プシュマコフ(ロシア)を相手に圧倒的な場面はほとんどないが局面を制し続けてジリジリと差をつけ結果「指導」4つを得ての勝利というまことにこの人らしい内容で、良くも悪くも今大会も持ち前の安定感、歩留まりの良さを見せつけた形。この人のワールドツアー本格参戦は2013年からだがここまでの1年半でワールドツアー(IJF主催大会)の3位入賞はこれが4回目、決勝進出は1度もないが5位は3回で、つまりは3位決定戦への進出は実にこれが7度目。上位常連という言葉はこの人にこそふさわしい。

日本勢の若手2人はいずれも早期敗退。小原拳哉(東海大2年)は2回戦でイリヤ・ココヴィッチ(ロシア)に巴投で2度投げられて合技「一本」でトーナメント脱落。丸山剛毅(天理大4年)はツアー常連のラスズロ・クソクナイ(ハンガリー)を「指導2」で降したが、3回戦ではクベトソフを相手に内股「技有」をリードしながら痛恨の逆転負け。81kg級はかつての大苦戦から中井貴裕の数年にわたる粘戦を皮切りに13年ワールドマスターズ2位の長島啓太、そして13年グランドスラム東京優勝の永瀬貴規とファイナルまで勝ち残る人材が出始め、丸山、小原ら若手の層も厚くなりつつあり階級全体の底が上がって来た印象であったが今大会は非常に厳しい結果。国内のトップグループが必死で戦い、なんとか上位に食い込もうという国際舞台の厳しさを、若手があらためて突き付けられた大会となった。

【日本人選手勝ちあがり】

小原拳哉(東海大2年)
成績:1回戦敗退

[1回戦]
小原拳哉△合技(2:24)○イリヤ・ココヴィチ(ロシア)
ケンカ四つ。1分57秒ココヴィッチが巴投で「技有」獲得。以後奮起した小原が終始攻め続けるが姿勢が低くなったところでココヴィッチが場外際で巴投「技有」。合技「一本」で試合終了。

丸山剛毅(天理大4年)
成績:2回戦敗退

[1回戦]
丸山剛毅○優勢[指導2]△ラスゾロ・クソクナイ(ハンガリー)
丸山左、クソクナイ右組みのケンカ四つ。序盤に頭を下げさせ42秒に「指導1」奪取、1分30秒にも相手の消極姿勢で「指導2」を奪い、失点を2分40秒の「指導」1つに抑えて逃げ切り。

[2回戦]
丸山剛毅△優勢[指導2]○アラン・クベトソフ(ロシア)
左相四つ。1分3秒に相手を上下に煽っておいての左内股を回しこんで「技有」を先制するが、1分58秒に袖釣込腰で「技有」を奪い返されてしまう。2分46秒、3分36秒と立て続けに「指導」を失い終戦。

■ 90kg級
-吉田優也が見事優勝、決勝対決でチョリエフを降す-

【入賞者】 エントリー11名
1.YOSHIDA, Yuya(JPN)
2.CHORIEV, Dilshod(UZB)
3.MAGOMEDOV, Magomed(RUS)
3.SULEMIN, Grigorii(RUS)
5.FACENTE, Walter(ITA)
5.GASIEV, Murat(RUS)
7.GAHRAMANOV, Shahin(AZE)
7.TOTH, Krisztian(HUN)

今年度選抜体重別王者、アジア大会代表の吉田優也(旭化成)が見事優勝を飾った。
唯一の山場は決勝のディルショド・チョリエフ(ウズベキスタン)戦。過去1勝3敗と苦手にしていたはずの選手だが、背中を叩いて来る相手を冷静に足技で崩し続けて「指導3」まで奪取。さらに、後のなくなったチョリエフが仕掛けた強引な左内股を狙い済ましてめくり回して隅落「技有」という理想的な試合運び。終盤守勢に回って「指導」3つを失いはしたもののお冷静さを保ったまま試合をまとめてフィニッシュ。見事2010年グランプリデュッセルドルフ、2010年グランプリロッテルダム以来3度目となるIJF主催大会のタイトルを勝ち取ることとなった。

なかなか勝てなかった選抜体重別についに優勝し、アジア大会にも出場が決まった吉田にとっては毎試合毎試合が五輪代表レースに生き残っていけるかどうかのシナリオ分岐。今回はキッチリ結果を残してさらに一段「正」方向の階段を上った形となった。

参加僅か11名、吉田とチョリエフの戦いくらいしか見どころがないのではと思われたトーナメントであったが、3位にはグリゴリ・スレミンとマゴメド・マゴメドフのロシアの実力者2名がしっかり入賞して力を見せた。好調の21歳クリスチャン・トスは第1シードを得たが初戦でチョリエフに敗れて終戦、7位に沈んでいる。

【日本人選手勝ちあがり】

吉田優也(旭化成)
成績:優勝

[1回戦]
吉田優也○優勢[技有・大内刈]△ヨアキム・ドファービ(スウェーデン)
吉田が右、ドファービが左組みのケンカ四つ。「指導」3つを奪って相手を追い詰めた3分48秒、右大内刈で「技有」奪取。

[準々決勝]
吉田優也○合技(3:39)△シャヒン・ガーラマノフ(アゼルバイジャン)

[準決勝]
吉田優也○内股透(5:00)△グリゴリ・スレミン(ロシア)
ケンカ四つ。相手のパワーに屈せず、内股を股中で透かして「一本」。

[決勝]
吉田優也○優勢[技有・隅落]△ディルショド・チョリエフ(ウズベキスタン)

吉田が右、チョリエフ左組みのケンカ四つ。背中を叩いてくるチョリエフを吉田冷静にいなしつつ足技を飛ばし続けて間合いを調整、42秒にチョリエフに「指導」、54秒には極端な防御姿勢の判断で双方に「指導」。焦れたチョリエフは肩越しの組み手を選択、しかし技を出すことが出来ずに1分41秒クロスグリップの「指導」が宣告される。「指導3」失陥と後のない状況に陥ったチョリエフは背中を引き付けて強引な左内股に打って出るが吉田余裕を持って釣り手方向に体を捨ててめくり返し隅落「技有」。以後、これまで試合を作ってきた足技が止まってしまい3分16秒「指導2」、3分50秒「指導3」と失うが、大枠危なげなく試合を終える。

■ 100kg級
-優勝はガシモフ、羽賀龍之介破ったレイズカヨルが2位に入賞-

【入賞者】 エントリー13名
1.GASIMOV, Elmar(AZE)
2.REYES, Kyle(CAN)
3.HAGA, Ryunosuke(JPN)
3.PACEK, Martin(SWE)
5.OMAROV, Arsen(RUS)
5.SAYIDOV, Ramziddin(UZB)
7.CORREA, Luciano(BRA)
7.OGAWA, Ryuko(JPN)

優勝は第3シードのエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)が浚ったが、トーナメントの主役は日本大3年のレイズカヨル(カナダ)。1回戦はケンカ四つのミカエル・コシャスニコフ(ロシア)に手を焼き「指導2」対「指導1」の辛勝だったが、以降は相四つの強豪に連勝。準々決勝は07年リオ世界選手権金メダリストの第1シード者ルシアーノ・コヘア(ブラジル)を相手にまず左大内刈から左小外刈と繋いで「技有」奪取、さらに前に出てくる相手に合わせて豪快な左内股「一本」(4:26)。そして準決勝では日本期待の羽賀龍之介(旭化成)を左内股「一本」に仕留めて決勝へと駒を進めることとなった。

決勝ではケンカ四つのガシモフの右袖込腰を受けて51秒やや勿体ない「指導1」失陥。まだまだ序盤戦で試合はこれからと思われたがこの失点が命取りとなってしまう。レイズの内股とガシモフの袖込腰により試合は動的膠着、2分47秒双方に「指導」が与えられ、この試合はそのまま「指導2」対「指導1」の僅少差を以て決着。23歳のガシモフがIJF主催大会初優勝、初優勝を狙ったレイズは12月のグランプリ済州大会に続く2度目の2位で試合を終えることとなった。

優勝こそ逃したとはいえレイズは世界王者コヘアを倒し、そしてついに同階級の日本のホープ羽賀を、それも「一本」で降して勝利してまことに収穫の多かった大会。相四つの2試合では強豪2人を圧倒する反面ケンカ四つの2試合は大苦戦とまだまだ課題は多い印象だが、国内大学カテゴリの強豪として認知されるのみならず、カナダ代表として出場するであろうチェリャビンスク世界選手権の有力選手として一段評価を上げた大会であった。

羽賀は過去2度勝利しているコヘアが第1シードに入ったこともあり、相性的にも実力的にも優勝は現実的に手が届くところにあるかに思われたが、失意の3位。異例の「1シーズン2大会派遣」を命じた首脳陣の期待に応えることが出来なかった。

前戦のブタペスト大会決勝でグロルに喫した谷落に続き、敗退はいずれも投技による「一本」。意外な受けの脆さが課題なのか、最終的に思い切り仕掛けることを許してしまう試合運びの過程が問題なのか、それともこだわり続ける内股の、タイミング良く仕掛けれども投げ切れない決めの精度と強さ、バリエーションを考えるべきなのか。いずれ、王道スタイルの柔道を志向し貫こうとするがゆえにファンに支持され、首脳陣にもそのポテンシャルを高く買われてきた羽賀の柔道は今、明らかな岐路にある。打開の方向はどこにあるのか、結実はいつと見積って見守るべきなのか。今後に注目である。

昨年のジュニア世代から参加の小川竜昂(国士舘大3年)はガシモフ、そしてラムズディン・サイドフ(ウズベキスタン)という中堅の強豪2人に敗れ、7位に留まった。

【日本人選手勝ちあがり】

羽賀龍之介(旭化成)
成績:3位

[1回戦]
羽賀龍之介○小外刈(4:37)△アドラン・ビスルタノフ(ロシア)
羽賀が左、ビスタノフが右組みのケンカ四つ。なかなか組ませてもらえず両者に「指導2」累積。終盤、羽賀の小外刈が決まって「一本」

[準々決勝]
羽賀龍之介○内股(4:25)△マーティン・パチェック(スウェーデン)
ケンカ四つ。前戦で羽賀に敗れているパチェックが粘りの試合を展開。「指導2」対「指導1」でリードの終盤、組み際に切れ味鋭い左内股で「一本」。

[準決勝]
羽賀龍之介△内股(0:58)○カヨル・レイズ(カナダ)
左相四つ。羽賀の前進に合わせた左内股が決まってレイズの一本勝ち。

[3位決定戦]
羽賀龍之介○内股(1:55)△ラムズディン・サイドフ(ウズベキスタン)

小川竜昂(国士舘大3年)
成績:7位

[1回戦]
小川竜昂○GS指導4(GS0:50)△ソイブ・クルバノフ(ウズベキスタン)
[準々決勝]
小川竜昂△横掛(3:32)○エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
[敗者復活戦]
小川竜昂△反則[指導4](4:49)○ラムズディン・サイドフ

■ 100kg超級
-シウバが日本勢2人を破って優勝、全日本王者王子谷は前半の慎重な試合運び祟って惜しくも2位-

【入賞者】 エントリー16名
1.SILVA, Rafael(BRA)
2.OJITANI, Takeshi(JPN)
3.HARASAWA, Hisayoshi(JPN)
3.SARNACKI, Maciej(POL)
5.HEINLE, Sven(GER)
5.NATEA, Daniel(ROU)
7.MEYER, Roy(NED)
7.PROKIN, Sergey(RUS)

絶対王者リネール(フランス)を追う2番手グループからの参加はリーダー格のラファエル・シウバ(ブラジル)のみ。よってトーナメントの興味はシウバ対、王子谷剛志(東海大4年)と原沢久喜(日本大4年)の日本が誇る若手のホープ2人ということに絞られた。

決勝カードはシウバ-王子谷。シウバは1回戦でオール・サッソン(イスラエル)を「指導3」対「指導1」の優勢で下し、原沢久喜とマッチアップした準々決勝も大枠攻められっぱなしのはずが結果的には「指導1」優勢で勝ち抜け、準決勝もスヴェン・ハインル(ドイツ)を「指導4」(0:33)の反則と試合巧者ぶりを如何なく発揮しての決勝進出。一方の王子谷は初戦でソスラン・ボスタノフ(ロシア)を得意の大外刈「一本」(1:29)で降して波に乗ると、第3シードのロイ・メイヤー(オランダ)を払腰「一本」(1:16)、第2シードのダニエル・ナテア(ルーマニア)を「指導4」(2:39)とワールドツアー常連の中堅選手を問題にせずに連勝。圧勝続きでの決勝進出。

決勝はシウバ、王子谷ともに右組みの相四つ。シウバは左構えからまず引き手、続いて奥襟と繋ぐ王道の組立て、王子谷は両襟を握ってこの圧に耐えて顔を上げ、次いで引き手を袖に持ち替えるという手順。

王子谷がジュニアの選手だった2012年以来の再戦となるこのカード、興味は急成長の王子谷とシウバの力関係が明らかになるはずのこの序盤の組み合い。

シウバは王子谷の組み手を嫌い、2度自ら釣り手を切る動作を見せる。そのセンシティブな反応から王子谷にも分があるかと思われた40秒過ぎ、シウバが自ら切ったその釣り手を奥襟に叩き込み直すと瞬間王子谷は膝を屈してしまい、シウバ優位の力関係がこの攻防で表出。さらに王子谷が斜めの大外刈を仕掛け掛けてあっさり戻ると、機が熟したと踏んだシウバが技を出し始めて山場を作りに掛かり、シウバが右内股から自ら潰れた2分26秒王子谷に消極の「指導1」。さらにシウバが両襟の右払腰を仕掛けた直後の3分10秒に「指導2」が与えられる。いずれも明らかに投げる気のない技だが、インサイドワークで勝ち抜くスタイルのシウバの巧さが際立つ得点経過。

王子谷は左一本背負投を試みるがサイズが噛みあわず腕が抜けてしまい自ら畳に落ちて「待て」、シウバは流れを渡すまいと右の低い一本背負投で座り込んで対抗、王子谷はしっかり潰すがこれで自身の攻勢点はリセットとなってしまう。続く展開、王子谷は片袖を握った左袖釣込腰を打ってシウバを崩し、これに感触を得て同じ技を数度。4分4秒にはシウバに「指導1」が与えられるが、続く展開でシウバは王子谷の奥襟をガッチリ握って封殺、王子谷はこの無理な体勢から左袖釣腰を仕掛けて潰れて偽装攻撃の「指導3」を受けてしまう。残り時間は38秒。

後の無くなった王子谷、ここで腹を決めたか得意のステップを切っての支釣込足、さらにタイミング良く右大外刈に飛び込む。シウバは足を掛けられたまま踏ん張って耐え、王子谷はいったん戻るが再び思い切った右大外刈。シウバ今度は耐えきれず振り返りながら伏せて「待て」。

ようやく王子谷がペースを掴みかけたこのタイミングで試合は終了。「指導3」対「指導1」でシウバが勝利、客観的にはまことに順当に優勝を決めた。

王子谷が得意の大外刈を繰り出したのは残り30秒を過ぎてからの最終盤。大外刈が王子谷の最大の武器であり、また組み負けたところからでも思い切って大外刈に踏み込めるのが王子谷の長所であり、そして仕掛けた2度はいずれもシウバに返せる気配なくどこから見ても王子谷の攻勢でシークエンスが終了していただけに、なんとも勿体ない試合という印象が残った。慎重に入った前半、順方向の技の恐怖を与える状況的な「作り」がないまま逆技の左袖釣込腰に拘って相手を慣れさせてしまった中盤の組立てがいかにも悔やまれる。結果論だが、上から目線での大外刈連発という王子谷らしい思い切った入りで試合をかき回していれば十分勝利の目があったのではないだろうか。王子谷らしからぬ相手への「リスペクト」が呼び込んだシウバペースの試合であり、まことに惜し過ぎる試合であった。

とはいえ、王子谷の大外刈が十分通用する、少なくとも消耗した終盤にはこれを返すだけの力がシウバには備わっていないこと、大砲一発を持つ王子谷タイプの慎重な入りはインサイドワークで勝ち抜くタイプのシウバには逆にペースを掴ませてしまうこと、王子谷の奥襟に過剰反応して組み手のやりなおしを続けた序盤のシウバの神経質さ、など今後に向けて得た材料は数多い。打倒リネールよりは、「2番手に座り続けること」が当面の課題となる日本勢、当面最大のターゲットであるシウバに対し貴重なデータを積み重ねることが出来た大会でもあった。

原沢は前述の通りシウバに「指導」で敗れたものの以後は連勝、3位決定戦ではナテアを僅か1分18秒の内股「一本」で一蹴。王子谷同様「リネールの次」を争うグループに居座る実力があることはしっかり示して大会を終えた。

【日本人選手勝ちあがり】

王子谷剛志(東海大4年)
成績:2位

[1回戦]
王子谷剛志○大外刈(1:29)△ソスラン・ボスタノフ(ロシア)
[準々決勝]
王子谷剛志○払腰(1:16)△ロイ・メイヤー(オランダ)
[準決勝]
王子谷剛志○反則[指導4](2:39)△ダニエル・ナテア(ルーマニア)
王子谷が右、ナテアケンカ四つ。反則「指導4」。裏投げを警戒しつつ手堅く攻めて早々に4つの「指導」を奪取。

[決勝]
王子谷剛志△優勢[指導3]○ラファエル・シウバ(ブラジル)
序盤慎重な試合運びを突かれて「指導2」失陥。左袖釣込腰で追撃して「指導1」を得るが、目の慣れたシウバにしっかり潰され偽装攻撃の反則を受けて「指導3」まで失う厳しい展開。肚を決めた終盤右大外刈を連発して追いかけるが時すでに遅くそのままタイムアップ。

原沢久喜(日本大4年)
成績:3位

[1回戦]
原沢久喜○内股透(2:03)△セルゲイ・ケサエフ(ロシア)
原沢が右、ケサエフは左組みのケンカ四つ。序盤に「指導」を失ったがが、前に出てくる相手をうまくいなし、相手の左内股を透かして「一本」。

[準々決勝]
原沢久喜△優勢[指導1]○ラファエル・シウバ(ブラジル)
右相四つ。原沢が終始攻め続けるが試合巧者のシウバ反則を奪われるところまでは状況を積ませず、2分27秒に原沢に与えられた「指導」1つを以て決着。

[敗者復活戦]
原沢久喜○合技[小外掛・袈裟固](3:13)△セルゲイ・プロキン(ロシア)
右相四つ。開始37秒に偽装攻撃、続いて1分14秒と1分30秒に片襟と相手に立て続けに「指導」が累積。3分2秒、後のなくなった相手から小外掛で「技有」奪取、そのまま袈裟固に抑え込む。

[3位決定戦戦]
原沢久喜○内股(1:18)△ダニエル・ナテア(ルーマニア)

■ 70kg級
-ポリング順当に優勝、新井千鶴はズパンシックに苦杯で3位-

【入賞者】 エントリー18名
1.POLLING, Kim(NED)
2.ZUPANCIC, Kelita(CAN)
3.ARAI, Chizuru(JPN)
3.KIM, Seongyeon(KOR)
5.CHEN, Fei(CHN)
5.EMANE, Gevrise(FRA)
7.CONWAY, Sally(GBR)
7.DENISENKOVA, Ekaterina(RUS)

第1シードの最強選手キム・ポリング(オランダ)を筆頭にワールドランキングの上位9人のうち7名が出場するという準世界選手権といって差し支えない陣容のトーナメント。

優勝はもちろんポリング。2回戦はスザンドラ・ディードリッヒ(ドイツ)を右内股「有効」からの崩袈裟固「一本」(1:51)で一蹴、準々決勝はチェン・フェイ(中国)を得意の一本背負投で攻め立てて「指導2」優勢で勝利、準決勝は昨年世界選手権でアップセットを許したキム・センヨン(韓国)を「指導2」で降すと、決勝は第3シード者ケリタ・ズパンシック(カナダ)の大内刈を受け止めるとゆっくりと持ち上げ、片足を高く上げる豪快な裏投で畳に叩き付けて「技有」奪取。終盤移腰を狙ったところに大内刈を合わされて「有効」を失ったが余裕を持って時計の針を進め、しっかり優勝を飾って見せた。世界選手権を前に全開、とはまでは言い難いが、手堅さと瞬発力をともに見せつけたさすがの勝利であった。

日本の新井千鶴(三井住友海上)は3位。準々決勝で今季から70kg級に復帰したもと世界王者ジブリス・エマヌ(フランス)を下して力を見せつけたが準決勝ではズパンシックを相手に痛恨の敗戦。3位決定戦のチェン・フェイ戦は開始54秒の見事な左内股「一本」で勝利して表彰台を確保したが、国際大会に強いという自らの適性を改めて示したかったはずの今大会、本人にとって満足できる結果でないことは試合後の表情からも明らかだった。

エマヌは新井に敗退した後、キム・センヨンとの3位決定戦を「指導2」対「指導3」で落として5位陥落。大会直後に発表されたフランス代表の最終選考ではファニー・エステル・ポスヴィトが70kg級の代表に選出され、エマヌの世界選手権出場の可能性は潰えた。


【日本人選手勝ちあがり】

新井千鶴(三井住友海上)
成績:3位

[2回戦]
新井千鶴○合技[小内刈・横四方固](1:54)△アレナ・ポラコペンコ(ロシア)
新井が左、ポラコベンコ右組みのケンカ四つ。1分12秒に左小内刈「技有」奪取。1分30秒過ぎに左小内刈、左大内刈と連絡して相手を崩して横四方固。合技「一本」。

[準々決勝]
新井千鶴○優勢[指導3]△ジブリス・エマヌ(フランス)
相手の受けが強く拮抗した戦い。「指導3」対「指導2」の反則累積差でもと世界王者エマヌを下す。

[準決勝]
新井千鶴△優勢[技有・小内刈]○ケリタ・ズパンシック(カナダ)
左相四つ。互いに一歩も引かぬ戦い。最終盤、ズパンシックが小内刈で「技有」。

[3位決定戦]
新井千鶴○内股(0:54)△
十分の形からまず足を引っ掛け、続いて踏み込んで豪快な「一本」。

■ 78kg級
-アギアールが優勝、注目のハリソンは決勝を棄権-

【入賞者】 エントリー17名
1.AGUIAR, Mayra(BRA)
2.HARRISON, Kayla(USA)
3.OKAMURA, Tomomi(JPN)
3.POGORZELEC, Daria(POL)
5.LI, Yang(CHN)
5.UMEKI, Mami(JPN)
7.GALEONE, Assunta(ITA)
7.MOSKALYUK, Vera(RUS)

第1シードはツアー皆勤者のヨー・アビゲイル(ハンガリー)だがトーナメントの興味はマイラ・アギアール(ブラジル)と6月のグランプリ・ハバナ大会で突如復帰、オドレイ・チュメオ(フランス)を破るというハイコンディション時と変わらぬ力を示したロンドン五輪王者ケイラ・ハリソン(アメリカ)の頂上決戦に絞られる。

両者は順当にトーナメントを勝ち上がる。
第2シードのアギアールは2回戦でアレナ・カチロフスカヤ(ロシア)と対戦、小内刈をかわして切り返した支釣込足「技有」で勝利すると準々決勝は岡村智美を僅か27秒、これも支釣込足「一本」で一蹴。準決勝はダリア・ポゴジャレッツ(ポーランド)を左体落「一本」(0:48)と圧倒的な勝ち上がりでの決勝進出。

一方のハリソンは2回戦でジェンマ・ギボンス(イギリス)をGS延長戦「指導2」(GS0:48)で下すという辛勝スタート。準々決勝は前戦でヨーを破って勝ち上がって来たベラ・モスカリュク(ロシア)とこれも「指導1」ずつを取り合ってGS延長戦に突入、組み際の右大内刈「有効」(GS0:42)で下してなんとか勝利。準決勝は梅木真美に終始攻められ続けるこれも苦しい試合だったが、1分12秒に浮技で「有効」を獲得、梅木の反撃を残り3秒の「指導3」までに抑えきって決勝進出を決めた。

アギアールとハリソンは北京-ロンドン期の78kg級シーンを牽引したトップグループのライバルで、対戦成績は確認出来る限りではハリソンの6勝4敗。果たして世界選手権直前の今大会両者の試合の様相はいかに、と会場固唾を飲む注目カードであったが、ハリソンは棄権して決勝の畳に現れず。今大会一番の目玉と注目されたこの試合はアギアールの不戦勝という形で決着した。

準決勝までの試合を見る限りハリソンが負傷した可能性はほぼゼロに近く、この棄権は明らかに世界選手権での対戦を意識した回避策と思われる。アメリカ人らしく合理的とも、いかにもメンタルの浮き沈みの激しい女子の一典型であるハリソンらしいとも評すことの可能な直前逃亡劇であった。

ハリソンの勝ち上がりは前述の通り綱渡りで、3大会(GPハバナ優勝、パンナムオープンサルバドール2位、GSチュメン2位)で残した成績の高さと辛勝続きの内容の掛け算で世界選手権のパフォーマンスには一定の予測がついた感あり。この日の戦いから世界選手権に向けて脳裏に刻んでおくべきはアギアールの強さであろう。

日本の岡村は前述の通りアギアールに、梅木はハリソンに敗れて本戦から脱落。両者が3位決定戦で対戦し、岡村が小外掛「有効」で勝利して表彰台を確保した。

【日本人選手勝ちあがり】

岡村智美(コマツ)
成績:3位

[2回戦]
岡村智美○合技[内股・袈裟固](1:29)△イヴァナ・マラニッチ(クロアチア)
岡村が左、マラニッチが右組みのケンカ四つ。左内股「技有」から袈裟固に繋いで快勝。相手を終始圧倒。

[準々決勝]
岡村智美△支釣込足(0:27)○マイラ・アギアール(ブラジル)
左相四つ。場外際でアギアル得意の支釣込足に引っ掛かり、意表を突かれたかのように「一本」。

[敗者復活戦]
岡村智美○小外掛(1:32)△アッスンタ・ガレオーニ(イタリア)

[3位決定戦]
岡村智美○優勢[有効・小外掛]△梅木真美
左相四つ。38秒梅木にクロスグリップの「指導」。1分3秒、梅木が奥襟を叩いて左大内刈を狙おうとするが迎え打った岡村先んじて左小外掛。梅木だるま落としのように転がり「有効」。このポイントで岡村の勝利。

梅木真美(環太平洋大2年)(コマツ)
成績:5位

[2回戦]
梅木真美○横四方固(1:31)△ナタリー・ポウエル(イギリス)
左相四つ。序盤に場外際の「指導」を受けるが、相手の大内刈を上手く捌いて潰して寝技でしつこく攻める。ポウエル耐えきれず横四方固に固めて「一本」

[準々決勝]
梅木真美○崩上四方固(1:10)△
左相四つ。「指導」1つを奪い、得意の横三角からの崩上四方固で「一本」

[準決勝]
梅木真美△優勢[有効・隅返]○ケイラ・ハリソン(アメリカ)
梅木は左、ハリソン右組みのケンカ四つ。梅木、五輪王者に怖じずに激しく攻め立て1分34秒までに2つの「指導」を得るが、2分48秒ハリソンの浮技で転がってしまい「有効」失陥。残り3秒で3つ目の「指導」奪取も届かず試合終了。

[3位決定戦]
梅木真美△優勢[有効・小外掛]○岡村智美

■ 78kg超級
-山部佳苗優勝、役者揃ったトーナメントを全試合一本勝ちで制す-

【入賞者】 エントリー14名
1.YAMABE, Kanae(JPN)
2.LEE, Jung Eun(KOR)
3.ALTHEMAN, Maria Suelen(BRA)
3.QIN, Qian(CHN)
5.GAO, Man(CHN)
5.KUELBS, Jasmin(GER)
7.INAMORI, Nami(JPN)
7.SLUTSKAYA, Maryna(BLR)

第1シードにマリア・スエレン・アルセマム(ブラジル)、第3シードにヤスミン・クルブス(ドイツ)、第4シードは世界選手権銅メダリストのイ・ジュンユン(韓国)、さらにチン・チェン(泰茜・中国)と強豪が集まったトーナメントを制したのは日本代表の山部佳苗(ミキハウス)。2回戦でマリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)を腕緘「一本」(2:16)、準決勝で前戦でクルブスを倒したガオ・マン(中国)を内股透「一本」(0:59)に切って落とすと決勝はイ・ジュンユンと対戦。前技の牽制で手数を積み重ねようとするイを両襟からの足技で追い詰め、1分44秒に右大外刈一閃、豪快な「一本」。ファーストアタックで勝負を決めて2月のグランドスラムパリに続くキャリア2度目のIJF主催大会優勝を成し遂げた。

皇后盃、そして選抜体重別の成績と内容を見る限り、山部は近年の日本選手がなかなか足を踏み入れられないところまで階段を上がりつつある印象。まだ試合数をこなしていないだけで実は既に手をつけられないくらいにまで強くなっているのではないか、とすら仮定してみることすら可能だ。

とはいえ、地力ナンバーワンの日本勢がオルティスら勝負師タイプの「試合力」の前に切所で勝ち切れずビッグタイトルをことごとく明け渡しているというのがここ数年変わらぬ78kg超級の様相。田知本愛とともにこの構造を崩すことが出来るのか、山部、世界選手権の金メダル奪取に期待せずにはいられない抜群の出来の大会であった。

【日本人選手勝ちあがり】

山部佳苗(ミキハウス)
成績:優勝

[2回戦]
山部佳苗○腕緘(2:16)△マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
右相四つ。圧倒的な力の差を見せつけて終始優勢、「技有」「有効」「有効」と連取し、最後は腕緘「一本」。

[準決勝]
山部佳苗○内股透(0:59)△ガオ・マン(中国)
ケンカ四つ。相手の左内股を攻防一致で避けて得意の内股透「一本」。

[決勝]
山部佳苗○大外刈(1:44)△
右相四つ。イは左構え、山部は右構えで足を飛ばしあう。45秒双方に「指導」。腰を切って前技の牽制を続けるイを山部は両襟で押し込んで圧を掛け続け、1分44秒に斜めから右大外刈。見事に決まって「一本」。終始落ち着いていた山部、ファーストアタックで勝負を決める。

稲森奈見(三井住友海上)
成績:7位

[1回戦]
稲森奈見○上四方固(3:47)△グルサ・コジャトルク(トルコ)
稲森が右、コジャトルク左組みのケンカ四つ。中盤に「指導」を連続奪取、試合終了間際、相手の肩を潰しながらめくり回して上四方固「一本」。

[準決勝]
稲森奈見△袈裟固(3:30)○リ・ジュンウン(韓国)
ケンカ四つ。1分3秒、2分31秒と2つの「指導」を失う苦しい試合。3分8秒には隅返で「有効」失陥、そのまま抑え込まれて万事休す。

[敗者復活戦]
稲森奈見○優勢[技有・外巻込]△チン・チェン(中国)
右相四つ。右組。序盤に「指導」、中盤に右払巻込で「技有」を失うこれも苦しい試合。ポイントを取り返そうと攻め込むも、反撃は2分59秒に奪った「指導」1つのみ。決勝ラウンドに進めず。

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版7月18日掲載記事より転載・編集しています。
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