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「再出発」の主役は超級の3人。優勝候補筆頭は絶好調の上川、七戸と原沢がこれを追う・全日本柔道選手権展望

(2014年4月27日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版4月27日掲載記事より転載・編集しています。
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全日本柔道選手権展望
「再出発」の主役は超級の3人。優勝候補筆頭は絶好調の上川、七戸と原沢がこれを追う
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今年も全日本選手権の季節がやってきた

体重無差別で柔道日本一を争う日本柔道の最高権威大会、平成26年全日本柔道選手権大会は今年も4月29日「昭和の日」に日本武道館で開催される。

全日本柔道選手権は狭い意味での「競技」のみを追求する大会にあらず、強さの追求はもちろん柔道の魅力を無差別にありと規定するその主張、重量から軽量までありとあらゆるタイプの選手が集いそれぞれの流儀での勝利追求が許される多様性、選手権者に求められる人間性と観衆に求められる見識、マナーと、日本柔道いかにあるべきかということをパフォーマンスする場でもある。戦前の全日本選士権の系譜を継承する、スポーツを超えた「武道」の大会でもある。

しかるに、体重別、短時間性に特化、さらに五輪に向けた差別化アピールのために考案された国際大会専用契約ルールというべきIJFの所謂「新ルール」をこの大会に採用するという愚、しかし試合時間はルールに規定がない6分間を採用し、これもルール上は廃止された旗判定を採用するという意味の測りかねる妥協と愚の上塗りを主催者が重ね、IJF専用ローカルルールへの矮小化を強要された形の全日本選手権の伝統と価値は大きく揺らいでいる。

加えて、昨年、引退を表明して「楽しく戦う」と試合に臨んだ穴井隆将に「笑顔の勝ち逃げ」を許したことによって王位伝承の系譜が途切れてしまった後の今大会は、全日本選手権の権威、覇者の価値を再構築すべき出直し大会でもある。

昨年の全日本選手権マッチレポートでも書かせて頂いたが、今大会にこそ、柔道とは何であるか、武道はスポーツをどう包含して存在していくべきなのか、その中で全日本選手権という存在はどうあるべきであるかとの再規定が必要とされていたはずである。IJF新ルールの再改訂という絶好の機会が訪れながら、世界選手権予選の看板を保とうとするがためになし崩しに「新・新ルール」を採用、しかも妥協入りの歪な変則ルールを用いることで、結果全日本選手権を全く違う形で「唯一無二の大会」としてしまったことについては、昨年まで柔道界が繰り返してきた半世紀に渡る壮大な思考停止は未だ収まらず、と落胆するしかない。

胴元の野暮な仕切りによって選手たちが歴史に対して負うべき責任とハンデは大きくなってしまったが、その分、我々ファンが選手に掛ける期待は大きい。天皇杯を狙う選手のみならず全ての出場選手に、その戦い方自体で全日本選手権の素晴らしさを観客に再認識させてくれるような熱戦を期待したいところである。

■ 有力選手
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優勝候補筆頭は上川大樹。目覚めつつある「眠れる獅子」、今大会が最終試験だ

優勝候補筆頭はもっか絶好調の上川大樹(京葉ガス)。2月のグランプリ・デュッセルドルフ、3月の全日本選手権東京都予選、4月初旬の全日本選抜体重別選手権といずれも出色の出来で3連勝中。10年東京世界選手権無差別での優勝以降幾度も期待をかけられながらその都度沈没してきた上川のこれまでからして、「まだ信用できない」との声もあるかとは思うが、今期の上川で注目すべきはその不安定さの因であったメンタル面でのジャンプアップ。3大会に一貫する好戦的な試合振りはここ4年の上川についぞ見られなかったものであり、この好調が一過性のものであるかどうかを見定める「最終試験」であった、苦手(本人は否定するが)とする七戸龍との全日本選抜体重別選手権決勝も逆転の「一本」で見事乗り越えて見せた。上川、今回こそは大ブレイクの可能性大と強く推したい。デュッセル、東京地区予選、選抜の成績からして客観的にも上川は優勝候補筆頭とされて然るべきだが、その結果ではなく内容から、天皇杯に最も近い選手として挙げるべきであろう。

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グランドスラムパリを制し、世界から注目を集める七戸龍

対抗するのは七戸龍(九州電力)と原沢久喜(日本大4年)の超級の強豪2名。

七戸は2月のグランドスラムパリで優勝。絶対王者リネール欠場中とはいえ、ワールドツアー最高峰大会を制し、今夏の世界選手権ではメダル候補として各国の強豪からマークされているはずの強者だ。体重も120kgに増え、大外刈一択の長身選手から骨の太い大型選手へと一段階段を上った感がある。

選抜体重別決勝では上川を相手に先行しながら逆転を許し惜しくも2位に終わったが、絶好調・上川に対する相変わらずの相性の良さを見せたと評することも可能な試合内容だった。全日本選手権では未だその力に見合う成績を残していないが、世界選手権代表選出に向けて今回は負けるわけにはいかない大会。

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大物・原沢久喜はコンディションが課題。グランドスラム東京では七戸を「指導」累積で破っている

昨年初出場で準優勝を果たした原沢は、その後5月の選抜体重別で右肘を脱臼、以後はパフォーマンスがあがり切らず、12月には膝を痛めてしまい12年-13年期に示した成長カーブがやや鈍化している印象。しかし強行出場した2月のグランプリ・デュセルドルフではワールドマスターズ王者のオクリアシビリを倒すなど、圧力のみでもワールドクラスと戦える力を示し、再びスケール感の大きさを見せ付けている。得意とするノーステップの右内股と右大外刈が徹底警戒されていることもあり負傷以降は投げ一撃よりも圧力に頼る傾向にあるが、肉体的にも精神的にも本来の持ち味である投げを仕掛けるコンディションにあるかどうかが一つのカギ。

ここまでが天皇杯争いの第1グループと規定して良いかと思われる。全日本選手権の価値を再構築する「出直し大会」というべき今大会にふさわしく、久々優勝候補には超級の有力選手が顔を揃えた形だ。

以降は上位候補、そして話題の選手ということになるがこちらは多士済々。組み合わせ展望と合わせて紹介していきたい。

→平成26年全日本柔道選手権組み合わせ(講道館サイト)

■ 1回戦~準々決勝
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2回戦で上川に挑む安田知史。昨年は担ぎ技でセンセーションを巻き起こした

【Aブロック】

-大本命上川の勝ち上がり濃厚、みどころは安田・吉永の曲者2人との対決-

勝ち上がりという観点からは上川大樹を推してまず間違いないかと思われる。ただし、勝敗が揺れる可能性のある好取り組みが2試合。

まず3回戦で戦う可能性がある安田知史(福岡県警)との一戦。天理大の学生だった昨年は選抜体重別で得意の背負投を決めまくって2位、全日本学生優勝大会では東海大のエース羽賀龍之介をこれも背負投一撃で屠り去った業師だ。組みとめられたはずの超近距離、反転する隙間がないはずの密着状態からでも左右に一発担げる安田の柔道は、大型選手に極端に有利な新ルールの中でも期待感十分。上川が組んでジックリ投げの間合いを測る講道館柔道タイプであることも安田には追い風となるはずで、これは見逃せない試合。

準々決勝で近畿王者の吉永慎也(新日鉄住金)との対戦があるとすればこれも面白い。吉永も無差別でこそ力を発揮するタイプの曲者ファイターで、勝負どころを見分ける目の確かさと担ぎ技の威力は相変わらず素晴らしい。集中力に波のある昨年までの上川であれば吉永につけいる隙は十分。

「強さ」という観点からは勝ち上がり確実と思われる上川の勝敗が揺れるとすれば「相性」が絡む上記の2選手の対戦のみではないだろうか。

実現の可能性だが、安田の初戦は東海大での重量選手野村幸汰(三光不動産)でこれはむしろ安田にとってはやりやすい相手なのではないだろうか。安田らしい一発が繰り出せるコンディションにあるかどうか、ここで見極めておきたい。

吉永は初戦が谷井大輝(東海大)、2回戦が辻玄太(旭化成)、3回戦が田中源大(高川学園高)と鈴木誉広(山梨学院大)の勝者との対戦。若さゆえの勢いがあり相手の良いところを消しながら戦える谷井、自身の重量の使い方を良く心得る大型選手辻と争う最初の2試合が山。

田中は高校2年生で全日本選手権出場を果たすという歴史に残る快挙を成し遂げながら、3月の高校選手権はベスト8で敗退、これははともかく4月の全日本カデ選手権では学年が下の選手に負けるという失態を冒したばかり。全日本選手権出場者が高校2年生に敗れるという屈辱に全日本での頑張りを誓っていた田中、地力の高さは誰もが認めるところで、若さと意地あふれるパフォーマンスに期待したい。

いずれ、厄介な選手との対戦はあるもののトーナメント全体を見回せば上川は組み合わせに恵まれていると評するべき。準決勝以降に向けて、「勢いに乗れるかどうか」と「体力と精神力をどこまで残すことが出来るか」という2つの観点から注視しておくべきブロック。

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なかなか本領発揮といかない未完の大器・羽賀龍之介。可能性は少ないながら、今大会の勝ち上がりには100kg級世界選手権代表選出が掛かる

【Bブロック】

-七戸に試練、加藤、羽賀、佐藤ら密集の死のブロック-

見出しは「死のブロック」とさせて頂いたが、どちらかというと面白い選手が詰め込まれすぎた「勿体無いブロック」と評するべきか。下側の山に、七戸、羽賀龍之介(旭化成)、佐藤和哉(日本大)、そして一昨年の王者加藤博剛(千葉県警)といずれも実力だけでなく試合内容に旨味のある観客好みの選手がズラリと詰め込まれ、これらの選手が全て3回戦までに潰しあってベスト8に進むのはただ1人だけという激戦。絡む役者も難剣タイプの長尾翔太(兵庫県警)に、100kg級でシニア国際大会に進出し始めた高橋良介となかなかの顔ぶれだ。

アップセット要素を孕むのはもちろん加藤だが、それ以上に面白いのは佐藤の存在。昨年高校生で全日本選手権勝利を成し遂げた佐藤は大技以上に足技、そして「威力があり過ぎる」と逆に本業の攻撃の成長が危惧されるほどの切れ味を誇る大内返が得意技。いずれも力関係をリセットしてしまうタイプの技であり、特に正統派ファイター相手にはこの威力はいや増す。

その佐藤の初戦が、正統派投げ技ファイターで、かつフルコンディションになく未だ自身の体の力に疑問を持ちつつ柔道をしている印象の羽賀、2回戦もこれまた投げの威力が売りで昨年までは線の細さが弱点とされていた七戸龍といずれも佐藤得意の「際」の芸が生きそうなタイプだ。このブロックの勝ち上がり候補は第1が七戸、第2が加藤だがキャスティングボードを握るのは佐藤かもしれない。

七戸-加藤戦は2本持って間を取り、遠間からの大技で攻撃したい七戸と、たとえ相手を受ける形でも近間で脇を差し、あるいは袖の抱き込みを試みたい加藤という対戦。加藤本来の力が出れば面白い試合だが、本年の加藤はグランドスラムパリではパワーファイターへの対応を誤って2敗、選抜体重別では菅原健志に延長戦で「指導」3つを奪われて敗退と、まだ本来のパフォーマンスを発揮するに至っていない。新ルールへの直接的対応、そしてただでさえ消耗の激しい加藤の近距離柔道をこのルール下で行うだけのスタミナの獲得という間接的対応が未だ完成していない様子で、事前予測では七戸の優位を予測しておくべきだろう。羽賀、佐藤が来た場合には正統派羽賀、ケンカ四つの佐藤といずれも加藤が対応手段をハッキリ持つタイプという相性を考え、加藤勝ち上がりの可能性はいや増す。

上側の山は、1回戦の黒岩貴信(筑波大)-西潟健太(旭化成)の超級対決に注目。九州予選で七戸を下した(僅差優勢)西潟に、売り出し中の黒岩がどう戦うか。見逃せない一戦。

この試合の勝者は2回戦で81kg級ロンドン五輪代表の中井貴裕(パーク24)、3回戦で斎藤俊(新日鐵住金)と高校生で全日本選手権出場を決めた影浦心(東海大)の勝者と戦うことになる。この山は相性的なシナリオ分岐がありすぎるが、様相を決めるのは2回戦の中井の試合ではないだろうか。ここで西潟・黒岩の重量選手いずれかが勝ち上がれば、3回戦は試合巧者斎藤が試合を縺れさせて勝ちを拾う可能性も大、中井が勝ちあがれば試合は縺れの二乗で、消耗戦から抜け出すことのうまい中井勝利の可能性も出てくる。

準々決勝は、下側の山を勝ち上がった選手がそのまま勝利する可能性が高い。

いずれ勝ち上がりの第1候補は七戸。事前予測としては七戸のベスト4進出を推しておくべきだろう。

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今大会最大のダークホースはウルフアロン。ベスト4に入ってもおかしくない

【Cブロック】

-中量、軽重量の選抜体重別王者3人が密集配置、勝ち上がりの山場は初戦のウルフ-高橋戦-

上側の山には81kg級の永瀬貴規(筑波大)、100kg級の熊代佑輔(ALSOK)、90kg級の吉田優也(旭化成)と選抜体重別の王者が実に3人詰め込まれた。永瀬と熊代は初戦(2回戦)、吉田はこの勝者と3回戦で対戦するという激戦ブロック。勝利の行方は混沌だ。絶好調の吉田が勝ちあがり候補の第一で、選抜の出来の良さを考えると、これまでなかなかここぞというところで出世街道に乗り切れなかった吉田が、キャリアのブレイクポイントになるほどの活躍を見せるのではないかという観測を提示してみたい誘惑に駆られる。

しかし、東海大出身で互いを良く知るという相性に体重差、今大会での活躍に世界選手権代表選出が掛かるというバックグランドの重さを掛け算して、ここは永瀬、吉田を凌いで熊代の勝ちあがりを予測しておきたい。

下側の山は高校生で関東地区制覇の偉業を成し遂げたウルフアロン(東海大)ともと全日本選手権者高橋和彦(新日鐵住金)が争う1回戦が最大の山場。ウルフは昨年来パワーの上積みが著しく、関東予選は高校生ながら自身を強者と規定する組み立てで見事優勝を果たしている。伸び盛りの年齢であることを考えると秋からの上昇カーブは現在も続いていると考えるべきだ。
一方の高橋は体を絞り、かつ奇襲の浮技を獲得して効果的に使ってくるなど柔道に旨味も増して、一時の低落傾向には完全にストップが掛かった。しかし、一昨年はパワーファイターの石井竜太に敗れて完敗宣言を出すなど、増した強さの一面、最近はパワータイプの対応に苦慮しているのもまた事実。力を力で制してきた全盛時とは相性の合う選手が少々変わってきており、むしろ試合巧者タイプを殺すのが上手い選手になってきた。穏当なら高橋の勝利を予測するべきだろうが、両者の対戦は左相四つ。「ケンカ四つのほうが得意」という高橋の全盛期の変則的な特徴も踏まえ、少々大胆な予測になってしまうが、ここはウルフの勝ち上がりを推しておきたい。今大会最大のダークホースは、ウルフアロンだ。

ウルフと高橋のいる下側のブロック、3回戦を争う山には全日本選手権出場最年少記録を更新した中国地区王者・香川大吾(崇徳高)が配されている。
初戦(2回戦)の相手は藤田武志(石川県警)で、絶対に乗り越えられない壁ではない。高校カテゴリではむしろ「獲り逃さない」手堅い試合が得手の香川が、全員に対して挑戦という姿勢で臨める全日本の舞台でどのような柔道を見せるか、注目して見守りたい。

準々決勝は、上記選抜体重別王者3人衆のいずれかに、ウルフ(高橋)がマッチアップして準決勝進出を争うということになる。

熊代-ウルフとなれば、現役王者に未だ選抜体重別出場を果たしていないジュニアの新鋭という同階級対決。順当なら巧さと強さを兼ね備えた熊代だろうが、「組み合う」新ルール下でそのパワーを存分に生かせるはずのウルフの健闘に期待。高橋があがってくれば、高橋勝ち上がりの可能性濃厚と見る。

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73kg級の大野将平は世界選手権王者枠を使って志願の出場

【Dブロック】

-勝ち上がり候補は原沢、志願出場の大野将平と「ジャパニーズドリーム」体現の徳弘哲也に拍手を-

勝ち上がり候補筆頭は原沢久喜。今年こそは上位進出の情熱に燃える増渕樹(旭化成)との3回戦、そして準々決勝に因縁の相手王子谷剛志(東海大)が進出してきた場合と揉める要素は残っているが、後者以外にベスト4入りを止めうる役者はいないであろう。注目は前述の通り、原沢が「手堅さ」と「投げ技による攻撃」をどうバランスして試合に臨んでくるか。準々決勝は激戦必至だが、ここは原沢の勝ちあがりを推した上でその内容に注目したい。

このブロックは、勝ち上がり以外の注目が2つ。

1つは、世界選手権王者枠を使って果敢に全日本選手権に挑戦してきた73kg級世界王者大野将平(旭化成)の試合内容。ファンを熱狂に巻き込んだあの素晴らしい攻撃柔道がこの大舞台でどこまで表現されるか。

もう1つは、初出場の徳弘哲弥(高知県警)の存在。徳弘は岡山商科大卒のもと60kg級の選手で、現在も体重は68kg。もちろん今大会の最軽量選手だ。注目すべきは徳弘が中、高と全国大会出場歴のないまさしく生粋の「叩き上げ」の選手であること。60kg級の、それも全国の舞台を踏んだことのない選手が全国大会を経ずに大学で柔道を続け、練磨を重ねて大学デビューどころか社会人デビュー、エリート中のエリートのみが出場を許される日本柔道の最高峰の舞台を踏むに至ったという来歴はまさしく「ジャパニーズドリーム」の体現。徳弘の全日本出場は、あきらめずに続けていれば、努力していればこの武道館の一段高い畳はどんな選手にとっても「地続き」の道なのだと体ごと示してくれた快挙である。

徳弘は1回戦で穴井亮平(了徳寺学園職)とマッチアップ、大野はこの勝者と対戦することとなる。
相手の良いところを消す手堅さと攻撃力を兼ね備えた中量級の試合巧者穴井との対戦は軽量選手にとってはまことに酷だが、両者には健闘を、そして会場の観衆には熱い視線と大きな拍手をお願いしたい。

■ 準決勝~決勝
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選抜体重別決勝、上川大樹-七戸龍の一戦

準決勝は

上川大樹 - 七戸龍

ウルフアロン(熊代佑輔、高橋和彦) - 原沢久喜

の対戦を予想する。

上川-七戸は今大会最大注目の一番。事実上の決勝と評して差し支えないだろう。


前述の通り、前回対戦の選抜体重別決勝、上川は苦手とする七戸を逆転で破っている。が、開始早々の大外刈「有効」失陥後は攻め続けるも、現在大型選手相手にもっとも取り味のある技であるノーステップの引き出し右払腰はことごとく相手の体重を捕まえる前に潰されており、逆転を果たした引き出しの大外刈「技有」も七戸の後の先を捕まえたものである。上川としては結果は得たが七戸はやはり厄介という印象を持ち、七戸としては敗れはしたが自身の大外刈が通用することと現在の上川最大の武器である右払腰を見切ったと考えたとしてもおかしくない微妙な内容であった。

遠間なら、飛び込みの一発を狙う七戸のフィールド。
上川としては近い間合いで戦いたいはずだが、近間に身を置く際の組み立ての中心になるべき右払腰は前回完全に防がれてしまっている。

となると右大外刈に右大内刈ということになるが大外刈が得意で懐が異様に深い七戸にこれを仕掛けるにはかなりの勇気がいる。そして、得意の支釣込足もそもそも相手に大外刈への恐怖を刷り込まなければ崩し技の域にとどまる。

ということは勝敗のポイントは、まず七戸が遠い間合いでの技の仕掛けあいという自身のフィールドで戦うことが出来るか。次に、近い間合いに立ったときに上川が払腰だけでなく、勇を鼓して大外刈、大内刈で攻めることが出来るかどうかということになる。井上康生監督、そして自身も認める通り上川の今期最大の上積みは「意識が変わったこと」、メンタル面の変革である。好戦的スタイルに変貌を遂げた上川変身の最大の因である心の強さがこの大舞台で再び発揮できるか、さきほど選抜体重別決勝の七戸戦を「最終試験」と書かせて頂いたが、この全日本こそはまさしく待ったなしの最終対決、リオ五輪に続く道の大きな分岐点である。

C-Dブロックの対決は、原沢が順当に決勝に勝ちあがると読んでおきたい。アップセット要素としては、ウルフが来た場合、その異常な押し込みに膝が本調子でないはずの原沢が際の攻防でパニックを起こす場合という考え方は出来るが、事前予測としては原沢勝ち上がりを推すのが妥当だろう。

決勝は、これまでの力関係から上川-七戸の勝者が有利。原沢が勝利するには技自体の威力で試合を壊しにいくような好戦的な試合が必要だが、負傷以来展開力に頼って戦ってきた原沢が、本来の粗削りな魅力を発揮することができるかどうか。順行運転であれば、展開、技とも上川・七戸が上である。原沢優位の材料としては、全日本選手権決勝という異常な場を、既に昨年踏んでいるという経験値。穏当な展開を壊す仕掛けが絶対に必要、と背水の陣で覚悟を決めた原沢の突進に、初の決勝に臨む2人が攻防の際でパニックを起こす可能性は皆無ではない。

冒頭に書いたとおり、昨年大会の低調さと主催者の力のない仕切りによって、唯一無二の武道の大会である全日本選手権の価値は大きく揺らいでいるが、選手たち、わけても優勝候補に推される超級選手3人にはこれぞ日本柔道という素晴らしい試合、格調ある戦いを期待したい。

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