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「己を良く知る」大物小川雄勢が手堅さと勇気を発揮、全国大会初制覇・第36回全国高等学校柔道選手権男子無差別レポート

(2014年4月25日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版4月25日掲載記事より転載・編集しています。
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第36回全国高等学校柔道選手権男子無差別レポート
「己を良く知る」大物小川雄勢が手堅さと勇気を発揮、全国大会初制覇
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2回戦、奥野拓未が村田大祐から小外刈「一本」

面白い役者が揃った。優勝候補筆頭の小川雄勢(修徳高2年)に、史上最年少での全日本選手権出場を決めたばかりで今回は第2シードに配置された香川大吾(崇徳高2年)、同じく全日本選手権進出の栄を得た第1シード選手田中源大(高川学園高2年)、世界カデ王者の1年生太田彪雅(白鴎大足利高1年)、第3シードに座った近畿ブロック100kg超級王者奥野拓未(東海大仰星高2年)、近畿100kg級王者古田伸悟(天理高2年)に、一昨年の高校三冠チームのインターハイ制覇時、そして昨年の高校二冠チームでレギュラーを務めた村田大祐(東海大浦安高2年)と、今年の無差別は多士済々。

最序盤の注目対決は奥野拓未と村田大祐が対決したDブロック2回戦と、小川雄勢に光明駿(神戸国際大附高)が挑んだAブロックの2回戦。

奥野-村田戦は2分39秒、奥野の小外刈「一本」で決着。奥野は大物ぶりをここで証明、村田は2月の三春大会で香川大吾に喫した大内刈「一本」に続き、超級のトップレベル相手の対応に課題を残した。村田はエース級にも我慢の利く選手でありえた、むしろエース級にこそ強さを発揮していた前代までの活躍と比較すると、ワントップのエースとして成長し続けることの難しさにもがいている感もあり。夏までの成長に期待したいところ。

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小川雄勢が光明駿を攻める

小川-光明戦は「指導」3つを獲得した小川が快勝。大型選手相手にも圧を掛け、追いかけ、崩し、追い込まれた相手が片足の技を仕掛けてくるなら押し込み、といかにも小川らしい試合。光明が試合を壊していけるタイプではないこともあり、双方順行運転で試合が進み、波乱なく決着を迎えたという印象。

ベスト4に進出したのは、小川雄勢、太田彪雅、香川大吾、古田伸悟の4名。

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3回戦、小川が中西将太から支釣込足で一本勝ち

第1試合では小川と太田が激突。

小川は1回戦で清水拓実(秋田工高1年)を払巻込「技有」の優勢、2回戦で光明駿を「指導3」優勢、3回戦は中西将太(明桜館高2年)を支釣込足「一本」(1:41)、勝負どころの準々決勝は田中源大を開始早々の払巻込で獲得した「技有」の優勢で下しての準決勝進出。

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3回戦、太田が渡部晃輔を内股「一本」で下す

一方の太田は2回戦で北川義樹(福井工大福井高2年)を合技「一本」(2:23)、3回戦で渡部晃輔(大宮工高2年)を内股「一本」(0:55)、準々決勝は林隆太(中京高2年)を小外刈「一本」と3試合連続一本勝ち、抜群の出来を披露してのベスト4入り。

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太田が右内股で小川を一回転させるが、場外でノーポイント

小川は左、太田は右組みのケンカ四つ。小川は釣り手を上から持って両襟で圧力を掛け、太田はその力をずらしながら技を仕掛けるタイミングを伺う。
54秒、小外刈のフェイントから太田が思い切った右内股に連絡すると斜めに崩された小川は片足でバランス確保、次いでその残った足がフワリと宙に浮き、見事に一回転。観客席どよめくが、これは場外の「待て」が掛かった後の技ということでノーポイント。小川、命拾い。

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小川が左大外刈で攻め込む

以後の試合の流れが太田に傾いてもおかしくない大インシデントだったが、小川は表情を変えずに飄々と圧力、手数と積み重ね、1分49秒には思い切った左内股で会場のどよめきを誘う。さらに左大外刈、左内股と技を重ねた1分45秒に太田に「指導」が宣告される。

小川は両襟の圧力から左大外刈を2連発、たまらず太田は右払巻込の形で掛け潰れて1度展開を切るが、これは偽装攻撃と判断されて2つ目の「指導」。残り時間は57秒。

以後も小川は圧力を緩めず、常に両足を畳につけて前進継続。ミクロにもマクロにも自身有利の状況を作り続け、形、手数と優位に優位を塗り重ねていく小川の隙のない組み立てに、相手の虚を突くのがうまい太田も攻撃の糸口を掴むことが出来ない。

残り20秒を過ぎ、太田は小川の左側から右足を相手の右膝裏に差し入れて止める所謂「サリハニ状態」に近い形の膠着を作り出す。おそらくは小川がこれをブレイクするリアクションを狙って技を仕掛けようという意図の作戦だが、小川は圧を掛け続けるという静的選択で、左右いずれの動きにも罠を用意しているはずの太田の発想の上を行く。主審はブロッキングの判断で小川に「指導1」を宣告するがこの時点で残り時間は僅か11秒。結局そのまま試合は終了し、「指導2」対「指導1」の反則累積差で小川に凱歌があがることとなった。

敗れはしたものの、勝ち上がりの過程も含めてこの日抜群の強さを示した太田は、一段骨の太い選手に成長していることを周囲にハッキリ示して翌日の団体戦勝利への楔を打った感。一方の小川も場外で一発投げられた後に引くことなく、さらに積極的に攻め続けた貪欲さは見事。昨年まで弱点とされたメンタルの揺れを克服したことが誰の目にも見て取れる、図太い戦いぶりであった。

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準決勝、古田伸悟が香川大吾の小外刈の起こりを押し込み、「一本」

第2試合は香川大吾と古田伸悟がマッチアップ。

香川は2回戦で中野春樹(東京学館新潟高2年)を内股「一本」(0:53)、3回戦は黒原大輔(延岡学園高2年)を袈裟固「一本」(2:08)、準々決勝は高橋恭平(作陽高2年)にGS延長戦の末に僅差の旗判定で勝利しての準決勝進出。

一方の古田は1回戦で井戸川諒太(富士学苑高1年)を大内刈「一本」(0:14)、2回戦は九州地区100kg級王者の山口智広(大牟田高2年)をGS延長戦の末僅差の旗判定で退け、3回戦は渋谷裕次郎(北海高2年)を小外刈「一本」(2:38)で下してベスト4入り。準々決勝の勝負どころ、奥野拓未戦は3つの「指導」を奪う優勢で勝利し、準決勝進出を決めてきた。

この試合は劇的決着。1分56秒、香川が誘い込まれるように右小外刈で探りを入れると、触らせた瞬間突如スピードを一段上げた古田が前に押し込んで左大内刈。居合い抜きの鋭さで決まったこの技は文句なしの「一本」。(※公式記録は隅落)

昨年春以降の急成長以来、インターハイ団体優勝を牽引し今代最大の大駒として周囲に規定されてきた香川、ついに陥落。今冬大ブレイクの古田が厳しい組み合わせを勝ちあがり、見事決勝へと駒を進めることとなった。

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決勝開始。小川は前に、先に持ちたい古田は組み手厳しく切り離しながら対峙

決勝は小川、古田双方左組みの相四つ。

体格に勝る小川は引き手で襟、釣り手で奥襟を握る上から目線の圧力組み手。古田は小川が腰を入れようとした瞬間に支釣込足を一撃食わせるが、小川は退かずにむしろスイッチを押されたかのごとく前進、古田はいったん全ての組み手を切り離して距離を取り直す。小川が引き手を求めて前に出、古田は前進後退を繰り返しつつこの引き手を切り、自身も先に引き手を狙う。

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圧を受けた古田は支釣込足、しかし小川は前に出返して古田は場外へ

20秒過ぎ、互いにツイと近づいたところから小川が奥襟、応じて古田も奥襟を叩き返すガップリの形が出来上がる。いったん双方の頭を下げあったところから小川が頭を上げ、腹を突き出して前進。下げられかけた古田はその動きを狙って再び支釣込足、しかし小川はまたしても古田が片足になった瞬間を狙って前に押し込み、古田たまらず試合場を割る。小川は自身の体を場内に置いたまま圧力を掛け、しばし間合いを測ると再度前進、場外まで追い掛け、キッチリ自身の大内刈でシークエンスを終える。直後の32秒、場外の判断で古田に「指導」。

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小川が払巻込、互いに伏せたところから軸足を上げてめくりに掛かる

小川引き手を掴んで前進、古田はさばきながらジリジリ後退、小川は古田が距離を取れなくなったところで長い腕を伸ばして釣り手で奥襟確保に成功。しかし小川がまずは奥襟、次は背中と持ちどころを探り直す間を狙って古田は果敢に踏み込み小川の側面に進出、超近距離からの支釣込足を叩き込む。腹上に乗せられかけた小川は大きく崩れて引き手を畳に着くが、それでも釣り手で掴んだ奥襟を離すことなく体勢を立て直す。続いて小川は背筋を伸ばして一瞬呼吸を整え、場外に向かって左払巻込。背中にくっついてきた古田が崩れ伏せると自身も倒れたまま高く軸足をあげてめくりにかかり、古田危うく転がりかけるがなんとか耐えてノーポイント。経過時間は1分。

続く攻防は古田の左大内刈からスタート。キャッチした小川は釣り手で奥襟を叩き返し、引き手を抱きこんで支釣込足。さらに古田が下がると前に出て左大外刈。前段までは技の古田、圧力の小川という構図で拮抗していたが、ここに至って小川が具体的な技を仕掛け、抜け出し始めた印象。経過時間は1分27秒。

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小川が左大外刈、次いで巻き込みに連絡して古田を得点板にぶつかるところまで追う

小川は釣り手で奥襟、引き手で袋を掴んで前へ。下がりながらさばく古田の背中に肩越しに釣り手を入れて頭をいったん下げさせ、ついで奥襟に持ち替えて組み手完成。やや横腰を突き出すヒットマンスタイルで大外刈を狙うと、2度目の動作の起こりを狙って古田が支釣込足。しかし小川は退かず、古田の戻りに合わせて左大外刈で前進。両者場外に出たところで巻き込みに連絡すると、古田背中に食いついたまま大きく崩れる。倒れた小川軸足を上げてめくりにかかるが古田が得点板にぶつかり「待て」。直後古田に2つ目の「指導」が宣告される。経過時間は1分47秒。

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古田が支釣込足、待ち構えた小川が左小外刈、古田が身を切り返して浮落と段重ねの攻防

奮起した古田は前へ。釣り手でまず前襟を持ち、次いで引き手で小川の肘を持ち上げる形で腹を突き出し支釣込足。取り味十分の大技だが、これを狙いすました小川は攻防一致のタイミングで前に体を浴びせ、左小外刈。しかし古田は小川を腹に乗せ掛けたまま逆方向の左へ体を切り返して小川を落としに掛かる。
一瞬古田のポイント奪取が想起された攻防だが、一手目の支釣込足の段で大きく前に出て被り返そうとしていた強気が小川を救い、双方崩れて小川辛くも腹から畳に落ちる。どちらの攻勢を採るか微妙なシークエンスであったが、ここで小川に横に付かれた古田は亀になって守り、小川の次の攻撃を待ってしまう。小川は背中について左腕を古田の左脇に差し入れ、十分時間を使って「待て」。大技を駆使するリスクを採った古田、しかし攻勢権の確保はならず。経過時間は2分17秒、残り時間は43秒。

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古田、起死回生を狙った左大外刈は釣り手が離れ、巻き込みの際に空転。

小川、腕を伸ばして引き手で襟、釣手で奥襟を確保。いったん下げられた古田、顎で小川の釣り手を低い位置でまず噛み殺し、遠間から伸び上がりながら左大内刈を一発。さらに小川が釣り手を噛ませたまま腰を入れて半身になるとみるや、ほとんど相手と水平一直線となる横変形の形までジワジワ進出、ついで反時計回りに小川を誘導しつつ引き出しの左大外刈に飛び込む。

この試合古田が放った一番の大技。いったん深く入り、ついで釣り手を伏せたまま肘を上げて巻き込みにかかったこの技に小川の体は引き寄せられて大きく崩れる。しかし釣り手を離して払巻込に連絡した瞬間、その時点で小川の崩落はストップ。手が切れて古田の体のみが回り、空中に残った小川の体は腹を合わせるようにして古田の体の上に乗る。古田は腹ばいに伏せて防御、小川が寝技に持ち込んで攻防を継続、「待て」が掛かったときの残り時間は僅かに2秒のみ。

試合再開とほぼ同時に終了ブザー。小川が「指導」2つの優勢で強敵古田を退け高校選手権制覇を達成、自身のキャリア初の全国制覇を成し遂げた。

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勝者宣告を待つ小川。これがキャリア初の全国制覇

決して技の切れがあるタイプではない小川だが、体格と膂力、スタミナという自身の長所を良く弁えて徹底して優位の確保に注力する圧力戦術に加え、この日一貫して示した「仕掛ける勇気」が何よりの優勝の因であった。「もっと引き手の強さが必要」と大森淳司監督が語るとおり、前技の際に引き手が引ききれず体が後ろに流れてしまう場面、また135kgの巨体を足腰が制御しきれず仕掛けた際に体が残ってしまう危ない場面が散見されるが、その弱点は小川自身も良く把握しているはず。無理をすれば返される可能性大。防御姿勢の相手に返し技一択で待ち構えられることも多い小川の柔道は、戦術的にも資質的にも、実は攻めることが人一倍難しいタイプでもあるのだ。

それでもなお、大内刈に大外刈とリスクを冒しても攻め込めるようになったメンタルの強さが今期の小川の最大の上積みであり、そして優勝の最大の因であった。太田彪雅に場外で一発放られた次の展開で見せたすかさず前に出ての攻撃、取り味十分の支釣込足の恐怖を撒き散らした古田に対する大外刈の連続攻撃にはこの点が存分に現れていた。

いかに相手を逃がさずに自身の圧力を結果に繋げるか、は前代から引き続く小川の柔道の一大テーマである。そしてこのテーマに沿った、丁寧に相手の逃げ口をひとつひとつ潰し、残ったルートに罠を仕掛けるという団体戦用の手堅い戦い方は、冬の時点ですでに完成しつつあった。
しかし、手堅いだけの順行運転では個人王座は獲得できなかったはずだ。要領よく勝利の果実を得ようとする選手に勝利の女神は微笑まない。

自身の長所を知り抜いてそれを最大限に生かした組み立てと、逆に自身の弱点に敢えて目を瞑った勇気を振り絞っての積極攻撃。この両方が小川を今大会の王者ならしめた。己を良く知る小川が、己を良く知るがゆえの自縄自縛に陥らず、勝利に必要な要素を粛々と埋め続けた冷静さとメンタルの強さ。つまりは、小川を優勝に導いたのは、小川の「素質」自体ではなく「自己理解」と、それによって導き出された勇気であると総括したい。

敗れた古田は、地方の一強豪選手の粋を出ない感があった12月の若潮杯時点から一気にジャンプアップ。香川を破り、小川を追い詰めた攻撃柔道は大駒として全国優勝を争うにまさしくふさわしいものであった。決勝は小川の「指導」2つによる勝利とスコア的には地味なものだったが、試合がエキサイティングであり続けたのは、その小川の優位確保を一発で壊すだけの技の威力と恐怖、投げる意気込みを古田が撒き散らしていたから。間違いなく今年もっとも楽しみな選手の1人である。

【入賞者】
優勝:小川雄勢(修徳高2年)
準優勝:古田伸悟(天理高2年)
第三位:太田彪雅(白鴎大足利高1年)、香川大吾(崇徳高2年)
第五位:田中源大(高川学園高2年)、奥野拓未(東海大仰星高2年)
    林隆太(中京高2年)、高橋恭平(作陽高2年)

小川雄勢選手のコメント
「優勝しようと思ってはいましたが、自信はありませんでした。準々決勝、準決勝が山場でした。相手は強いし、自分がやりにくい相手。その試合も含めて、自分の柔道が出来たのが良かったと思います。まだまだ投げ切ることが出来ないので、先に技を出していこうと思っていました。今後は打ち込み、反復、と細かいことをしっかりやっていきたい。将来は東京五輪で金メダルを獲りたいです」

【準々決勝】

小川雄勢(修徳高2年)○優勢[技有]△田中源大(高川学園高2年)
太田彪雅(白鴎大足利高1年)○小外刈(1:04)△林隆太(中京高2年)
香川大吾(崇徳高2年)○GS僅差△高橋恭平(作陽高2年)
古田伸悟(天理高2年)○優勢[指導3]△奥野拓未(東海大仰星高2年)

【準決勝】

小川雄勢○優勢[指導2]△太田彪雅
古田伸悟○大内刈(0:56)△香川大吾

【決勝】

小川雄勢○優勢[指導2]△古田伸悟

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