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第36回全国高等学校柔道選手権大会・女子団体マッチレポート③決勝

(2014年4月13日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版4月13日掲載記事より転載・編集しています。
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第36回全国高等学校柔道選手権大会・女子団体マッチレポート
③決勝
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準決勝の大一番に勝利し、決勝を迎える埼玉栄高

埼玉栄高は優勝した2012年大会以来2年ぶりの決勝進出。今大会団体戦最大の大駒と評される大将冨田若春を軸に2回戦は熊本西高(熊本)を3-0、3回戦は高崎健大高崎高(群馬)を3-0、準々決勝はBシード高帝京高(東京)を2-1で下してベスト4に駒を進めると、準決勝では優勝候補筆頭と目された第1シードの大成高(愛知)を本戦0-0の激戦の末、代表戦で沈めて決勝進出決定。冨田のほか、先鋒に個人戦52kg級3位の常見海琴、中堅には57kg級2位の柴田理帆を置きその陣容は強力。最大の山場とされた準決勝の「勝負」を乗り越え、残るミッションはこの決勝で「試合」に勝つというまとめの段。2年ぶり4度目の優勝に挑む。

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Bシードから快進撃で決勝まで勝ち上がった桐蔭学園高

一方の桐蔭学園高はBシード評価からの決勝進出。中堅嶺井美穂のワントップチームと評されていたがこの日は先鋒馬場彩子と大将鈴木双葉の決意溢れる戦いぶりでチーム力が一段アップ、2回戦は作新学院高(栃木)を2-0、3回戦は高川学園高(山口)を1-0で下すと準々決勝では第2シード校の沖学園高との大一番に1-0で見事勝利。準決勝はダークホースの紀央館高を手堅く2-1で下して見事初の決勝へと駒を進めてきた。

オーダーは下記。

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決勝のオーダーが電光掲示板に映し出される

埼玉栄高 - 桐蔭学園高
(先)常見海琴 - 馬場彩子
(中)柴田理帆 - 嶺井美穂
(大)冨田若春 - 鈴木双葉

3試合いずれも少々力の差があると見られる顔合わせ。先鋒戦と大将戦が埼玉栄の得点ポイント、残る中堅戦は桐蔭学園が得点を織り込んでいいはずのポイントゲッター位置と盤面配置は白黒がハッキリ。

3人の総合力の高さとこの星勘定を踏まえると、埼玉栄にとっては勝負を誤らずに2点奪取のミッションを達成することが出来るかどうかが第一の課題、そして中堅戦で負うであろうダメージをどれだけ減殺出来るかどうかが次の課題で、これは針の穴を通すような困難なミッションというよりはあるべきルートを実力通りに歩むことが出来るかどうかという仕事の完遂能力が求められる試合。全国大会決勝という常ならぬ場で力が発揮できるかどうかというメンタル面と桐蔭学園の勢いが不確定要素。

一方の桐蔭学園高は先鋒戦をなんとしても引き分け、3試合トータルでの失点を最悪でも「1」に抑えるのが勝利の最低条件。これを満たさないと大駒・嶺井で一点獲得したとしてもその意味がなくなってしまう。
馬場が引き分け、嶺井が一本勝ちし、鈴木が「一本」を回避して試合を終えての内容差での勝利、もしくは1-1のタイスコアで本戦を終えて嶺井を代表戦に送り込み、のエース対決に望みを託すというのがあるべきシナリオ。先鋒の馬場が全国大会決勝という大舞台ゆえの磁場の乱れを捕まえて一発ポイントを得るというのが上積みの選択肢。

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常見海琴が組み手とは逆の左腰車で馬場彩子を大きく崩す

先鋒戦は埼玉栄・常見海琴、桐蔭学園高・馬場彩子ともに右組みの相四つ。

馬場があっという間に引き手で袖、釣り手で奥襟を確保するが、常見は間を置かずに得意の右組みからの左大腰で迎え撃ち、これをきっかけに自身も奥襟を確保。双方横変形による圧の掛け合いを経由して、常見は右小内刈、右大内刈と繋ぐと馬場が釣り手を切り離そうとした機に乗じて再び左大腰で展開をブレイク、馬場は大きく崩れて「待て」。ガップリ組み合ったところから切り離しを画策したのは馬場の側で、やはり地力は個人戦で3位になったばかりの常見が上という印象。

続く展開、常見は引き手で襟、釣り手で奥襟を確保すると再び左方向に今度は首を抱えて思い切りの良い腰車。馬場は畳に伏せ、寝技一合を経て「待て」。直後の56秒馬場に「指導1」が宣告される。

得意とする逆方向への腰技が効くことを確信した常見の攻めは加速、続く展開では引き手で袖、釣り手で奥襟を確保するなりやはり逆方向の左大腰。馬場は膝をついて辛うじて堪える。経過時間は1分12秒。

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常見の右大外落が「有効」

再開の声を聞いた常見はすかさず引き手で袖、釣り手で奥襟を確保。馬場が横変形で応じると引き手で相手の右腕を脇に抱きこんで固定する。馬場が場外方向に向かって仕掛けた右大内刈を透かすと、反時計周りに場内に戻りつつ、釣り手を首に引っ掛けたまま右大外刈一閃。崩れた馬場を見て両足を踏ん張って前に体を捨てると、上体を固められた馬場逆らえず大外落の形でストンと転がりこの技は「有効」。経過時間は1分29秒、残り時間は2分31秒。

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残り時間僅か、やや停滞した常見は再び左大腰の大技であわやポイントという場面を作る

以後も釣り手で高い位置を確保しては左に腰技を仕掛ける戦法を続ける常見が優位を確保。3分を過ぎるとさすがに慣れ始めた馬場が左袖釣込腰、さらに常見の奥襟を叩くモーションに先んじてカウンターで奥襟に釣り手を叩き込んで伏せさせるなど良い対応を始めるが、残り15秒を過ぎたところで常見がひときわ深く左大腰。腰をクルリと綺麗に切ったこの技に馬場は大きく回って腹ばいに落ち「待て」。

この一撃で馬場の反抗機運も失速、そのままタイムアップとなり先鋒戦は「有効」による優勢で常見が勝利。埼玉栄がまず1点を先制することとなった。以後の盤面を考えるとそのまま試合の行方を決定づけると評して良い、まことに大きな一点。

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柴田理帆が鋭い右一本背負投、嶺井美穂一瞬背中に乗って場内大いに沸く

中堅戦は埼玉栄高の柴田理帆が左、桐蔭学園高の嶺井美穂が右組みのケンカ四つ。柴田は前日の個人戦57kg級で2位入賞の強豪だが、嶺井は講道館杯63kg級2位入賞で既にシニア強化選手に名を連ねる大会屈指の大駒。ここは嶺井の優位は動かないと思われた。

しかし序盤は柴田が健闘。嶺井は万が一にも逃がすまいと両襟を握ってジワリと前に出るが、柴田は33秒に鋭い右一本背負投。嶺井一瞬その背中に乗ってしまい、場内大いに沸く。

この一撃で入れた攻勢の楔で、以後30秒は嶺井がやや停滞。しかし1分過ぎから落ち着きを取り戻し、両襟を握っての右小外刈を連発、柴田ともども場外に出でた1分38秒、柴田に「指導1」が与えられる。

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柴田は思い切った内股で劣勢になりかけた流れを押し戻す

嶺井にとってはここで2つ目の「指導」を奪ってまずは勝利という最低限のミッションを達成確実にしてしまいたい、逆に柴田にとってはなんとしてもそれを避けたいという勝負どころの時間帯。嶺井は膝裏に右小外刈を当てて離さず柴田を牽制するが、柴田いったん離れると思い切った右内股。嶺井真裏でいったん上がり、そのまま畳に着地。この技で再び攻勢の楔を入れた柴田は展開をタイに戻して延命、嶺井は優位継続をいったん断たれる。

1分19秒、嶺井が柴田の膝裏めがけて右大外刈。柴田は転がり伏せて再び嶺井が優位を積み上げにかかったかに思われたが、再開直後あくまで強気の柴田、今度は組み付きながらの左大内刈。嶺井は場外に向けて引っ掛け返してあわやポイントという場面を作ったものの、このシークエンスは仕掛けた柴田の攻勢で終了。さらに再開直後に釣り手で襟を確保するなり右一本背負投、嶺井は重心を逆側に落としてディフェンスして腹ばいに畳に落ちる。要所要所で放たれる柴田の強気の技の前に、嶺井はどうしても展開に差をつけることが出来ない。

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嶺井の右大外刈が「技有」

以後は嶺井が両襟の右小外刈と右大外刈で攻め、柴田が右一本背負投に奇襲の左大腰等の大技で展開を押し戻すという一進一退の攻防が続く。柴田が右一本背負投を2連発して「待て」が掛かった時点で経過時間は3分30秒。試合が引き分けに終われば大将に冨田若春というエースを持つ埼玉栄はほぼ勝利が確実。柴田はミッション完遂まであと僅か、一方の嶺井はあと30秒でなんとしても得点を挙げねばならないという窮地に陥る。

嶺井、柴田の膝裏めがけて右小外刈。柴田が踏みとどまると一歩踏み込み、その右小外刈の軌道に足を滑り入れるフェイントから今度は右大外刈。相手の右膝裏に刈り足をねじ込むと高く刈り上げてめくり落とす。この強烈な一撃に柴田は畳にバウンド、主審は「技有」を宣告。この時点で残り時間は9秒。

終盤に強い嶺井がその本領を発揮。嶺井はそのまま袈裟固に相手を固めて「一本」の声を聞く。

これでスコアは1-1、内容差で桐蔭学園がリードという状況で試合の襷は大将戦に引き継がれる。

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鈴木双葉が座り込みの右背負投

大将戦は埼玉栄の冨田若春、桐蔭学園の鈴木双葉ともに右組みの相四つ。
冨田すかさず引き手を確保すると右大内刈。鈴木一瞬片膝を着くがすぐに立ち上がり、下げられながらも座り込みの右背負投。しかし捌いた冨田もろとも場外に出た直後の14秒、鈴木に場外の「指導」が与えられる。

再開直後鈴木は釣り手で横襟を確保するが、冨田はその手を剥がしながら両袖の右内股。鈴木は崩れ伏せて「待て」。冨田、攻勢。

冨田は引き手で袖を確保すると大内刈で相手を崩す。苦しい鈴木は座り込みの右背負投の一発に掛けるが、冨田は立ったまま手で正対の形に回し戻して崩れず。

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冨田若春の右払腰が「有効」

鈴木が左袖釣込腰を放つが手が切れてしまい自ら畳に崩れ伏せるという攻防の直後、冨田は一瞬引き手を自身の腹側に押し込むアクションで相手を呼び込むと、その動きを止めずに絶妙のタイミングで右払腰。フィニッシュで釣り手を離して巻き込んだために隙間が生まれてしまい、鈴木この空間を利してなんとか一旦は膝をついてこらえるものの冨田は構わずそのまま体で押し込み「有効」奪取。経過時間は1分6秒。

冨田がそのまま後袈裟固に固めると鈴木はもはや抵抗できず。1分39秒「一本」が宣告される。

最終スコア2-1、埼玉栄高が2年ぶり4度目の全国高校選手権制覇を成し遂げた。

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優勝を喜ぶ埼玉栄の選手たち

埼玉栄高 2-1 桐蔭学園高
(先)常見海琴○優勢[有効]△馬場彩子
(中)柴田理帆△合技(4:03)○嶺井美穂
(大)冨田若春○後袈裟固(1:39)△鈴木双葉

決勝の結果自体は戦力と盤面配置に対して順当。埼玉栄は先鋒と大将が力通りの結果を得たことに加え、中堅柴田理帆が大駒・嶺井に対して最後の最後まで拮抗を続けたその内容が非常に大きかった。得点差こそ「1」だが、そのスコア以上に埼玉栄の強さが際立った一戦。柴田の頑張りにより3戦通じたほとんどの時間帯で埼玉栄が主導権を握り続ける形となり、桐蔭学園としてはその分敗北感が強まったであろうという一番だった。

今大会も際立ったのは埼玉栄のチーム作りの確かさと勝負の巧さ。冨田という絶対の得点カードを持つ今大会の埼玉栄は優勝候補の一角であり、ベスト8シードから一気に頂点を極めた2年前のチームほどの「マジック」感はないが、「雪害で練習量不足」(本松好正監督)のチームを仕上げ、まとめた手腕は勝負師本松監督の真骨頂と言える。

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優勝インタビューに臨む選手と本松好正監督

不安視されていた前衛2ポジションも前日の個人戦で入賞を果たして自信を得させての本番、現場においては序盤で二引き分けの泉雅子を「攻める柔道なのに守っているので」と柴田に代えることで攻撃のポリシーを示し、勝負どころの大成戦では具体性のある戦術論で相手の攻撃を潰した。そして何より大きいのは、一昨年の選手権制覇と昨夏のインターハイ優勝で勝者のメンタリティがチームに染みていたこと。
絶対のエースの存在、育成、チーム作り、現場でのメンタルコントロールに具体的戦術、それに伝統が作り出した勝ちが勝ちを呼ぶ好循環と、終わってみれば埼玉栄には勝者の条件が整っていたと言わざるを得ない。

「皆、上を見てしまうんじゃないですかね。一つ一つちゃんとやらなくちゃいかんのに」と戦後ニヤリと笑った本松監督。4強の混戦という評があった今大会だが、それは混戦になればなるほど強みを発揮する埼玉栄にとっては得意の舞台であっただろう。

4月からは冨田と2トップを張る重量級エースの桒原佑佳が負傷から復帰し、OG烏帽子美久と前田奈恵子らトップ選手の稽古への定期参加も見込まれる埼玉栄はさらなる戦力のアップが確実。難しいとされた高校選手権を制して、今期の高校三冠も視野に入ってきた。

敗れた桐蔭学園高は大健闘。大駒嶺井の存在に頼りきることなく覚悟ある柔道で試合を作り続けた馬場彩子と鈴木双葉の成長、そしてチーム全体のまとまりは賞賛に値する。

埼玉栄の育成力、そして試合力の高さと強さが際立った大会ではあったが、四強独走の前評判に反して決勝進出を果たした桐蔭学園、ノーシードから3位入賞を果たした紀央館、ベスト8入りの奈良育英の活躍には今年の混戦模様もまた匂う。今後の各チームの研鑽と成長に期待しつつ、今大会のレポートを終えたい。

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優勝の埼玉栄高

【入賞者】

優勝:埼玉栄高(埼玉)
準優勝:桐蔭学園高(神奈川)
第三位:大成高(愛知)、紀央館高(和歌山)
第五位:帝京高(東京)、奈良育英高(奈良)、沖学園高(福岡)、東大阪大敬愛高(大阪)

最優秀選手:冨田若春(埼玉栄高)
優秀選手:常見海琴(埼玉栄)、嶺井美穂(桐蔭学園高)、鍋倉那美(大成高)、阪部りり子(紀央館高)

【準々決勝】

大成高 2-1 帝京高
埼玉栄高 2-0 奈良育英高
桐蔭学園高 2-0 沖学園高
紀央館高 2-1 東大阪大敬愛高

【準決勝】

桐蔭学園高 2-1 紀央館高
埼玉栄高○代0-0△大成高

【決勝】

埼玉栄高 2-1 桐蔭学園高

埼玉栄・本松好正監督のコメント
「立てた作戦を選手が忠実に実行してくれたこと、その結果だと思います。選手を頼もしく思いますし、感謝の言葉しかありません。『マジック』はないですよ。特別なことはしていません。ただ、皆、上を見すぎてしまうのかもしれませんね。一つ一つちゃんとやらなきゃいかんですし、それが一番大事なんです。決勝の前は、相手が乗っているので、30分のインターバルがあったのはありがたかった。その間に『相手は乗っている、うちはとにかくしっかりやれ。先鋒と大将で取る』と言い聞かせました。しっかり仕事をしてくれた2人はもちろん、中堅の柴田が回りに勇気を与える試合をしてくれたのが大きかったですね。泉を入れた1年生チームで勢いを出そうと思ったんですが、代えた2年生の柴田が素晴らしかった。うまくしたものです。三冠?そんなに簡単じゃないですよ(笑)。一つ一つ、やるべきことをやっていくだけです」

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