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第36回全国高等学校柔道選手権大会・男子団体マッチレポート⑤準決勝

(2014年4月2日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版4月2日掲載記事より転載・編集しています。
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第36回全国高等学校柔道選手権大会・男子団体マッチレポート
⑤準決勝
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準決勝に臨む白鴎大足利の5人、オーダー順はこの試合もほとんど変わらず

■準決勝

第1試合は第1シードの国士舘高と第3シードの白鴎大足利高が激突。
両者は12月の松尾杯準決勝で対戦、この時は3-2という撃ち合いの末に白鴎大足利が勝利を収めている。得点者はそれぞれ白鴎大足利が浅野大輔(対岩渕将也・大腰)と柳原尚弥(対山田伊織・足取りの反則)に太田彪雅(対山田稔喜・払巻込「有効」)、国士舘が竹村昂大(対佐俣楓・合技)と釘丸将太(対太田竜聖・指導4)。点取り試合というレギュレーションの差、国士舘が大黒柱の吉良儀城を欠き白鴎大足利が山中勇希を下げているという選手構成上の事情はあるが、紛れもなく両者の今期のチーム作りの分岐点になった試合の一つだった。ここから両指揮官、そして選手がどう延長線を引いてこの試合を組み立てるかに注目したいところ。

開示されたオーダー順は下記。

国士舘高 - 白鴎大足利高
(先)釘丸将太 - 浅野大輔(先)
(次)竹村昂大 - 柳原尚弥(次)
(中)山田伊織 - 山中勇希(中)
(副)山田稔喜 - 太田竜聖(副)
(大)吉良儀城 - 太田彪雅(大)

国士舘、白鴎大足利ともにこれまでの3試合を踏襲したオーダー順。
釘丸、竹村、山田稔喜とエースキラータイプを3枚保有する国士舘はあるいは抜き役として吉良を前に置いて、安定感があってかつ松尾杯での対戦で「指導4」の勝利を挙げた実績のある釘丸にクロージングさせるという考え方も机上の理屈では考えられないでもなかったが、岩渕公一監督の采配は大将にエースを置いて重しを聞かせる歴代チームと同様の布陣。大将吉良はもちろん、先鋒釘丸、そして中盤3枚の「雑食系」選手の試合力のいずれにも信頼を置く形での布陣となった。

一方の白鴎大足利も先鋒、副将、大将を固定し、中盤に入った柳原と山中の位置を入れ替えながら戦うという準々決勝までの方針を踏襲。斬り込み役の浅野に続いて一発のある柳原と山中、相手の焦りに乗ずることが巧く技の切れる太田竜聖にこの日大活躍でエースの風格が出てきた太田彪雅と、為すべき仕事と自軍の戦力構成からベストと踏んだ登場順をこの試合も崩さずに選手を畳に送り出した。

双方に共通して透けて見えるのは大将への信頼感。
吉良は負傷のため招待試合シリーズにまったく出場していないが、前代での活躍と復帰なった東京予選の出来を見る限りその戦闘力は全国大会の上位対戦でも大駒と規定されるべきで、今代ほとんど試合をしていない分まだその上限は規定されていない感がある。前戦の石山潤平戦後半の苦戦で少々そのスケール感を落とした印象もあるが、ノーリスクで戦うべき大将対決での「指導2」勝ちの難攻不落ぶりはさすがであった。

一方の太田はこの日ここまでの活躍を見る限り攻撃力の高さは群を抜く。しかし、その強さは平均値としての攻撃力の高さというよりも、相手との力関係に関わらず一発取ってくる飛び道具的な一撃の強さと規定されるべき。その最高到達点の高さは論を待たないが、昨年までの線の細さと展開力の意外なまでの不安定さをを考えると、試合の巧さが売りの国士舘勢が展開を作ることに腐心した場合にシナリオを誤る可能性も危惧される。

双方試合を壊さずに大将に試合を繋いでいきたいという盤面だが、上記の大将評価を考えるにどちらかというと後半までにリードを奪っておきたい事情がより切実なのは白鴎大足利。ただし双方ともに前の4人いずれも決して追いかけて取るタイプではなく、ゆえにいずれかの得点(あるいは失点)はさらなる得点の連鎖を生んで試合全体のバランスを破壊的なまでに傾けるトリガーとなり得る可能性が十分にある。リスクは冒せず、さりとて点は欲しいという双方にとってまことに難しい前4枚の対戦事情。

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浅野大輔(左)と釘丸将太の先鋒戦

先鋒戦は国士舘・釘丸将太、白鴎大足利・浅野大輔ともに左組みの相四つ。序盤は左背負投で攻める浅野がもつれ合ったところから釘丸の腕を殺して抑え込む場面があり、やや浅野有利。しかし中盤に釘丸が左大外刈を引っ掛けて浅野を転がし、体格差も相まって試合の流れはやや釘丸に傾き始める。敏感にこれを感じた釘丸、組み手で一方的に崩しいなすと浅野自ら伏せて回避し2分45秒に浅野に「指導」宣告。釘丸はあと一歩攻め込めば2つ目の「指導」奪取だが、この状況を心得た浅野は先んじて片襟を握って低い左背負投、釘丸が耐えると立ち上がってさらに一歩押し込んで得点を狙って展開を作り直す。これは釘丸が耐え切ったが残り時間は僅か8秒、この試合は引き分けに終わる。

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柳原尚弥の内股はあと一歩押し込めずノーポイント

次鋒同士の対決は国士舘・竹村昂大が左、白鴎大足利・柳原尚弥が右組みのケンカ四つ。柳原は右内股で再三攻め込むが、竹村も左内股、そして相手の右内股の引き手を切っておいての右一本背負投で対抗。双方取り味のある技を打ち合うがいま一歩深く追いきれず、局面ごとの有利不利の揺れはあったものの大枠拮抗したままこの試合も引き分け。

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山田伊織が山中勇希を相手に足技を入れ続ける

中堅戦は山田伊織と、170kgの巨漢山中勇希がマッチアップする重量級対決。
山田、山中ともに左組みの相四つ。山中、右構えからスタートして丁寧に引き手から狙う。山田は組み合うと動きを止めずに左小外刈、左小内刈と細かく山中を揺さぶって対峙。山中は大きく刈り足を上げて左大外刈を狙うが山田は相手が技を仕掛けようと片足になる都度前に押し込み、展開の優位の確保を狙う。山中が一息展開を作り直そうとする都度山田の足技が細かく入り、中盤山中に「指導」。さらに互いが膠着した残り37秒で双方に「指導」が与えられ反則累積差で山田が一歩リード。

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山中勇希が大外刈で追撃

このまま試合を終えれば勝利となる山田は支釣込足で崩してクロージングを狙うが、この大事ば場面で山中は意気消沈することなく巨体に鞭を入れて思い切った左大外刈を連発。山田が耐えたところをさらに一段押し込んで場外にはたきだした試合終了直前、山田に2つ目の「指導」。

山中、一段上の気持ちの強さを見せてあくまで試合を譲らず。第3試合も引き分けに終着した。

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太田竜聖の技を山田稔喜が受け止めて返しを狙う

第4試合は国士舘・山田稔喜と白鴎大足利・太田竜聖がマッチアップ。
両者右組みの相四つ。山田は釣り手を片襟から欲しがり、太田はその釣り手を厳しく切り離して組み手を引き手から開始することを企図。もはやミスの出来ない後半戦、両者一手目の組み手にこだわり過ぎる感ありで若干試合は膠着。片袖を取り続けた山田に対し1分4秒に「指導1」が宣告されるに至る。

直後勢いづいた太田が鋭い右大内刈を放って展開をブレイクするがポイントには至らず、再び試合は一手目を激しく争う、「手四つ」のいなし合いに陥る。「指導」ビハインドを背負ってもはや試合を間違えるわけにいかない山田は片襟の右大外刈、さらに奥襟を叩いて主導権の奪還を試み、太田は組み手を直しながら右払巻込に腕を差しての支釣込足で対抗。しかし以後双方試合を大きく動かすリスクを冒さず、この試合も引き分けに終わった。4戦引き分けを経て、勝敗の行方は国士舘・吉良儀城と白鴎大足利・太田彪雅の大将対決に委ねられることとなる。

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吉良儀城が過程を飛ばして片手の左内股

吉良は左、太田は右組みのケンカ四つ。吉良は奥襟を叩いて圧力を掛け、左大腰で先制攻撃。吉良は釣り手をあるいは巻き返し、あるいは上から締めてと形を変えながら相手の釣り手を殺しに掛かる。太田は吉良が巻き返した瞬間を狙って右小外刈、しかし吉良は崩れながらも浮技で切り返して潰れ「待て」。

1分17秒、吉良が釣り手を下から持って左内股。太田が透かしていなした場面の直後、太田にのみ「指導」が宣告される。

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太田が右大内刈で攻める

ここまでは吉良が仕掛けて、太田がチャンスを探しながら応じるという格好で試合が進んでいたが、中盤を過ぎて徐々に太田の方から仕掛ける場面が増え始める。2分8秒には太田が組み手で相手をいなしながらの支釣込足、吉良が大きくバランスを崩すという場面が現出。

残り20秒、吉良が思い切って奥襟を叩くと、太田はその動きに合わせて先に前に出て抱きつきながら腹を突き出して吉良を持ち上げ、移腰の形で投げを試みる大技を見せる。吉良はしかし腰を一枚入れて左内股に切り返して退かず、太田もさらにこの技を透かしてともに崩れ「待て」。ともに際に強く、居合い抜きよろしく相手の動きの起こりに合わせた技を得意とする2人による手に汗握る段重ねの攻防。

そのまま試合はタイムアップ。両者膝に手を当てて息を荒げ、この激戦に疲労明らか。双方5人を送り出した総力戦は5試合すべてが引き分けに終わり、勝敗の行方は代表者1名による決定戦へと縺れ込んだ。

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太田が攻勢権を確保

代表はもちろん国士舘が吉良儀城、白鴎大足利が太田彪雅。大将戦に引き続き、両エースがそのまま畳に上がることとなった。

太田開始早々に思い切った右内股、吉良は片足を高く上げてなんとか回避。
22秒、感触を得た太田が再び右内股、吉良も再度片足を高く上げて捌く。
太田の攻撃意欲の前に展開を失う危機を感じた吉良は、釣り手で上から背中をガップリ持つ勝負の組み手に出て、相手の封殺と「居合い抜き」の恐怖をさらすことで太田の出足を止めに掛かる。太田も退かずに脇を差し、この近距離戦に応じる構え。

幾度か組み手の直しあいを経た59秒、吉良が両襟を握って左内股。太田が伏せて「待て」。
直後、勝負どころと感じた吉良躊躇せずに奥襟を叩いて左内股。しかし太田はその戻り際を狙って得意の右小外刈、崩れたところにいきなりスピードを一段上げて右払巻込を叩き込む。これまでとはテンポの違う太田の技に受けのリズムの狂った吉良、あっという間に畳に転がり「有効」、1分30秒。6試合目にしてついに両軍初の投技によるポイントが生まれる。

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太田が右払腰から巻き込み、滞空時間がほとんどない鋭い一撃は「一本」

残り時間は1分半、もはやいくしかない吉良は再び組み手の過程を飛ばして釣り手で上から背中を引っ掴む。しかし太田冷静に支釣込足で崩して吉良を勝負の距離に立たせず、刻々時間は過ぎ去ってゆく。

残り30秒を過ぎ、業を煮やした吉良は背中を掴んでの大内刈、さらに俵返の形で太田を持ち上げるが回しきれずにもろとも崩れて「待て」。ここで太田に「指導1」が宣告される。残り時間は18秒。

ポイント上はあと1つの「指導」で追いつくところまで吉良が迫り、試合はまさしく大詰め。しかし「始め」の声を聞いた太田、これまでとは手順を変えて釣り手で背中を掴むなり躊躇なく引き手を確保して一瞬で完璧な組み手を作り上げる。
吉良に危機を感じる間すら与えず、太田鋭い右払腰。前に出ることしか考えられなかった吉良はまたしても一段上がった展開の速さに幻惑された感あり、あっという間に一回転。会場の大歓声の中主審は高々と右手を挙げて「一本」を宣告。太田は吉良を背中の下に置いたまま小さく拳を握り締めて会心の笑み。

2分48秒、太田の一本勝ちでこの代表戦は決着。白鴎大足利が国士舘を破り、栄光の決勝戦への勝ち上がりを決めた。

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「一本」の宣告を受ける太田。ここまで4勝負けなし、全て「一本」でチームを勝利に導いた

白鴎大足利高○代表戦△国士舘高
(先)浅野大輔×引分×釘丸将太(先)
(次)柳原尚弥×引分×竹村昂大(次)
(中)山中勇希×引分×山田伊織(中)
(副)太田竜聖×引分×山田稔喜(副)
(大)太田彪雅×引分×吉良儀城(大)
(代)太田彪雅○払腰(2:46)△吉良儀城(代)

この試合で語るべきはなんと言っても太田彪雅の強さに尽きる。太田はこれで4試合連続の大将対決、そしていずれも相手のエースを「一本」で退けて勝利という抜群の出来。中学時代、そして高校入学直後の今夏、さらに今冬の招待試合シリーズと抜群の一発の強さの反面いかにも天才肌らしいメンタルの揺れと体の線の細さ、そして際に強いタイプゆえの相手に攻めさせてから取るという展開力の低さを見せており、総合的には、一発の最高到達点が高いが安定感に欠けるジョーカータイプという印象だった太田。しかしこの試合でどうやら高校カテゴリでも大駒と規定される絶対的強者として脱皮していることが判明した感あり。本格派の大型選手奥野、粗削りな軽重量級の大物川田、中量級のうるさい安達、そして今代きっての団体戦巧者の吉良とあらゆるタイプを「一本」に仕留めた強さと勝ちぶりの良さにはもはや大会の主役の風格さえ漂う。

相手の良いところを殺すのではなくあくまで攻めることで結果引き分けをもぎ取った前段4人、わけても一度ビハインドを追いながら「指導」累積負けを受け入れずにリスクを負って攻めに出た山中の功績もまた大であったが、大駒太田の存在と活躍こそこの試合勝ちあがり最大の要因であると評してまず間違いないだろう。

個性派チーム白鴎大足利、3試合を大将対決の1人残し、1試合を代表戦対決と消耗戦の連続を勝ち抜いて、ついに全国大会決勝に進出決定。

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崇徳高は山本健太を欠く苦しい布陣

修徳高 - 崇徳高
(先)佐藤竜 - 一面護(先)
(次)伊藤祐介 - 村上隆貴(次)
(中)坂口真人 - 増本大輝(中)
(副)原澤脩司 - 貫目純矢(副)
(大)小川雄勢 - 香川大吾(大)

修徳は原澤脩司と小川雄勢の大型2枚、崇徳は貫目純矢と香川大吾のポイントゲッター2枚をそれぞれ副将、大将に置いた。攻撃カードの坂口真人と増本大輝をそれぞれ中堅に入れたところまでは共通項の多い布陣だが、先鋒・次鋒の前衛2枚の厚みは修徳が上。崇徳は攻撃力と格上からでも一発狙える意外性を併せ持ったジョーカー役の山本健太を負傷で失っており、本来5番手カードとして入れ替えながら使うはずだった一面護・村上隆貴の2人で前衛2ポジションを構成する苦しい布陣となった。

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修徳の次鋒伊藤祐介が村上隆貴の支釣込足を振り返す

崇徳としては修徳の大将・小川を迎える前にリードを奪って貫目・香川の2枚を小川に手当てしたいところだが、修徳はその目論見と苦しい台所事情をきちんと弁えてまことに手堅く前半の試合を展開。

先鋒戦は佐藤竜がケンカ四つの一面護と引き手争いを続けた末に引き分け。崇徳の防衛ポイントとなる次鋒戦では試合巧者伊藤祐介が右相四つの村上隆貴に組み手操作に混ぜ込みながら粛々と技の楔を入れ続け、2つの「指導」を奪って優勢勝ち。次戦ではケンカ四つの増本大輝を得意の脇を差した距離の操作と前進運動で完封して引き分け、1人差リードを奪って中堅坂口真人へと襷を繋ぐ。

坂口は崇徳の副将・貫目純矢を得意の左内股で崩し続け、散発ながら重たい一撃で数度伏せさせ「指導1」を奪ったところで引き分け。修徳は1人差リードを持って崇徳の大将香川大吾を畳に引っ張り出すことに成功する。対するは前戦で大活躍した巨漢、原澤脩司。

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香川大吾が原澤脩司を攻め

原澤、香川ともに左組みの相四つ。
開始早々に香川思い切った左内股。原澤は低く構えて腹で受け止め、香川がケンケンを経て前に体を捨てる段まで待っておいて突き放し「待て」。

1分過ぎ、原澤の支釣込足に反応した香川が左内股。原澤今度は釣り手側に技を巻き戻して耐え切る。

香川は取り味のある左内股を2度、3度。これを受けて展開を失いかけた原澤は2分過ぎから左大内刈から左小内刈と技を繋ぎ、さらに左外巻込を放つ。しかしこれを待っていた香川は原澤の技を止め、釣り手側に体重を掛けながらめくり浴びせて「技有」奪取。経過時間は2分16秒、残り時間は44秒。

ビハインドを負った原澤は準々決勝同様目的をまたしても相手の体力の減殺に切り替えて残り時間を図太く戦い、香川も次戦を意識しながらクロージング。この試合はそのままポイントの積み重ねのないまま香川の「技有」優勢に終わり、香川は畳に残って修徳の大将小川雄勢を待ち構える。

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小川雄勢(左)と香川大吾の大将対決

大将対決は小川、香川ともに左組みの相四つ。

双方奥襟を取り合って対峙。香川は柔道衣をずらして圧を回避、いったん背筋を伸ばすが、小川が左大内刈を仕掛けて追うとこれをきっかけに頭が下がる。小川は左大外刈を2度仕掛けて、さらに奥襟を握り続けたまま左体落。これは自ら潰れてしまう形となったが、直後の54秒香川に「指導1」が宣告される。

小川は引き手から、香川は釣り手から持ちにかかる。次いで小川が釣り手を奥襟に入れるが、香川思い切った右内股でこれをリセット。短い時間ながら香川が攻勢権を得るかに思われたが、心得た小川は間合いが熟すのを待たずに左大外刈。これも潰れてしまったが着実に大きい技を繰り出し続け、あくまでペースを渡さない。

直後、香川が思い切って奥襟を叩く。持ち返した小川は釣り手の位置を低く押さえられてこれまでのような優位を確保出来ない。しかし小川は退かずに左内股を放ち、このシークエンスも香川は主導権の確保に至らず。「指導1」の後は大枠、動的膠着の様相。

残り50秒を切ってから小川さらに一段ギアを上げ、奥襟を握っての左大外刈。さらに大外刈を狙って二度大きく踏み込むと香川の背が丸まり、ついに主審は香川に「指導2」を宣告。残り時間は38秒。

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小川が抱きつきに来た香川を迎え撃ち、めくり浴びせて「技有」奪取

香川ここから激しく前へ。心得た小川は香川が勝負に出る距離を与えず対処するが、残り10秒を過ぎて香川が思い切った左払腰。間合いが遠く掛け足だけが高く上がる形になってしまったが、攻撃意欲と手数が評価され残り5秒で主審は小川に「指導1」を宣告する。

あと1つの「指導」で追いつくところまでたどり着いた香川、「始め」の声が掛かるなり畳を蹴って突進。奥襟を叩いて抱きつきに掛かるが、迎え撃った小川は自身が一歩前に出て抱きついてインパクトを殺し、逆に体を浴びせての左小外掛。香川たまらず背中から転がり主審は「技有」を宣告。

ほぼ同時に終了ブザーが鳴り響き試合終了。小川が「技有」による優勢で勝利してこの試合は終了、修徳が1人残しで決勝へと駒を進めることとなった。

修徳高○一人残△崇徳高
(先)佐藤竜×引分×一面護(先)
(次)伊藤祐介○優勢[指導3]△村上隆貴(次)
(次)伊藤祐介×引分×増本大輝(中)
(中)坂口真人×引分×貫目純矢(副)
(副)原澤脩司△優勢[技有・隅落]○香川大吾(大)
(大)小川雄勢○優勢[技有・小外掛]△香川大吾(大)


小川、香川の両大将に対してどちらが複数枚を手当て出来る状況を作り出せるかが試合の最大の焦点だったが、これを遂行したのは修徳。小川の個の強さはもちろんだが、この前段の一人差リード、大将同士の大一番の前に天王山というべき相手を上から見下ろす攻撃の拠点を確保したことこそが勝敗の最大の因であった。香川が逆転に掛け、全てを捨てて突進せねばならない状況に追い込まれた最後の5秒間にこの試合の様相は集約されていたと言える。

そして、この大一番で小川が見せた勇気も特筆ものであった。いま一段の引き手の引き込みがなくまだまだ技を「戻され返される」リスクのある自身の技、そして相手はまさしく相手の技をめくり返しての隅落を得意とする強者香川。この状況を熟知しながら、それでも展開の分岐点になりうる時間帯でことごとく先手を取ったのは小川であった。圧力を掛けるが思い切りに欠けた前代レギュラー時の煮え切らなさをどうやら完全に払拭、これぞというときにキッチリリスクを冒した小川の側に勝利の女神が微笑んだ形での「指導」2つ、そして「技有」奪取劇であった。

修徳、インターハイ王者崇徳を1人残しで下して決勝戦進出決定。

この結果、決勝は

白鴎大足利高 - 修徳高


というカードで争われることとなった。

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