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修徳、崇徳ら有力校ひしめく史上最大の大混戦。観戦の旨みは前半戦に集中・全国高等学校柔道選手権男子展望

(2014年3月19日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版3月19日掲載記事より転載・編集しています。
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全国高等学校柔道選手権男子展望
修徳、崇徳ら有力校ひしめく史上最大の大混戦。観戦の旨みは前半戦に集中
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総合力ナンバーワンの呼び声高い修徳高

■有力校

抜き勝負で高校柔道日本一を決める全国高等学校柔道選手権大会がいよいよ21日(個人戦は20日)、日本武道館で開催される。

ここ数年、「混戦」という事前展望が繰り返されてきたこの大会だが、今大会こそはまさしく前例のない大混戦。戦力的には優勝戦線に5チーム、ベスト4を狙うレベルまでを加えると12~13チームが差のない状態でひしめく異常事態となっている。優勝を伺うチームとそれ以外のチームにはある程度の差があるが、これとて当日の「弾み」でどうなるかわからないレンジに収まる小差の争いだ。純戦力はあくまで土台であり、チームのまとまり、負傷者の有無、主力選手の個人戦消化後の疲労度、対戦相性、序盤戦の出来、当日のヒーロー出現の有無と勝敗を占うための掛け算の項は数多く、例年以上にこの「項」の乗算による上積み部分が勝敗に大きく影響してくるはずだ。

その混戦の中でももっとも総合力が高いと目されるのは東京第二代表、今期は松尾杯と全国高校選抜三春大会を制している修徳高(東京)。無差別東京代表を務める小川雄勢、昨夏インターハイでの王者東海大浦安撃破の立役者となった業師坂口真人、左右が利く重量選手の原澤脩司、インターハイでもレギュラーを務めたファイタータイプの1年生佐藤竜とタイプの違う役者が揃っている。これにしぶとい伊藤祐介、チームのまとめ役の仲島拓志が入り、もっとも戦力の凸凹の少ない、高い平面で選手の力を揃えたチームだ。
小川の得意は圧殺ファイト。圧力ファイターに対した際の選手の対応は切る、担ぎ技で潰れる、捨身技で潰れる、片手で斜めに立つ、横変形で小さい足技を飛ばす、と相場が決まっているがこの出口をことごとく封じる「アンチ展開力」を身につけたのがこの1年の小川の成長。圧倒的なパワーをベースに相手を追い込んで「指導」ポイントを大量奪取、戦意喪失した相手を「嫌倒れ」させて抑え込むのが必勝パターンだ。鉈を振るうような大外刈、相手に膝を着かせてから腕を固めて体で押し込む支釣込足が得意技だが、ストロングポイントは「圧力とスタミナ、投技から固技への移行の巧さ」と総括しておくべき取り味と安定感のある選手だ。勝負どころで2人、3人と抜き去るだけの体力的ポテンシャルは十分。

チームの団結が不安定だった東京予選では国士舘高に苦杯を喫したが、これをきっかけに選手が話し合い、修徳の伝統である一体感が出てきたところも買い。2月の三春大会は3週間前の東京予選とは別のチームと化していた。シードランクはB(ベスト8シード)だが、全ての試合が順行運転で進むと仮定するならば優勝候補の筆頭は修徳と考えて良いのではないだろうか。

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修徳高のエース小川雄勢

不安材料は個人戦との兼ね合い。団体戦の前日に行われる個人戦には佐藤と小川が出場するが、佐藤は担ぎ技とひたすら胸を合わせる講道館柔道的スタイルの寝技で勝ちきるタイプの選手で試合ごとの消耗が激しい。有力選手の少ない81kg級で試合数を重ねることになると、昨夏以来担ってきた勝負どころでの斬り込み役に支障をきたす恐れがある。
小川はスタミナ十分だが、小、中、高通じて厳しい試合になると急激に攻撃意欲が減退し意外なほど淡白な面を見せるところがある。冬の招待試合シリーズを見る限りこの点を克服した貪欲さを見せてはいたが、複数抜きが必須の状況で迎えた東京予選決勝では1人を抜いたところで担ぎタイプの山田稔喜の粘りに合い、引き分けるというもっとも悪いパターンの試合を演じてしまっている。個人戦で達成感を得られるだけの成績を残した場合に、どこまで団体戦に貪欲でいられるか、これが修徳優勝の最大の課題になるのではないだろうか。

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インターハイで優勝、今代も全国制覇を狙う崇徳高

修徳と頂点を争うと目されるのが、インターハイ王者の崇徳高(広島)。今期は若潮杯武道大会に優勝している。

こちらの中心選手は先日高校2年生で全日本選手権出場を決めたばかりのエース香川大吾。これに12年全日本カデ90kg級王者貫目純矢、大物食いが得意な山本健太と前代からレギュラーを務める2人に加えて攻撃力の高い増本大輝までの4人が固定メンバー。これに軽量級の一面護と村上隆貴が入った6名でチームを構成している。

今代は香川が確実に一点を挙げ、周囲がしぶとく守りつつ試合の巧い貫目の「指導」累積勝ち、もしくは飛び道具山本と増本の一発で加点する形で各種大会を勝ち抜いてきた。香川は足を痛めて臨んだ松尾杯決勝の修徳戦で引き分けた以外は招待試合シリーズは全勝、抜群の取り味を発揮している。

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崇徳高のエース香川大吾

良くも悪くも今回は香川が確実に抜くことを織り込んで戦うチーム。香川はあくまで二本持ち、攻守ともにこの二本を離さずに相手を追い詰めるという巨躯に似合わぬ緻密な戦闘スタイルが特徴で、修徳の小川同様、しのごうとする相手にとってはまことに厄介な相手。その圧倒的なパワーと得意の内股の切れ味はもちろん、釣り手を動かしながら投げやすい方向へ、転がしやすいベクトルへと相手を誘導する試合展開の巧さは出色ものだ。歴代の高校柔道の主役たちのような派手さはないが、安定感と取り味の高さは屈指。チームの浮沈は香川の出来、エース対決で香川がこれまでのような取り味を発揮できるかどうかに掛かる。そして頼もしいのはインターハイ制覇を経て他の選手にも「勝って当然」の義務感が染みていること。相手が隙を見せればどこからでも取りに行くだけの攻撃力もあり、後方の香川の存在を晒して周囲が着々加点するという戦い方が上位対戦でも披露できれば2大会連続の優勝が見えてくる。

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個性派を揃えて山っ気十分の白鴎大足利高

いかにも地方の強豪らしい個性派チームで4つ角シードを勝ち取ったのは、朱雀杯と水田杯を制し、かつこれら招待試合シリーズで修徳、国士舘、崇徳らの強豪に勝利した経験を持つ白鴎大足利高(栃木)。世界カデ超級王者の勝負師太田彪雅、体重170kgの巨漢山中勇希、突貫タイプの斬り込み隊長浅野大輔に、前代からポイントゲッターを務める100kg級のオールラウンダー柳原尚弥に足技の巧みなこれも100kg級の太田竜聖と面白い選手が揃っている。「地方から全国制覇を」と指揮官の鼻息も荒く、いま最も勢いのあるチームの一つ。

不安材料はこのチームも前日に行われる個人戦の影響。全国制覇に必要なのは地方チームにとってはなかなか得難い「上から目線」の強気だが、おそるおそる戦っている印象があったこのチームにこの強者のメンタリティを与えたのは松尾杯における浅野大輔の、中央の強豪をまるで格下であるかのように大技で屠り去った強気の柔道であった。このチームは自身を強者と規定出来るか、勝つことに現実的な義務感を抱けるかどうかでどうかでパフォーマンスが全く変わるはずで、今大会でも浅野の突貫ぶりはチームの浮沈を握る最大のカギ。手を抜くことを知らない、かつ膝の負傷明けであるレギュラー最軽量(81kg級)の浅野が仮に勝ち上がった場合に、翌日の団体戦にどこまで精神的渇望と肉体的な余裕を残せるか。

同じく個人戦に出場する太田彪雅は天才肌らしいムラ気の選手で、こちらも課題は同じ。疲労の極が訪れた時、どうしても取らねばならない厳しい状況が到来した時に勝負に出れるかどうか。

そして浅野以外の4名は実は決して「追いかけて取る」ことに徹せるタイプではなく、相手が勝負に来ることを前提に攻撃力を発揮する型の選手。よって上位対戦でビハインドを追うような試合が続くと精神的に厳しいはず。6番手の佐俣楓も含め、全員が「早い段階でリードを得て、壊さずに試合を進めながら、かつ攻め時を逃さない」という厳しい試合を要求されるが、これが全員にどこまで染みているか。そしてエース格の太田、柳原に勝負どころで試合を壊しにいける強気が骨身にまで染みているか。個性派ゆえ、このチームは課題もみどころも満載だ。

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第1シードの国士舘高

戦力評価の高かった修徳に東京都予選で完勝した国士舘高(東京)は見事第1シードを得た。戦力構成こそ地味だが、国士舘らしいチームワークと「仕事」に対する使命感、チームの一体感は、世代を代表する選手をズラリと揃えた前代よりもむしろ上、と関係者の評価も高い。

エースは前代チームでもレギュラーを務めた吉良儀城。新チーム結成以来負傷のため1月まで戦線離脱していたが、復帰戦の東京都予選ではさすがの強さを披露。一本勝ちを並べて優勝に貢献した。
吉良は相四つ横変形を得意とする試合巧者。相手の好む間合いよりも一間詰め、あるいは一間離れて相手の技を誘い、その起こり籠手を殺していくというように上位対戦でも得点が計算できるロジックを複数持っている。吉良抜きで各種招待試合を戦い、勝ち、あるいは負けてきた今期の国士舘だが、代替わりしてからまだほとんど試合をしておらず、ゆえに今期負けなしの全勝で全国大会を迎える吉良がどこまで成長しているかどうかは上位対戦の様相を見積もる上での大きなカギだ。

周辺戦力は強者相手でも担いで転がす左右の一発を持つ山田稔喜を筆頭に竹村昂大、山田伊織に重量級の浅見貴哉と、「失点もあるが取れる」選手が揃った。もともと歩留まりの良い釘丸将太を中心にミスを失くしていくことがチーム全体の課題だが、これは国士舘としてはもともと得手のアプローチ。個人戦に出場するのが釘丸のみであることとチームの雰囲気の良さも織り込み、本番は招待試合シリーズより一段格上のチームに仕上がって来ると見積もっておくべきだろう。

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黒潮旗に優勝、以後は招待試合に出ずに地力を練ってきた大成高

12月の黒潮旗武道大会を制した大成高(愛知)も非常に面白い。招待試合シリーズへの出場がこの1試合のみ、かつブロックの新人大会がないゆえにシード権こそ逃したが、頂点を伺う力があるチームだ。

エースは、黒潮旗の大活躍で関係者を驚かせた90kg級の川田修平。同大会では浅野未来(東海大相模高)や原澤脩司(修徳高)といった大型選手を真っ向からの大外刈で刈り落とすスケールの大きい柔道を披露した。中学時代は66kg級だった川田の躍進に加え、三輪龍志、さらに115kgの並木泰雅と保有戦力は強力。1年生、かつ73kg級の軽量選手ながらレギュラー入りを果たしている全中王者古賀颯人もおり戦力は充実している。

このチームの何よりのストロングポイントは、ここ数年の全国大会での成績低迷を受けてチーム全体に上位進出への飢餓感があること。前代は最終盤のインターハイで名垣浦祐太郎ら前代の選手が明らかに一段成長、ここで得た上昇機運をチーム全体が捕まえて、ロングスパンでの上昇カーブに乗りつつある匂いがある。

みどころはなんと言っても、シードの基準になりうる各種招待試合を捨ててまで地元での集中強化に踏み切った今年の方針が、いったいどこまで選手の地力を伸ばしているか。招待試合シリーズ最初期の黒潮旗と比べるとライバル各チームはいずれもまるで別のチームであるかのように軒並み変貌、変質しており、その中で敢えて選んだこのルートを経ていったい大成がどんなチームに仕上がっているのか。観察すべきはまずは初戦。その戦いぶりに注目したい。

シード順とはズレがあるが、ここまでの5チームがおそらく優勝への最短距離にあるチーム。

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(写真:若潮杯で決勝進出、旋風を巻き起こした神戸国際大附高

四つ角に入った天理高(奈良)神戸国際大附高(兵庫)と、近畿からは2校がシードに入った。

近畿ブロック大会優勝の天理は古田伸悟を中心に戦力的にも戦術的にもバランスの取れたチーム。爆発的なエースはいないが、いかにも天理らしい攻撃力の高さが売り。若潮杯では3位入賞を果たしている。

ただしその若潮杯では各選手の攻撃意欲にバラつきがあり、切所で粘り抜いての鮮やかな得点獲得が見られる一方、逆に意外なまでの淡白さが見える場面も散見され、まだ未完成のチームという印象だった。2012年のインターハイ前の急成長に見られるようにこのチームは伝統的に本番前の追い込みで地力を上げるノウハウに長けており、これが今代、この時期に発揮されているかどうかが勝ち上がり最大のポイントだろう。チーム全体がこの大会での優勝旗奪取をどこまでの具体性を持って「狙っている」のかどうか、そのモチベーションの高さが浮沈のカギを握る。

神戸国際大附は地元出身の選手を鍛えこんでのしあがってきた好チーム。若潮杯では決勝に進出、旋風を巻き起こした。近畿ブロック大会では準々決勝で天理と大接戦を演じた末に敗れたが、若潮杯のインパクトと地力の高さが買われてシード権を勝ち取ることとなった。勢いの良さでは今大会屈指のチームだ。

「ウエイトトレーニングに頼らず、自分の体を使った練習で地力を養う」指揮官の方針が功を奏し、各選手通じた体幹の強さが特徴。オーソドックスな攻撃柔道にモダンな連続技を盛り、非常に骨の太い試合をする。厳しい稽古で「実の詰まった」体作りを目指していながらなお95kgの石山潤平、92kgの高木育純、130kgの光明駿、118kgの新井滉燿に85kgの鳥井天凱、6番手にも102kgの高橋司と並べた体格の良さも魅力だ。ここにオプションで60kg級のファイター秋定礼を起用するとの情報もあり、この人の戦いぶりによってはチームの生命線である強気のファイトスタイルにターボが掛かる可能性もある。今回ダークホースと目されるチームの中では最大の有望株。

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激戦区神奈川を圧勝で勝ち上がってきた桐蔭学園高

四つ角シードが確実と思われた東海大相模高を3人残しの大差で破って全国大会に乗り込んで来たのは昨年3位の桐蔭学園高(神奈川)。中心選手の岡田武志と小原弘暉を欠いた状態で招待試合シリーズを戦い、得点源が大塚翔悟のみという状態で成績を残しきれずにシード権こそ逃したが、これも注視しておくべき強豪チームだ。

昨夏のインターハイ2位であらためてその育成力を見せ付けた作陽高(岡山)はベスト8シード入り。野地優太を中心に伝統の骨太で粘り強い柔道スタイルは健在。川野一道監督は「今年はまだまだ」と語るが、例年インターハイ前にジャンプアップするこのチームとしては今年の仕上がりはむしろ早く、もともと技に切れ味のある鎌田魁翔、補欠登録ながら186cm、133kgの1年生菊池盛らが力を付けていればこの段階で再び全国を驚かす可能性も十分。大成同様、試合ではなく稽古で地力を練ってきたという経緯も不気味だ。その仕上がりが今年の川野プランのロードマップのどの段階にあるのか、初戦に注目したいところ。

ほか、村田大祐をワントップに1月以降周辺戦力が一段大きく成長した前年度王者東海大浦安高(千葉)、全日本柔道選手権進出を決めた田中源大がエースを張る高川学園高(山口)、明石将太と坂田豊志の2トップに1年生の北山達也の成長著しい小杉高(富山)、上位対戦でも複数を抜き去る力のある100kg超級近畿王者奥野拓未を擁する東海大仰星高(大阪)も十分シードを張る力がある。

どのチームにも全国制覇のチャンスがある大混戦、すべての指揮官が優勝の必須要件として口を揃えるのは「序盤戦で勢いに乗ること」。最大注目は序盤戦だ。

■組み合わせ

【Aブロック】

-最大注目は国士舘-桐蔭学園の3回戦、勝ち上がりは神戸国際と三つ巴の激戦-

Aシード:国士舘高(東京)
Bシード:神戸国際大附高(兵庫)

国士舘(東京)-
佐賀工(佐賀)-豊栄(新潟)

高知高(高知)-
桐蔭学園高(神奈川)-東海大翔洋高(静岡)

神戸国際大附高(兵庫)-
旭川大高(北海道)-九州学院高(熊本)

松本第一高(長野)-埼玉栄高(埼玉)
田村高(福島)-平田高(島根)

国士舘と桐蔭学園高が3回戦を争い、勝者が準々決勝で神戸国際大附と戦うというところまではまず間違いないと思われる。

桐蔭学園は初戦でセンスある選手を揃える東海大翔洋高と戦うが、ここでつきあい過ぎずに良い形で勝ち抜けることが出来るかどうかが最初のカギ。
国士舘-桐蔭学園高は順当に考えれば国士館高の勝ち抜けだが、「しぶとい戦いの中で最大戦果を得る」旨みを神奈川県予選決勝で経験して勢いに乗っている桐蔭学園はこの3回戦に焦点を合わせて戦い方を練りに練っており、激戦は必死。特に「取れるが取られる」傾向の強かった国士舘の3番手、4番手選手が縺れ際に強い桐蔭の岡田、小原らに勝負どころを誤るようだとかなり試合は縺れるのではないか。順行運転の連続が続けば国士舘が勝利するのではないかと思われるが、もし縺れた場合に国士舘が桐蔭学園に差を付けるにはエース吉良儀城の得点力で突き放すしかない。桐蔭学園は先にリードして、後半に出てくるであろう吉良の戦いを曖昧な展開に持ち込んでクロージングという策を考えているはずだ。今大会決勝以外の試合時間は3分であり、国士舘としてもビハインドを追いかける展開は避けたいはず。前重心で後ろにクローザーを入れてくることが見込まれる桐蔭学園に対して、岩渕采配は吉良に「取らせる」のか、「盤面に重しを利かせる」のか、その配置に注目したい。

国士舘が勝ち上がった場合、オーソドックスタイプを揃えた神戸国際は比較的戦い易い相手ではないかと思われる。このチームが織り交ぜてくる「相手の起こりに合わせるカウンター技」や「一手多く出す連続技」は国士舘の得手でもある。神戸国際が若潮杯以上の爆発力を出せばワンサイドで神戸国際の勝利すらありうるが、全国大会本番に際して使命感でキリキリ巻き上がっている国士舘に対してこの展開を想起するのは難しい。ここは国士舘の勝ち上がりと仮定しておくべきだろう。

一方、桐蔭学園が勝ちあがった場合は、そのストロングポイントである緻密さやある種の繊細さを、神戸国際のパワーが押し切る可能性も大。桐蔭学園としては目標としてきた大一番を勝ち抜いた後だけに、逆にここを目指して勝ち上がってくる神戸国際の頭を抑えるのは容易ではないのではないか。

と、3者それぞれに勝ちあがりの可能性十分であるが、すべてのシナリオが波乱なく「順行運転」の範囲に収まった場合という観点から、仮にここは国士舘の勝ち上がりとして稿を進めたい。

【Bブロック】

-先の見えない今大会最激戦区、白鴎大足利高と大成がベスト4争いの軸-

Aシード:白鴎大足利高(栃木)
Bシード:作陽高(岡山)

白鴎大足利高(栃木)-
東海大仰星高(大阪)-新庄東高(山形)

大成高(愛知)-
明桜館高(鹿児島)-東海大甲府高(山梨)

作陽高(岡山)-
福井工大福井高(福井)-和歌山北高(和歌山)

宮崎工高(宮崎)-阿波高(徳島)
東北高(宮城)-市立習志野高(千葉)

下側のブロックは作陽の勝ち上がりがほぼ確実。比較的穏当なブロック。

上側のブロックは強豪がギッシリ、序盤戦としてはあまりに無慈悲な対戦が詰まった今大会最大の激戦区となった。

Aシードの白鴎大足利の初戦は高い確率で東海大仰星、勝ったチームは3回戦で大成と激突する。この勝者が準々決勝で作陽と戦うことになるのだから、白鴎大足利(=東海大仰星)は、優勝するためには頂点レベルの相手と2回戦から決勝までの実に5試合を戦い抜かなければならないという厳しい組み合わせだ。

白鴎大足利と東海大仰星は総合力で白鴎大足利が優位に立つが、東海大仰星のエース・奥野はスケール感と具体的な得点能力を併せ持つ非常に厄介な相手。もし奥野に複数枚が抜かれた場合は試合はどうなるかわからず、また奥野に抜かれることで抜いて抜かれての消耗戦となった場合に、序盤戦で勢いを獲得するというミッションが果たして達成出来るのか、また、あまりに苦戦した場合にはこの段階で選手が疑心暗鬼に陥り「全国優勝する力があるはずだ」という牙が折れた状態で次戦に臨まねばならなくなるという懸念もある。止めどころのハッキリしたチームに対して個性派揃いの白鴎大足利がどう臨むのか、非常に楽しみな試合。

大成と白鴎大足利の対戦は予想が難しい。大成が2-1で勝利した体重制限ありの黒潮旗(川田が山中に払巻込「有効」で勝利、太田彪雅が並木に「指導2」で勝利)の試合の様相を見る限り、泥沼の取り合いになった場合は選手のタイプのバラエティ豊かで試合経験も豊富な白鴎大足利が優位、大成の勝利にはエース川田が複数枚を抜く活躍が求められるということは言えそうだ。

左組みの川田は相四つ本格派同士のガップリ勝負を得手とする。白鴎大足利は浅野と山中の2人のみが左組みで、あとは補欠を含めた4人が右組み。当然ながらケンカ四つで戦う可能性が高い。白鴎大足利は川田との対戦を明らかに「止めどころ」と規定してくるはずで、川田がケンカ四つの相手に明らかに凌がれた場合にこれを突破するロジックと地力を備えているかが大きく勝敗を左右する。おそらく前衛に投入されるであろう古賀と浅野、双方の「軽量ムードメーカー」による主導権の取り合いも見逃せない。

そしてこの対戦の勝者が作陽と対戦するわけだが、作陽はインターハイで見せた通り、ケンカ四つの際には脇を差してのパワーファイトやカウンター技などオプションが豊富で格上に対する攻略メソッドを完全に確立している感がある。

作陽はエース格の野地をはじめレギュラーに左組みが4名。

大成との対戦になった場合は、止めどころとしてターゲットにすべき川田が左相四つを得意としており、ほぼ相四つで戦うことになる作陽にとってはなかなか難しい試合になる。一方右組みが多くケンカ四つの対戦が増える白鴎大足利に対しては比較的優位に試合を運べるのではないかという仮説は一つ立てられる。白鴎大足利は松尾杯で作陽に1-0で勝利しているが勝敗はまさしく僅差。かつ「観察力」「対策力」に長けた作陽はこの試合で得たデータをもとに十分な対策を施してくるはずだ。大成を相手にした場合も、1月に合同合宿を張って互いに戦力を把握しているという事情の中で作陽の「対策力」の高さは見逃せない。

とはいえ、順行運転であれば白鴎大足利(大成)の地力が勝るはず。試合が縺れること自体は間違いないが、ここは小差で上段ブロック勝ち上がりの白鴎大足利と大成のいずれかがベスト4に進むと見ておきたい。

【Cブロック】

-崇徳の勝ち上がり濃厚、大牟田と大垣日大がベスト8を争う-

Aシード:崇徳高(広島)
Bシード:大牟田高(福岡)

崇徳高(広島)-
京都学園高(京都)-沖縄尚学高(沖縄)

日体荏原高(東京)-
秋田工高(秋田)-北海高(北海道)

大牟田高(福岡)-
清風高(大阪)-つくば秀英高(茨城)

高松商高(香川)-大垣日大高(岐阜)
盛岡中央高(岩手)-津幡高(石川)

上段ブロックの勝ち上がり、そしてベスト4への勝ち上がりは崇徳と見てまず間違いないだろう。3回戦では東京都第三代表の日体荏原高(東京)の挑戦を受けるが、2年生に大畑公祐を置き1年生に松井海斗、長井達也、東部雄大と学年を代表するスターを配したこのチームはいまだ選手のネームバリューほどの爆発力を獲得するに至っていない。1月時点までの育成力から補助線を引く限りは今大会も爆発的な上積みはまだないと考えるのが自然で、ここは縺れるシナリオを内包しつつも、崇徳の勝ち上がりと考えるのが妥当だ。

下段ブロックは恒例の九州枠でシード権を獲得した九州王者・大牟田と大垣日大との3回戦での対戦が濃厚。この対戦は不透明、順当ならば大牟田勝利のはずだが吉田優平を中心に戦闘力のある選手を3枚、4枚と揃えた大垣日大は戦力的にはシードに入ってもおかしくない陣容。ここは大垣日大を推しておきたい。大牟田の意地に期待。

準々決勝、大垣日大は崇徳の香川大吾を止めることが最大のミッションになるが、今冬も抜群の攻撃力を見せた主軸の吉田優平は、大型選手の一発に対する捌きに難があり思わぬ脆さを露呈する場面が多々あった。総合力と香川の攻撃力を買ってここは崇徳の勝ち上がりと見る。


【Dブロック】

-修徳が頭ひとつ抜けるも、アップセット要素持つ好チームが集中-

Aシード:天理高(奈良)
Bシード:修徳高(東京)

天理高(奈良)-
新田高(愛媛)-東海大浦安高(千葉)

小杉高(富山)-
長崎日大高(長崎)-米子東高

修徳高(東京)-
比叡山高(滋賀)-四日市中央工高(三重)

国東高(大分)-青森北高(青森)
桐生第一高(群馬)-高川学園高(山口)


上側の山は大混戦。勝ち上がり候補は天理、東海大浦安、小杉の3校。

東海大浦安は12月の招待試合シリーズで村田大祐の取り味の高さの一方、周辺戦力の装甲の軽さを重ね塗りして見せてしまった格好だったが、指導陣が認める通り「全国5冠」を達成した前2代の後を受けてこの代の強化時期が後ろにずれ、スタートダッシュに失敗した感が否めない。腰を据えて育成に取り組み始めた後の2月初旬の三春大会では12月の黒潮旗、若潮杯より一段上の完成度を見せており、そこから順調に強化が進んだとすると天理相手にも粘る試合を展開する可能性は十分ありうる。12月まではパワーファイターに後ずさりする感のあった村田以外の4枚が天理とどう戦うか、まことに興味深い。

順当に試合が進めば3回戦で天理と小杉が戦い、天理が小杉の綻びを突いて加点し準々決勝進出と見るべきか。とはいえ、どのチームが勝ち上がっても深手を負っての勝ち上がりとなることは間違いない激戦区だ。

下側の山は修徳の勝ちあがり濃厚。おそらく初戦(2回戦)は四日市中央工、3回戦は高川学園との対戦となる。

四日市中央工は90kg級の強者原田昌寛を中心とした好チームだが、カギはむしろ原田以外の4枚の成長度合い。左右の担ぎを軸に戦う原田は遮二無二自分の形に持ち込むタイプではなく、潰しどころとして原田だけが狙われた場合は複数枚を抜くことは難しい。相手が原田に勝負を仕掛けてくる状況を周囲が作り出せれば面白い試合をするのではないだろうか。

高川学園と修徳の対戦は好カード。高川学園はここ数年、体幹が強く、思い切りの良さと勝負の巧さを併せ持つ選手を連続で輩出しており、田中に81kg級の村岡大地、90kg級の加倉雅士を揃えた装甲はなかなか厚い。総合力とエース小川の力量に鑑みて修徳の優位を推すが、泥臭い試合を厭わない田中に小川が転がされるようなことがあると試合はどうなるかわからない。修徳にとっては最初の難関。ただし田中-小川は前日の個人戦準々決勝で一戦交えている可能性が高い。この場合勝敗自体よりも双方が戦い方を観察して対策を立てあうことになるということが重要で、これを考えると、結局は手札が多くその分打てる作戦のバリエーションが豊富な修徳が優位に立つのではないだろうか。

いずれこのブロックは、苦戦しながらも修徳がベスト4に勝ち上がると仮定しておきたい。

【準決勝-決勝】


国士舘高 - 白鴎大足利高(大成高)

崇徳高 - 修徳高

という顔合わせを予想するが、再三書き続けているように今年度は大混戦。特にAブロックとBブロックの勝者が対戦する第1試合のカードとその様相を予測することはまことに困難だ。

国士舘と大成の対戦であれば、伸びやかだが粗削りな大成を国士館が止めに止め、吉良で加点してしぶとく勝ち上がるというシナリオが浮かび上がる。大成の地力が国士舘の試合技術を凌ぐところまで伸びているかどうかが見どころ。国士舘-白鴎足利の場合は双方戦力的には決定打となる要素が少ない。担ぎ技ファイターの山田稔喜に大型選手の山中勇希、受けの軽い選手に「小さく入って大きく投げる」太田彪雅というような相性の向き不向きはあるが、全体としては、双方の長く伸びた防御線の中で付け入る隙を探し続けるというガチガチのソリッドな試合になる可能性が大。そうなると、「取るが取られる」傾向のある国士舘の4選手が分厚い白鴎大足利の攻めをどこまで我慢できるか。互いに忍耐を強いられるロースコアゲームなら白鴎大足利にチャンスあり、吉良の登場前に山田稔が一点挙げるような展開であれば国士舘がさらに一段突き放して勝利するというシナリオはひとつ想起される。これまでの消耗度、勢いと当日の出来で勝敗が大きく揺れる一番。

崇徳-修徳戦。点取り制の松尾杯では修徳が1-0で勝利(小川雄勢が増本大輝に一本勝ち、香川大吾が原澤脩司に引き分け)しているが、この時は前戦で香川が足を痛めていたという事情がある。総合力では修徳が勝ると思われるが崇徳が凌ぐ試合を志向した場合に周辺戦力だけで差をつけることは難しい。結局は香川-小川のエース対決がその帰趨を決定すると思われる。

この対戦は両者左組みの相四つ。小川は圧の掛け易い相四つを好む傾向があり、一方の香川は夏のブレイク以前は相四つで相手に釣り手を高い位置で持たれることに過剰な嫌気を発していたことがあった。この関係を敷衍する限りでは小川が有利、しかし成長著しい香川の地力が小川を凌駕するところまで辿り着いていれば「圧を掛けられる力関係かどうか」でいきなり柔道が変わる傾向がある小川に対して香川が突如優位になることもありうる。香川が圧を受けた近距離から腰を切っての前への投技を度々見せていることも予想を困難にする一要素だ。

両雄は前日の個人戦でともに無差別に出場している。対戦があるとすれば決勝だが、その勝敗の帰趨以上に、前日の決勝対戦、そしてここでの再戦と続く熱いドラマに期待せずにはいられない。前述の通り柔道の傾向を考えると小川がやや優位、よって修徳の優位を推しておくが、勝敗以上にその内容、渦巻くドラマに期待したい一番。

決勝は、総合力とポイントゲッターの安定感からC-Dブロックの勝者が一段有利としておきたい。

大混戦の今大会、抜け出して今期最初の全国制覇の栄を獲得するのは果たしてどのチームか。そしてその原動力となる当日のインシデントは何か、潮目を掴むのはどの試合か、キーマンは果たして誰か。例年以上に注目対戦が多い今大会、熱戦に期待したい。

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版3月19日掲載記事より転載・編集しています。
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