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インターハイ柔道競技男子個人戦マッチレポート 81kg級~100kg超級

(2013年9月27日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版9月20日掲載記事より転載・編集しています。
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インターハイ柔道競技男子個人戦
マッチレポート 81kg級~100kg超級
尾方寿應が初優勝、選手権王者伊藤祐輝は変則ファイター金山天地に僅差負けで5位
■ 81kg級
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(写真:1回戦、尾方寿應が佐藤祐樹から払巻込で「有効」を奪う)

優勝候補は高校選手権王者の伊藤祐輝(藤島高)に2位の佐藤祐樹(東海大山形高)、東海大相模高のポイントゲッターで今年度全日本カデ王者の尾方寿應、高校選手権で2度3位入賞の金山天地(柳ヶ浦高)、折原虹之介(東海大浦安高)、向翔一郎(高岡第一高)、大橋賢人(足立学園高)ら。

ある程度これらの有力候補が均等に配されたトーナメントにあって序盤戦最大の注目は尾方と佐藤がいきなり激突したDブロックの1回戦。
両者左組みの相四つ。長身の佐藤は肩越しに釣り手を入れて大外刈、内股で攻め尾方は丁寧な組み手と支釣込足、機を見て肩越しに釣り手を入れる強気の組み手で対応。残り44秒で尾方に片襟の「指導」が与えられたのみで本戦は拮抗のまま終了、試合はGS延長戦にもつれ込む。

延長戦は尾方が一段ギアを上げ片手の左内股で佐藤を伏せさせ、さらに朽木倒で前に出る。佐藤は左大外刈を合わせて抵抗するが、試合は尾方がコントロールしている印象。
延長1分6秒、尾方が肩越しに釣り手を入れると佐藤は掬投に食いつく。尾方が佐藤に足を持たせたまま左払巻込に繋ぐと佐藤はその長い体を屈して耐えたまま巻き込まれ「有効」。これで尾方の勝利が決定、高校選手権準優勝者の佐藤は初戦敗退が決まった。

佐藤は序盤優勢も尾方の粘り強い組み手の前に本戦中盤から掛け潰れが増えた。高校選手権時にそのポテンシャルを引き出す因となった異常なまでの強気、どこまでも投げにいく「際」の度胸が中途で失われたことが悔やまれる試合だが、それ以上に試合を壊さず、かつ機を見て思い切り攻める尾方の展開管理の巧さが際立つ試合だった。両者とも一発のある選手だが丁寧さと度胸に勝った尾方に軍配があがったという格好の一番であった。

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(写真:準決勝、尾方寿應が大橋賢人から小外刈「有効」)

尾方は2回戦で松本真樹(佐賀商高)からGS延長戦で「指導2」を奪っての優勢勝ち(GS1:08)、3回戦は座波吉平(那覇西高)から「有効」優勢と苦労しながらも勝ち上がり、準々決勝では難敵向翔一郎(高岡第一高)から「指導2」の優勢勝ち。準決勝は大橋賢人(足立学園高)から小外刈「有効」、さらに直後の内股「一本」(3:05)に屠って見事決勝進出を決めた。

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(写真:準決勝、金山天地が折原虹之介がから内股透「有効」)

逆側の山から決勝進出を決めたのは金山天地。2回戦は相木飛磨(北海高)を「技有」優勢、3回戦は高橋悠輝(國學院大栃木高)を得意の肩車で「一本」(2:02)に仕留め、最大の勝負どころと目された準々決勝の伊藤祐輝戦は先手の肩車と横落で伊藤のパワーを封殺、伊藤の担ぎ技もことごとく抱きついて返し技を試み、フルタイム戦った末に僅差3-0で勝利。準決勝は折原虹之介を左払腰「技有」、左内股「有効」と連取して退け、高校カテゴリの全国大会4度目の出場にして初の決勝進出を決めた。

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(写真:決勝、金山が先手志向で攻撃)

決勝は金山、尾方ともに左組みの相四つ。

序盤は尾方が組み際の左小内刈、一方の金山は甲高く気合の声を発しながら横落で攻めるが尾方ことごとく潰して効かず。両者数合攻め合った後の40秒過ぎからは両者手先のいなしあいが続いて技が出なくなる。

1分30秒過ぎに金山が思い切った大内刈を放つが尾方はいなして左大外刈に繋ぎ、金山のバランスを崩す。

1分45秒に金山は横落、さらに巴投に連絡と捨身技に打開策を見出そうとするが尾方はことごとく捌いて潰して前進。金山は組み手の一手目にこだわり過ぎて2分32秒には「取り組まない」判断の「指導1」を貰ってしまう。

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(写真:尾方の左内股巻込)

以後も金山は捨身技に活路を見出し、尾方は残り1分を過ぎたあたりから強気に奥襟、背中を叩いてラッシュ。しかし双方決め手を欠きポイントのないままタイムアップ。試合はGS延長戦に持ち込まれる。

延長戦、金山は本戦終盤の展開を踏襲して横落を連発、尾方は相手を回し出しての左内刈に朽木倒、左内股とペースアップ。GS40秒には左内股、透かした金山が押し込みを試みる場面があったがこれはノーポイント。

残り30秒を過ぎて金山が左一本背負投に座り込み、止めた尾方を巻き込もうとする場面があったが果たせず「待て」。

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(写真:金山攻めるが尾方が冷静に捌く)

試合はそのまま終了。旗判定は前進と試合のコントロール権を買う形で3本が尾方に揃い、僅差3-0の優勢で尾方の初優勝が決まった。

尾方は団体戦同様決して出来が良くはなく、コンディションのピークが今大会に合わなかった印象。最大の得意技であるはずの大外刈も繰り出せる場面自体が少なく、勝ち上がりも「一本」はひとつだけと持ち前の爆発力は発揮出来なかったが全戦通じて「団体戦で負けてしまった分、絶対優勝すると心に決めていた」との言葉通りの粘り強い試合。気持ちの強さと養った地力の高さが効いての優勝だった。現3年生世代は全国中学大会とインターハイ優勝者がずらりと入れ替わって中央の強豪高が苦戦している格好だが、中学時代優勝できなかった尾方(66kg級2位)が強豪高にあって、階級を2階級上げて団体戦でも活躍しながら優勝したという成長の過程と結果は大いに評価されるべきだろう。

1年生時から活躍した早熟の金山はこれで高校選手権3位、インターハイベスト8、高校選手権3位、インターハイで2位と全国大会で4回入賞する強さを見せたがついに戴冠はなし。近接戦闘に逆技、奇襲技という曲者スタイルで頂点を目指したが勝利の女神が微笑むことはなかった。

◇      ◇      ◇
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(写真:優勝の尾方寿應選手)

【入賞者】
優勝:尾方寿應(東海大相模高)
準優勝:金山天地(柳ヶ浦高)
第三位:折原虹之介(東海大浦安高)
第三位:大橋賢人(足立学園高)
優秀賞:伊藤祐輝(藤島高)、小野翼(作陽高)、原田昌寛(四日市中央工高)、向翔一郎(高岡第一高)

尾方寿應選手のコメント
「東海大相模で6年間やってきてその恩返しをしたいという気持ちでした。優勝できてうれしいです。団体戦で負けて落ち込みましたが、気持ちを切り替えて絶対優勝しよう、それだけの練習はやってきた、と自分に言い聞かせていました。調子は良くなかったですが、それでも勝てたことは収穫だったと思います。初戦が山場だと思って集中して望みました。決勝の金山選手には1回負けている(全国高校選手権準々決勝で「有効」で敗退)ので、もう負けるわけにはいかなかった。旗はどっちに上がるかわからないと思っていましたが、とにかく『一本』を取りたかったので悔しさもあります。得意技は羽賀(龍之介)先輩に習った大外刈。この技をさらに磨いて上を目指します」

【準々決勝】

金山天地○GS僅差3-0△伊藤祐輝
折原虹之介○GS僅差3-0△小野翼
大橋賢人○掬投(0:34)△原田昌寛
尾方寿應○優勢[指導2]△向翔一郎

【準決勝】

金山天地○優勢[技有]△折原虹之介
尾方寿應○内股(3:05)△大橋賢人

【決勝】

尾方寿應○GS僅差3-0△金山天地

前田宗哉が高校選手権に続く優勝、江畑丈夫との再戦は僅差3-0で制す
■ 90kg級
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(写真:3回戦、前田宗哉が清水健太から右小外刈「一本」)

トーナメント最大の注目対決は高校選手権で決勝を争った前田宗哉(東海大浦安)と江畑丈夫(国士舘高)による準々決勝戦。

前田は2回戦で美座隼人(長崎東高)を開始20秒のの払巻込「技有」、さらに大外刈「一本」(1:16)、2回戦で青山準(平田高)を小外掛「一本」(0:26)、3回戦で清水健太(岐阜第一高)を右小外刈で体を捨てながら投げて「一本」(0:39)とここまで全試合一本勝ち、悠々のベスト8入り。

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(写真:3回戦、江畑丈夫が松原浩から大外刈「一本」)

一方の江畑は1回戦から強敵と対決。ケンカ四つの小寺達(東海大仰星高)を右体落で攻め続けて「指導2」奪取で退けると、2回戦は菊池俊樹(盛岡中央高)から横四方固「一本」(3:07)、3回戦は松原浩嗣(種子島中央高)からケンケン内股で「有効」、さらにケンカ四つの相手が奥襟を嫌ったところに右大外刈を合わせて一本勝ち(1:56)。こちらも好調を保っていよいよ前田との決戦に臨む。

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(写真:前田と江畑の準々決勝)

前田、江畑ともに右組みの相四つ。
序盤はお互い相手にガップリ組まれることを嫌い、49秒に江畑の側に「取り組まない」判断の「指導1」。
しかし以後は東海大浦安・竹内徹監督の「ガチンコで行け」、国士舘高・岩渕公一監督の「奥襟で勝負しろ」との声に応えるかのように、あの高校選手権決勝の「大外刈対決」を彷彿とさせるような激しい攻め合い。前田は大外刈の他に新兵器の内股、大内刈を繰り出して前に出続け、江畑は下がりながらも回り込んで応じて大外刈を仕掛け続けるという勝負が続く。

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(写真:残り35秒、前田が江畑の払腰を返してあわやポイント)

互いの大外刈には大外返を合わせ、試合は白熱。残り35秒には前田が突進、江畑が迎え撃つと前田が右小外刈で体を捨て、江畑がバランスを崩してあわやポイントという場面が現出。しかし江畑も残り時間は大内刈、大外刈で山場を作ってタイムアップ、試合はGS延長戦へ。

延長もなかなか差のつかない攻め合い、前半は前田が、後半は江畑が先に仕掛けて大外刈と大外返を打ち合う緊迫の展開。最終盤は前田が力を振り絞るように前に出て、江畑は下がりつつも応戦するという状況でタイムアップ。

審判泣かせと言っていい差のつけにくい試合であったが、旗は3本が前田に揃って決着。技数、仕掛けともにほぼ互角であったが、前に出る場面の多さと本戦の小外刈が評価された形で前田が僅差3-0で優勢勝ち、準決勝進出を決めた。

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(写真:準決勝、前田が佐藤圭将から小外刈「有効」)

前田は準決勝で佐藤圭将(前橋育英高)と対戦、ケンカ四つで裏投も得意な佐藤の腰を切っての誘いに敢えて乗る強気の技を連発し、1分24秒に佐藤が腰を切ったところに抱きついて右小外刈で「有効」を奪取。このポイントを持ったまま試合を終えて決勝へと駒を進めた。

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(写真:決勝進出の木下智貴

逆側の山からは金鷲旗大会の大活躍で名を挙げた木下智貴(京都学園高)が決勝進出。1回戦は北川義樹(福井工大福井高)を大外刈「一本」(0:22)、続く2回戦も藤田矩明(東海大甲府高)に大外刈で一本勝ち(2:47)、3回戦は迫村和輝(大牟田高)に「有効」優勢、準々決勝は副島望夢(天理高)に小外掛「一本」、準決勝は石塚康太郎(水戸啓明高)に「指導2」の優勢で勝利し、初の全国大会決勝の畳へと駒を進めてきた。

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(写真:木下が右大外刈崩れの背負投、自ら前に倒れる)

決勝は前田が右、木下ともに右組みの相四つ。
開始早々木下は左引き手で脇を捕まえ、押し込んできた前田をいなして回りこむと片襟の右大外刈崩れの背負投を見せる。これは返されかかると見るや自ら手を離して前に跳んで展開を切ったが、さらに前に出てくる前田を右大内刈で押し返すなど意欲的に試合を進める。

しかし以後は釣り手で奥襟、あるいは背中を得てプレッシャーを掛ける前田が主導権を握り返し、右小外刈で木下を伏せさせた直後の45秒には木下に「指導」が宣告される。

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(写真:前田が右大外刈で攻め込む)

引き手を先に掴んで大外巻込を放つ木下に対し、前田は冷静に両襟を握って前に出、圧力。投げに至る直線的行動を採る前田は前に出ては右小外刈、木下が出返そうとすれば右大外刈と迫力ある攻めを繰り出し続け、段重ねで相手を追い詰める。

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(写真:前田が隅落で「有効」)

1分46秒、引き手で襟を握った木下がまたもや片襟の右背負投を狙って体を回し、ツイと相手を引き寄せようとしたところに合わせて、釣り手一本で背中を抱えていた前田がいち早く距離をつめて左小外掛。木下体を回そうとした半端な体勢でこれを受けてしまい大きく崩れ、前田が一歩歩を進めると隅落の理合でゴロリと畳に落ちる。これは「有効」。

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(写真:前田が空中で相手を相手を固め、右小外掛「一本」)

続く展開。木下が引き手で右襟を握って突き、前田が釣り手でその外側から背中を抱えるという双方片手の状況がまたしても現出。
木下は右方向への巻きこみを仕掛けるべく右釣り手を大きく挙げるが、前田はここに鋭く反応、いち早く左手を相手の空いた右脇に突っ込み、抱きついて相手の上半身を固定する。一気に距離を詰められた木下は回転の起こりで動きを止められ片手、片足の状態のまま上半身を極められてしまい脱出すること叶わず。前田は一歩前に進みながら右小外掛、足は掛からなかったが前述の通り木下はもはや死に体で押し込みに逆らう材料がなく、空中で横四方固に近い形で固められたまま背中から畳に落ち「一本」。試合時間は2分3秒。

前田、落ち着いた戦いで決勝を制してインターハイも優勝決定。高校選手権に続く個人2冠を達成した。

ディフェンディングチャンピオンの立場となっても持ち前の攻撃精神、自らの強さの源泉である無謀なまでの攻撃意欲を失わずに勝利した前田は見事。内股、大内刈といった技術的な上積み以上にまず評価されるべきはこの点だろう。試合振りも報道陣への受け答えもかつてに比べると非常に落ち着いてきた前田だが、自らの強さを規定するものが何かを最後まで見失わない客観性、そして度胸が際立つインターハイ個人戦だった。

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(写真:優勝の前田宗哉選手)

【入賞者】
優勝:前田宗哉(東海大浦安高)
準優勝:木下智貴(京都学園高)
第三位:佐藤圭将(前橋育英高)、石塚康太郎(水戸啓明高)
優秀賞:田北健太郎(徳島商高)、江畑丈夫(国士舘高)、副島望夢(天理高)、木村竜也(大成高)

前田宗哉選手のコメント
「準々決勝で江畑選手に勝って、決勝は一本勝ちで終われた。うれしいです。団体戦で負けてしまいましたが落ち込んでいられないので、しっかり切り替えました。監督からは『(相手は)自分の柔道やらせないように前に出てくる、それをさせる前に自分が前に出るんだ』と言われていましたし、全試合それを心がけました。特に準々決勝は前回の決勝の対戦からして、奥襟を叩かせたら不利になるのはわかっていた。なのでとにかく先に組んで前に出ることを心がけました。まずまず考えていた通りの柔道が出来ました。個人は全日本ジュニア、団体では国体で優勝するのが次の目標です。将来ですか?同じ階級にベイカー(茉秋)先輩という大きな存在がいるので・・・(苦笑)。世界で戦える選手になれるよう、頑張ります」


【準々決勝】

佐藤圭将○優勢[技有]△田北健太郎
前田宗哉○GS僅差3-0△江畑丈夫
木下智貴○小外掛(3:09)△副島大夢
石塚康太郎○GS僅差2-1△木村竜也


【準決勝】

前田宗哉○優勢[有効]△佐藤圭将
木下智貴○優勢[指導2]△石塚康太郎

【決勝】

前田宗哉○小外掛(2:03)△木下智貴

田崎健祐と村田大祐を連続撃破、無印の渡辺大樹が初の全国制覇飾る
■ 100kg級
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(写真:準々決勝、渡辺大樹が田崎健祐から大内返「技有」)

田崎健祐(国士舘高)、村田大祐(東海大浦安)、村井慎太郎(東海大仰星)と揃った優勝候補の中、しかしトーナメントの主役となったのは無印の渡辺大樹(埼玉栄高)。

2回戦で鈴木唯人(関西高)を払腰「一本」(2:28)、3回戦で松本健太郎(京都学園高)を小外刈「一本」(2:05)で破った渡辺は準々決勝で優勝候補筆頭の田崎と対戦。

この試合は田崎が組み手の巧さとケンケンの左内股で試合を引っ張り、ポイントこそ奪えないものの大枠大過なく試合を進めて、波乱の匂いは漂わず。ところが残り15秒、田崎が左大内刈を仕掛けた瞬間、タイミングを合わせて振り返した渡辺の大内返にほとんど滞空時間なくストンと畳に落とされて「技有」。様相暗転の田崎は血相を変えて渡辺に挑みかかるが、残り時間はほとんどなし。渡辺は落ち着いた表情のまま持ち前の柔らかい受けで田崎の突進を吸収して捌き、タイムアップが宣告される。「技有」優勢で渡辺が勝利し、今大会最大のアップセットを完成させた。

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(写真:2回戦、村井慎太郎が牛丸了英から内股「一本」)

渡辺は続く準決勝で村井慎太郎と対戦。村井は初戦こそ石井大稀(白鴎大足利高)に「指導2」の優勢勝ちともたついたが以後は牛丸了英(大垣日大高)を内股「一本」(2:41)、林田龍(嘉穂高)を小外掛「一本」、そして準々決勝で村田大祐(東海大浦安高)を大腰「一本」とこの日は絶好調、田崎が敗退したこの時点での優勝候補筆頭。

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(写真:準決勝、渡辺大樹が村井慎太郎を内股透「一本」に仕留め拳を握り締める)

3分4秒、村井が得意の内股に入り込み、感触を得て高く足を上げて投げ捨てようとした刹那、渡辺得意の内股透が炸裂。村井地響きを立てる勢いで背中から畳に落ち、主審は迷うことなく「一本」を宣告。

畳に大の字になって村井は呆然。飛び跳ねて拳を握り締めた渡辺、見事柔道人生初の全国大会決勝進出を決めた。

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(写真:準決勝、横井勝哉が清水圭三郎から大内刈「有効」)

渡辺が勝ち上がった山への人材集中を受けて混戦となっていた逆ブロックからは横井勝哉(近江高)が決勝進出。横井は1回戦で加倉雅士(高川学園高)から大外刈で一本勝ち(3:20)、2回戦は中林藤仁(秋田工高)から大外落「一本」(3:46)、3回戦は松倉海斗(前橋育英高)から「有効」優勢、準々決勝は松島功祐(阿波高)を「技有」優勢、準決勝は清水圭三郎(東海大甲府高)をGS延長戦の末に「有効」(GS1:17)で下しての決勝の畳。

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(写真:決勝、渡辺が横落で「有効」)

決勝は渡辺が右、横井が左組みのケンカ四つ。
引き手争いが続き、29秒に横井が放った右内股がこの試合最初の技。これは渡辺が伏せて耐え「待て」。

続く引き手争いの中、41秒に組み立てを変えた渡辺が左方向へ横落。左膝を着いた横井、止められるとみたか右手を相手の腰に回して潰すがこれは判断ミス。渡辺が走ってあくまで決めに掛かると膝を着いていた分後ろに下がること叶わずゴロリと転がってしまいこれは「有効」。

奮起した横井は1分を過ぎたところから高い打点の右内股を連発。1分12秒には鋭い送足払で渡辺を腹ばいに伏せさせる。

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(写真:渡辺が内股透で再度の「有効」)

しかし横井が反撃のきっかけを掴み始めたかに思われたこのタイミングでポイントを得たのはまたしても渡辺。
1分58秒、横井が相手の首を抱えて左内股。腰が十分に回った深い一撃、感触を得た横井は投げを完成させるべく最後のひと伸びを試みて左脚を高く挙げ、軸足のバネを利かせる。しかしここで浮いたのは渡辺ではなく仕掛けた横井の軸足。驚異の柔らかさ、渡辺はつま先立ちしたまま股中でこれを受け止め切って透かし、相手の釣り手側に跳んで返しに掛かる。両足が浮いた横井は危機を察知して前に体を捨てて回避を試みるが間に合わずめくられ2つ目の「有効」。


以後も横井は内股で攻め続け、2分32秒には渡辺に「指導」が宣告されるが、先ほどの内股透で毒気を抜かれたかいま一つ深いところまで踏み込めない。渡辺は大内刈、そして横井が前技を試みるたび一間先んじての右内股で展開を切り続け、「それまで」の声を聞く。渡辺、「有効」による優勢で見事初の全国大会制覇を決めた。

渡辺は体の柔らかさと「体が小さいので柔らかくてねばっこい柔道を心がけた」と自身語る通り、自らを客観視する能力とその実践が生きた格好だが、なによりコンディション調整が非常に上手くいっていた印象。今大会埼玉栄勢が見せている好パフォーマンス、調整の巧さの象徴とも言える無印からの全国制覇だった。

この点、優勝候補筆頭に上げられながら敗れた田崎は対照的だった。春先から負傷続きで詰めた稽古が出来ず、田崎の柔道の核である体の力が決定的に失われていた。それでも積み上げた組み手と技の巧みさでコンディションの悪さを覆い隠して勝利を続けてきたが夏に来てこの構造が崩壊。複線は金鷲旗大会準決勝での失点(眞砂谷幸弥に払巻込で「技有」)、前日の団体戦での敗戦(寺尾拓真に大内刈「技有」)だ。この学年は中学時代からの田崎の強さが脳裏に刷り込まれておりこれも田崎の不調を覆い隠す因となっていたのでは思われるが、いずれも「際」で力負けしたこの2戦を見せてしまったことで周囲に体幹の力の欠落を印象付け、この「強いイメージ」が拭い去られてしまっていた。腰、足首と打ち続いた負傷を思えば良く戦ったとすら言える今シーズンだが、中学時代最強を誇った「三銃士」国士舘世代の敗退、この学年の混戦ぶりを強く印象づける格好のベスト8敗退であった。

◇      ◇      ◇
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(写真:優勝の渡辺大樹選手)


【入賞者】
優勝:渡辺大樹(埼玉栄高)
準優勝:横井勝哉(近江高)
第三位:村井慎太郎(東海大仰星高)、清水圭三郎(東海大甲府高)
優秀賞:田崎健祐(国士舘高)、村田大祐(東海大浦安高)、松島功祐(阿波高)、樫村将伍(水戸啓明高)

渡辺大樹選手のコメント
「もう本当にうれしいです。中学時代は全国大会に出ましたが、2回戦敗退。優勝を狙うというより『最後まで誰よりも長く畳にいよう』とそれだけを考えて試合をしていました。。体も小さいので柔らかくねばっこくやるのが自分の柔道。『小さいから粘れ、ねちこくやれ』と普段から言われ続けています。小さいので得意技は特にないですが、これからもねちこく、ねちこく、3頑張ります」

【準々決勝】

渡辺大樹○優勢[技有]△田崎健祐
村井慎太郎○大腰(3:22)△村田大祐
横井勝哉○優勢[技有]△松島功祐
清水圭三郎○内股(0:48)△樫村将伍

【準決勝】

渡辺大樹○内股透△村井慎太郎
横井勝哉○GS有効(GS1:17)△清水圭三郎

【決勝】

渡辺大樹○優勢[有効]△横井勝哉

ライバル佐藤和哉に完勝、役者揃ったトーナメントを本命ウルフアロンが制す
■ 100kg超級
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(写真:2回戦、佐藤和哉が香川大吾から大内返「一本」)

今大会の個人戦全階級を通じた最注目カード、佐藤和哉(静岡学園高)とウルフアロン(東海大浦安高)の戦いが準々決勝にセット。

佐藤は1回戦で萩原優太(鹿児島情報高)を大外刈「一本」(2:23)、2回戦は団体戦全国制覇の立役者香川大吾(崇徳高)にGS延長戦で大内返「一本」(GS1:00)、3回戦は山本雄太(東海大甲府高)から内股「一本」(1:45)と3試合連続の一本勝ちでこの試合まで勝ちあがる。

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(写真:3回戦、ウルフアアロンが寺田颯志から大外返「一本」)

一方のウルフも1回戦で水野樹(北海高)から大内刈(1:23)、2回戦で富樫匠(豊栄高)から横四方固(0:50)、3回戦で寺田颯志(長崎南山高)から大外返(1:26)と3連続一本勝ちで勝ち上がり、順当にこの対決が実現。

3月の全国高校選手権時は佐藤が大内返で一本勝ち、7月の金鷲旗大会ではウルフが横四方固で一本勝ちを果たしているが佐藤が疲労困憊の3連戦目であったという事情がある。1勝1敗、佐藤の1敗は条件つき、これがまさしく今年の決着をつける高校カテゴリの頂点対決だ。

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(写真:ウルフが圧を掛け、佐藤が右内股で攻める)

この試合は佐藤が右、ウルフが左組みのケンカ四つ。
ウルフが組み手で主導権を握り、前へ。佐藤は右内股で展開をブレイク。
主導権を争った序盤戦を経て、2分過ぎからウルフの圧力が掛かり始める。しかし間合いに入った際の「瞬間芸」とでも言うべき佐藤の技の切れ味を良く知るウルフは圧力が掛かった状態でも蹴たぐるような支釣込足、小外刈、浅い大内刈とリスクの少ない崩し技の仕掛けに終始。この「圧は掛けるが、安易に仕掛けない」ウルフの我慢作戦が明らかになり始めた2分54秒、攻め手のない佐藤に1つ目の「指導」が宣告される。

圧を掛けるウルフとその前進に迫力ある技を合わせる佐藤という構図は以後も変わらず。残り時間が少なくなったところで佐藤が右大外刈からルート変更した右内股を放ったのが最大のインシデント、この技も不発で本戦は双方試合を決めるポイントなく終了。勝敗の行方はGS延長戦に持ち込まれた。

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写真:延長戦、ウルフが左大内刈、刈り足を畳に着けて佐藤を追い込む)

互いに消耗が見えた延長25秒、ウルフが勝負を仕掛ける。釣り手を一瞬ずらして空間を作ると押し込むような左大内刈。佐藤が崩れると見るや場外まで追いかけて押し込み、佐藤は足がついていかずその突進に乗り越えられるように崩れて畳に落ちる。

どよめきの中、主審が「有効」を宣告して試合は決着。ウルフが「有効」による優勢で勝利し、準決勝へと駒を進めることとなった。

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(写真:ウルフの大内刈は「有効」、優勝候補佐藤敗れる)

この試合はウルフの作戦勝ち、そして度胸勝ち。ウルフは高校選手権で佐藤に大内刈を返されて一本負けしているが、その大内刈を仕掛けて勝利する度胸がまず素晴らしい。さらにこの点を本人に問うと「刈り足が浮くと返されるから敢えて足を着いて押し込む大内刈で勝負した」「ケンケンで追うと返されるので一発で仕掛けた」と明確な答えが返ってきた。佐藤が大内返で迎え撃つことを織り込んでのこの対策、それも自身の体力的優位を考えて互いが消耗したGS延長戦での投入。作戦の周到さ、そして恐れずそれを遂行する度胸。少なくともこの試合に関してはウルフの完勝であった。

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(写真:名垣浦祐太郎とウルフの準決勝)

ウルフにはもう一つの大きな山場、今大会絶好調の名垣浦祐太郎(大成高)との準決勝が待ち構える。今大会、団体戦で西尾徹(天理高)に一本勝ちするなど高校入学以来最良のパフォーマンスを発揮している名垣浦は個人戦もここまで全試合一本勝ち。いよいよこの準決勝でウルフ超えに挑む。

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(写真:名垣浦の左払巻込が「有効」)

両者左組みの相四つ。名垣浦が釣り手で肩越しに背中、もしくは奥襟を握って圧を掛けウルフが支釣込足で崩してこれを回避するという序盤戦。
51秒にウルフに「指導」が与えられ、1分過ぎから名垣浦が大外刈を連発して攻勢。そして1分31秒、場外際で思い切った左払巻込を仕掛けるとウルフは大きく宙を舞って転がり「有効」。ウルフはギリギリで身を捻っているが、持ち上がった瞬間は思わず「一本」を想起してしまう強烈な一撃だった。これまでの名垣浦優位の展開からしてこのポイントの持つ意味は大きく、場内はV候補ウルフの失点に大きなどよめきに包まれる。

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(写真:ウルフが小外掛で攻め込む)

ウルフは目に見えてギアを上げ、圧力を掛けては支釣込足、小外刈と攻め続けるが背筋を立てて受ける名垣浦には効かず。
それでも圧を掛け続け、小外掛を中心に体を寄せての大技を連発するウルフの前に2分半過ぎから名垣浦が消耗、残り20秒、ウルフが払腰を仕掛けた名垣浦の首を捕まえて真裏に倒した(「待て」の後でノーカウント)場面の直後、ついに名垣浦に2つ目の「指導」が宣告され試合はタイスコアとなる。

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(写真:ウルフの膝車が決まって「一本」)

ここに至って名垣浦の消耗は誰の目にも明らか。ウルフが圧を掛けると腹ばいに伏せてしまい、体力差があらわになったこの状況で試合はGS延長戦へ。

延長開始早々、ウルフがいったん左小外刈を絡ませておいての膝車。もはやこれを残す体力は名垣浦には残っておらず、大きく宙を舞って「一本」。ウルフ、難敵2人を倒して決勝進出決定。

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(写真:準決勝、藤井靖剛が田中源大を攻める)

逆側の山からは3年生世代の全中王者・藤井靖剛(桐蔭学園高)が決勝へ。この日は1回戦で田岡悠希(四日市中央工高)から大外刈(0:38)、2回戦は舩瀬敏晃(徳島商高)を内股(1:53)、3回戦も大家皆(和歌山北高)を内股(2:44)、準々決勝は北條祐貴(杵築)を内股(1:52)と「一本」を連発してベスト4入り。迎えた準決勝は前戦で西尾徹を上四方固「一本」で破った田中源大(高川学園高)に大内刈で一本勝ち(1:49)を果たし、5試合オール一本勝ちという圧倒的な勝ち上がりでファイナル進出。この勢いを駆ってウルフ超えを狙う。

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(写真:決勝、ウルフが藤井の大内刈を振り返して「技有」)

決勝はウルフ、藤井ともに左組みの相四つ。

ウルフは釣り手で奥襟、引き手で襟を掴んでジックリ圧を掛けに掛かる。
比較的静かな展開の中、41秒に藤井が左大内刈に踏み込む。ウルフはこれを右引き手を上げて反時計周りに振り返す。大きく崩れた藤井の上にかぶさり、押し込んだ勢いで自ら前転して立ち上がったこの一撃は浮落「技有」。

序盤で大量リードを得たウルフは以後もスタティックな展開を志向、リスクを冒さず圧を掛けながらジックリ試合を進めるが、追いかけるべき藤井はあっさりこれに乗り、2分過ぎまでは意外ともいうべき静かな試合展開。

藤井が試合を壊しにこない以上、ウルフに展開を動かす必要はなし。2分10秒に藤井が左大外刈を2連発するがウルフが大外返を試みると、以後の30秒は手先の組み手争いに終始し再び試合は膠着。

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(写真:ウルフが藤井に圧を掛けて引き落とす)

3分過ぎに現出した15秒近くの手先のはたき合いを経てウルフは小外刈、藤井は大内刈で攻めあう展開となるが「バイタルエリアに踏み込まない藤井と、その状況に敢えて乗ってリスクを冒さないウルフ」という試合構造は大枠最後まで崩れず。試合はそのまま終了となり、「技有」優勢でウルフが勝利。難敵を次々下してのインターハイ初制覇を決めた。

ウルフの強さは素晴らしいが、この試合はむしろ藤井の意外なまでの淡白さのほうが目立つ試合であった。力関係を考えれば順行運転ではなく、この世代の全中王者として何が何でも勝つという泥臭い試合を志向することにこそ勝機が見出しえたと思われるが、ビハインドを追ってなお勝負に行かない、半ば敗退を受け入れたかのような淡白な試合ぶりはいささか残念。それだけウルフが強かったとしておきたいが、それまでの快進撃を思うにつけ、もう一段プライドのある戦いが見たかった一番ではあった。

◇      ◇      ◇
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(写真:優勝のウルフアロン選手)

【入賞者】
優勝:ウルフアロン(東海大浦安高)
準優勝:藤井靖剛(桐蔭学園高)
第三位:名垣浦佑太郎(大成高)、田中源大(高川学園高)
優秀賞:児玉貢輔(延岡学園高)、佐藤和哉(静岡学園高)、北條祐貴(杵築高)、西尾徹(天理高)

ウルフアロン選手のコメント
「団体戦の負けは個人戦で取り戻せるものではないですが、今日はひとまず忘れて試合に集中しました。明日から反省します。準決勝はちょっと気が抜けていました。ポイントを取られて気を引き締めなおしました。準々決勝の佐藤選手は今年目標にしてきた選手。金鷲旗は向こうが疲れていて、勝った気がしなかったのでここで必ず勝とうと思っていました。高校に入ってから強くなったと言われますが、自分が強くなったというより、この階級で中学の時に強かった選手が稽古をしていない部分もある。自分はしっかりやってきた自信があるので、一発で負ける相手でもスタミナでは負けないということを考えて試合をしました。組み手など課題もたくさんあるので、まだまだこれから。次の全日本ジュニアで勝てるように頑張ります」


【準々決勝】

名垣浦佑太郎○払巻込(2:22)△児玉貢輔
ウルフアロン○優勢[有効]△佐藤和哉
藤井靖剛○内股(1:52)△北條祐貴
田中源大○上四方固(1:33)△西尾徹

【準決勝】

ウルフアロン○膝車(GS0:17)△名垣浦佑太郎
藤井靖剛○大内刈(1:49)△田中源大

【決勝】

ウルフアロン○優勢[技有]△藤井靖剛


※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版9月20日掲載記事より転載・編集しています。
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