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【eJudo's EYE】3強時代は予感から事実へ、そして「寝技の浅見」が喫した巴十字が語るもの・世界選手権48kg級評

(2013年8月27日)

※ eJudo携帯版「e柔道」およびeJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。
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【eJudo's EYE】3強時代は予感から事実へ、そして「寝技の浅見」が喫した巴十字が語るもの・世界選手権48kg級評
決勝は男女ともに日本勢とモンゴル勢の対決。そして日本の最強階級と呼ばれ続けてきた48kg級ではムンクバット・ウラントセトセグが準決勝で五輪王者メネゼス(ブラジル)、決勝で世界選手権3連覇に挑む浅見八瑠奈(コマツ)を破って優勝を飾った。

2000年代中盤から散発的にトップ選手を輩出してきたモンゴルだが、ここ数年は各階級にコンスタントに強豪を配置。男子に続いて女子でも、それもハイレベル階級でとうとう世界王者を生み出したということになる。

ここ数年の上昇傾向に慣らされてきたゆえ、コアファンにはこの現象自体に驚くものは少ないであろう。マクロには「もともと格闘技が好きな国が、経済力の上昇に伴って環境を得、本格的強国の仲間入りを果たした」と捉えられるべきで、ここに至って東アジアは男女ともに「3強時代」へとその版図の変更を終えたと評して良いだろう。今までの「日本と韓国、時々北朝鮮か中国、モンゴル」から、「日本・韓国・モンゴル」という3強割拠の時代到来である。

格闘技に対する理解と興味、経済力と環境という土壌はもちろん、モンゴルの技術収集と研究に対する貪欲さは刮目すべきものがある。

メネゼス、浅見、クセルノビスキ、ファンスニックと役者の揃ったこの階級ではあったが、展望記事に書いたとおりその固技技術を買ってムンクバットを推す声も多くあった。この日も勝ち上がりの中途で見せたオモプラッタ風の回転抑え込みはグランドスラム・パリでも見せていた得意技だが、筆者はこれを見た柏崎克彦氏の「柔術研究も凄い。こういう技は俺は教えられないよと断っているんだけど、いつでもいいから、何日でもいいから都合のいいときにぜひ教えにきてくれと何年も誘われ続けている」という呟きを強い印象を持って記憶している。日本がリードしてきた女子柔道界の寝技であるが、今後はモンゴルが「系の違う」勢力として一大潮流を作る可能性も大だ。

さて、決勝で浅見が食った「巴十字」。極まりが浅いように見えた時点での「参った」にはさては浅見の故障箇所かとの懸念、また日本女子が守り続けてきた最軽量階級王座陥落への無念、はたまた総合格闘家の青木真也氏が即日tweetした『浅見の巴十字の逃げ方が逆だった。回って逃げると極められてしまう。』とのコメントなど色々思うところはあるが、ここでは2つの視点を掲げてこの日の評としたい。

ひとつは男女の寝技のボーダレス化。
もうひとつは、日本女子が特に北京-ロンドン期に確保してきた「寝技の日本」という絶対の地位を失いかけているということである。

この日もファンスニックが見せた得意の腕挫十字固、クズネトソワ(ロシア)が見せた三角からの腕挫十字固などの見せ場があったし、また、52kg級のクズティナ(ロシア)が今期国際大会で取り捲くっている「巴十字」など、特に今期は女子トップ選手の関節技での勝利が目立つ。以前であれば「女子は関節が柔らかい」という定説のもと関節技は忌避される傾向にあったが、ロシアなどは明らかに男子と共通のメソッドで女子の寝技をテコ入れしている。柔術技術を積極的に取り入れているモンゴルや、サンボからの技を共通メソッドとして訓練しているロシアなどは明らかに成果を挙げているわけで、今後は「男子と同じ」この寝技傾向はトレンドとして確実に根付くであろう。

日本女子と言えば寝技がストロングポイント、寝技技術では日本世界一というのが北京-ロンドン期の女子勢力図の前提条件であったが、日本女子の寝技はあくまで抑え込みが終着点。

まさしく寝技の強さをベースにのし上がってきた世界王者浅見がこの大舞台で喫した関節技「一本」はこの点端的だ。ムンクバットの仕掛けた引き込みの腕挫十字固は極めてオーソドックスな技術であったが、ここで浅見が対応を誤ったという点においては浅見個人のミスというよりは、あの動きを生み出した土壌を考えるべきだ。ありとあらゆるタイプが階級内に揃ってしのぎを削り、勝ち上がる過程で鍛えられる角度の多い男子と違い、女子はまだまだ競技人口が薄い。加えてその寝技のメインストリームはあくまで「胸を合わせて抑え込む」に寄っている。「女子は関節が極まりにくい」という認識に対してこの日の決勝で示された「しっかり極めればやっぱり取れる」という絵に、日本の指導者はどう応えるのか。偶発的事象として捉えることだけはあってはならない。

例えば、男子日本代表が実施したようなサンボとの合同合宿というような取り組みは、少なくとも代表レベルでは行われなかった。寝技の「系」の偏りが日本を侵食している、抑え込み中心で世界を席巻した日本に対してロシアやモンゴルが男子同様の技術を持ち込んで挑んで来ている、今春から見え始めていたその構図が初日から、そしてチャンピオン浅見の陥落という端的な形で確定したこの日の48kg級決勝であった。

最後に。勝ち上がりを見る限り浅見の出来は決して悪くはなかった。むしろ上々であった。本人にとってはともかく、その敗戦は誰にも否定されるようなものではなかった。五輪落選からの皆勤、そして存在証明を掛けた世界選手権決勝での敗戦とまたひとつドラマを生んだ形の浅見だが、これを糧として再びその力に見合った地位に立つことを、期待してやまない。

文責:古田英毅



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