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【eJudo's EYE】地方復権元年?「一度も中央に出ていない男」七戸龍の世界進出に見出す意義と希望

(2013年5月18日)


※eJudo携帯版「e柔道」5月15日掲載記事より転載・編集しています。

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【eJudo's EYE】地方復権元年?「一度も中央に出ていない男」七戸龍の世界進出に見出す意義と希望

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写真:世界選手権初代表の七戸龍
七戸龍(九州電力)が全日本選抜体重別選手権という日本最高峰大会で100kg超級を連覇。地元・福岡での今大会の勝利でついに初の世界選手権代表の座をも射止めた。

那覇西高(沖縄)出身、大学は福岡大で卒業後はそのまま地元の九州電力に就職というのが七戸のキャリア。これは強豪柔道選手としては異例中の異例である。
なぜなら七戸は中学、高校、大学、そして社会人と人生通じて「地方」である九州の住人であり、一度も「中央」(ここでは東京、関東、近畿とする)に出たことがないからだ。早ければ中学、遅くとも大学、少なくとも社会人といずれかの段階で関東圏か近畿圏の強豪チームに所属することが唯一のキャリアアップの手段である、少なくともそれが共通認識として根付いている柔道界においては、このキャリアで強化選手を張ること自体が快挙であると断言して良いだろう。その中での選抜体重別連覇、そして世界選手権代表選出はまさしく偉業と呼ぶほかはない。

全て地方在住で選抜体重別を制したということで思い浮かぶのは直近でも平成6年(1994年)大会の原田堅一(鹿屋体育大学大学院・当時)以来、その前となると昭和56年(1981年)大会の濱田初幸(愛媛県警察・当時)にまで遡る。

世界選手権出場者となるとどうだろうか。
1956年に行われた第1回世界選手権で優勝した夏井昇吉は秋田工業高から秋田県警、最後まで形としては「地方」所属を通しており、記録上はこの人を「地方」所属最初の世界選手権出場者と数えるべきであろう。しかしその夏井とて県警に所属しながら東京に柔道留学していた数年間があり、感覚として「純地方」と呼ぶには少々違和感がなくもない。

世界選手権代表としては同じ福岡の園田義男、園田勇兄弟(ともに1969年メキシコシティ世界選手権で優勝)もすぐに思い浮かぶ。が、前者は福岡工業大学卒業後に大阪の日本運送に入社しておりこの枠からは外れる。弟の勇は福岡工業大時代に世界選手権優勝を飾っており、その後丸善石油所属時代に福岡を一旦離れた時期があるが、世界選手権優勝の時点では「純地方産」と呼ぶことができそうだ。ただし、この優勝は学生時代のことであり、社会人に至るまで「地方」を通した七戸とはいささかこの視点での価値は異なる気がする。

おそらく1965年メキシコシティ世界選手権重量級で2位入賞の松永満雄(高知県警・当時)が、この部分まで含めた「純地方産」の世界選手権出場唯一のケース。なお、松永は1967年ソルトレークシティー世界選手権無差別で優勝を果たしているがこの時は大阪府警に移籍しており、「中央」の水を飲んでいる。純地方産としての世界選手権優勝には至っていない。

そして松永が高知県警から世界選手権に出場したのはすでに半世紀近くの昔、実に48年前の出来事である。社会人まで「地方」を貫いている七戸の世界選手権出場がいかに物凄いことか、わかっていただけるだろうか。

中央への人材集中が続いたことによる全国的な柔道の均質化、地方の弱体化が叫ばれ続けて久しい。特にかつて柔道王国と言われた九州においては若年層の人材流出は柔道界最大の課題となっている感がある。

そんな中、入り口から出口まで「純地方産」七戸の世界選手権出場が地方在住の柔道家、指導者に与える勇気は非常に大きいのではないか。

折りしも今年の全国高校選手権では男子5階級の優勝者を全て「地方」の選手が占めるという地殻変動が起こったばかり。60kg級の浅利昌哉(東海大四高・北海道)、73kg級の山本悠司(帯広農高・北海道)、81kg級の伊藤祐輝(藤島高・福井)、90kg級の前田宗哉(東海大浦安高・千葉)、無差別の佐藤和哉(静岡学園高・静岡)と、ここ二十年近くにわたって高校柔道界を席巻してきた東京・神奈川のチームは1階級も優勝者を出すことができなかったのだ。

日本柔道の強さは土地土地で異なる柔道文化をベースに強豪が地方に割拠するという、その多様性に支えられていた部分が非常に大きい。強化拠点の多さがイコール国際的な競技力を、少なくとも下支えしてきたのは間違いのないところだろう。強豪チームのブランド力の低下と弱体化という面もあろうが、ここは「中央」に対するカウンターカルチャーを磨き続けてきた地方の努力が、今年いよいよ花開きつつあるという文脈でこの現象を捕らえたい。少年から高校までの各カテゴリに複数の強豪チームがあり、かついずれも全国上位を狙えるレベルにある北海道などのような明らかに「買い」の地方も出始めている。

少なくとも、高校カテゴリの優勝を独占し、最高峰階級であるはずの「シニア×最重量級」を制した今年は既に「地方の年」だというところまでは言っても良いだろう。柔道界に地殻変動起きるか、群雄割拠による多様性を日本が再び獲得することが出来るのか。見上手の年配ファンが「やっぱり九州の柔道は違うなあ~」とスタンドで唸る、あの豊かな文化の再来は可能なのか。

このムーブメントを一年限りの特異現象で終わらせてしまうのは勿体無さ過ぎる。今後も今年は、地方勢の躍進に期待である。

そしてなんといってもその旗手は七戸。もう一度まとめると、純地方産選手の世界選手権出場は1969年の園田勇以来45年ぶり4人目、「社会人まで地方」という枷を嵌めると松永満雄以来48年ぶり3人目、「社会人まで地方」の金メダル獲得となれば記録上は夏井昇吉以来57年ぶり2人目、さらに名目上の所属ではない「勤務地まで地方」という制限を加えればまさしく史上初の快挙である。

閉塞感漂う日本重量級を、そして「地方」を照らすことか出きるか。世界選手権という桧舞台での、七戸の活躍に大いに期待したい。



文責:古田英毅





※eJudo携帯版「e柔道」5月15日掲載記事より転載・編集しています。

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