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全日本選抜柔道体重別選手権大会女子展望

(2013年5月10日)


※eJudo携帯版「e柔道」5月9日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本選抜柔道体重別選手権大会女子展望

リオ世界選手権代表枠「7階級に9人、各階級最大2名」は男子と同じ。ただし、国際大会で通用するレベルの選手の密度が厚く有力階級が多い女子は男子と少々選考の事情が異なり、「勝てる階級で複数のメダルを取りにいく」「将来を見据えて若手を送り込む」というありうべき二大方針に優先順位をつけるのが非常に難しい。どの階級にも、メダル獲得が現実的な二番手選手がおり、そして先行投資に値する有望な若手が存在する。

7階級通じて「強豪2トップ」と言える存在が確定しているのは緒方亜香里(了徳寺学園職)と佐藤瑠香(コマツ)がいる78kg級だけだが、これとて佐藤の成績がやや不安定で決め手には欠ける。世界選手権王者の西田優香(了徳寺学園職)が直近シーズンの評価では2番手以下となっていて勝利した場合には2人枠投入が不可避と見られる52kg級、浅見八瑠奈の下にベテラン山岸絵美に新鋭の岡本理帆ら強豪がみっしりひしめく48kg級、実績で絶対の決め手がある選手こそ不在だが実力者揃いで選考の決め手に欠ける63kg級、田知本愛に昨年の皇后盃王者山部香苗、さらに新鋭の朝比奈沙羅と本命、二番手、若手と選考条件に適うメダルクラスが揃った78kg超級。「2枠」の投資先をどこにすべきか事前に予見することは非常に難しい。

つまりはすべてがこの選抜で決まるということだ。説得力のある選考を行うには各階級それぞれで候補となっている選手の「試合内容」の良し悪しで全体の優先順位を切っていくほかに手はなく、つまりは代表入りの当落がこの選抜体重別の内容次第というボーダーラインに位置する選手の数が男子とは比較にならないほど多いということになる。どの階級も1回戦からまったく見逃せない勝負が続く。

■48kg級
大本命は浅見、挑戦権掛けて戦う山岸、岡本、山崎


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写真:実業個人から「皆勤」
を続け出場全大会に
優勝している浅見八瑠奈
【階級概況】
昨年この大会の1回戦で当時高校3年生の岡本理帆(国士舘大1年)にまさかの敗北を喫し、確実視されていたロンドン五輪代表入りを逃した浅見八瑠奈(コマツ)。その再度の世界王座獲得に向けたリベンジマッチという色彩が濃い大会だ。

浅見は五輪直後の全日本実業個人から講道館杯、グランドスラム東京、そして欧州シリーズのグランドスラムパリと出るべき大会にすべて出場してきた。。明らかに傷心のまま出場して心の整理がついていない体だった実業個人から大会を経るごとに内容は上向き、結果としては全大会優勝でこのリオ世界選手権最終選考会に辿りつくこととなった。実績的に唯一のライバルであった福見友子が引退して世界選手権代表選出はほぼ間違いないところだが、浅見はどうしてもこの大会で岡本に「お返し」をしておきたいところだろう。リベンジマッチがあるとすれば決勝、これは掛け値なしに見逃せない一戦。

そして昨年までは福見、浅見の「どちらが出ても世界一」と評され、長く日本最強階級と評されていたこの48kg級から2枠目の選出に絡む選手が出るのかどうかにも注目したい。候補はグランプリ・デュッセルドルフに優勝したばかりの岡本理帆に、浅見の台頭前は実力世界一を謳われていた山岸絵美。いずれも選出には圧倒的なパフォーマンスで首脳陣を納得させる必要があるが、決して手の届かない位置ではない。

【トーナメント】
当然浅見が第1シード。第2シードは岡本、その山に山岸、山崎が詰め込まれるという予想通りの形となった。

浅見の初戦は笠原歩美(JR東日本)、そして準決勝が講道館杯2位の十田美里(自衛隊体育学校)とアジア選手権に優勝したばかりの遠藤宏美(筑波大3年)の勝者と対戦するということになる。十田の元気の良さは要警戒だが三者とも比較的オーソドックスに試合を組み立ててくるタイプで、手堅い浅見には決して戦いにくい相手ではない。

逆側の山は岡本-伊部、山岸-山崎。奥襟ファイターの岡本と山崎にそれぞれ柔道が巧い伊部と山岸がマッチアップするという形だ。
岡本は投げ一発の威力もあるが、どちらかというと長い腕を利して優位を取り続けて一方的に試合を運び、「指導」を得ながら試合を組み立てるという戦術的ファイタータイプ。伊部、山岸がこれをどう捌くか、そして奥襟からこちらは一発を狙い続けるスタイルの山崎がその巧みさを縫ってどう大技に繋げるのか。このブロックは全試合が見逃せない。

浅見にとっては、大味さが拭えない山崎はともかく山岸、岡本どちらが来てもギリギリの消耗戦を覚悟さざるを得ない難敵。一見小差の試合でも局面の優位を重ね続けて最終的には明確な差を付けて勝ちきるという全盛期の浅見の一種ふてぶてしい試合ぶりが復活しているのかどうか、これが勝負のカギになるのではないだろうか。

■52kg級
代表レースは橋本が独走、後続は優勝が「2枠目」に絡む絶対条件


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写真:中村、西田の
不在期間にしっかり
実績を積んだ橋本
【階級概況】
昨年中村美里と最後まで五輪代表の座を争った西田優香(了徳寺学園職)が昨年のこの大会以後は試合出場を回避。復帰戦となった2月のグランプリ・デュッセルドルフも負傷して途中棄権と結果を残せず、この1年はほぼ試合をしていないと言って良い状況。

その間を縫ってグランドスラム東京、グランドスラムパリの2大会で連続優勝と今シーズンしっかり実績を残してきた橋本優貴(コマツ)が代表レースという観点では独走と言って良い状態。昨年は中村、西田に大きく水を開けられた三番手だったが、今回は一定以上の成果さえ残せば代表入りはほぼ確実と見ていいだろう。

ただしこの階級も48kg級同様人材が豊富で、待ち受けるメンバーは多士済々。橋本が「狙われた」状態で勝てるのかどうか、非常に厳しい試合の予感が漂う。

橋本以外の選手の選出の可能性についてだが、前述の通り、もし西田が優勝した場合には世界選手権覇者としての実績に最終選考会での勝利という結果を掛け算して2012-13シーズンの実績のなさはリセット、この52kg級での2枠目行使という選択は相当に現実的だ。

11年グランドスラム東京の宮川拓美(コマツ)ら、以降のグループの選手は相当インパクトのある内容での優勝がないと選出は難しい状況。奮起に期待したい。

【トーナメント】
第1シードに配された橋本の山は、1回戦のカードが橋本-加賀谷千保(了徳寺学園職)、谷本和(環太平洋大4年)-志々目愛(帝京大2年)という2試合。簡単に言って全く気が抜けない面子だ。特に初戦の加賀谷には11年の講道館杯決勝で内股透で思い切り投げられた苦い記憶があるはずだ。この試合は「有効」でリードしながら専守防衛の掛け潰れに走って流れを失い、最後は半端な技を狙われて一発投げられるという、橋本が負ける際の最も悪いパターンの試合だった。
あれから場数を踏み、一段も二段も地力を上げたはずの橋本。悪い記憶を払拭して大事な初戦で攻撃的な試合を展開できるのか。ここに注目したい。

下側の山は宮川-五味奈津美(JR東日本女子柔道部)、西田-黒木美晴(環太平洋大4年)。この山の勝敗を決める要素は、西田の復調の程度、そしてモチベーションの高さがどのレベルにあるかということに尽きる。メンタルの浮き沈みが露骨に試合に反映するタイプの西田が再度の世界選手権出場にどれほどの執念を燃やしているか、そして昨年に準じるところまで肉体的なコンディションを戻せているのか。これが明らかになるはずの第一戦に注目だ。

■57kg級
ついに世界に挑む山本杏、立ちはだかる宇高


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写真:スター候補山本は
今大会に初の世界選手権
出場が掛かる
ロンドン五輪金メダリストの松本薫は負傷が癒えず欠場。
階級の興味は、ついに世界選手権出場のチャンスを掴んだ感のある新鋭山本杏(国士舘大1年)が、無事代表権獲得に至るか、その一点に尽きる。

講道館杯優勝、グランドスラム東京優勝、グランドスラムパリで2位と実績的には他を大きく引き離す山本に立ちはだかる最後の壁は東京世界選手権で代表歴のある宇高菜絵(コマツ)。

講道館杯決勝、グランドスラム東京2回戦と山本が連勝してはいるが、講道館は終始宇高が主導権を握り続けて山本は出足払一発の「技有」でなんとか切り抜けたというギリギリの試合、グランドスラム東京では僅差2-1という少差の試合でこれは率直に言ってどちらが勝ってもおかしくない内容であった。

いずれの試合もコントロール権を手中に収めていたのは宇高。講道館杯では状況をひっくり返す足技、グランドスラムでは手数の多さでなんとか審判団の支持を得た山本だが、奥襟を叩いて試合を引っ張る宇高に対して明確なソリューションがあるのか、今回はここに注目したい。宇高はかつてに比べて明らかにメンタルコントロール能力があがり、落ち着いてパワーの差を展開に反映させ続けるような試合を志向してくることが明らか。凌ぎながら相手のミスを誘うような戦い方をするのは厳しい。今回山本が勝利するためには「アドリブ」ではなく、戦術的に明確なポリシーが必要になってくるはず。大いに注目したい一番。

【トーナメント】
第1シードは勿論山本、そして当然ながら宇高は第2シードに配された。

山本は準決勝で石川慈(コマツ)、宇高も準決勝で平井希(自衛隊体育学校)という大きな山場がある。

懐が深く投技が切れ、寝技も強い石川は非常な難関。山本はその線の細さゆえか、凌ぐ、つきあう試合を志向すると格上格下に関わらず揉める試合が多くなる傾向がある。石川に対して先、先と仕掛けてまず試合の主導権を握ることが出来るかどうかがカギ。

組み手と手数攻撃に長けた平井は、「切り離す行為」「偽装攻撃」に厳しくなった新ルール採用下のグランプリ・デュッセルフドルフではパヴィア(フランス)を相手に4つの「指導」を失って反則負けを喫している。組み合っての技比べを志向した場合には宇高の優位は動かし難いと思われ、ここは平井が新ルール対応を考えてどのような策を用意してくるのかが注目。

決勝戦。山本-宇高戦となった場合には、前述の通り、釣り手を相手の下から入れて、かつ奥襟を握って圧を掛けて来る宇高に対し、山本がどのような戦術でこれを跳ね返すかが大きな見どころ。凌ぎ続けながらチャンスを伺うという試合は反則裁定の早い新ルール下では難しい。結果以上に、山本がどのような手を打ってくるか、そのアイデアが楽しみな一戦。

■63kg級
決め手なき混戦、抜け出すのは誰か?


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写真:第1シードに配された
阿部
長年絶対の王者として君臨してきた上野順恵がブラジル留学のため抜け、阿部香菜(三井住友海上)も世界選手権代表時のような圧倒的な力を示すことが出来ずにいる。グランドスラムパリ3位でグランプリ・デュッセルドルフ2位の阿部が第1シード、同じくパリで3位、ヨーロッパオープンオーバーヴァルト優勝の田中美衣(了徳寺学園職)が第2シードで、欧州国際大会では実績を残せなかったがグランドスラム東京で圧勝Vを飾った津金恵(松商学園高3年)が3番手。ここまでの3人が今大会の出来次第で代表選出がありうる位置につけておりこの階級は混戦。

ジュニア以下の人材の密度が高いという階級特性を反映して、佐野賀世子(山梨学院大2年)、田代未来(コマツ)、松本千奈津、そして高校1年生の嶺井美穂(桐蔭学園高1年)と若い世代に話題性の高い選手が揃い、世界選手権代表権争いとは別に、試合自体が楽しみというカードが目白押しの階級でもある。

【トーナメント】
阿部の山は阿部-片桐夏海(コマツ)、津金-佐野。
田中の山は田中-嶺井、田代-松本。
すべての試合が好カードだと言って良い。

阿部の初戦は片桐。講道館杯で佐野、田中を倒して2位入賞を果たした片桐はパワーファイター。組み手の粗さがある選手、かつケンカ四つということもあり、阿部には比較的戦い易い型ではあるはず。講道館杯では阿部が片桐のパワーをもてあます場面も多々見られたが、ここは手堅く戦いたいところ。

そして準決勝。攻撃力の高さを売りに、切れ味のある技をガンガン仕掛けてくる津金、佐野はどちらが来ても少々厄介。追いかける立場であることも若い2人をを利するはずだ。阿部が若い2人をどう捌き、どう攻めるかに注目。

田中の山は、高校1年生で世界ジュニアを制している田代未来が現時点でどれだけ仕上がって来ているかが大きなカギ。冬の時点での力関係でいえば田中の優位は動かないが、この冬鍛錬期を確保することが出来た田代が2011年夏の負傷以前の状態に近づいているとなれば非常に面白い。いずれ、目の離せない階級だ。

■70kg級
首脳陣悩ます低迷階級、序列持ち越した田知本遥が最有力候補


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写真:最有力は田知本遥
【階級概況】
ロンドン五輪で代表を務めた田知本遥(ALSOK)はグランドスラム東京で好パフォーマンスを見せて2位入賞も、グランドスラムパリの出場を回避、新ルール下唯一の欧州国際派遣となったグランプリ・デュッセルドルフでは1回戦で一本負けを喫するなど映えない結果に終わった。4月のアジア選手権では団体戦に出場、準決勝でファンイスル(韓国)に勝利するなど全試合に勝利して一応の形は作ったという状況でこの選抜体重別を迎える。
実力的には他選手の突き上げが激しい状況ではあるが国際大会での優勝者は誰もおらず、五輪代表を激しく争ったライバル上野巴恵(自衛隊体育学校)に至ってはヨーロッパオープンソフィアで計量失格、デュッセルドルフの出場も取りやめとなる有様で今大会はエントリーすら許されていない。手堅く一定以上の結果を残せば、まず田知本の選出は確実。というよりも、他に選べるだけの条件の揃った選手がほとんどいないという状態だ。

よって田知本はやはり大本命。他選手が逆転選出されるためには、圧倒的な内容を伴った優勝が求められるという状況だ。

第2シードの今井優子(了徳寺学園職)は昨年五輪を目指す田知本をギリギリまで追い詰めた強者だが、国際大会では運がなかった。グランドスラム東京は準決勝でボルダー(カナダ)、グランドスラムパリとグランプリデュッセルドルフではともに早い段階で今世界でもっとも乗っているポリング(オランダ)とすべて優勝者と対戦し敗退。実績なしで臨む今大会のパフォーマンスに復権を掛けるしかない状況。

大野陽子(コマツ)、大住有加(JR東日本)、ヌンイラ華蓮(環太平洋大4年)、前田奈恵子(帝京大4年)とパワーファイターが揃う中にあって、ダークホースは皇后盃で一階級上の佐藤瑠香(コマツ)と堂々渡りあった新井千鶴(三井住友会場)。切れ味抜群の足技と内股を武器に、他の強豪とは少々毛色の異なるアプローチで出世を目指している感のある選手だ。もし継続的に活躍が出来るようであれば、パワーを前面に押し出して近距離で組み合うヨーロッパ選手に席巻されつつある70kg級のステージで日本人がどう戦っていくのか、そのスタイル的な嚆矢となりうる可能性がある。欧州国際大会ではヨーロッパオープンソフィア1試合のみの派遣、3位に終わっているが、社会人2年目の新井の今後のブレイクがあるのか、その将来性を含め、試合ぶりに注目しておきたい。

【トーナメント】
田知本の緒戦は前田奈恵子。昨年は勝負どころで惜敗を繰り返し実績こそ伴っていないものの、その実力の伸長ぶりは注目すべきものがある。難敵である。

準決勝での田知本への挑戦権を掛けて戦うのはヌンイラ華蓮と新井千鶴。超典型的パワーファイターのヌンイラを新井がどう捌くのか、ケンカ四つで圧が掛かりにくい状況の中で距離の出し入れの巧い新井をヌンイラがどう捕まえるのか。講道館杯では「指導2」でヌンイラが新井の挑戦を跳ね返しているが、新井の無差別での戦いぶりを見る限り勝負は予断を許さない。興味深い一戦。

今井の山は、今井と大野陽子が戦う準決勝が山場。ともにパワーファイター、大外刈に内股、巻き込みが得手だが、今井には担ぎ技、大野には寝技という相手と重ならないストロングポイントがある。一手目の「圧力」がポリシーの大野が、今井の動きを止めるだけの力関係の差を獲得出来ているかどうかが最大のポイント。

そして、優勝候補の田知本が、五輪を経てどれだけ精神力の強さを獲得しているかどうかが階級の様相を決定づけると見る。かつてはムラ気で大会ごとの出来不出来の波が激しかった田知本がきちんとこの選抜にフォーカス出来ているのかどうか。その出来に注目したい。

■78kg級
緒方亜香里と佐藤瑠香が一騎打ち、「節目」の予感漂うライバル対決に注目


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写真:今大会も一騎打ちの感がある
緒方と佐藤。
写真は24年グランドスラム東京決勝
【階級概況】
体重無差別の皇后盃を制したロンドン五輪代表・緒方亜香里(了徳寺学園職)の代表選出はほぼ確定的。よって、緒方の長年のライバルである佐藤瑠香(コマツ)が代表2枠目を獲得するにふさわしいパフォーマンスを見せることが出来るかというのがこの階級最大のみどころではないだろうか。

佐藤はグランドスラム東京で緒方を払腰「有効」で下して優勝を飾ったが、グランドスラムパリでは緒方に「指導2」で敗れて3位(緒方は2位)、グランプリ・デュッセルドルフでは伏兵のギボンス(イギリス)に一本負けで敗退、2位に終わっている。佐藤の課題は試合の構成力と組み手だが、デュッセルドルフでの試合はケアレスミスと組み手の妥協でどんどん状況を悪くするという一種典型的な負け試合。皇后盃の落ち着いた戦いぶりを見る限りこの点の修正を相当に意識して戦っていると思われる。とかく感情むき出し、という様相になりがちなライバル緒方との対戦でどのような試合を見せるか、注目したい。

【トーナメント】
緒方-佐藤の決勝対決が堅いが、注目されるのは準決勝、佐藤と穴井さやか(ミキハウス)が戦うであろう一番。

4月の皇后盃での穴井は近年の低迷が嘘のように力感溢れる試合を展開。メンタル面の復活はもちろん、持ち前の奥襟スタイルを高いレベルの場でも発揮できるだけの肉体的条件を再び獲得するに至った印象があった。
穴井と佐藤は互いに奥襟、そして相四つという逃げ場のないガチンコの噛み合わせ。長身の穴井の腰に佐藤が重心低く食いついて得意の大内刈を決めるという絵は描きやすいが、穴井も徹底して佐藤の頭を下げさせてこれを封じながら戦ってくるはず。好取り組みだ。

そして決勝はやはり緒方-佐藤。皇后盃での緒方は組み手の上手さと力強さ、前に相手をひきずってくる展開力、そして後ろ技の大内刈の威力とこれまでと全く位相の違うパフォーマンスを見せていた。このニュースタイルの緒方と、冷静さを獲得しつつある佐藤がどう戦うのか。緒方-佐藤の対戦は互いの高校時代から長きに渡って続いた定番対決。その中でたびたび節目となる試合があったが、今回はその「節目」となる可能性が非常に高いのではないか。掛け値なしに楽しみな一番、互いに攻めあう好試合を期待したい。

■78kg超級
世界選手権に向け「追試」に挑む田知本愛、対抗馬の山部佳苗は掛け値なしの正念場


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写真:世界選手権代表が
確実視される田知本愛
【階級概況】

昨秋の世界団体ではMVP級の活躍で日本の優勝に貢献、グランドスラム東京とグランドスラムパリを圧倒的な出来で制して現時点での「世界最強選手」との感があった田知本愛(ALSOK)だが、満を持して臨んだ皇后盃全日本女子選手権ではまさかの賜杯奪取失敗。ハイプレッシャー状態の中実力を出し切ることが出来ずに決勝で緒方亜香里の前に涙を飲んだ。

田知本の世界選手権代表選出自体は確実視されているが、今大会は世界選手権優勝に向けて昨年から採った攻撃的スタイルが貫けるかどうか、世界を睨んだ「追試験」とでも位置づけるべき大会だ。
結果よりは出来が評価の対象になるはず。自ら動かし、仕掛け、そして投げる「表の田知本」の姿が継続できるのかどうか、大いに注目したい。

一方昨年の皇后盃王者山部佳苗(ミキハウス)にとっては悲願の世界選手権出場に向けて今大会はこれ以上ない正念場。
山部はヨーロッパオープンブダベストでは優勝したものの、勝負の場であったはずのグランプリデュセルドルフでは伏兵アンデオル(フランス)のクロス組み手に対応を迷い、思い切り投げられて一本負け、3位に終わっている。連覇を狙った皇后盃も決勝に辿りつけず、結果的には田知本の立場を脅かすだけの実績を残せてはいない。
今大会での山部は単に勝つだけではなく、首脳陣を自分に振り向かせるだけの内容の濃さが求められるはずだ。技は切れるが、とかく気持ちが見えにくい、メンタルが落ち込み始めると修正が利かない、と評される山部がいよいよエマージェンシーのかかった今大会でどのようなパフォーマンスを見せるのか。注目すべきはここだ。

【トーナメント】
なかなかの人材が揃った。一頃二番手グループの密度が薄く正直見ごたえのある対戦が少なくなっていたこの女子超級だが、今大会は非常に面白い。

田知本の初戦は井上愛美(山梨学院大3年)。井上は早い段階で世界ジュニアを制した逸材だが、シニアカテゴリで戦うこととなった昨年は思うように結果を残せず、存在感がやや薄くなってきている。捲土重来を期す今年、田知本相手に覚悟のある試合を見せてほしいところ。

田知本の準決勝の相手は白石のどか(JR東日本)と市橋寿々華(大阪府警)の勝者だが、典型的過ぎるほど典型的な超級タイプの市橋に対して、試合を動かせる型でかつ好調の白石が勝ち上がる可能性が高い。

白石-田知本の準決勝。皇后盃の対戦を見る限り、組み手の有利不利に関わらず「仕掛けてくる」タイプの白石は、現在の田知本が志向する柔道のスタイルに噛み合い、逆に攻撃機会を与え過ぎるという側面が強く出る可能性が高いと見る。白石が勝つにはそれでも仕掛けて一発を狙うしかないが、仕掛けあいに地力の差が反映されてここは田知本が勝ち上がる可能性が高い。

山部の初戦は立山真衣(フォーリーフジャパン)。ともに超級選手としては一瞬のスピードアップに長け、居合い抜きスタイルで技を出せる業師タイプであるが、継続性、そして切れ味で山部が現時点では上。山部の勝ち上がりが堅い。

山部への挑戦権を掛けて戦うカードは朝比奈沙羅(渋谷教育学園渋谷高)と稲森奈見(三井住友海上火災)の若手対決。皇后盃東京地区予選では稲森が僅差の旗判定2-1で勝利して朝比奈の夢を砕いたカードだ。この試合は手数が稲森、コントロール権と一発一発の威力は朝比奈という様相でどちらに旗が上がってもおかしくない試合だった。稽古の様子からはやはり朝比奈の地力が明らかに上で、稲森は今回も相当に戦術的な戦いかたを選択せざるを得ないはず。 皇后盃での稲森は階級が下の選手との対戦が続き、腰を寄せる近接戦闘を続けることで力の差を出す戦術を採っていたが、これでは朝比奈には厳しい。かつてのような組み手の上手さと切れ味鋭い足技で試合を組み立てることになるだろうが、朝比奈とて二度同じ轍を踏むとは思えない。好カードだが、ここは朝比奈の勝ち上がりを推しておきたい。

山部-朝比奈戦も様相が読みがたい。山部の投げ技の切れ味は出色だが、朝比奈がうまく圧を掛けて自分の棲むスピードまで相手を減速させながら試合を進めれば思わぬアップセットもありうる。動きのある試合なら山部、圧を掛け合ったところからの一発の仕掛けあいとなれば試合が揺れる可能性がある。

決勝は高い確率で田知本-山部となると思われる。下馬評は田知本優位だが、山部は田知本に対する相性が悪くなく、かつ、動かして仕掛けてくる現在の田知本が志向する柔道はまさしく山部の得手とするフィールドだ。むしろアドバンテージは山部にあり、田知本にとっては世界に向けて超えるべき最後のハードルが待ち受けるという構造で見るべき試合ではないだろうか。必見の一番だ。




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