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全日本選抜柔道体重別選手権大会男子展望

(2013年5月10日)


※eJudo携帯版「e柔道」5月9日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本選抜柔道体重別選手権大会男子展望


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写真:昨年大会の開会式
リオ世界選手権の代表最終選考会を兼ねる全日本選抜体重別選手権大会は11日より2日間の日程で、福岡国際センターにて行われる。

本年度の体重別日本一を決定する最高権威大会であり、「組み合う」ことを推奨したIJF新試行ルールが採用される国内最初の大会ということでも注目を集めるが、やはり最大の焦点はリオ世界選手権(8月26日~9月1日)の代表権争いということになるだろう。各階級2名の選出が可能だった10年、11年大会からレギュレーションが再度変更となり、今回からの代表権は「7階級で9人、各階級最大2名」。09年大会までの「代表1名」との中間点というべきところに落ち着くこととなった。
選手にとっては圧倒的なパフォーマンスを見せればこれまでの序列をリセットして世界選手権出場の可能性が残るチャンスが残る。そして、育成か、現実的な勝利か、はたまた国内のパワーバランスに阿るのか、強化陣のポリシーと腕の見せ所でもある。

男子の場合、育成を考れば積年の課題である超級への若手派遣ということも当然考えられるだろうし、勝利を考えればそれぞれ2人の世界王者を抱える66kg級に73kg級という日本得意の軽中量級への人材集中投入ということになるだろう。国内の事情で考えれば選抜で圧倒的なパフォーマンスを見せた選手の思い切った起用ということもありうるだろうし、90kg級の加藤博剛(千葉県警)のように、国際大会では映えないが国内では圧倒的な成績を残している選手に対する調整弁として機能させることも考えられなくはない。

いずれ、「1人枠」「2人枠」いずれにもない面白み、代表選考への興味がかきたてられる制度だと言っていいだろう。今年の選抜体重別を貫くテーマは、勝利者と代表選手1枠目が誰か、そして2枠目をめぐる選手たちの試合の「内容」の良し悪しだ。

代表争いのバックになる階級の状況とトーナメントのみどころという2つの視点から、各階級の展望を試みたい。

■60kg級
スター候補高藤直寿、世界選手権に向けた「最終試験」


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写真:グランドスラム2大会を
連続制覇した高藤直寿
【階級概況】
現在ワールドランキング1位、第1シードに配された高藤直寿の世界選手権代表選出の「最終試験」となる様相が濃い。高藤がグランドスラム東京優勝、そしてグランドスラムパリでの全試合一本Vと圧倒的な成績を残す一方、国際大会シリーズで水準以上の結果を出した他選手は一段レベルの落ちる「ヨーロッパオープン」で優勝した志々目徹(日体大4年)だけという現状にあっては、余程のことがない限り高藤の選出は規定路線と思われる。高藤は一定以上のソリッドな結果、そしてその先を見据えた「勝ちぶり」が問われることとなるはずだ。

敵はなんと言ってもかつて「苦手」と公言していたと伝えられる山本浩史(ALSOK)。長身、奥襟、そして巻き込みを厭わないタイプの内股系と低身長の高藤にとって噛み合わない要素が揃っている厄介な相手だ。高藤はかつてこれらのタイプに掬投など後の先の技を活用して勝利してきた経緯があるが、今回はIJF新試行ルールが採用されるためもちろんこれは反則。パワーファイター揃う世界選手権での勝利に向け、どのような戦略、戦術を見せるのか。対戦があるとすれば必見の一番だ。

山本は一時完全に代表レースから脱落していた気配だが、チャンスを貰ったアジア選手権で優勝、復権の気配がある。前述の通り代表枠は7階級に9人。圧倒的なパフォーマンスを見せればチャンスは皆無ではない。

【トーナメント】
もちろん高藤と山本がそれぞれ第1、第2シード。
高藤の山は、志々目徹(日体大4年)-川端龍(了徳寺学園職)の勝者と対戦する準決勝がヤマ。高藤にとっては担ぎ系中心の典型的軽量級選手川端よりも技種が多く柔道が我侭な志々目の方が嫌なはずだが、昨年の志々目は技出しが遅く、度々「指導」累積で敗れていた。反則裁定が極端に早い新ルールの中で川端が攻めきって勝つのか、攻撃ポイントに極端なアドバンテージがあるこのルールを生かして志々目の技一発が炸裂するのか。実は1回戦の志々目-川端戦は階級全体を揺らすポイントになる可能性がある。

昨年得意の内股を徹底マークされ、そこから手数負けという展開が多かった山本も、焦点は決勝よりも、苦手の石川裕紀(了徳寺学園職)と手数勝負に長けた後輩木戸慎二(パーク24)の勝者と対決する準決勝になると目される。みどころの多い階級。

■66kg級
「両雄並び立つ」のか?結果以上に海老沼、森下の出来がみどころ


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写真:昨年選抜体重別決勝で
対戦した海老沼と森下。
この時は海老沼が一本勝ちしている
【階級概況】
ロンドン五輪で銅メダル獲得、グランプリ・デュッセルドルフでは五輪王者シャバツァシビリに一本勝ちした海老沼匡(パーク24)、グランドスラム東京で美しい「一本」を連発して優勝、あらためてその魅力を周囲に見せ付けた森下純平(了徳寺学園職)とこの階級を引っ張るのはともに世界選手権での優勝歴がある2人の選手。

前述の通り、今回の世界選手権の選抜枠は7階級に対し9人。日本が「是が非でも金メダルを」という線に沿ってプラス1名を選ぶのであれば最強階級であるこの階級への投入は現実的な判断だ。

よって、海老沼、森下の両選手が代表選出に値するだけのパフォーマンスを見せられるかがこの階級最大のみどころ。特にポカ負けが多く、グラドスラムパリでは足取りの反則でやってはいけない初戦敗退というミスを犯したばかりの森下は結果、そして内容と周囲を納得させられるだけの出来が求められるだろう。

【トーナメント】
当然海老沼と森下の山は分かれ、それぞれが第1シード、第2シード配置。最大の刺客と思われる福岡政章(ALSOK)が2番手評価の森下の側に配されるというまことにもって妥当な組み合わせとなった。

前述の通りこの階級は73kg級と並んで日本の「最強階級」の一つ。参加者のレベルも当然高く、海老沼の山には11年グランドスラム王者の高上智史(日体大4年)と昨年の実業王者で瞬発力と試合を見る目は相変わらずトップクラスのベテラン浅野大輔(自衛隊体育学校)が配され、森下の山にも初戦が国際大会連続参加で地力を鍛えられた吉田惟人(神奈川県警)、さらに福岡政章、そして森下と高校大学の同門同期で攻め手の早い学生王者小寺将史(警視庁)と多士済々だ。

09年講道館杯での内柴正人戦、昨年の選抜体重別での森下純平戦と人生の岐路となるような勝負どころでは常に「一本」で勝ち上がってきた海老沼に関して言えば、今大会も水準以上の内容を残すのはほぼ間違いない。

やはり注目は森下だ。その柔道の質から最も新ルールに適性があるとの評価を受けながら、新ルール下でまだ一勝もしていないという緊張感を、浮き沈みの激しい森下が試合にどう消化して試合に臨むか、まず初戦の吉田戦に注目だ。

勝ち負けに関して言えば、本命海老沼、対抗森下、ダークホースは海老沼に2度関節技で勝利しているベテラン・福岡と一発のある高上。こう評しておいて間違いないところだろう。

■73kg級
銀メダリスト中矢力、ニュースター大野将平の再戦に注目集まる


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写真:中矢と大野が直接対決した
グランドスラム東京決勝。
この時は大野が一本勝ちを収めた
【階級概況】
秋本啓之(了徳寺学園職)、中矢力(ALSOK)と世界選手権王者を輩出し続けてきたこの階級も66kg級同様、日本の最強階級と言って良い陣容とレベルの高さを誇っている。

今大会は秋本がエントリーせず。よってロンドン五輪銀メダリストの中矢、そしてグランドスラム東京で惚れ惚れするような強さを発揮して決勝で中矢を破った大野将平(天理大2年)が二巨頭。今大会はこの2人の競演が最大の焦点だ。

中矢は故障が癒えないまま12月のグランドスラム東京を戦いそれでも2位入賞。しかし、欧州国際大会の欠場を経た後に出場した4月のアジア選手権団体戦ではもと世界王者ワン・キチュンに大外返「一本」を食って破れており、ベストパフォーマンスが発揮できる状態にあるのかどうかは蓋を開けてみるまでわからない。入り方を工夫し、一気に裏に抜けて最悪でも寝技に繋ぐという中矢の大外刈が「返された」という事実は今後に向けて敗退という結果以上に重要な要素になる可能性があり、今大会のパフォーマンスは興味深い。

一方の大野。66kg級の森下純平同様もっとも新ルールが噛み合う選手として期待されたが、その新ルールが試行されたグランドスラムパリでは前回対戦で圧勝しているもと世界王者ツァガンバータルに粘られ、GS延長戦「技有」で敗退、3位に終わっている。

中矢、大野いずれにとってもこの大会はリベンジマッチ、再評価という審判を受ける大会ということだ。好パフォーマンスを見せれば両者ともに世界選手権への道が開かれ、もし中途で試合を落とすようなことがあればいずれかが代表漏れの可能性もある。緊迫の階級だ。

【トーナメント】
第1シードが中矢、第2シードが大野。

中矢は初戦が土井健史(天理大3年)、準決勝は中村剛教(大阪府警)と斎藤涼(旭化成)の勝者との対戦。
いずれも強豪だが、中村と斎藤は良い意味でも悪い意味でも強さの最高到達点が安定しており、近年極端な爆発力を見せる場面は少ない。ここは対戦相性というよりも、中矢自身の出来が問われるブロック。
天理大所属、出身としての土井、斎藤による大野の「援護射撃」の程に注目。

大野の山には、上の山への天理大系集中のあおりを食ったか、東京世界選手権銅メダリスト粟野靖浩(了徳寺学園職)、同学年の世界ジュニア王者西山雄希(筑波大4年)、ロッテルダム世界選手権代表大束匡彦(旭化成)と強豪が詰め込まれた。

技は切れるが線の細い西山タイプには大野の相性は良いと見る。比較的柔道がキレイな型の大束も同様ではないかと思われるが、担ぎ技を中心に泥試合を厭わず足技も切れる粟野は少々厄介なのではないか。いよいよ世界選手権代表権獲得に挑むプレッシャーの中での初戦ということもあり1回戦に要注目だ。

中矢-大野の決勝が実現するならば見逃せない対決。大野が連勝するようなことになると階級の第一人者交代という事態と見てよい。前回対戦を見る限りでは、中矢が余程復調していないと新ルール下で大野の立ち技に対応することは難しそう。「長くみる」はずの寝技勝負にどう優位な形で持ち込むかが焦点となりそうだ。

■81kg級
第一候補は長島、若手の躍進に中井の復活と不確定要素多し


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写真:第1シードに配された
長島啓太
【階級概況】
長いスパンでの苦戦が続いていたこの階級だが、その中で奮闘、この階級を引っ張ってきたロンドン五輪5位の中井貴裕(パーク24)の緊張の糸が切れてしまった感があった今シーズンの国際大会の成績は惨憺たるもの。
グランドスラム東京で川上智弘(國學院大職)が3位、中井が5位。
グランドスラムパリで長島啓太(日本中央競馬会)が3位、中井が2回戦敗退。
ヨーロッパオープンブダベストで川上が優勝、中井が3回戦敗退。
グランプリ・デュッセルドルフで川上が2回戦敗退。

永瀬貴規(筑波大2年)が2位入賞したヨーロッパオープントビリシを加えても優勝者はヨーロッパオープンブダベストの川上だけ、しかもその川上は負傷のため今大会は欠場するという事態となった。川上を除いて考えると、安定した成績を残していて、技、組み手と高水準で揃えて柔道スタイルの評価が高い長島が第一候補ということにはなるが、世界選手権代表の行方は依然混沌としている。

長島が優勝すれば世界選手権代表は現実的と思われるが、川上の代役で出場する全日本選手権関東予選王者の大辻康太(日本エースサポート)、同2位の永瀬貴規(筑波大2年)にいよいよ国際大会に出始めた大物小原拳哉(東海大1年)と若手が勢いに乗ってきており階級全体の流れは長島に対してやや逆風。半年以上「充電」した感のあるの中井も五輪での実績をテコに今大会に優勝して再び世界選手権の乗り込む意欲は十分だろう。また、ヨーロッパオープンとは言いながら今期唯一優勝があり、グランドスラム東京でも唯一表彰台に上った川上の扱いをどうするのか。今大会屈指の「読めない」階級だ。

【トーナメント】
長島が第1シード。第2シードは川上だがここには代役の大辻が配されることとなる。
長島は初戦が丸山剛毅(天理大3年)、準決勝が永瀬と海老泰博(旭化成)の勝者が相手。海老は曲者だが、現時点での実力評価では長島が勝ち上がる可能性がやはり高い。波乱要素はイケイケの試合が出来る永瀬だが、百戦錬磨の海老を相手に、どこまで地力で押せるかとなると疑問。いずれ学生らしい、元気の良い試合を期待したい。
大辻の初戦は講道館杯のリベンジマッチとなる小原拳哉(東海大1年)戦。どちらも勢いがあり勝負は予断を許さない。
中井は安田知史(天理大4年)に勝利すると大辻-小原の勝者と対戦することになる。どちらがあがってきても勢いのある選手で、五輪後冬眠状態の長かった中井は受けて立つ戦い方で臨むと食われる可能性も十分。いなして、かわして、嫌なところを探しては突いて行くのが中井の柔道だが新ルール下ではこれだけでは不十分。復活を期してどうスタイルを変えてくるのか、どう攻撃を組み立ててくるのか。注目したい。

■90kg級
本命は西山、首脳陣悩ます加藤の存在が選考の焦点


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写真:階級の焦点は
加藤博剛の出来
【階級概況】
代表争いという視点からの本命はロンドン五輪銅メダリストの西山将士(新日鐵住金)。五輪後に出場したグランドスラム東京は決勝でイ・ギュウオンに敗れて2位だったが、4月のアジア選手権団体戦決勝では「指導1」という小差ながらもイに勝利を収めてリベンジ。国際大会の実績という点では頭ひとつ抜け出しており、まずまず代表選出は固いところにつけている。最終選考会の優勝でこれを確定する、というのが今大会に課されたミッションだ。

波乱要素はなんといっても第2シードに配された加藤博剛(千葉県警)の存在。昨年は体重無差別の全日本選手権優勝を皮切りに選抜体重別優勝、講道館杯優勝で大暴れ、国内では無敵の強さを誇った。
しかし首脳陣の頭を悩ますのはこの加藤の国際大会での人が変わったようなパフォーマンスの悪さ。これを見極めるべく異例の「セパレート派遣」を実施して送り込んだグランドスラムパリでは3位入賞も対戦者のレベルが低く、かつ一段落ちる大会のはずのグランプリ・デュッセルドルフではあっさり初戦敗退に終わった。結果が残らなかったこと、そして何より海外勢の「加藤は安パイ」とでも決めきったような自信の溢れる試合ぶりを考えれば、すでに加藤は世界選手権代表候補のリストから外されていて然るべきだが、今大会も優勝して「国内無敗」という実績を得た場合にこの処遇をどうするのか。場合によっては貴重な1枠の余剰を、「国内実績への配慮」という調整弁として使わざるを得ない状況も考えられる。

加藤の圧倒的な強さが続くのか、それとも「要領の良い試合」を志向して嵌った全日本選手権の低パフォーマンスをひきずって敗退がありうるのか。代表争いの本命は西山だが最注目選手は加藤だ。

人材が濃いこの階級は躍進気配の下和田翔平(京葉ガス)、吉田優也(旭化成)と注目すべき選手が揃うが、すでに国際大会を戦う力があると噂されるベイカー茉秋(東海大1年)はひときわ見逃せない。ただしベイカーはブレーメン国際大会後のドイツ合宿で肋骨を痛めており、今大会も出場回避と目されていた経緯がある。出場があるとしてもハイパフォーマンスを期待するのは難しい状況だ。

【トーナメント】
西山の山には近藤拓也(筑波大4年)、池田賢生(日本中央競馬会)、吉田優也(旭化成)と好選手が配されたがいずれもその地力に比して西山を超えるだけの瞬発力を要求するのは難しいタイプ。吉田には一発があるが組み手の上手い西山は十分心得て試合を組み立ててくるだろう。西山の勝ちあがりが濃厚。

加藤は初戦がベイカー、準決勝は下和田か北野裕一(パーク24)といずれも若手とのマッチアップ。
ベイカーにはパワーと「際」というストロングポイントで加藤が格上であることを講道館杯でハッキリ示したばかり。長身の下和田も腰に食いつく変則で試合を組み立てることも得手の加藤にとってはやりにくい相手ではない。引込返ファイターの北野は加藤同様一方的なシナリオで試合を運ぶタイプの選手だが、同タイプのシナリオの取り合いではパワーと経験に勝る加藤の優位は否めない。

結果、この山にも事前予想の段階では加藤を止め得る選手はいない。ただしベイカー、下和田、北野とも序列をひっくり返す一発のある選手であり波乱要素は持っている。加藤がこのあたりのリスクヘッジと攻撃のバランスを誤らずに勝ち抜くことができるかどうかが焦点だ。

西山-加藤は昨年の戦いを見る限りやはり相性的に加藤が勝る。癖のある選手との対戦を続けてくることになる加藤の消耗度、組み手争いの中でも相手を持っていく力と技術がある西山の一発の精度と、チャンスメイクの数が勝負の分かれ目となりそうだ。

■100kg級
世界大会経験者2名が抜けた混戦階級、問われる階級全体の地力


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写真:グランドスラム東京に
優勝、全日本選手権でも
好パフォーマンスを見せた
小林大輔
【階級概況】
この階級はロンドン五輪で代表を務めた穴井隆将が抜け、東京世界選手権で代表歴のある高木海帆、エース候補として早い段階から国際大会に起用されてきた羽賀龍之介という若手の2トップが負傷のため長期欠場中という状況にある。

エース格の3枚落ち。「直近の国際大会の成績」「最終選考会での成績」という2項を満たすことが可能な選手は勿論いるが、階級全体として世界選手権という場を戦うには非常に厳しい情勢と見るべきだろう。

国際大会の成績はグランドスラム東京で小林大輔(ALSOK)が優勝、グランドスラムパリで熊代祐輔(ALSOK)と小林がそれぞれ5位、ヨーロッパオープンブダベストで熊代祐輔(ALSOK)が優勝して小林が2位、グランプリ・デュッセルドルフで100kg級に階級を上げたばかりの大ベテラン小野卓志(了徳寺学園職)が2位。成績は決して芳しいものではない。

小林はグランドスラム東京で優勝しているが、対戦相手は日本在住のヘクル(チェコ)、日本大2年の後輩レイズカヨル(カナダ)、さらにこれも日本大の後輩にあたるバトトルガ・テムーレン(モンゴル)、そしてこの大会のみ突如階級を上げてスポット出場のイリアディス(ギリシャ)で、GS優勝という額面通りの評価を受けにくい面子であった。

全日本選手権での好パフォーマンスもあり一番手は小林、対抗が熊代、穴が小野、と見てほぼ間違いないだろう。が、もし混戦でこれら三者が総崩れにでもなった場合は「100kg級は派遣選手なし、1枠は有望階級に回す」という判断が下されてもおかしくない状況だ。候補者いずれも、選出にはその裏付けとなる手堅い結果が求められる。

【トーナメント】
熊代の山には小川竜昂(国士舘大2年)に浅沼拓海(国士舘大3年)、小林の山には谷井大輝(東海大3年)とイキの良い若手が投入された。

熊代は躍進著しい小川が初戦。準決勝は柴崎裕亘(福岡県警)と浅沼の勝者だが、最近の試合成績を考えると山場は初戦となりそうな気配。

小林は初戦が小比類巻裕(国士舘大4年)、準決勝が小野と谷井の勝者。いずれも比較的持ち合って投げを打ち合う型の試合を好む選手で、内股の切れ味で勝負する小林には戦いにくい相手ではない。

国際大会で成績を残した社会人3人が階級の序列をしっかり継続させて、ある意味大会の「体裁を整える」のか、学生勢がこれを壊すのか。代表候補争い以上に、現時点での日本100kg級全体の体力が改めて問われるトーナメントだ。

■100kg超級
全日本の総崩れで選考はリセット、若い原沢に注目集まる


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写真:全日本選手権で
初出場2位、
注目を集める原沢久喜
【階級概況】

国際大会シリーズ終了時点で代表候補一番手につけていたのは七戸龍(九州電力)だったが、4月末の全日本選手権では超ベテランの棟田康幸にビビリまくって腰を引いたまま6分を消費、なんと3回戦で敗退という結果、内容ともに最悪の試合を披露。穴井隆将を相手に全くの無策でハナから敗退を受け入れるかのような覇気のない試合を繰り広げた百瀬優(旭化成)同様、首脳陣に愛想を尽かされても文句のいえない状況にある。両者とも選抜されるためには優勝が最低条件。

期待が集まるのは全日本選手権初出場で決勝進出という躍進を見せた大物・原沢久喜(日本大3年)と、肘の手術による長期欠場から体制を立て直して本来のパワフルな柔道を見せ付けて同大会で3位入賞の石井竜太(日本中央競馬会)。それぞれ組み合わせは厳しく、かつ国際大会での実績で上記の2人に劣る状況を考えるとこちらも厳しい状況ではあるが、この2人を除いて階級を活性化するカンフル剤と成り得る選手は見当たらない。大いに期待したい。

代表選考に関してだが、全日本選手権後に井上康生男子代表監督が原沢に期待する旨をコメントしたこと、超級の立て直しを至上命題に掲げているこれまでの経緯を踏まえると、もし原沢が好パフォーマンスを発揮しながら優勝に一歩及ばなかったという場合には若手育成という名目でこの階級に「2枠目」の権限を行使する場合がありうるのではないか。確率は高くはないはずだが、この点を踏まえて原沢の試合内容には初戦から注目すべきだろう。

【トーナメント】
とはいえ面白いカードが目白押し。
第1シードの百瀬は上川大樹(京葉ガス)が初戦。ロンドン五輪で代表を務めた上川は国際大会の派遣に漏れてこれが久々の試合。休養期間をジックリおいた上川がハイパフォーマンスを見せるのではないかという期待もいや増すが、百瀬はジュニア時代から勝負どころで常に上川を止め続けてきた天敵。超戦術的な百瀬を、上川の「充電」ぶりが上回ることができるのかが焦点。

第2試合は原沢に王子谷剛志(東海大3年)がマッチアップ。王子谷は原沢と同学年でインターハイ、全日本ジュニアとかつては常に原沢を叩き潰してきた経歴の持ち主。ライバル心旺盛な王子谷をぶつけることでブレイクなった原沢の力をいま一度試そう、そして低迷気味の王子谷を煽ることで階級全体の浮揚を図ろうという強化の意図が垣間見える好取り組み。意地と意地がぶつかりあう、熱い試合に期待したい。

この山の準決勝は、まことに読み難いが百瀬-原沢と見る。講道館杯では百瀬が組み手で封殺に掛かり、原沢が効果的な技で対抗、僅差で原沢が勝利したが正直判定は微妙であった。原沢の攻撃力が百瀬を凌ぐか、百瀬が再び「相手の良いところを消す」試合でこれを退けるか。劇的決着は難しそうだが、原沢の戦闘力の伸びを見極めたい好カード。

七戸の初戦は岩尾敬太(京葉ガス)。ここは問題なさそうだが、隣の石井竜太-高橋和彦(新日鐵住金)は好取り組みだ。高橋は昨年の全日本選手権での対戦(石井が大外刈で一本勝ち)の後「100回やっても勝てない」との言葉を残しているが、だけに現在の石井の復調振りを測るのは絶好の対戦相手ではないか。

七戸-石井の試合はともにファイタータイプということで考えれば互いに一発を狙いあう殴り合いの激しい試合になることもありえるが、ケンカ四つで七戸が懐の深いタイプというところにフォーカスすれば引き手の探りあいに終始する露骨な膠着というシナリオも考えられる。ともに「際」に強いタイプだが近接戦闘ならパワーに勝る石井、距離を取ったところからの飛び込み合いなら射程距離の長さに勝る七戸、という観察はひとつ可能だ。 カギは互いの戦闘意欲の高さだろう。ともに勝たねば世界選手権はないと思いつめてくるはずのこの試合、その「行きたい」気持ちをどうコントロールして戦うがが焦点となるのではないか。双方後の先も強く、半端な攻撃は思わぬアクシデントの一発を食うリスクが常につきまとう。闇雲な攻撃は場を不安定にするだけだが、そこでどの機で、どのような覚悟で技を繰り出すことが出来るのか。そもそもこの2人の対戦で小差で決着がつくようであれば勝っても代表選出への見通しは暗い。攻撃的な試合を期待したい。




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