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全国高校柔道選手権男子個人マッチレポート・90㎏級~無差別

(2013年5月1日)


※eJudo携帯版「e柔道」4月13日掲載記事より転載・編集しています。

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全国高校柔道選手権男子個人マッチレポート
90㎏級~無差別 1/2


前田宗哉、同世代のモンスター江畑丈夫との「大外刈対決」制して全国大会初優勝
90kg級

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写真:2回戦、山田友基が
眞砂谷幸弥から右小外刈で「有効」を奪う
最序盤に注目カードが3試合。

人材ひしめく中で第1シードに抜擢された山田友基(愛知産業大三河高)と東海大相模高のエース・眞砂谷幸弥による2回戦は山田に軍配。中盤に山田が眞砂谷の大外刈を抱えあげて後ろに思い切り放る「一本」級の投げ、これは場外だったがこの一撃で場が荒れ、腰の差し合いから山田が右小外刈で眞砂谷を制し転がして「有効」奪取。そのまま優勢勝ちで3回戦進出を決めた。

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写真:1回戦、
江畑丈夫が小寺達を攻める
2年近く個人戦での実績がなくなんとノーシードスタートとなったこの世代の全国中学大会王者・江畑丈夫(国士舘高)は東海大仰星高のポイントゲッター小寺達と1回戦で激突。この試合は右相四つの小寺に対して江畑が序盤から圧力をかけてジワジワと前へ。小寺も良く攻め返すが主導権を得るには至らず、終盤ペースを上げた江畑の前に残り5秒で「指導2」失陥。江畑、強敵相手にジックリ戦って2回戦進出決定。

江畑と並ぶ優勝候補に挙げられている前田宗哉(東海大浦安高)も初戦から下田将大(四日市中央工高)という強敵との顔合わせ。下田の担ぎ技と粘りに冷静さを失わず奥襟を握っての右大外刈、右大内刈に右内股と攻めに攻めたが、タイミングを失ったか審判団は「指導」を宣告せず。しかしめげずに攻め続け、旗判定では当然のように旗3本を獲得。僅差3-0の優勢で自身のキャリア初の全国大会の畳を勝利で飾った。

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写真:準々決勝、江畑丈夫が
山城太志から内股で一本勝ち
そして激戦を勝ち上がって決勝に駒を進めたのは予想通りの2強、江畑丈夫と前田宗哉。

江畑は前述の通り初戦で小寺達に「指導2」で勝利すると、2回戦は工藤雄生(青森北高)からこれも3つの「指導」を奪っての優勢勝ち。ここからエンジンが掛かり始め、3回戦は田北健太郎(徳島商高)から大外刈「一本」(GS0:24)、準々決勝では3回戦で山田友基を破った沖縄尚学高のエース山城太志から内股「一本」(1:55)、そして準決勝は12年全日本カデ81kg級王者の強敵・白川剛章(福井工大福井高)から体落「技有」、さらに大外刈「一本」(1:57)と3連続の一本勝ち。

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写真:準決勝、
江畑が白川剛章から大外刈「一本」
伝家の宝刀とでも呼ぶべき切れ味のあった大外刈はまだ完全復活とまではいかないようだが、一時の江畑が陥った淡白さが嘘のようにこの日は非常に意欲的な試合振り。尻上がりに調子を上げ、2011年4月に優勝した全日本カデ以来久々の全国大会決勝の畳に臨む。

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写真:準決勝、前田宗哉が
佐藤允哉から大外刈で「一本」の快勝
一方の前田も、強敵揃いの序盤戦を勝ち上がった後の内容は尻上がり。2回戦、下田将大からの僅差判定勝ちを経て、3回戦は東北王者の橋谷田雄登(山形工高)から「有効」を奪っての優勢勝ち。この厳しい2戦を戦った後は一気に力を解放、準々決勝は伊藤尚将(沖学園高)の右大外刈を振り返して左小外掛「一本」(1:03)、準決勝は強敵佐藤允哉(近大福山高)を相手に得意の右大外刈がついに炸裂、僅か32秒の「一本」で見事決勝の畳へと駒を進めた。

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写真:決勝、前田が飛び上がって
釣り手で奥襟を叩き、
江畑は片襟を差して応戦
決勝は江畑、前田ともに右組みの相四つ。両者とも頼るべき必殺技は右の大外刈一択、「大外刈対決」とでも呼ぶべき好カードだ。

開始するなり江畑が前へ。迎え撃った前田は釣り手で奥襟を叩いて右大外刈。江畑足を下げて逃れて双方場外、江畑が前田をさらに外へ突き飛ばしたところで「待て」。経過時間は24秒。

江畑は釣り手でまず右片襟を差して距離を取り、引き手で袖を得ようとする。前田はそれでも強引に釣り手で奥襟を叩き、引き寄せて引き手で袖を引っ掴む。江畑はこの釣手を落として弾き返すが、ベンチからは岩渕公一監督の「落とさなくていい!お前が奥襟を取るんだ!」の叱咤の声。直後の40秒「取り組まない」との判断で江畑に「指導」が宣告される。序盤は前田がやや攻勢。

前田が奥襟、応じて江畑が奥襟、そして互いにやや嫌って切り離し組み手をやりなおすという組み手の攻防が数合。前田の右小内刈をきっかけに江畑が釣り手で肩越しに背中を掴むが、両者場外に出て「待て」。経過時間は1分1秒。

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写真:江畑が
右大外刈で深く侵入
江畑、釣り手で片襟を差し、引き寄せて引き手で袖を持つ。次いで奥襟を握ると低い体勢の右大外刈、感触を得てさらにもう一発放つと刈り足が前田の脚裏深く進入する大チャンス。場内は歓声と悲鳴、「危ない!」の声がそこここで放たれる中、前田は足を抜いて一歩下がり、辛うじてこの危機を逃れる。

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写真:江畑の右体落に前田が崩れる
勢いづいた江畑は横変形に相手の釣り手を抱きこむ得意の形。前田はステップを切って思い切った右大外刈、しかしこの技の戻りに江畑が両足を踏ん張って右体落。前田大きく崩れて伏せ「待て」。好試合、そして中盤は試合の流れを江畑が取り戻した印象。経過時間は1分37秒。

江畑が奥襟を叩き、肩越しの釣り手で応じた前田も奥襟を握り直しての潰しあい。互いにジワジワ上体を起こしながら間合いを測る時間が続く。江畑、前田を自身の左に誘導して踵でカットするような探りの大外刈。前田が出返すと肩越しに釣り手を流しながら右払巻込。前田返すが江畑を捕まえきれず抜け落ちて「待て」。経過時間は2分20秒、残り時間は40秒。

前田、引き手で右襟を掴むと釣り手で肩越しに背中を掴む。江畑は掴ませておいて奥襟を握り返し、右大外刈、次いで右体落。ここで主審は前田に「指導」を宣告。GS延長戦を目前に江畑が反則累積ポイントで追いつく。

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写真:前田が肩越しに釣り手を入れ、
江畑が奥襟を持ち返すという展開
前段の「肩越しに釣り手を叩かせておいて、奥襟を持ち返す」展開の成功に感触を得た江畑、前田が再び同様の展開で引き手で襟、次いで肩越しに釣り手と入れてくるのを待ち構え、前田の大外刈を一歩足を引いてかわすと奥襟を取り返す。

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写真:前田が右大外刈から払腰に変化、
着地で手が切れてしまい惜しくもノーポイント
組み手は若干江畑が優位、しかしその刹那前田は強引な右大外刈に飛び込んで江畑の右足を引っ掛ける。江畑が下がろうとしたところに合わせてさらに一歩前に出、右払腰に連絡する必勝パターン。江畑大きく宙を舞うが、前田決めの動作で手が離れてしまい、江畑は前田の横に伏せて落ちる。
宙に浮いた時点での印象は「一本」級、落ちた時点でもいままで最も「有効」に近い、この試合最大のインシデント。江畑には再び岩渕監督の「先に奥を取れ!」との激が飛ぶ。

残り時間はほとんどなく本戦3分は終了。互いに相譲らぬ激戦の決着はGS延長戦へと持ち越されることとなった。

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写真:江畑は前田の圧をかいくぐって
右体落
江畑は本戦終盤の組み手の手順を踏襲。前田は引き手で襟を握ったところから肩越しに釣り手を入れ、江畑は奥襟を握り返して脱出、右体落を放つ。前田はかわして右払巻込、江畑は潰して素早い動きで腰絞めを狙うという息もつかせぬ攻防。

前田再び引き手で襟、釣り手で肩越しに背中。江畑は引き手で襟、釣り手で奥襟を持ち返して思い切った右大外刈。しかし前田は踏みとどまって耐える。ここから江畑、前田ともに奥襟を握ったまま退かない。「待て」が掛かったところでの残り時間は1分6秒。

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写真:前田は肩越し、
江畑が応じて奥襟という組み手が続く
前田が引き手で襟、釣り手で肩越しに背中を握り、待ち構えた江畑が奥襟を叩き返すパターンがさらに続く。
残り30秒を過ぎ、江畑がこのパターンから引き手で襟、そして釣り手で一方的に奥襟を握る大チャンス。圧を受けた前田の頭が下がる。
しかし前田は不利な組み手のまま思い切って前進。江畑はともども場外に出てしまいチャンスは潰える。国士舘サイドから思わずため息。残り時間は26秒。

前田肩越しに奥襟を掴む。江畑の右大外刈で展開が切れる。残り時間は18秒。

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写真:最終盤も大外刈の
掛け合い、双方譲らず
江畑がガッチリ奥襟を掴む、前田は退かずに思い切り右大外刈。江畑は両手で突き放し切って「待て」。残り時間は10秒。

江畑が右大外刈、前田が右大外刈と放ち合ってて試合は終了。激戦5分もついに決着はつかず、勝敗の行方は旗判定に持ち込まれた。

主審の「判定」の声が響く。揚がった旗は副審1人が紅・江畑、主審と副審1人の2人が白の前田。

江畑はガックリ、前田は拳を握り締める。前田宗哉、同世代のモンスターとして君臨した江畑丈夫を倒し、全国大会初出場で初優勝を成し遂げた。

決勝はいずれに旗が揚がってもおかしくない接戦おそらくは本戦終盤の前田の大外刈の印象点がモノを言ったものと思われる。

しかし、ここで注目しておきたいのは、本戦終盤以降江畑が許容した、「先に肩越しに叩かせておいて、奥襟を持ち返す」組み手のパターン。この手順自体は非常に効いていた。ゆえに江畑は奥襟を得て、得意の右大外刈で度々惜しい場面を作るに至った。
江畑に奥襟をもたれる限り、いつ強烈な一発を食らうかわからない。前田はこの組み立てを続ける限り、先手は取れるがその「奥」を持たれる展開も続く。手順の優位は江畑にあったと見る。

しかしそれでも攻め返し、先んじて技を打ったのは前田。あくまで攻める前田の気迫が手順の不利を跳ね返したとも見ることも可能だし、手順を受け入れて「持たせて持ち返す」といういわば後の先の組み立てを許容し、「先に持たせる」「持てるが先に持たれる」という見方によっては消極的とも取れる手順が、審判の心証に影響したという可能性もまた否めない。江畑がこの手順を受け入れ始めた本戦終盤、岩渕監督が飛ばした「お前が先に奥襟を持て!」という指示はこの点、いかに有利であってもまず持たせることで失うもの、生じるシナリオ分岐のまずさを指摘するものだったのではないだろうか。

前代のチームから続く超攻撃的スタイルを継承し、攻めることへの貪欲さを押し立てて頂点に挑んだ前田。
一方の江畑も、そのプライドゆえか調整の賜物か、ここ1年の淡白さが払拭されてこの日は勝利への執念が色濃く見える試合ぶりであった。だが、切所で選択した手順「持たせておいて持つ」が、前田の勝負への貪欲さに付け入る隙を与えた、攻撃への貪欲さにおいて前田が江畑を僅かに凌いだ、決勝にはこの評を表明したい。

江畑のプライドと前田の渇望、いずれ素晴らしい好試合であったことは間違いない。81kg級決勝と並んでこの日の個人戦男子5階級のベストバウトに推されるべき、見ごたえのある一戦だった。

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写真:優勝の前田宗哉
【入賞者】
優勝:前田宗哉(東海大浦安高)
準優勝:江畑丈夫(国士舘高)
第三位:白川剛章(福井工大福井高)、佐藤允哉(近大福山高)
敢闘賞(ベスト8):山城太志(沖縄尚学高)、清水健太(岐阜第一高)、斎藤光星(加藤学園高)、伊藤尚将(沖学園高)

前田宗哉選手のコメント
「初めての全国大会で初戦から物凄く緊張しましたが、試合を重ねるごとにだんだん体が動いてきて、技が出せるようになってきました。江畑選手との決勝は、向こうも奥襟を叩いて前に出てくるタイプ。絶対負けたくなかったし、来た技を返すのではなく、前に出て、必ず自分の技で投げてやろうと思っていました。決勝の前には監督に『気持ちが前に出ているほうが勝つ』と一言だけアドバイスを頂いて、気合が入りました。団体戦で勝つことが次の目標です。2年連続、三冠を達成します」

【準々決勝】
江畑丈夫(国士舘高)○大外刈(1:57)△山城太志(沖縄尚学高)
白川剛章(福井工大福井高)○内股返(2:25)△清水健太(岐阜第一高
佐藤允哉(近大福山高)○優勢[技有]△斎藤光星(加藤学園高)
前田宗哉(東海大浦安高)○小外掛(1:03)△伊藤尚将(沖学園高)

【準決勝】
江畑丈夫○合技(2:30)△白川剛章
前田宗哉○大外刈(0:32)△佐藤允哉

【決勝】
前田宗哉○GS僅差2-1△江畑丈夫


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