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石井、七戸ら5人が鍔迫り合いの大混戦、それぞれに「刺客」配され序盤から見所満載・全日本柔道選手権直前展望

(2013年4月28日)


※eJudo携帯版「e柔道」4月28日掲載記事より転載・編集しています。

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石井、七戸ら5人が鍔迫り合いの大混戦、それぞれに「刺客」配され序盤から見所満載
全日本柔道選手権直前展望


全日本柔道選手権、昨年大会の開会式
(写真:昨年大会の開会式)
体重無差別で柔道日本一を争う平成25年全日本柔道選手権は今年も4月29日「みどりの日」に聖地・日本武道館に全国各地の予選を勝ち抜いた精鋭37人が集って開催される。

本年度は優勝争いに本命のいない大混戦。事前予想の絶対の軸になる選手が不在、優勝候補5名が一線に並ぶ鍔迫り合いの様相を呈している。例年にない混戦の今大会を、「有力選手」「各ブロックの注目対決、勝ち上がり候補」「準決勝から決勝の対戦予想」という3つの視点から展望してみたい。

■有力選手

優勝に絡むと目されるのは加藤博剛(推薦・千葉県警)、穴井隆将(天理大職)、石井竜太(推薦・日本中央競馬会)、七戸龍(九州電力)、原沢久喜(日本大)の5名、ついで百瀬優(旭化成)。

2連覇を狙う加藤博剛
(写真:2連覇を狙う加藤博剛)
2連覇を狙う加藤は昨年大会の制覇後も全日本選抜体重別優勝、講道館杯優勝と体重別大会で勝ち続けて他を寄せ付けず。国内では無人の野を行く、と言って良い強さを見せ付けた。しかしその一方海外大会では成績を残せず。講道館杯優勝で評価を取り戻して以降も12月のグランドスラム東京準々決勝敗退、組み合わせに恵まれた2月のグランドスラムパリでは3位に入賞したが、続くグランプリ・デュッセルドルフではまたしても初戦敗退。一連の欧州シリーズでは成績以上に、相手に飲んで掛かられているとでも形容すべき国内とはまるで逆の線の細い試合振りが印象的だった。

全日本選手権という究極の舞台で、全ての選手にターゲットとされる前回覇者が勝ち抜くことの困難さは格別であり、連覇者には絶対的な強さが求められる。中量級の変則ファイターである加藤にこの資格、力が備わっているかということは勿論だが、それ以上に約3ヶ月に渡った国際大会でのあまりの出来の悪さが加藤のメンタルにどのような影響を及ぼしているのか、これが加藤の勝ちあがりの最大のカギではないか。11月までに見せた国内での圧倒的な強さ、「加藤ワールド」が発揮できれば連覇の可能性も十分、国際大会をひきずって「裏」の加藤が出ればその可能性は限りなく低くなる。仕上がりは悪くないとのことだが、まずは序盤の出来でそれが測られることとなる。前半戦に要注目。

穴井は五輪での惨敗以降、強化選手からの引退を宣言。勝負を賭けるべく調整してきたこの全日本選手権が現役最後の大会だ。
:今大会が最後の全日本となる穴井隆将
(写真:今大会が最後の全日本となる穴井隆将。
写真は23年度大会、決勝の畳を前に
心を落ち着ける。 )
28歳の穴井は週3、4回の稽古で調整してこの全日本に臨むとのこと。瞬間的な爆発力、1試合限定での強さはおそらくまだまだ圧倒的なものがあるはずだが、歴代王者が口を揃えて「後半戦にどれだけ力を残せるかがカギ」と語るこの厳しい全日本において穴井の体がどれだけ連戦に耐えられるか。全日本選手権を唯一無二のものと捉える穴井の価値観、そして昨年五輪のために欠場を選択した無念がどれだけ穴井のメンタルを支えるか、このあたりが勝負の分かれ目となりそうだ。
前日会見では「最後を迎えるのは全日本選手権の畳しかない」とその強い意気込みを語る一方、「周りの選手のほうが稽古をしている。一戦一戦力を出し切るのが目標」と語るなど、かつての悲壮感漂うほどの全日本への入れ込みぶりから比べると意外なほど油っ気の抜けた表情。これをどう見るか。序盤戦の戦いでジックリ観察したいところだ。

石井竜太は昨年2位。
昨年は決勝で涙を飲んだ石井竜太
(写真:昨年は決勝で涙を飲んだ石井竜太)
昨年大会では急成長を見せた2011秋-2012春期の勢いをそのまま畳に持ち込んで決勝進出も、不用意な小外刈を加藤に透かされて準優勝に終わった。いよいよ捲土重来、時期は熟して全日本獲りの場が訪れたという観測が可能な一方、若いパワーファイターが明らかに優勝する力を有しながら初挑戦の決勝でケアレスミスで敗れたという形は歴代の「力がありながら優勝できない選手」という箱の入り口と見ることもでき、今大会は柔道家としての運命の岐路になる可能性もある、正念場だ。

石井は昨年肘の軟骨除去手術を受け、今年2月のグランプリ・デュッセルドルフから実戦に復帰。結果は2戦目で敗退、以降も肋軟骨を痛めるなど全開には時間が掛かる印象だったが、ここに来てコンディションも整いつつあるとの情報。爆発力では随一の石井、どこまで力を戻しているか、また上積んでいるかがカギだ。前日会見でのギラギラした眼、「明日が楽しみで仕方がない」との自信満々の語り口からすると、コンディションは良さそうだ。十分期待出来ると見て良いだろう。

七戸は昨年の選抜体重別100kg超級覇者、日本の超級ではほとんど唯一今期の国際大会で結果を残している選手でもあり、世界選手権代表レースでは先頭を走っていると見て良い位置にいる。
世界選手権代表候補一番手の七戸龍
(写真:世界選手権代表候補一番手の七戸龍)

長身を利して遠間から一気に飛び込む大外刈と大内刈の威力は抜群。勝ち負けのはっきりしすぎる不安定さが弱点だが、国際大会で安定した成績を残し始めているのは苦手の組み手に上積みがあったゆえ。今大会は力を出せるだけの準備が整ってきたと見る。

ただし力関係や相性を吹き飛ばす一撃の意外性がある一方、結果だけから測る七戸の柔道は良くも悪くも「地力の勝る選手には勝ち、劣る選手には苦戦」という鉄板地力勝負の要素が色濃い。コンディション、消耗度が上位対戦での勝敗を分ける可能性が大。

原沢は講道館杯100kg超級王者。
若手のホープ原沢久喜
(写真:「次代の大物」枠から一気の戴冠
を狙う原沢久喜)
日本大の金野潤監督が「まだウエイトトレーニングをさせていない」と語る通り、「次代の大物」として数年後を見越したプログラムで鍛えられてきた選手だが、あまりの素材のスケールと超級の人材難がクロスする形で、早くも全日本の優勝候補に名を連ねることとなった。本来大外刈一発が魅力の選手だが、現時点ではパワーと基本に忠実な組み手、その中で投げを狙うプレッシャーを利して勝ち上がる形となっている。基本通りの技の組み合わせだけで頂点に駆け上がるスケール感を持っている選手だが、全日本というハイプレッシャー状態、「大人の柔道」を仕掛けてくる中量選手を相手に、地力のみでどの時点まで勝ちあがれるかがカギ。序盤で乗れれば一気の戴冠も現実的な位置につけている。

そしてこれら五人の優勝候補にピッタリつけるダークホースが百瀬。
カギを握る百瀬優
(写真:カギを握る百瀬優)
強さの源泉は抜群のパワーだが、このパワーをいかにも国士舘出身らしい緻密な組み手という回路に通電、「絶対的に有利な体勢」を作ることに掛けては国内の第一人者となっている感がある。国際大会では技一発の威力も発揮、実は、と言っては失礼だが海外での評価が非常に高い選手だ。百瀬を突破しなければ日本一はない、と言って差し支えない、どの選手にとっても厄介極まりない壁。

以上5人プラス1人の6人が大会の軸。これに15度目の出場となるベテラン棟田康幸(警視庁)、小林大輔(ALSOK)や吉永慎哉(新日鐵住金)、増渕樹(旭化成)らいかにも全日本選手権らしい曲者、永瀬貴規(筑波大)らの学生勢、井上康生以来17年ぶり5人目の高校生出場を果たした佐藤和哉(静岡学園高)らもおり、大会としては決して役者不足というわけではなく、非常に面白い顔ぶれが揃った。

■組み合わせ

強豪選手の山はある程度分かれたが、どの選手にも「刺客」というべき苦手なタイプ、厄介な選手が配されており序盤戦から非常に興味深いカードが続く。「捨てカード」がほとんどない、粒ぞろいのトーナメントだ。

【Aブロック】

辻玄太 - 北見剛(2回戦)
穴井隆将 - 佐々木智哉(2回戦)
佐藤和哉 - 菊川顕(2回戦)
百瀬優(2回戦)
小林悠輔 - 遠藤剛(1回戦)

勝ち上がり候補はもちろん穴井だが、準々決勝で百瀬という大きな壁が待ち受ける。かつての力関係であれば穴井の捌きと一発の切れ味が勝るはずだが、パワーをベースにしつこく組み手を続けてくる百瀬に対し、まず地力である程度拮抗できないと泥沼の試合展開に陥る可能性がある。百瀬が後半勝負を志向してまず圧力と優位を作ることに腐心してきた場合、これを止めるには百瀬を恐怖させるだけの技一発の威力を見せるしかない。それが今の穴井に出来るのか。ケンカ四つという凌ぎやすい組み手であるところは穴井を利するはずだが、百瀬の足を止める一発をまず放ってみせることが出来るのか。勝負は序盤だ。

そして、ここは、互いが順行運転であれば、稽古量と勢いに勝る百瀬の圧力と組み立てが穴井を封殺、百瀬が「指導」を重ねて勝ち上がると読んでおきたい。組み手が「引き手争い」という典型的ケンカ四つのステージに限定された場合には穴井の爆発力が全てをひっくり返す可能性もあるが、ここは百瀬の勝ちあがりと仮定して稿を進めたい。

話題の高校生佐藤和哉は30歳のベテラン菊川顕(岡山商科大職)と対戦。菊川は百戦錬磨ではあるが、181cm90kgと軽量で全日本デビュー戦としては決して高すぎる壁ではない。掛け値なしに楽しみな一戦。

【Bブロック】

石井竜太 - 野田嘉明(2回戦)
吉永慎也 - 渡辺智斗(2回戦)
桶谷知生 - 形部安彦(2回戦)
大辻康太(2回戦)
松本雄史 - 小林大輔(1回戦)

勝ち上がり候補は石井。刺客は3回戦で対戦が予想される吉永。

このブロックは面白い。担ぎ技で大型選手を狩ることにかけては国内随一の吉永慎也の存在がその因だ。吉永は初戦から189cm135kgの渡辺智斗(パーク24)という好取り組み。これを勝ち上がれば3回戦で石井との対戦が実現する。

渡辺が勝ちあがれば石井にとっては戦いやすい相手。逆に吉永が来れば、相性的にはおそらくは出場全選手中もっとも嫌な相手、と言って良いくらいの困難な対戦になるはずだ。吉永が石井の懐にもぐりこんで一発担ぐのか、石井が圧力でねじ伏せるのか、まことに全日本らしい構図の戦い。順当であれば石井、ただし番狂わせの可能性は排除できない。

ここを突破しても力関係を一発で覆す内股を持つ小林、関東予選を制して勢いに乗る大辻と、石井にとっては全く気の抜けない試合が続く。

しかしいずれの試合もアップセットの要素はあるが、試合が荒れることがその大前提。互いが順行運転であれば石井の優位は動かない。ここは石井が勝ち上がると見る。

【Cブロック】

穴井亮平 - 高橋和彦(2回戦)
垣田恭平 - 長尾翔太(2回戦)
今井敏博 - 中川裕喜(2回戦)
加藤博剛(2回戦)
森本翔太 - 影野裕和(1回戦)

加藤の山。刺客は高橋和彦と今井敏博という「大外刈系」2枚。

今井は1回戦で元気の良い中川裕喜と対戦し、ここは今井優位もいずれが勝ってもおかしくない力関係と見る。

加藤にとっては泥臭く戦ってくる中川を自分のフィールドに引きずり込むのは得手のはずだが、一種かみ合わない組み手で一方的に技を打ち下ろす今井は非常にやりにくいはず。加藤にとっては全く気の抜けない対戦だ。

そして、準々決勝の高橋和彦戦。今井をさらにスケールアップさせたかの如く、奥襟を叩く一方的な組み手に大外刈一発の威力、そして圧倒的な体格を誇る高橋は加藤にとっては天敵の型。
ただし高橋は稽古量を積んでコンディションを作ってくるタイプで、長かった負傷から復帰した昨年は一年通じてついに本領を発揮することが出来なかった。相性的には高橋だが、この点を考慮して、小差での加藤の勝ちあがりを推しておきたい。

ただし、前述の通り国際大会で不調だった加藤は、蓋を開けてみるまで仕上がりの程が全くわからない。2月の状態であれば早い段階で足元を掬われる可能性もある。加藤が本調子なら小差で加藤が勝ち抜け、不出来であれば地力の最も高い高橋の勝ちあがりの可能性が高くなるだろう。

【Dブロック】

増渕樹 - 永瀬貴規(2回戦)
原沢久喜(2回戦)
稲垣亮 - 奥嶋聡(1回戦)
斎藤俊 - 棟田康幸(2回戦)
七戸龍(2回戦)
田中大貴 - 野島恒久(1回戦)

2回戦の増渕-永瀬、その勝者と原沢が対戦する3回戦、七戸と棟田がぶつかる3回戦、そして準々決勝の、おそらくは原沢と七戸-棟田の対戦、とこのブロックは好カードが目白押し。

わけても注目されるのが3回戦の七戸-棟田戦。
両者は初対戦。「七戸の深い懐に棟田が一発潜り込むはず。相性的には重心の低い棟田が有利」という見立て、また、全く逆に「遠間から飛び込むことが巧い七戸に徹底して距離を取られたら棟田は攻め手がない。構造的には七戸優位」という推測。どちらも十分飲み込める筋書きだ。

お互いがいずれのシナリオを引き寄せるのか、現時点での「地力」以外にこれを決する要素はない。判断材料は互いの初戦しかないが、事前予測のこの段階では伸び盛りの七戸と、32歳という棟田の年齢を考慮して七戸の勝ちあがりを推したい。

原沢-七戸の準々決勝も様相が読めない。
七戸はガップリ組んでの勝負も、遠間から飛び込んでの一発も得手。原沢も飛び込みの一発はあるが、狙えるレンジは七戸のほうが幅広く、原沢がその魅力である鉈で断ち割るような一発を出せる距離は返される可能性も増す近接戦闘、あるいは中間距離に限られてくる。懐の深い七戸の勝負を読むひとつの基準としてこの「攻撃距離」に着目、ここは七戸の手数、有効打が勝るという仮説を立てて七戸の勝ち上がりを推しておきたい。

【準決勝-決勝】

百瀬優 - 石井竜太
加藤博剛 - 七戸龍
というカードを予想し、かつ決勝カードは石井-七戸という顔合わせを推したい。

石井はここまで曲者タイプと連戦してくることになる。これは石井の疲労の蓄積という結果を生む可能性もあるが、今大会では石井のコンディションの良さを予測し、力を十分貯めてきたが実戦は久々という石井の、この準決勝からの一気の力の解放の準備として機能するのではないかという見立てを提示したい。それを勘案せずタイのコンディションでの対戦を考えたとして、昨年大会での石井のパフォーマンスから見る限りいかな百瀬といえどもその圧力を捌くのは容易ではない。拮抗の末、節目節目で石井が大技を繰り出して流れをつかんでいくという展開になるのではないか。

加藤と七戸の準決勝は、七戸の実力の上昇カーブを買って、この稿では七戸を推しておきたい。

となると決勝は石井-七戸ということになる。

両者は右組みの相四つ。石井の圧力が掛かれば石井、一方七戸が頭を下げず、横襟を握って距離をとったまま背筋が伸ばせれば七戸に分のある展開となるだろう。

双方攻撃型でこのカードも予想が難しいが、昨年決勝で「ポカ」負けをした石井の執念、全日本へのこだわりが、試合の不安定さが払拭できず、かつファーストプライオリティが世界選手権にあるかのような発言が見え隠れする七戸を凌ぐという見立てをここでは提示しておきたい。

再び冒頭の繰り返しになるが、今年度大会は優勝候補が5人の鍔迫り合い。あくまでこれが大前提。そしてその中で、僅かの差ながら、石井の初優勝の可能性がもっとも高いのではないかというのが本稿の趣旨だ。

そしてこれも繰り返しになるが、今大会は序盤から好カード、それも強者に相性の良いジョーカーが度々ぶつけられるという「荒れる」要素を内包したカードが目白押し。
「混戦」という見立てががネガティブなニュアンスで使われることの多いこの大会だが、今大会においては「見所の多さ」という長所に変換されてこの語彙はポジティブ。終ってみれば「面白い全日本だった」という感想をファンが抱ける大会になる予感が漂う。今大会も、無差別日本一を決めるにふさわしい熱戦を期待して、展望を終えたい。




※eJudo携帯版「e柔道」4月28日掲載記事より転載・編集しています。

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