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全国高校柔道選手権大会女子団体戦マッチレポート・決勝

(2013年4月19日)
 


※eJudo携帯版「e柔道」4月7日掲載記事より転載・編集しています。

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全国高校柔道選手権大会女子団体戦マッチレポート
決勝 1/2


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写真:初優勝に挑む松商学園高
2年連続で第1シード校に選出された松商学園高はこれが高校選手権初の決勝進出。中堅にグランドスラム東京63kg級王者の津金恵、無差別枠の大将に個人戦57kg級で全国高校選手権制覇を成し遂げたばかりの出口クリスタを配し、先鋒には163cmの長身選手、1年生の武居沙知を置く。

この日は2回戦で東北高に1-0、3回戦の紀央館高には3-0、準々決勝の沖縄尚学高には1-0、そして準決勝の埼玉栄高戦は1-0というスコアでの勝ち上がり。強敵続きの組み合わせだったが、津金が取り、出口が大型選手を止めるという形で勝負どころをことごとく制して決勝の畳まで辿り着いた。ここまでの総得点は6、そのうち実に4点を津金が挙げている。そして津金の4点のうち決勝点が実に3。戦い方のハッキリしたチーム構成だ。

津金は2月に初の欧州国際大会シリーズに参加、ヨーロッパオープン・オーバーヴァルトにグランプリ・デュセルドルフと立て続けに2大会を戦った。ここでの疲労と膝の負傷で以後はパフォーマンスが上がりきらず、前日の個人戦でも優勝を逃している。この日も出来が心配されたが、ここまでは地力の高さを発揮して全試合に勝利。準決勝では安沙好を内股「一本」に屠り去るなど、いかにも津金らしい爆発力も見せている。

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写真:3年ぶりに決勝に駒を進めた
敬愛高
一方の敬愛高は10年に結城久美子らを擁してこの大会を制して以来3年ぶりの決勝進出。大黒柱は大将の岡史生、中堅には57kg級全日本ジュニア王者の芳田司が入り、先鋒にはしぶとい鷲崎風歌を置いた。

こちらも組み合わせは非常に厳しく、2回戦と準々決勝が山場。2回戦では大成高に1-1の代表戦勝ち、3回戦で前橋育英高を3-0で一蹴すると、勝負どころの準々決勝では夙川学園高に0-0の代表戦勝ち、準決勝は阿蘇中央高に1-0で勝利しての決勝の畳。

戦力の分厚さが売りの敬愛だが、この日は岡という大駒を生かしに生かしきっての決勝進出。代表戦まで含めた敬愛の総得点は7点、そのうち実に5点が岡が挙げたものであり、4試合のうち岡の得点で勝敗が決した試合が3試合。結果的には岡という大駒への信頼感、岡に回せば絶対に負けないという戦力構成を弁えた戦いぶりで決勝への勝ち上がりを決めてきた。

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写真:オーダー順が掲示板に張られる
オーダー順は下記。

松商学園高 - 敬愛高
(先)武居沙知 - 鷲崎風歌
(中)津金恵 - 芳田司
(大)出口クリスタ - 岡史生

まず考えるべきはクロージングの大将戦。出口は大型選手にも我慢が効き、飛び込みの大内刈に左右の担ぎ技と具体的な対抗手段も持っているが、あくまでそれは典型的な超級選手に対しての話。体格と圧の強さという重量級選手のアドバンテージを持ちながら軽量選手なみに足技が効き、体捌きも巧みな岡との戦いは様相が全く異なるはずだ。距離を取った出口の接近の際に岡が足技を合わせて懐に入れさせない、出口の担ぎ技の出篭手に岡が送足払を狙って攻撃を封じる、という観測は戦前から関係者の口に多く上るところであり、両者の戦いぶりを考えるとこの展望はまことに正当。ここでは圧を掛けて「指導」を狙いながら攻撃を続けるであろう岡の得点を織り込むべきで、少なくとも追いかける展開での出口の得点は事前計算としては少々現実性に欠ける。ここは双方敬愛の1点獲得と踏んでくるはずだ。

であれば敬愛は前2戦を引き分けで凌ぎさえすれば勝利が現実的ということになる。

よって、逆に松商学園としては中堅戦での津金の勝利が絶対条件。しかし相手の芳田は攻撃力の高さというよりは寝技の強さをベースにした粘りと総合力で個人戦を勝ちあがるタイプであり、しかも組み手は津金が右、芳田が左と凌ぐ側にアドバンテージがあるケンカ四つだ。1階級下とはいえ守りに入られた場合これを崩すのは非常に難しい。高校2年生にしてインターハイと全日本ジュニア制覇、そしてグランドスラム東京という異次元のステージを制した津金が、準決勝の安戦に続いて再びその勝負どころでの強さ、爆発力を示せるかどうかに注目が集まる。
まとめると、中堅戦は津金の万全とは言い難いコンディションと芳田の強さ、柔道の質を考えるに、津金が有利だが「一本」獲得までを事前計算で織り込むのは難しいというところ。

以上の通り、中堅、大将で双方が1点獲得、ただし難易度は松商学園の得点ポイントであるはずの中堅戦が格段に高いというのが中盤以降の盤面予測。

となるといやが上にも重要性を増すのが武居沙知と鷲崎風歌による先鋒戦だ。

松商学園は昨年も第1シードを得ているがこの時は出口、津金の強力コンビを「前出し」して大将には重量級の宮川史穂を採用、しかし最後はチーム全体で我慢が効かずに準決勝で敗れている。今大会の決勝進出は先鋒枠で武居という体重別全国上位クラスの駒を得たことと、出口の重量選手に対する適性という2つの要素の上積みが嵌ったものに他ならない。先鋒戦の力関係はおそらく武居が飯塚よりやや上、ただし飯塚も粘りが身上の選手であり組み手もケンカ四つ、双方が順行運転で戦った場合もっとも確率の高い終着点は引き分けである。しかしこれでは松商学園の勝利は難しい。上位進出のカギとなった、そして実質今大会が全国舞台のデビューとなる武居が「負けない試合」に満足することなく攻め続け、ポイントを挙げることが出来るかどうか。これがこの試合全体の筋書きを決定づけるはずだ。

試合が順行運転で進めば、0-0で、もしくは0-1ビハインドも優勢負けに留めて大将戦を迎えるであろう敬愛が有利。もしビハインドが「一本」であっても代表戦では岡という切り札を持つ敬愛が絶対優位であることを考えると、松商学園はたとえ全てが「指導」であっても先鋒、中堅で2連勝して試合を決めるほかはない。

試合を動かすしかない松商学園、ジックリ戦って大将岡まで試合を繋げたい敬愛。それぞれの思惑と覚悟が交錯する中、女子団体日本一を決める戦いがスタートした。

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写真:開始から武居が攻め込む
52kg級枠の先鋒戦は松商学園の武居沙知が左、敬愛の鷲崎風歌が右組みのケンカ四つ。武居は身長163cm、鷲崎は162cmと双方階級きっての長身選手。

武居、開始するなり走る勢いで接近し、左釣り手で右肩口裏、右引き手で右襟を掴むケンカ四つクロスの形で左内股、左出足払、左体落と唸りを上げる勢いで連発。鷲崎は釣り手で上から背中を掴み、この突進に合わせて場外に右内股巻込、潰れて一度展開を切る。いち早く開始線に戻った武居は眼光鋭く鷲崎を睨み、意欲十分。

流れを渡すわけにはいかない鷲崎は武居の強気の組み手に応じて釣り手で奥襟を掴み、腰の差しあいに持ち込んで右内股。さらに武居の前進を釣り手を巻き返しての右釣腰、右内股巻込でいなしながら攻め合う形を作り上げて試合を進める。前に出る武居が優勢も、試合は動的膠着の気配。

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写真:腰の差しあいから武居が鷲崎を崩し、
直後鷲崎に「指導1」
武居、釣り手で上から背中を握って前進。腰の差し合いから左内股、鷲崎も右内股で応じるが、技の都度武居は前進、鷲崎の打ち返しにめげることなくさらに一手腰を差し返しての左内股で鷲崎を場外にはたき出す。この意欲と前進が評価され、直後の1分55秒、ついに鷲崎に「指導1」。

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写真:鷲崎タイミング良く右背負投、
武居は乗り越えて潰す
勢いを得た武居は奥襟を掴んでの左内股、大内刈で前進するが、左出足払を放ったところに鷲崎が鋭く座り込みの右背負投。場内沸くが、乗り越えながら腰を切って潰した武居、正面に立ちなおすと伏せたままの鷲崎を前に引きずって自身の攻勢に吸収して展開を終えて「待て」。経過時間は2分12秒。

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写真:終盤も攻め続ける武居
武居攻め続けるが鷲崎も良く対抗、再び展開が落ち着き始めるが、残り1分を切るあたりから武居は再び攻勢。3分3秒、ケンカ四つクロスの左内股で鷲崎を伏せさせて寝技に引き込み「待て」。3分12秒、奥襟を掴んでの左内股で鷲崎を崩し潰して「待て」。
続く展開で武居は奥襟を掴んでの左内股、さらに前に出ながら左出足払を放つ。鷲崎は右内股を合わせて展開を切ろうと図るが、足を振り上げたその間にも釣り手を突いて突進してくる武居の前に片足でバランスを崩し、腰を切ろうとしたまま釣り手側に潰れて「待て」。ここで主審は鷲崎に2つ目の「指導」を宣告する。経過時間は3分28秒、残り時間は32秒。武居、ついに試合を決め得るポイントを獲得。

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写真:鷲崎が右小外刈をきっかけに
押し込み、武居は尻餅
武居再び奥襟を握って前へ。しかし下から釣り手を握って突進を止めた鷲崎が一歩前に出ながら片手の右出足払。武居が崩れるとみるや、引き手で右襟を握りながら体を突いて大きく押し込み、武居は尻餅。しかし上体を畳に着かせるところまでは至らず、ノーポイント。残り時間は22秒。

再び釣り手一本の攻防。ここで鷲崎は釣り手を畳んで武居の体を迎え入れると、一本背負投の形に腕を抱えた左大外刈の奇襲。完全に無警戒だった武居は一瞬対応が遅れて鷲崎の刈り足が深く進入。場内あっと息を呑むが、鷲崎は刈り足で相手に触っただけで自ら戻ってしまい、あっという間に逆転のチャンスは潰える。

2度のピンチでさすがに慎重になった武居、長いリーチを生かして距離を出し入れし、引き手を狙いながらも接近戦は峻拒。試合はこのまま終了、武居の「指導2」による優勢勝ちで松商学園が1点を先制した。展開に流されかけた中盤、そして終盤と、気持ちを持ち直してあくまで攻めた武居の使命感溢れる攻撃が印象的な先鋒戦であった。

最初のシナリオ分岐に勝利したのは松商学園。津金が勝ちさえすればチームの勝利決定というお膳立てを整えた上で、中堅戦へと試合の襷を繋ぐ。

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写真:中堅戦は津金-芳田による
ハイレベル対決
中堅戦は松商学園の津金恵が右、敬愛の芳田司が左組みのケンカ四つ。

序盤戦は津金が下から、芳田が上から釣り手を握って小外刈の打ち合い。数合のやりとりの後に芳田が両襟を掴む強気の組み手。津金は出足払を打ちながら応じて引き手で袖を掴むことに成功するが、芳田は左小外刈を2連発、さらに左内股で潰れて展開を切り「待て」。経過時間は37秒。

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写真:津金が引き手で
左袖を握った右内股
再開直後、芳田は上から釣り手を浅く持って距離を取るが、津金は手首を芳田に潰されたままこのこの状態から釣り手を伏せつつ、引き手で芳田の左袖を握って振り回すように右内股。芳田が崩れて腹ばいに伏せたところを寝技に持ち込むが、これは攻撃の手がかりを得られないまま「待て」。経過時間は50秒。

以降も芳田は釣り手を巧みに操作して小外刈、大内刈と打ってジックリ試合を進める。津金は釣り手で袖を掴み回して、あるいは肘を畳んで手首を伏せてとケンカ四つに特化した右内股を幾種か試みるが、芳田は冷静に見極めてかわし続ける。

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写真:芳田が両襟の左内股
2分過ぎ、芳田が両襟を握ってケンケンの左内股。津金は崩れ伏せるが巧みに芳田の後ろに回り、後襟を握って真裏に芳田の体を引き倒し返して縦四方固の態勢。

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写真:津金、相手の意図の先手を
打ち続けて優位に寝技を展開するが、
芳田が耐え切って「待て」
芳田が引き込み返しの形で蹴って外そうとすると、察知した津金先んじて頭側に跳び、抱え続けていた脇を差し返して横四方固を狙う。取り味十分の展開であったが、しかし芳田は足を絡んで耐え切り「待て」。立ち技でなかなかチャンスのつかめない津金が寝技に活路を求めたが芳田がこれも凌いだという位置づけの攻防。
残り時間は1分24秒、得点必須のはずの津金はこの段に至っても「指導」すら獲得出来ず、やや手が詰まってきた印象。

再開後、津金は片手の内股で打開を図るが、芳田は崩れず。芳田が両襟を握って前に出返し、津金の頭を下げさせて左内股を放つと、主審は消極的との判断で津金に「指導」を宣告する。残り時間は52秒。

再開後芳田は釣り手で袖を押さえるが、津金構わず振り回すような右内股。引き手が利かず、芳田が伏せて「待て」。残り時間は34秒。

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写真:津金が芳田の左手首を
捕まえる絶好のチャンス
津金、前に出て軸足を外に回しこんでの右内股。しかし津金が軸足を回した瞬間、芳田は反応よくぶら下がるように畳に伏せて耐える。津金すかさず寝技を選択、芳田の左手首を後ろ手で握って制する絶好のチャンスを得るが、展開を発展できずに「待て」。

ほとんど時間がないこのタイミングで津金がどのような攻撃を見せるか、そして芳田がどう捌くのか。双方の一手目が注目されたが、芳田は意表をついて回り込み、手順を飛ばして先に引き手で津金の左袖を一方的に押さえる。引き手が持てなくなった津金は振り回すような内股で展開を切るが当然この技は効かず。

結局この試合はそのまま終了。芳田はミッション達成、津金にとっては痛恨の引き分け。芳田の組み手と試合運びの巧さが光る一戦だった。


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※eJudo携帯版「e柔道」4月7日掲載記事より転載・編集しています。

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