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【eJudo's EYE 】敢えて性悪説で考えてみる新ルール下の試合様相

(2013年2月7日)


※eJudo携帯版「e柔道」2月2日掲載記事より転載・編集しています。

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→[参考]新ルールに関するリンク集

【eJudo's EYE】敢えて性悪説で考えてみる新ルール下の試合様相

二本持って組み合うことと、互いに投げを狙いあうことを推奨し、消極的姿勢のまま勝ちを狙う行為に対して徹底的な「指導」の包囲網を敷いたIJFの新ルール。
では、このルールのテスト施行が開始されるヨーロッパシリーズからは果たして「二本持ち合って投げを狙いあう」積極的な柔道が繰り広げられるのだろうか。

1月18日の伝達講習で講師を務めた岡田弘隆氏にこの質問をぶつけてみたところ「私自身はそう思う」という答えが返ってきた。「ここまで徹底して組んで攻撃することが推奨されたら、選手はそうせざるを得ない」という旨の説明がこれに続いた。

確かに、IJF講習に際して説明されたルールの運用細則は相当精度高く練りこまれており、新ルール発表の段階で予想された「負の試合シナリオ」にはかなりの範囲で先回りした対策(反則)が設定されている。その緻密さはなるほど「ルールの隙間を探すよりも組んで投げることを考えたほうが早い」と腑に落ちるものであった。これによってしっかり組んで投げを狙いあうダイナミックな攻防が見られればそれは素晴らしいことだし、崩し技としての足技のテクニックに長期的な発展が見られるのではないか、など技術的な興味も尽きない。

しかし、選手にとっても観客にとっても「しっかり相手を投げる」行為は確かに魅力的であるが、二本持った投技の練磨と完成には数年スパンの修行が必要だ。IJFのルール会議では足取り禁止と変則組み手の反則化に対して「じゃあオレは何を掛ければいいんだ?」と発言するトップコーチもいたというこの状況だが、選手としてはルールがどうあれ、勝負の畳に立つ以上負けるわけにはいかない。

そして「しっかり組む力、相手を投げつける技を「持たざる」選手がそれでも勝利を得ようとした場合、試合はいかなる様相になるか。

本稿では「二本持って投げを狙いあう攻防が現出する」というあるべきシナリオではなく、敢えて性悪説に立っての今後の試合の様相を、いくつか提示してみたいと思う。

座り込むという戦術的選択

組み負けた場合、そのままの展開を続けて投げられるのを待つよりは、「指導」を1つ貰ってでも一度展開をリセットしようとする選手が出てくることが予想される。最も考え易い反則はこれまでにも見受けられた「両手を離し、その場に両膝をついて座り込む」行為だ。これが頻発された場合柔道のイメージにプラスとは到底考えがたい。見栄えを良くする、という大方針のもとに行われるルール変更の結果この行為が増えてしまったらそれはまさしく皮肉な結果だ。

組み際の技の頻発

組んで柔道を続けた場合に不利となれば、組み際の技を連発して優位を取ろうとする選手が出てくる。カウンターテクニックである足取りの完全禁止と「変則的な組み手はすぐに攻撃をしなければならない」規定の乗算で、相手を封殺するクロスグリップをすぐに作り、掛け潰れる戦術に出る選手が続出する可能性が高い。

当然ながらIJFはこの点に先回り、同じことを続けて膠着を演出した場合には「指導」との方針が示されているが、例えばクロスグリップや片襟、両袖、奥襟と形を変えながら組み際の技を連発された場合に、審判がこれをネガティブな行為と認めてしっかり「指導」とすることができるか。また、相手が腹ばいになるなどある程度技の効果が認められれば反則にはならないため、この方法に特化して「投げることが出来なくとも確実に崩す」ことに腐心する選手が出てくる選手が出てくる危惧もある。

ブロッキングの戦術的利用

奥襟を取ってのブロッキング行為は、新規定を愚直に適用した場合には両者とも「指導」となる可能性がもっとも高い。攻撃ポイントを得てしまえば「指導」は3つまで受けても勝利できるので、たとえば「有効」を得た後にブロッキングで展開を膠着させたまま試合を終えようとするもの、または相手に「指導」が与えられてからはブロッキングでの「指導」累積差で勝利を狙う選手が出てくると思われる。

減らない「指導」

攻撃ポイントがない限り「指導」の差で試合が決まると割り切り、従来通りにまず展開を作ることのみに腐心し「指導」を狙い続けるという発想で戦う選手が出てくる。

増える「指導」

1月18日の伝達講習の際の練習試合では、審判団から「従来に比べて、「指導」を与えるチャンスは倍以上」という感想が述べられた。厳密に新ルールを適用した場合、ハイペースで「指導」が頻発される可能性は非常に高い。

3つ目で止まる「指導」

IJFは、ネガティブな行為に厳密に「指導」を与えることを要求しながら、反則ポイントではなく投技による攻撃ポイントでの勝利が増えることを目指している。これは選手がネガティブに戦った場合には相反する要素だ。審判が「指導4」による反則決着を意図的に忌避する可能性があり、その場合にはハイペースで「指導3」までが与えられ、その後試合が膠着するという構図が生まれることになる。特に最終盤では4つ目の「指導」が与えられないというトレンドが生まれる可能性も大だ。

「相手を制しない」抑え込み技術の開発

抑え込み時間の短縮によって、短い時間でも「抑え込み」宣告からしばらくその形を続ければ攻撃ポイントが得られることになった(10秒で「有効」)。
よって、頭や肩をしっかり制しない不十分な形でも短時間抑え込んでポイントを稼ごうというテクニックが開発される可能性がある。

寝技の攻防の偏重

立ち姿勢から寝姿勢への移行の中で足を取ることが制限された(たとえば背負投を仕掛けた相手を潰しながら、股中に手を入れることは禁止。しっかり一度潰さないといけない)ことと関連し、その分寝技の攻防を長く見極めることが確認された。立っていれば投げられるとなった場合、比較的短時間で身につく寝技を極端に重視する選手が多く出てくる可能性がある。これは投技「一本」を推奨し、他格闘技との差別化を図るIJFの意図とはそぐわないのではないか。

適正体重より下の階級での出場

前日計量の実施で計量後十分な回復の時間が取れると踏んだ選手が適正体重より下の階級で出場してくる可能性がある。しっかり組み合うことと足取り禁止という新ルールの要素は同体格での対戦を想定しており、体格が上の選手の優位性は増している。よってこの傾向は世界選手権に向けて加速していく危惧がある。試合の有利不利はともかくとして、サーキットで多くの試合をこなす選手が無茶な減量を繰り返した場合、重大事故を引き起こす危惧がある。


と、敢えてネガティブな側面から考えてみたが、IJFが目指す「二本持ち合って投げを狙いあう」という柔道のスタイル自体には大賛成。ここまで精度高くルールが練りこまれて来た現状を眼にして、筆者もこれまでの危惧から一転、どのような柔道が展開されるか、ここまで踏み込んだ「ルール」という共通言語の下、本来美意識や規範として扱われるべき「プレースタイル」という領域がどこまでコントロールされるのか非常に楽しみな気持ちになってきた。

IJFはグランドスラム・パリ(2月9日~)から新ルールを適用するが、EJUはこれに先んじて開幕戦のヨーロッパオープン(2月2日~)からこれをスタートさせる方針だ。

まずは今日のトビリシとソフィア、いかなる試合が展開されるのか楽しみに待ちたい。

文責:古田英毅



※eJudo携帯版「e柔道」2月2日掲載記事より転載・編集しています。

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