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【eJudo's EYE】ルール伝達講習の「伝達」を試みる・攻め優先のポリシーは明確、求められる審判技量の高さ

(2013年1月25日)


※eJudo携帯版「e柔道」1月19日掲載記事より転載・編集しています。

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→[参考]新ルールに関するリンク集

【eJudo's EYE】ルール伝達講習の「伝達」を試みる・攻め優先のポリシーは明確、求められる審判技量の高さ

岡田弘隆氏に質問を続ける西田、浅見の両選手
写真:講習終了後も熱心に質問を
続けた西田優香と浅見八瑠奈。
軽量級の選手にとって組み手の
ルール変更は死活問題だ
本サイト既報の通り、今年2月からテスト施行される新ルールについて、IJF(国際柔道連盟)はスペイン・マラガで第1回の国際講習会を実施。このセミナーに参加した岡田弘隆・全日本柔道連盟審判委員会副委員長らが15日に帰国、18日の全日本女子合宿で早速強化選手に対する伝達講習が行われた。

特に組み手関係の反則裁定に関して複雑化が予想された今回のルール変更だが、木村昌彦、岡田弘隆、そして大迫明伸のIJF講習に参加した三氏は口を揃えて「シンプル」とこの部分を解説。今回のルール変更が徹頭徹尾「攻撃は是、防御のための防御は否」という大原則に貫かれており、選手サイドとしてはこれを理解し「攻撃行動さえしていれば反則を取られることはない」という大方針に則って試合を組み立てれば良いという観点が「シンプル」発言の所以だ。

攻めるための行為はマル、防御のための消極的行為はバツというのが反則裁定の大原則。とはいえスポーツである以上具体的な約束ごとは必須であり、これを実現するために細則とその運用に関して「字義」のレベルにまで落とし込んで共通言語化を試みたのがマラガのIJFセミナーであると解釈して良い。
中には正直疑問の残るもの、矛盾を孕む項目もあるが、カバー領域という意味では相当に精度が高い印象を受けた。多様を極める柔道の試合の様相、その言語化に果敢に挑みかかったと評されても良いのではないだろうか。IJFの真剣度とここに至るまでの議論の厚さが偲ばれる内容であった。

本稿では、拙い筆力ながら、18日に行われたこの講習会で伝達された内容のユーザーに対する再「伝達」を試みたい。一刻も早い情報入手を心待ちにするファン、選手の一助となれば幸いだ。

※あくまで私的なメモとして扱ってください。内容の精度に関して保証するものではありません。正式なものに関しては全日本柔道連盟のリリース、および伝達講習を参考にしてください。

※下記は重要と思われるものの抜き書きとサマリーであり、長時間に渡る講習全てを網羅するものではありません。

※既にIJFからリリースされている条文を前提としており、これについての再度の記述は行っていません。

[メモ]=岡田、大迫講師からの補足、[筆者メモ]は筆者による現場の状況の補足とメモ

【1】審判について

センターテーブルは余程大きなミスでない限り介入しない。
試合場内には副審、試合場脇にはマットジュリーと副審、審判委員が座り助言を与える。

[メモ]
これまで審判委員の技の評価に対する介入に関しては日本国内で「2段階以上の技の評価のズレ」という内規があったが、主審に対する干渉の基準はこれと同程度のものになると予想される。
ロンドン五輪におけるセンターテーブルの過剰介入についてはバルコス審判理事自身から「柔道にとってマイナスだった」と明確な反省の弁があった。
場内1審のメリットとしては、主審が自由に動いて視野を確保できることが挙げられる。

「一本」の評価を厳正に行う
ブリッジによる回避行動は「一本」として扱う

[メモ]
一本成立の3条件のうち、国際柔道では長年「背中がついたかどうか」のみが重視される傾向にあったが「強さ」「早さ」を揃えた3条件をきちんと観察して、トータルの技の完成度をしっかり見ることが確認された。
トータルの技の完成度をしっかり見るという観点から、投げが決まりすぎて「回りすぎた」場合でも、「一本」を取ることが確認された。
横倒しやうつ伏せになった場合に、さらに押し込んで技の評価を引き上げるテクニックに関しては、あくまでファーストインパクトを技の評価の対象とすることが確認された。

練習試合を実施してのルール解説
写真:18日午後からは強化選手を
マッチアップさせた練習試合を実施。
たびたび試合を止めてルールの説明が行われた。
【2】「指導」について

奥襟を握ることによる技の封殺(ブロッキング)は、これを行った側を「指導」とする。
ただし、相手が何もしない場合はブロッキングを受けた側も「指導」となる。

[メモ]
この所謂ブロッキング行為の扱いに関してはIJFセミナーにおいてかなり時間を掛けて説明があったとのこと。よって当然ながらきちんと実施されるものと見て良い。
優勢であることの偽装はネガティブな行為である、優勢であるのであれば投げに行け、という発想。
ブロッキングに限らず「ネガティブな行動であるかどうか」が「指導」宣告判断の大原則。

[筆者メモ]
この項目に限らず「ネガティブ」「ポジティブ」は反則裁定の最大のキーワードとしてこの日の伝達講習中幾度も繰り返し語られていた。
よって、一連の「切り離した場合は『指導』」については、切り離す行動の次に組みに行けば攻撃行動と見なされてセーフ、切った後に組み合わないとなれば切るためだけに切ったネガティブな行動と見なされて「指導」となるとのこと。これも繰り返し語られていた。
ゆえに切った瞬間に反則が来るのではなく、続く攻防が見極められるとのこと。これは練習試合でも確認された。
ブロッキングに関しては、練習試合でも幾度か試合を止めて解説された。対策として奥襟を握って相手が防御行動を取った場合でも足技等を駆使して攻撃を続けるべきであること、また、逆に奥襟を握られて守勢に立たされた場合でも攻撃の継続、姿勢の立て直しが重要であることも合わせて強調されていた。


相手が釣り手を取りに来たところを両手で掴む行動は「指導」ではない。(両手で切り離す行為は「指導」であるという反則条項の解説として)
所謂「襟隠し」は「指導」となる。これは従来通りだが、再確認があった。
クロスグリップから内股を掛けて潰れることが続いた場合は「指導」

[メモ]
同じことを繰り返して(試合を膠着させた)場合は「指導」が宣告される。「相手に攻撃させない組み手はネガティブ」という発想。


ケンカ四つの片襟クロス(引き手で近い袖を持ち、釣り手で襟や背中を掴む組み手)は標準的な組み手ではないのですぐに攻撃しないと「指導」。
この組み手(ケンカ四つの片襟クロス)の場合に施される内股を繰り返す場合は「指導」となる。

[メモ]
この組み手で施される内股で相手を投げることはできないので、繰り返した場合は「相手に攻撃させないための組み手」と見なされ「指導」ということになる。
ただし、例えばこの攻撃で相手が何度も腹ばいになるなどした場合は技の効果があると見なされるので「指導」とはならない。


相手が組みに来た腕を払うなどネガティブな行動を続けると「指導」。
片襟に関しては厳しく反則を取る。
自身の引き手を相手に握られたときに、叩いたり、払って切る行為は「指導」。握って切るのは問題ないと確認された。

[メモ]
「切るために切る」行為はアウト、「組むために切る」のはセーフ。

[筆者メモ]
片襟に関しては、岡田講師より、すぐに持ち替えることが望ましいとの提案があった。
「叩いたり払って切るのは反則だが、握って切るのはオーケー」に関しては選手から、実際的ではないとして質問と意見が出された。


片手で自分の襟を握り、もう一方の手を使って切り離す行為は「指導」

[メモ]
片手であっても「切る」(ために切る)という行為が行われれば「指導」の対象となる。


腕を自身の後方に振り上げて相手に組ませない行為は「指導」。
後ろに下がりながら手先の組み手争いをする場合は「指導」。
足を使って切る行為は「指導」。
ケンカ四つの引き手争いは、よりネガティブな方に「指導」を与える。
両袖を絞る行為は、技を仕掛ける場合は問題なし、膠着の場合は「指導」。絞っている、と見なされる側に「指導」を与える。
両袖を絞った状態から片手技で掛け潰れ続けることを繰り返した場合は、「指導」。クロスグリップの内股掛け潰れの場合と同様の判断。
袖口は「変則的な組み手」と見なされる。

[筆者メモ]
ケンカ四つの引き手争い、両袖絞りのイニシアチブがどちらにあるかについては、明らかに審判の技量の高さが要求される部分と思われる。


両手で切り離す行為は「指導」、ただし、切るのではなく「ずらす」行動は反則とはならない。

[筆者メモ]
この部分は、伝達講習の際にずらす行為に乗じて相手が手を離した場合はどうなるか、という質問があり若干紛糾した。審判(講師)側は明らかにわかる、と主張したが、選手側は外から見た場合にはわかりにくいと反論。
これまでに積み上げてきた組み手の「手順」が無力化すると選手からは戸惑いの声があがった。岡田講師からは、幼少期から組み手の手順をまず習ってきた選手の世代性の指摘とともに、例えばまず両襟を握ってしまいイニシアチブを執ってからの組み手開始というような具体的な案が示された。
IJFは「クラシックスタイル」という単語を使って、所謂日本的な柔道への回帰を目指しているとのこと。


ベアハグについて。「指導」の対象は、組み合っていないところからいきなりもろ差しを行った場合のみ。片手でも持っている状態からスタートすればベアハグとは見なされない

[メモ]
ベアハグを受けた側が相手を投げ返せば当然ながらポイントとなる。よって、ベアハグ行為があったとしてもすぐに試合を止めずに、攻防の終了を見極める。

[筆者メモ]
今回のルール改正で選手にとって大きいのは「足取り禁止」よりも一連の組み手に関する規定、切り離す行為の禁止。セミナー終了後に講師を捕まえて質問を続ける選手も複数おり、興味の高さが伺われた。


【3】足取り禁止について

大腰、裏投に関して、帯の下に手が触れる場合があると思われるが、これに関しては反則は取らない。

[メモ]
足取り禁止は技術の封殺が目的ではなく、投げによる攻防を推奨するためのもの。


立ち姿勢の場合に下半身に触れる行為は攻撃、防御いずれの場合もダイレクト反則負け。
寝姿勢の場合は攻撃、防御いずれも問題なし。
立ち姿勢から寝姿勢の移行動作中に足を取った場合は反則負け

[メモ]
移行動作中の足取りに関してはIJFセミナーの中で議論が起こり、期間中に解釈が変更された。適用基準の曖昧さを回避するため。
例えば相手の背負投を潰して所謂腰絞に移行する際も、相手の技が施されている最中に脚を抱える動作は不可。いったん潰さなければならない。
寝技の開始体勢がかなり制限されるため、寝技が得意な選手には不利となる。よってIJFセミナー期間中に現場サイドから、その分5秒でも6秒でも寝技を長く見てほしいという要望が出され、審判サイドがそれを受け入れることとなった。
寝姿勢、立ち姿勢の見極めについてはIJFセミナー中に相当の時間がこれに要された。


巴投、隅返などの捨身技の際、相手がまだ体を捨てていない段階で脚を掬ったら反則負け。しっかり潰した後に脚を捌いて寝技に移行する場合は問題なし。

[メモ]
よって、例えば捨身技を仕掛けた後に施す所謂「草刈り」などは反則とならない。


足に触れた程度では反則負けとはしない。例えば自身が低い背負投を仕掛けて潰れた後に内股に来る相手の足を手でブロックするなどはセーフ。
両手で柔道衣を持った状態で足に触れるのは反則負けとはならない。

[メモ]
よって、例えばはだけた柔道衣の裾を握りながら、脚を抱えて仕掛ける肩車は反則とはならない。これは具体的な技術としてセミナーで確認された。
よって、例えば袖釣込腰を仕掛けた場合に肘が脚に触れる行為なども、反則とはならない。


【4】寝技

抑え込みが場外に出た場合でも継続となる。

[メモ]
現実に起こりうる可能性は低いが、畳から試合者が落ちたり他の試合場の試合者とぶつかるような場合は、合議の末「一本」とすべきとの解釈がIJFセミナーで示された。

[筆者メモ]
逃れる動作ではなく、単に移動して外に出ようとする動作と解釈すべきということだろうとの見解であった。


絞技、関節技が有効な場合は場外に出ても継続

[メモ]
既に試合場である程度有効性が確認されている場合のみ。場外で始まるような絞め、関節の攻防をじっくり見るという意味では全くない。

[筆者メモ]
選手から、絞技が効いた状態で場外に出、その状況を利して抑え込みに移行した場合はどうなるかという質問があった。
講師の答えは、その場合は継続。立ち技における内股から小内刈への移行が例として提示された。
一方、練習試合の際に、場内で施されて場外で決まった投げ技での「技有」奪取の際の抑え込みへの移行は、連続性が途絶えたとして認められなかった。


【5】その他

柔道衣コントロールは厳しくする

[メモ]
グレーゾーンの柔道衣を着ているものは大きめのものを着用して欲しい。組み合うというルール下においては大きめのサイズの柔道衣は有利になりこそすれ、不利にはならない。


前日計量の実施

[メモ]
当日計量も行われ、これは水分量、体脂肪量などが計測できる機器を利用してその影響を分析することとなる。
以前に午前計量、午後試合という時間差での計量が行われた大会があったが、選手が明らかに一回り大きくなっていた。1階級分近く体重が跳ね上がる選手も予想され、十分な注意が必要。


書ききれない部分、また、記事掲載のスピードを重視したゆえに拙い部分もあるが、18日の伝達講習の概要は以上である。

選手が特にナーバスになっているのは組み手の部分。前述したとおり、この一連の反則規定にIJFが強調しているのは「ネガティブな行動に対する反則の付与」。これは従来通りと言えば従来通りであるが、前述の通り、その「ネガティブな行動」の規定を字面のみのもの、空疎なものにしないように、選手の行動の実情に合わせてより精度を上げることを試みたのが今回の運用伝達セミナーで伝えられた「指導」細則規定であったと理解していいだろう。

伝達講習中、講師の三氏が「ヨーロッパシリーズを見てみないと分からない」と付け加える場面も多く、まだまだ運用面でのグレーゾーンの多い新ルールであるが、IJFがこれだけ「ネガティブな行為への反則付与」を強調するからには、少なくとも当面は字義通りの「指導」付与を覚悟して戦うべきであろう。決まったものは決まったものとして、選手にはしっかりした対応を期待したい。

講習終了後、岡田氏にお話を聞く中で、興味深い部分が2点あった。

1つは、メモにも記した通り、IJFが「classic style」という語彙で日本的な柔道への回帰を期していること。

もうひとつは、これは今回のセミナー以前の話であるが、この「足取り禁止」や「組み手の細則」による具体的な技術の喪失に関して、新ルール創設にかかわったメンバーのほどんどが「NO」との意思を示したというエピソードを聞くことが出来たことである。
岡田氏は「それでも今の時点ではここまでやらないと柔道が変わらない、という危機感がIJF内にある」と説明する。
つまりは、IJFも、今回のルール改正は柔道のあるべき姿ではない、柔道をあるべき姿に戻すために一定期間必要な痛み、として捉えているということだ。

であれば、なおさら日本は、世界大会の予選以外にこのルールを採用すべきではない。
柔道をあるべき姿に戻すために、歪なルールという「痛み」を敢えて受け入れようという国際柔道。そのあるべき姿が既にある程度具現できている日本が、その「痛み」のみに付き合う必要がどこにあるというのか。必要のない痛みを敢えて受け入れて自らが血を流す必要は全くない。

IJFが目指し、選択している道筋はロングスパンで見れば決して頓珍漢なものではなく、むしろかつて日本が目指し提唱してきた柔道競技のスタイル、これを志向するものであると捉えられる。
このモデルとされるべき日本が、国際競技上の成績獲得という短期的な成果のために道を踏み外すことのないよう切に願いたい、そう改めて思わせる、この日の一連の伝達講習であった。

文責:古田英毅



※eJudo携帯版「e柔道」1月19日掲載記事より転載・編集しています。

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