PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

グランドスラム東京マッチレポート 60、66、73㎏級

(2013年1月9日)


※eJudo携帯版「e柔道」12月5日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


1    

グランドスラム東京マッチレポート 60、66、73㎏級 1/3

スター候補の高藤直寿が初優勝、持ち味の「一本」連発で再び存在感示す
60㎏級

12GStokyo_60_1.jpg
写真:講道館杯王者の木戸慎二は
フランスのミルに腕を拉がれて1回戦敗退
【日本人出場選手】
木戸慎二(日体大4年)
志々目徹(日体大3年・WR58位)
石川裕紀(了徳寺学園職)
高藤直寿(東海大1年・WR13位)

講道館杯で表彰台にあがった若手4人がそのまま代表選出。

海外勢は第1シードにロンドン五輪3位のキタダイ(ブラジル・WR10位)が配されているが以降はハイランカーの密度が薄く、トーナメントのレベルは一段下の「グランプリ」大会並み。キタダイもこれまで継続して成績を残してきたわけではなく、その存在だけで日本勢のモチベーションになり得るような図抜けた選手ではない。よってこの階級の興味は日本勢の4人の中から来年の世界選手権代表に向けて誰が抜け出すのか、欧州国際大会シリーズの派遣に向けてグランドスラム王者という唯一無二の「果実」を誰が得るのかという一点に絞られた。

そんな中、予選ラウンドの1回戦で講道館杯王者木戸が早くも敗退。第3シードのミル(フランス・WR14位)の長い腕を利して肩越しに背中を掴んで来るスタイルに対応が後手に回り、2分29秒で「指導2」まで失陥。終盤焦って前に出たところで試合を壊してしまい、残り18秒に掬投「有効」を奪われ、さらに掬投を試みたところから縺れた展開で腕挫十字固で一本負け。(5:00)
ミルにとっては組み手で試合を引っ張って反則ポイント奪取、展開有利の終盤に相手の焦りに乗じて一気に突き放すという完璧に近い試合だった。試合巧者の木戸は持ち味を発揮できぬまま屈辱の1回戦敗退。

12GStokyo_60_2.jpg
写真:左大外刈の仕掛けあいから体を捨てて
投げようとした志々目、高藤が透かし、
足を枕に縦にめくり返す。身体能力の高い
両者によるアクロバティックな攻防
そして予選ラウンド最大の山場はなんと言っても高藤と志々目が争った準々決勝。
5月の選抜体重別では志々目が袖釣込腰「有効」で勝利、初のシニア日本一を狙った高藤の夢を砕いている。

ともに世界ジュニアを制した経験のあるこの2人はグランドスラム東京の参加歴もあり、高藤は昨年3位、志々目は一昨年に2位入賞。ワールドランキングの高低はともかく実力的には事実上の決勝と呼んでも差し支えないはずの一戦だ。

双方左組みの相四つ。高藤は序盤小内刈を中心に攻め込んで試合を作り、一方の志々目は釣り手で脇を差して組み手の優位の確保に終始し技が出ず、1分27秒に志々目に「指導」。
高藤が左背負投で攻め、志々目の左大外刈に高藤が掬投を切り返して腕挫十字固を狙うという展開があったがとり切れず。高藤は終盤に至っても試合が動かないと見ると作戦を変更、圧殺で志々目の頭を下げさせて膠着を狙う。4分18秒、このシナリオに嵌った志々目に「極端な防御姿勢」の判断で2つ目の「指導」が宣告される。
以後高藤は粘着質の組み手で志々目に技を掛けさせず。スコアを動かさずにタイムアップのブザーを聞き、「指導2」の優勢でこの難戦に勝利した。

高藤はさすがの試合勘を披露。一方の志々目は技出しの遅さという課題を今回も払拭できず、無念の予選ラウンド敗退に終わった。

12GStokyo_60_3.jpg
写真:準々決勝、石川裕紀が
ウロブボエフから背負投「技有」を奪う
準決勝のカードはまず第1試合がキタダイと石川裕紀。
キタダイは2回戦のイブラエフ(カザフスタン・WR98位)との初戦を「指導2」、準々決勝のペトリコフ(チェコ・WR50位)戦は背負投と大内刈の合技「一本」(3:07)で勝ち抜いてのベスト4入り。一方の石川は1回戦で香港選手に開始25秒で腕挫十字固「一本」、2回戦の大山場キムウォンジン(韓国・WR18位)戦を「指導2」で勝ち抜けると、準々決勝は前戦で難敵チメッド・ヨンドン(モンゴフ・WR21位)を破ったウロズボエフ(ウズベキスタン・WR69位)を背負投「技有」で破り、久々国際大会での準決勝への舞台と名乗りを上げてきた。

12GStokyo_60_5.jpg
写真:キタダイの腕を捕らえ、
めくり返して腕挫十字固を極めに掛かる石川
キタダイは右、石川は左組みのケンカ四つ。
引き手争いからキタダイは左一本背負投、さらに寝技に引き込む攻撃を見せ、一方の石川は左大内刈と出足払を叩き込んで展開を整え、チャンスを伺う。

1分過ぎに石川が組み際に右背負投、さらに左内股と繋ぐがキタダイはこれを潰して腕挫十字固を狙う。石川しっかり守って「待て」。

1分28秒、キタダイ組み際に猛ダッシュ。釣り手で脇を差し、引き手で石川の肩を掴まえ抱いて掴まえ、右小外掛を引っ掛けながら裏投に体を捨てる。

素早く力の圏外に抜け出して被り潰した石川、自身の体の上に残ったキタダイの左腕を動き鋭く掴まえ、伏せて逃れようとする相手の腹を足で制してローリングの腕挫十字固。スタートの態勢が悪過ぎたキタダイ、石川の手順の進行の早さに抗えず完璧に肘を極められてしまい早々に「参った」をアピール。

経過時間は僅か1分45秒。石川、五輪銅メダリストを「一本」で破って初のグランドスラム決勝進出を決めた。

12GStokyo_60_6.jpg
写真:1回戦、小外刈で「有効」を奪う高藤
準決勝第2試合は高藤とミルの対戦。

この日の高藤、1回戦はランキング95位の台湾選手を相手に袖釣込腰「技有」、小外刈「有効」と投技2発を決めてまずまずの出だし。前述の通り準々決勝は志々目徹との大一番を「指導2」で制しての準決勝進出。

一方のミルは1回戦の木戸戦を制すると2回戦は台湾選手を相手に粘られたものの上四方固で一本勝ち(4:05)、準々決勝は前戦でダシュダバー(モンゴル・WR22位)を破って勝ち上がってきた新鋭テルマノフ(カザフスタン・WR59位)を「指導2」で破っての準決勝の畳。

12GStokyo_60_7.jpg
写真:高藤-ミルの準決勝戦
高藤、ミルともに左組みの相四つ。
高藤は両袖の巴投、感触を得たかさらに両袖を深く持って再度の巴投を試みるがミルはしっかり潰す。
40秒、ミルは釣り手を肩越しに高藤の背中を掴む。高藤の低身長とミルの腕の長さが相まって物凄いストローク。
手ごたえを得たか以後もミルは肩越しに背中を持って優位を作っては引込返という、駆け引き不要の一方的な組み立てを継続。高藤は左大内刈に掬投で対抗するが展開の後手は否めない。

12GStokyo_60_8.jpg
写真:ミルは徹底して釣り手で
肩越しに背中を叩き、
身体特性を生かした戦い方
1分30秒過ぎ、高藤が引き手で襟を掴むとミル両手で切り離す。
高藤引き続き釣り手で襟を掴むがミル再び両手で切り離し、釣り手を肩越しに背中に叩き込み、引き手で袖を捕まえて組み手を完成。

この数秒の攻防でミルの作戦が浮き彫りとなる。さすがにこの露骨な切り離しに「指導1」(主審のゼスチャーは消極性に対して)が与えられるが、以後もミルは「高藤の一手目を両手で切って肩越しに釣り手を叩き込む」作戦を継続。襟、袖、釣り手、引き手と位置と手段を掛け算して一手目を変え続ける高藤だがミルはことごとく切り、肩越しに釣り手を入れて優位の姿勢を作っては引込返に払巻込と体を捨てて手数を稼ぐ。

3分過ぎ、高藤左釣り手をクロスに左袖を掴まえ、両手で袖を握った左小内刈、ミルは伏せる。直後高藤再び左小内刈、ミルは伏せる。

3分40秒、ミルが肩越しに釣り手で背中をたたくと高藤朽木倒で対応、しかし奥襟か肩越しかの形の判断にやや迷いがあったか、崩れかけたミルを仕留めきれず。

3分50秒、ミルが肩越しに背中を叩き、高藤掬投で持ち上げるも潰してしまい「待て」。

12GStokyo_60_9.jpg
写真:高藤、背中を狙う
ミルの釣り手の動きを利用して
豪快な袖釣込腰一閃「一本」
直後、ミルが肩越しを狙ってアプローチを繰り返す中で、高藤は厄介な相手の左釣り手の袖を先んじて捕まえる。一瞬切る動作を入れたミルだがこれは果たせず、ならばと手順をスキップ、再び釣り手を肩越しに入れようと手を伸ばす。この瞬間その動きを鋭く捉えた高藤が、ミルの腕を押し込み送って右袖釣込腰。自らの腕の行く先を投げの軌道に乗せられたミルは当然ながらまったく抗えず豪快な「一本」、4分7秒。

対応に時間が掛かったのか、それとも餌を撒いたのか。いずれとも評しがたい苦心の内容ではあったが、高藤、相手の意図と組み立てを利用した見事な一発を決めて決勝へ。変則の組み手で一方的優位を作り、手数で勝利をもぎ取ろうとする「しょっぱい」相手を一刀で切り伏せる、いかにも日本代表らしいカタルシスのある試合だった。

12GStokyo_60_11.jpg
写真:決勝、高藤が肩車で先制攻撃
迎えた決勝は石川、高藤ともに左組みの相四つ。

石川、引き手で高藤の釣り手を抱きこんで横変形の構え、一旦奥襟を触った釣り手も持ってきて両手で高藤の左腕を抱え込もうとする。高藤が嫌って距離を取ると石川は自ら釣り手を一旦大きく切り、高藤はこの動作に合わせて左への肩車にもぐりこむ。石川高藤を押さえつけたまま回ってひざから着地。寝姿勢の攻防は下になった石川が正対して引き込んだところで「待て」。経過時間は27秒。

高藤、引き手から石川の左袖に再三アプローチするが石川はフットワークと手捌きでこれをブロック、引き手をブラフに釣り手で奥襟を叩く。高藤一旦逃れて手先での組み手争いから右手、左手の順に掌で石川の右袖をキャッチ、右への肩車に飛び込む。いちはやく反応した石川は高藤が力の入る態勢になる前に逆側に降り、畳に伏せて「待て」。経過時間は46秒。

12GStokyo_60_12.jpg
写真:高藤の肩車が豪快に決まって「一本」
再開後、組み手争いの中から高藤またもや右引き手で右肘、左釣り手で右脇下をキャッチして石川の右腕を腹の前に流して抱え込む。嫌った石川が前傾したまま足技を飛ばし、朽木倒を狙って一歩出たその戻りに合わせて、高藤は腕を抱えたまま頭を石川の右脇から外に潜らせて右の肩車。

高藤は石川の右腕に左一本背負投を仕掛ける形で座り込む。石川は外方向、みずからの右に体を逸らして逃れようとするが高藤は走って追いかけ、右腕で石川の右足を抱えると自ら左前回りに一回転ダイブ。両者はもろとも1つの塊になって畳に転がり、主審は迷いなく「一本」を宣告、1分9秒。

高藤、見事、グランドスラム東京初制覇を成し遂げた。

12GStokyo_60_13ka.jpg
写真:優勝を果たし、
国旗掲揚に臨む高藤
決勝は技の選択、強引なまでの「決め」への欲求、そして自ら一回転してのフィニッシュと何から何まで高藤らしい見事な「一本」。所属の先輩でコーチ、自分の技を良く知るはずの石川を投げきった試合の構成、そして技自体の威力はやはり規格外のものがある。

5月の選抜体重別では悪夢の1回戦敗退、それでも5月のグランドスラム・モスクワでは王者ソビロフ(ウズベキスタン)を倒して優勝、再び存在感を示し、しかし世界選手権へのスタートとなるはずの11月の講道館杯は不調のまま3位、といまひとつ成績が安定しない高藤。さすがに「期待の超新星」という特別枠から零れ落ちかけている印象だったが、今大会の優勝でひとまず再上昇のきっかけは得たという格好だ。実績と内容を鑑みるに、五輪代表の平岡を抜いた序列では現時点の一番手ということになるだろう。

ただし試合後、「掬投や肩車で満足していてはいけない」と本人が語ったとおり、1月から試行が噂される「足取り完全禁止」「二本持つ柔道の厳格化」のルール変更の中で勝ち抜くにはモデルチェンジが必要だ。より具体的には、高藤が苦手としてきた、そしておそらくルール変更が噛み合うであろう内股ファイター山本浩史(ALSOK)と掬投抜きでどう戦うのか。今回のミル戦を参考に肩越しと奥襟を織り交ぜてくるであろう長身の欧州勢をどう投げるのか。09年の「足取り禁止」施行に合わせてモデルチェンジを図ることで明らかに柔道のステージが一段あがった高藤、今回はどのような選手に羽化を遂げるのか、今後が非常に楽しみだ。

12GStokyo_60_14.jpg
写真:60kg級入賞者。
左から石川、高藤、キタダイ、ミル
【入賞者】 エントリー21名
1.TAKATO, Naohisa(JPN)
2.ISHIKAWA, Hironori(JPN)
3.KITADAI, Felipe(BRA)
3.MILOUS, Sofiane(FRA)
5.PETRIKOV, Pavel(CZE)
5.SHISHIME, Toru(JPN)
5.TELMANOV, Askhat(KAZ)
5.UROZBOEV, Diyorbek(UZB)

高藤直寿選手のコメント
「このところずっと負けていたのですごくうれしいです。世界選手権を目指そうという中で講道館杯で負けてしまい、もうここしかないと思ってがんばりました。監督(井上康生日本代表監督)からは『ここから一気に突っ走れ』と声を掛けてもらい、意気に感じるところがありました。肩車や掬投というような日本柔道らしくない技で勝っていますし、満足せずにしっかりした技を作り上げていきたいと思います。小内刈やだけでなく背負投や袖釣込腰、内股がしっかりあればもっと伸びるのかなと感じています。まだまだ平岡(拓晃)の背中を追いかける立場ですが、来年の世界選手権では代表になって金メダルを獲ります」

【準決勝】
高藤直寿○袖釣込腰(4:07)△MILOUS, Sofiane(FRA)
石川裕紀○腕挫十字固(1:45)△KITADAI, Felipe(BRA)

【決勝】
高藤直寿○肩車(1:09)△石川裕紀

12GStokyo_60_15.jpg
写真:準決勝、高藤の右袖釣込腰「一本」
【日本人選手勝ちあがり】

高藤直寿(東海大1年・WR13位):優勝
[2回戦]
高藤直寿○優勢[技有・袖釣込腰]△HUANG, Sheng-Ting(TPE)
[準々決勝]
高藤直寿○優勢[指導2]△志々目徹
[準決勝]
高藤直寿○袖釣込腰(4:07)△MILOUS, Sofiane(FRA)
[決勝]
高藤直寿○肩車(1:09)△石川裕紀

石川裕紀(了徳寺学園職):2位
[1回戦]
石川裕紀○腕挫十字固(0:25)△YU, Kin Ting(HKG)
[2回戦]
石川裕紀○優勢[指導2]△KIM, Won Ijn(KOR)
[準々決勝]
石川裕紀○優勢[技有・背負投]△UROZBOEV, Diyorbek(UZB)
[準決勝]
石川裕紀○腕挫十字固(1:45)△KITADAI, Felipe(BRA)
[決勝]
高藤直寿○肩車(1:09)△石川裕紀

志々目徹(日体大3年・WR58位):5位
[2回戦]
志々目徹○GS僅差3-0△SEO, Jin Hwan(KOR)
[準々決勝]
志々目徹△優勢[指導2]○高藤直寿

木戸慎二(日体大4年):1回戦敗退
[1回戦]
木戸慎二△腕挫十字固(5:00)△MILOUS, Sofiane(FRA)


次へ

1    



※eJudo携帯版「e柔道」12月5日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る


supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.