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24年度講道館杯女子各階級展望&みどころ

(2012年11月10日)


※eJudo携帯版「e柔道」11月8、9日掲載記事より転載・編集しています。

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24年度講道館杯女子各階級展望&みどころ

優勝争いは浅見と山岸、山崎と岡本の「奥襟」トライブに注目集まる
48㎏級

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写真:第1シードは世界選手権
連覇者の浅見八瑠菜
■有力選手×概況

ロンドン五輪代表の福見友子(了徳寺学園職)は出場せず。
しかし世界選手権2連覇者の浅見八瑠奈(コマツ)が実業個人に続き皆勤出場、かつて3強を形成していた山岸絵美(三井住友海上)もエントリーしたことで、否応なしにこの大会は現時点での国内トップを競うハイレベル大会と位置づけられることとなった。五輪後も浅見、山岸という序列は続くのか、若手がそこに食い込んでいくのか。

優勝候補はもちろん浅見と山岸、それに今期全日本ジュニアで決勝を争った山崎珠美(山梨学院大1年)と岡本理帆(藤枝順心高3年)の若手2人が食らいつく。

山崎と岡本の戦闘スタイルは伝統的軽量級スタイルとは異なる。
両者とも奥襟ファイター。山崎は釣り手、時には両手で首を抑える勢いで奥襟に背中、もしくは肩と力の伝わる部位を掴み、鉈を振るうような大内刈に小外刈、逆技の右一本背負投で相手を投げつける。岡本は長い腕をしならせて釣り手を首に絡みつかせ、頭を下げさせては切れ味鋭い左内股を連発。この大胆な組み手で両者はスピードをベースに背負投と小内刈、と繊細な組み立てで戦う前襟ファイターを嵌めまくり、「一本」の山を築いてきた。山崎は昨年、初の全国大会となる全日本ジュニアを一発で制すると講道館杯でも2位入賞、今期は1年生ながら全日本学生体重別を圧勝で制しており、岡本は高校カテゴリで2冠、選抜体重別でなんと世界王者の浅見を僅差で破って名を揚げ、全日本ジュニアでは山崎に競り勝って優勝も果たしている。

今回注目したいのはすでに国内で十分実績を残しつつあるこの若手2人が、浅見と山岸という国際級2人にどのような試合が見せられるか、そして国際大会進出の権利を得られるかどうか。最軽量級に現れた日本人の「奥襟トライブ」の強者2人が国際大会でもこのスタイルでも勝ちまくるようであればこれは今後ひとつの潮流として定着する可能性がある。まず第一段階、上位進出が期待されるこの大会でしっかり勝ち抜くことができるかどうかに注目したい。

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写真:全日本ジュニアでライバル山崎
を倒して優勝した岡本理帆
■組み合わせ

【Aブロック】
浅見の山。準々決勝での最有力対戦候補は実業個人の決勝で下した笠原歩美(日体大柔友会)であり、準決勝までは無風と言って良い。

【Bブロック】
昨年は世界ジュニアに優勝、1年生ながら学生体重別も制した遠藤宏美(筑波大2年)の山。逆側の山に山崎が配された。
山崎は小山亜利沙(横須賀学院高2年)と塚原唯有(環太平洋大4年)の勝者と対戦するが現在の勢いと力関係からするとまず問題はなさそうだ。

遠藤-山崎は昨年の全日本ジュニア決勝で対戦、山崎が小外刈「一本」で遠藤を畳に沈めている。遠藤は足技と担ぎ技をベースに戦う典型的な軽量級の技巧派、このときは山崎の柔道に完全に嵌っていた。具体的な対抗策、質的な変化がなければパワーアップした山崎に対抗するのは難しい。ここは山崎が勝ち上がると見る。

【Cブロック】
山岸の山。準々決勝の十田美里(近畿大4年)が一番の難敵という選手配置で、勝ち上がり自体は堅い。実業個人では立ち上がりにやや集中力を欠いた山岸がどのようなスタートを切るかに注目。

【Dブロック】
岡本の山。
逆側の山には伊部尚子(ぎふ柔道クラブ24)、黒江優希(北関東綜合警備保障)、濱田早萌(大成高3年)と好選手が揃うが、ここは伊部の勝ちあがりと見るべき。百戦錬磨の伊部が岡本をどう迎え撃つか、注目の一番だ。

また、伊部のブロックにはかつて代表戦線で浅見、福見と熾烈な戦いを繰り広げてきた近藤香(日本生命)がエントリーしていたが、前日の9日に欠場が判明。
エントリーしておいての欠場は11年全日本実業個人、今期の実業個人に続いて3度連続。今後の動向が注目される。

【準決勝-決勝】
順当に考えれば決勝は浅見-山岸。8月の実業個人では浅見が抑え込む(12秒)場面を作って僅差判定勝ち。今回も鍔迫り合いの戦いとなるだろう。

しかしこの浅見-山岸の鉄板対決を山崎と岡本が崩しうるかどうかがこの階級最大の注目点。昨年も荒れたこの階級だが、今年も誰が勝つにせよ穏当な予想の範囲内に収まらない、熱い戦いを期待したい。


世界王者西田出場!橋本、加賀谷ら第2グループは序列の再編成狙う
52㎏級

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写真:講道館杯にエントリーしてきた
世界選手権王者西田
■有力選手×概況

10年東京世界選手権王者にして、五輪代表中村美里(三井住友海上)と長年「二人旅」を演じてきた西田優香(了徳寺学園職)が出場。中村は左膝治療のため長期離脱を表明しており、よってこのトーナメントは現時点での有力選手が軒並み全員出場する、面子的にはガチンコ日本一決定戦となっている。
西田にしてみれば、勝って得られるものよりも万が一負けた場合に失うもののほうが圧倒的に大きい大会のはず。客観的には現役続行への強い意志表明、と捉えるべき、勇気あるエントリーだ。

これに挑むのは五輪前に、2人に大きく離された「第2グループ」に属していた面々。一番手は国際大会で着実に勝ちを続けている橋本優貴(コマツ)。得意の寝技を駆使して8月の全日本実業個人はオール一本で優勝している。
これに出色のパフォーマンスで学生体重別を制して完全復活が噂される加賀谷千保(山梨学院大4年)が優勝に絡みうる選手。11年グランドスラム王者宮川拓美(コマツ)、宮川の同学年のライバルで全日本ジュニア2連覇者志々目愛(帝京大1年)、昨年の学生王者谷本和(環太平洋大3年)がこれに続く。

しかし、少なくとも今春までの西田の強さは、これらの選手と比較するとあまりに圧倒的。優勝争いの行方はひとえに西田のモチベーションの高低とコンディション調整の成否に掛かっていると言って過言ではないと思われる。国体では減量失敗で失格という大失態を演じた西田が、講道館杯にフォーカスした調整を志向してきたのかどうか。これが一番のみどころだ。

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写真:学生体重別を出色の出来で制し、
再び国際大会を狙う加賀谷千保
■組み合わせ

【Aブロック】
第1シードの西田の山。初戦から渡邊美樹(東海大4年)戦、準々決勝は黒木美晴(環太平洋大1年)、小島愛子(自衛隊体育学校)、IH王者内尾真子(桐蔭学園高2年)の勝者との対戦が見込まれる。繰り返しになるが、西田がまっとうに調整していれば、ここでつまづく要素は全くない。勝ち上がりは西田だ。

【Bブロック】
宮川の山。準々決勝の谷本和戦が最大の山場。宮川は高校卒業後煮え切らない試合が続いているが、谷本も柔道が固くなり今期はスケールダウン、調子があがってきていない。昨年の実績を買って宮川を推したい。

【Cブロック】
橋本の山。初戦の塚原理早(環太平洋大4年)、準々決勝の垣田恵利(兵庫県警)-斉藤美貴(Ash柔道クラブ)とうるさい選手はいるが、ほぼ勝ち上がりは間違いない。

【Dブロック】
加賀谷の山。準々決勝の志々目戦が山場。学生体重別での戦いぶりを見る限り(志々目は韓国遠征のため不参加)序列は加賀谷は上だが、10月末の学生体重別団体決勝での対戦では志々目が加賀谷を押し捲り、主導権を握ったまま「指導」1個を奪って引き分けという結果に終わっている。帝京大がチームとして乗りに乗っている状況での対戦でもあり額面通りに受け取るわけにはいかないが、勝敗は五分五分と見てよいだろう。

【準決勝-決勝】
西田、橋本がそれぞれ若手と戦うという準決勝になる。

橋本-加賀谷は昨年決勝で対戦、この時はまず橋本が圧倒的に攻め込んで「有効」、加賀谷が前に出て追いすがり、焦った橋本の性急な内股を加賀谷がすかして「一本」で勝利している。両者とも昨年から一段スケールアップしており、この対戦は五分五分。

いずれ前述の通り、西田が心身ともにこの大会にしっかり合わせて来ているかどうかが最大のポイント。万全なら西田優勝は動かず、漬け込む隙を見せると、橋本、加賀谷が噛み付いてくる。
好不調が割合ハッキリ出るタイプの西田、前半戦を観察すれば決勝ラウンドの様相は事前に見えてくるのではないだろうか。


国内制して一気に抜け出したい山本杏、立ちはだかる宇高と石川
57㎏級

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写真:ついにシニア大会の第1シード
に配された山本杏
■有力選手×概況

第1シードは山本杏(桐蔭学園高3年)。グランドスラム東京3位、ワールドカップブダベスト優勝、グランプリデュッセルドルフ2位(松本薫に敗退)、アジア選手権優勝、10月の世界団体選手権ではオール一本勝ちで日本チームの金メダル獲得に貢献し、世界王者松本と引退した佐藤愛子を除けば、国際大会では圧倒的な成績を残している。国内ではシニアの壁にぶつかってしまっている格好だが、第一人者の松本不在のこの期間に国内大会を制し、一気に抜け出してしまいたいはずだ。今大会はその絶好のチャンス。

これに待ったを掛けるのが実業勢。10年世界選手権代表で今期は選抜体重別と実業個人を制して復調気配のベテラン宇高菜絵(コマツ)、昨年の講道館杯王者の石川慈(コマツ)が優勝候補として山本の前に立ちはだかる。宇高が第2、石川が第4、そして第3シードには選抜体重別で山本を破った大友真貴子(コマツ)が配されており、コマツ勢による山本包囲網という様相のトーナメントとなった。

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写真:今期は主要2大会を制し、
円熟期に入った感のある宇高菜絵
■組み合わせ

【Aブロック】
山本が配されたブロック。
準々決勝では出口クリスタ(松商学園高2年)-塚田紗矢(山梨学院大2年)の勝者との対戦が濃厚。かつて塚田には10年講道館杯で苦杯を喫した経験があるが、よほどのアクシデントがないかぎりここは山本が勝ち上がるだろう。勝負は準決勝以降だ。

【Bブロック】
石川のブロック。逆側の山には平井希(自衛隊体育学校)が配された。
平井は63kg級時代のような重たい技を打ち込むスタイルから一変、実業個人では石川を相手に、徹底して持たせずに、先、先で掛け潰れながらチャンスを伺うという片手技中心の超勝負志向の戦術にシフト、いらつく石川に試合をさせずに判定勝ちしている経緯がある。平井の2回戦は学生2位で技のシャープな武井嘉恵(筑波大4年)だが、いかな武井でもパワーのある平井にこれをやられては勝ち上がるのは難しい。
準々決勝の石川-平井は、実業個人での屈辱的な敗戦を喫した石川が明確な平井対策を持って臨んでくるかどうか、これがカギだ。地力は石川が上と見るが、お互い順行運転で試合をするなら手数の平井が有利となる相性。消耗戦必至。

【Cブロック】
宇高の山。初戦はおそらく学生3位の金子瑛美(埼玉大3年)、準々決勝は芳田司(敬愛高2年)か西尾直子(帝京高1年)で、ここは番狂わせの可能性は薄い。順当に宇高が勝ち上がるだろう。

【Dブロック】
大友の山。準々決勝の塩瀬絢子(三井住友海上)戦が山場。

【準決勝-決勝】
山本-石川(平井)、宇高-大友というカードが予想される。

まだ線の細い山本はシニアの選手には距離をとり、アウトレンジから攻撃を組み立てる傾向がある。長身奥襟ファイターの石川には、引き付けられて頭を下げられるリスクがある。一方、組み手争いに乗ってくる平井は意外にやりやすいのではないか。勝敗予想の難しい対決だが、相手が投げようと色気を出してくる限りは山本にも勝機は十分。逆にいうとパワー差をひっくり返すには相手に出てきてもらうしかなく、手堅く戦われると少々厳しい。注目対決だ。

決勝はパワーと一発を持つ宇高が待ち受ける。

優勝争いは田中と阿部、タレント密集のジュニア世代の活躍に注目
63㎏級

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写真:安定感抜群の試合ぶりで
実業個人を制した田中美衣
■有力選手×概況

この階級はジュニア以下の人材密集度が非常に高く、タレント揃い。

優勝争いという観点からは第1シードの田中美衣(了徳寺学園職)、第2シードの阿部香菜(三井住友海上)という世界選手権代表経験を持つ2巨頭が最有力だが、階級全体としての見どころはこれら才能ある若手選手の試合ぶり、そして誰がどこまで上位に食い込んでくるかということに絞られるのではないだろうか。

10年、11年の学生王者安松春香(環太平洋大3年)は負傷のため欠場となったが、11年全日本ジュニア王者佐野賀世子(山梨学院大1年)、11年世界ジュニア王者で今期は学生体重別を制した太田晴奈(淑徳大2年)、10年に高校1年生で世界ジュニア王者の輝いた田代未来(淑徳高3年)、今期インターハイと全日本ジュニアを制した津金恵(松商学園高2年)、カデ王者の中学生・嶺井美穂(東松山南中3年)らがその代表格。シニア初挑戦の佐野、上り調子は津金、負傷とインターハイでの誤審による不本意な敗退から復活を期す田代には特に注目が集まるだろう。

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写真:全日本ジュニアの決勝を争った
佐野賀世子(左)と津金恵
■組み合わせ

【Aブロック】
田中の山。
逆サイドに中学生の嶺井が配されたが初戦で学生2位の強者大川愛(天理大4年)がマッチアップ。いかに嶺井といえどもさすがに勝利は難しいだろう。大川は実業2位の貝沼麻衣子(JR東日本)と田中への挑戦権を争う。
田中-貝沼が実現するとなるとこれは8月の実業個人決勝のカードだが、当時の田中の落ち着いた戦いぶり(横四方固「一本」)を考えるにここは順当に田中が勝ちあがると見る。

【Bブロック】
太田の山。準々決勝で佐野賀世子との対決があり、これはこの日の女子全体を通した序盤戦の大山場。
佐野は昨年全日本ジュニア決勝で太田に完勝、しかし世界ジュニアには太田が選ばれ、インターハイ団体に個人、ジュニアと取るべきすべてのタイトルを獲得した佐野は講道館杯の参加すら許されなかったという経緯のある因縁対決だ。

佐野は昨年まで見せていたスピードとパワーをミックスした異次元の連続技がやや鳴りを潜め、これらの要素が一発狙いと不安定さに繋がっている。一方の太田は緩やかに柔道が上向いており、ここで佐野が流れを変えられるかどうか。
昨年の対戦実績と持ち技の相性からここは佐野を推すが、試合はどう転ぶかわからない。

【Cブロック】
阿部の山。2回戦で学生の強豪黒木和世(環太平洋大2年)の挑戦を受ける。本格派に対して粘りながら担ぎ技を仕掛けていける黒木の泥臭い柔道が阿部にどこまで通用するか、興味深いカード。

逆側の山には津金が置かれたが、警察王者の山本美樹(兵庫県警察)と初戦、勝てば柿内沙弥香(フォーリーフジャパン)と渡辺華奈(JR東日本)の勝者という非常に厳しい組み合わせ。山本は自ら認める「掛けて掛けて、指導でもいいから勝つ」(警察選手権時のコメント)泥臭い選手。津金はなんとか勝ちあがって阿部の胸を借りたいところだ。

【Dブロック】
安松の欠場でシード位置がポッカリ空いた。
準々決勝は体重別団体優勝の原動力となった松岡睦(帝京大4年)と田代未来で争われることになる。松岡は現時点で間違いなく学生のトップクラス、負傷明けの田代はトップコンディションまで持ってきていないと厳しいはずだ。ここを良い形で勝ったほうが一気に波に乗る可能性が大。

【準決勝-決勝】
田中と阿部に挑戦するのは誰か、というのがここまでの大きな柱だが、決勝に進むのはやはりこの2人だろう。

田中-阿部戦の予想は難しい。順行運転なら手堅く寝技を選択していける田中が展開を握る可能性が高いが、立ち技の最高到達点が高いのは阿部のほうである。一発ですべてをひっくり返すだけの技がある。
安定感のある田中に対して阿部は比較的好不調の波が激しい。田中有利、コンディション優良なら阿部に分がある、と予想したい。


五輪代表田知本遥の国内第一人者「防衛戦」
70㎏級

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写真:ロンドン五輪で代表を
務めた田知本遥
■有力選手×概況

ロンドン五輪で代表を務め5位入賞を果たした田知本遥(東海大4年)がエントリー。
今回はその田知本に、その座を狙う若手有力選手が次々噛み付くという様相になりそうだ。
田知本とマッチレースを繰り広げてきた國原頼子が引退し、実力的には田知本の一人旅、と言いたいところだが、もともと田知本は、国際大会の出場実績や階級内での序列の高さに比して国内で圧倒的な力を示し続けて代表になったというわけではない。昨年も講道館杯にグランドスラム東京と上野巴恵に2連敗して五輪は絶望と思われていたが、2月のグランドスラムパリ優勝をきっかけに連勝、ラストスパートでライバルたちを振り切ったという体の代表選出であった。

周囲の選手も、序列ほど圧倒的な力の差はないことを十分わかっているはずで、今大会に掛ける意気込みは相当なものがあるはず。田知本にとってはここで勝って自身の位置をしっかり固めるか、それともまたもや混戦状態に時計の針を戻してしまうのか、五輪直後ではあるが非常に大事な大会である。

優勝に絡む有力選手は大野陽子(コマツ)と今井優子(了徳寺学園職)。
大野は実業個人こそ上野巴恵に敗れて落としたが、パワー柔道で進境著しい。
今井は選抜体重別で大学の後輩の田知本をGS終盤まで攻勢のまま追い込んで存在感を示した。8月の実業個人は韓国背負いを投入して圧勝、持ち前のパワーと経験に貪欲さも持って、今大会でリベンジを狙う。

ちなみに大野と今井は世界団体選手権で日本代表を務めたが大野0勝1敗、今井は1勝2敗でその成績ははかばかしくなかった。世界選手権代表を目指すのであれば田知本をまず直接対決で叩くほかはなく、今大会をGS東京の前哨戦とのんびり捉えるわけにはいかない。譲るわけにはいかない戦いである。

ほか、学生体重別を2連覇したヌンイラ華蓮(環太平洋大3年)とおなじく連続2位の高橋ルイ(環太平洋大3年)の同門コンビ、体重別団体優勝の原動力となった前田奈恵子(帝京大3年)が優勝に絡みうる存在。若手ではジュニア2位の新井千鶴(三井住友海上)に注目だ。

本来田知本と覇を競うべき上野巴恵が不参加、2年連続ジュニア王者の長内香月(高岡龍谷高3年)も昨年に引き続きエントリーしておらず、この点では少々残念なトーナメントとなった。

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写真:実業個人優勝の今井優子。
選抜体重別では勝った田知本が
思わず崩折れるほどの激戦を演じた
■組み合わせ

【Aブロック】
田知本の山。初戦は唐鎌千鶴(帝京大4年)と谷口亜弥(了徳寺学園職)の勝者、3回戦は大住有加(JR東日本)と松延祐里(筑波大2年)の勝者との対戦で、いずれも難敵ではあるが、力関係と柔道の質からいってさほど問題なさそう。勝ち抜けは確実と見てよいだろう。

【Bブロック】
ヌンイラの山。初戦は馬場菜津美(山梨学院大3年)と山本一葉(天理大4年)の勝者との対戦でのっけから目が離せない。
逆側の山には新井千鶴が配置。十分準々決勝まで勝ち上がることが可能な組み合わせだ。現時点でヌンイラを破ることは難しそうだが、高卒1年目での入賞にチャレンジする権利を確保するところまでは現実的だ。

【Cブロック】
大野の山。準々決勝の対戦相手は西村美咲(山梨学院大1年)か村山のどか(市立沼津高2年)というジュニア世代のパワーファイターのいずれかが有力で、ステージ的にも相性的にもアクシデントは起こりにくい印象。勝ち上がりはまずまず堅い。

【Dブロック】
今井の山だがこのブロックは面白い。まず2回戦で現在好調の前田奈恵子との対戦があり、勝ち抜くとおそらく準々決勝は高橋ルイが待ち受ける。

パワーとスタミナ、勝負カンの鋭さに新技の「韓国背負い」も得た今井がどのような試合を見せるか。本来質的に似通った技構成の3人だが、威力のある担ぎ技という質的なアクセントとパワーを採って、今井の勝ちあがりを予想したい。

【準決勝-決勝】
シードの序列通り、田知本-ヌンイラ、大野-今井という顔合わせの可能性が高い。

田知本はかつてパワーファイター相手に組み手で我慢できず性急に攻めて展開を失うという悪癖があった。が、昨年のGSパリのデコス戦あたりからこの点成熟、選抜体重別決勝での直接対決ではヌンイラの組み手を完封し、「指導2」で勝利している。ケンカ四つの組み手にヌンイラが単調という側面もあり、この力関係に大きな変化があるようには思えない。田知本の決勝進出を予想する。

大野-今井は、今春の選抜体重別で直接対決があり、この時は今井が内股「技有」で勝利している。大野が上野巴恵に競り負けた実業個人を見る限り、大野の、迫力に同居する組み手の粗さが払拭されたとはなかなか考えがたい。今回も今井の勝利の可能性が高いのではないか。

決勝の田知本-今井戦は予測が難しい。
選抜体重別はケンカ四つの引き手争いから片手技で今井が崩しまくって優位を得たが、判定決着目前で田知本が大内刈「技有」を奪って勝利している。田知本がしばらく立ち上がれない消耗戦であった。
状況優位は今井、技一発でこれを逆転した田知本という試合だったわけだが、今回も今井は片手技、さらに襟を両手で握る担ぎ技で先手を取りにくるだろう。ここでポイント失陥というようなことになれば田知本は厳しい。田知本としては手堅く、先、先に攻められる組み手を作って今井を追い込む、自分から「状況」をつくりにいくような試合が求められるはずだ。


緒方と佐藤のライバル対決再び
78㎏級

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写真:世界選手権を2度、
今夏は五輪という大舞台を踏んだ緒方
■有力選手×概況

五輪代表を務めた緒方亜香里(筑波大4年)がエントリー、もちろん第1シードだ。
そして階級最大の話題は、緒方の唯一にして最強のライバル・佐藤瑠香(コマツ)のエントリーだ。

この2人はジュニア世代の頃からのライバル。10年世界選手権直前には交互にグランドスラム大会を制するなど日本の78kg級にツートップ時代が訪れかけた印象であったが、この世界選手権の無差別に抜擢された佐藤は膝の靭帯を断裂する重傷を負い長期戦線離脱。昨年の講道館杯で復帰を果たし当時国内で無敵を誇った緒方を破って実力を見せ付けたが1月のワールドマスターズでの負傷により再び長期離脱。今大会がその復帰戦になる。

よって2人の頂点対決が唯一最大のみどころ、と言いたいところだが、緒方は五輪での不甲斐ない敗北を引っ張ったか、10月末の体重別団体では超級の土屋文香(東海大)に放られて一本負け、エンジン全開とはいかない気配。佐藤にしても復帰第一戦ではどこまでのパフォーマンスが出来るかは未知数で、両者はまず決勝までをしっかり勝ちあがらねばならない。対決以前に2人の決勝までのパフォーマンス、これ自体がみどころである。

世界ジュニア王者梅木真美(阿蘇中央高3年)の参戦も大きなトピックだが、梅木もかつてのインパクトを取り戻すには至っていない。全日本ジュニア優勝で復調気配とはいえ、成績以上の可能性を感じさせたかつての大物感溢れる柔道を取り戻すには至っていない印象。大学でのブレイクに向けて、ポテンシャルを再び見極める大会になるだろう。

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写真:佐藤瑠香は1月のワールドマスターズ
以来の大会エントリー
■組み合わせ

【Aブロック】
緒方の山。重永聡美(広島大2年)に高松彩香(山梨学院大1年)にインターハイ王者の高山莉加(鹿児島南高3年)らの若手強豪、三戸彩渚(神奈川県警)も配されているが、緒方の勝ちあがりという観点からは無風。緒方の勝ち抜けは動かず。

【Bブロック】
激戦区。シード位置は実業個人王者の岡村だがここに同2位のもと同僚、渡邉美奈(了徳寺学園職)、梅木、濱田尚里が配されている。

岡村と渡邊は2回戦で激突。昨年の実業個人では担ぎ技で潜り込み続けた渡邊が勝利しているが、今期は岡村が渡邊を完封して横四方固で一本勝ち。あまりに完璧に渡邊の技を封じ込んだあの一戦を考える限り、今大会も岡村の勝利の可能性が非常に高い。

濱田-梅木は試合が読みにくい。梅木は6月の膝手術後の下半身の不安定さもまだ一抹払拭できていない感があり、これを勘案すると濱田優位か。

岡村としては選抜体重別で苦杯を喫した(横四方固)濱田の方に嫌なイメージがあるだろう。濱田があがってくるようであれば準々決勝は因縁対決、注目だ。

【Cブロック】
佐藤の山。有力選手としては逆側の山に吉村静織(三井住友海上)がいるが、
パワーファイターを相手に大物食いをするタイプの選手ではなく、まずまず佐藤の勝ちあがりと見て良いだろう。

【Dブロック】
11年学生王者日高美紗希(大阪体育大2年)、11年学生2位の只野真梨枝(九州旅客鉄道)、今期学生王者の下田美紗季、同2位の西田香穂(山梨学院大1年)と若手の実力者が集まったブロック。ベテラン穴井さやか(ミキハウス)と下田が争う1回戦はみもの。

【準決勝-決勝】
アクシデントがなければ、緒方-佐藤の再戦実現と見てまずまず間違いない。
昨年は「お互い柔道の試合をして欲しい」と園田隆二監督が苦笑した「ド付き合い」の末に緒方が優勢、しかし佐藤が起死回生の足技で「有効」を奪って勝利したカードだ。
技術の巧拙はともかく、闘志むき出しの試合になることは確実。リオに向けて再び「2トップ」体制の時代がやってくるのか。見逃せない一戦だ。

田知本と山部の対決はメンタル面に注目、朝比奈らジュニア世代グループの活躍に期待
78㎏超級

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写真:10月末の世界団体選手権で
出色のパフォーマンスを見せた田知本
■有力選手×概況

五輪銀メダリストの杉本美香(コマツ)は出場回避。
第1シードは田知本愛(ALSOK)、第2シードは皇后盃王者の山部佳苗(山梨学院大4年)。優勝争いはこの2人に絞られ、これに高校1年生で皇后盃ベスト4の快挙を成し遂げた朝比奈沙羅(渋谷教育学園渋谷高1年)、ようやく抜擢に応えるパフォーマンスを見せ始めた学生2位の橋口ななみ(近畿大4年)、立山真衣(フォーリーフジャパン)らが挑むというのが階級の様相。

なかなか若手の人材が育ってこない、階級全体として国際クラスの密度が薄いことが宿痾になりつつあったこの最重量級だが、朝比奈を筆頭に世界ジュニア2連覇者井上愛美(山梨学院大2年)、欧州型長身体型の大物橋本朱未(淑徳高3年)、皇后盃ベスト8の谷村美咲(帝京科学大1年)、高校生で皇后盃九州予選を制した11年IH王者稲森奈見(三井住友海上)とジュニア世代には才能ある若手、超級であること自体が武器であるような従来型の超級女子中堅層とは少々匂いの違う役者たちが一勢力をなしつつある。彼女らがこの時点でどのくらいの試合を見せるか、また国際大会で通用する質の柔道を志向しているかどうかは大きなみどころだ。

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写真:皇后盃優勝の山部。
時折顔を出す弱気が課題
■組み合わせ

【Aブロック】
田知本の山。
準々決勝での田知本への挑戦権を賭けて橋本、藤原恵美(大成高3年)、町純香(山梨学院大3年)がマッチレースを繰り広げる。自分から仕掛けていける橋本の勝ちあがりを推したいところだが、重心が低く足技も効く町は強敵だ。

田知本は攻め手が遅く、格下の挑戦者にはそこを付込まれて「試合になってしまう」ことが悪いパターン。しかし田知本は世界団体で日本の大黒柱として大活躍、優勝に貢献してきたばかり。五輪に出れなかった悔しさを晴らすかのようなあの好パフォーマンスを見る限り、ここでつまづく可能性は僅少だ。

【Bブロック】
立山真衣の山。準々決勝は朝比奈との対決が濃厚。
天才肌の立山は勝つべき選手には圧倒的に勝ち、力関係の近い選手には一転手堅い膠着の試合を選択する傾向がある。この点、皇后盃以降シニアでの試合をしていない朝比奈の現在地を測るには格好の相手。実績を考えれば立山有利だが、伸び盛りでガッチリ稽古を積んでいるはずの朝比奈の勝利は、ありうるところまでに来ていると思われる。見逃せない一戦。

【Cブロック】
山部の山だがここは人材の密度が高い。
まずなんといっても2回戦。先の学生体重別団体で一本負けを喫した畑村亜希(帝京大4年)戦が最大の関門。もしも畑村に連敗を喫するようなら皇后盃で勝ち得た山部の立ち位置、次の代表に挑戦しうる資格は失効。逆に畑村は今後の有力選手として一気にスポットライトを浴びることになるはずだ。この日の女子全体を通じた序盤の大山場。

逆側の山の4人は市橋寿々香(大阪府警)、谷村美咲、カデ王者の月波光貴穂(新田高2年)、実業個人2位の新田沙也加(日本エースサポート)という豪華メンバー。

何が起こってもおかしくないブロックだが、ここは順当に山部と市橋が戦い、山部が勝ち抜けるとしておきたい。

【Dブロック】
橋口の山。3回戦でいずれも皇后盃を経験した滝川真央(富士市立高2年)と木村知畝(環太平洋大3年)の勝者と対戦する。
山場は準々決勝、井上愛美と稲森奈見の勝者との対戦。おそらく井上ということになるだろうが、橋口は学生体重別で井上に「有効」を奪われあと数秒で敗退というところまで追い込まれている。リベンジを狙う実力者井上をどう退けるか、注目である。

【準決勝-決勝】
田知本-朝比奈、山部-橋口という組み合わせを予想しておきたい。

順当ならば決勝は田知本-山部。皇后盃では圧を掛けきれず先手を許し、僅差2-1で敗退した田知本、コメントは「自分に負けた」であった。
ロンドン五輪を逃し、その悔しさゆえか、世界団体ではプレッシャーの掛かる場面でことごとく大仕事、メンタルの強さを見せ始めた田知本。それが一過性のものなのか、それとも五輪を逸したあまりの無念が田知本を成長させたのか。結果とともにその戦いぶりが注目される一番である。




※eJudo携帯版「e柔道」11月8、9日掲載記事より転載・編集しています。

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