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24年度講道館杯男子各階級展望&みどころ

(2012年11月10日)


※eJudo携帯版「e柔道」11月8、9日掲載記事より転載・編集しています。

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24年度講道館杯男子各階級展望&みどころ

山本、高藤が最有力も好選手ひしめく混戦
60㎏級

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写真:グランドスラム東京を連覇した山本。
春先の失速で五輪を逃し、
今回が復帰戦となる
■有力選手×概況

グランドスラム東京を2年連続で制している山本浩史(ALSOK)、昨年この大会で平岡拓晃(了徳寺学園職)を破って旋風を巻き起こした超新星・高藤直寿(東海大1年)が優勝候補。これに世界ジュニア王者の志々目徹(日体大3年)、昨年この大会を制した川端龍(了徳寺学園職)、実業個人2連覇の石川裕紀(了徳寺学園職)が絡むというのが優勝争いの構図。

長身の山本は左内股が武器で、これに軽量級らしい小内巻込を合わせてくる。昨年の勢いからすると高藤が優勝候補筆頭に挙げられてもおかしくはないところだが、小兵の高藤は山本タイプの選手を苦手にしており昨年のグランドスラム東京では山本の左内股で振り投げられて「技有」を失い敗退している。国際大会でも同タイプに劣勢を強いられる場面の多かった高藤がこのあたりどう克服してくるかに注目。

山本の最大のハードルは学生時代からのライバル石川の存在。組み際に取り味のある一本背負投を連発し、泥臭く戦いながら威力のある一撃を狙い続ける石川を相手に山本は2敗しており相性が良くない。石川が志々目と潰しあう準々決勝がその後の展開を占うひとつの山場となりそうだ。

高藤は反射神経抜群、背負投と袖釣込腰に内股、小内刈、横落、巴投と多方向に「一本」を狙える投技があり、カウンターの掬投も取り味十分。間違いなく世界一を狙える素材だが、このタイプの選手は一気に頂点まで行かないと停滞が長くなる場合がある。昨年までの規格外の勢いが続くのか、勝ったり負けたりを繰り返し一旦階級の序列に収まってから今後の数年間を戦うことになるのか。リオまでの4年間の立ち位置が見えるシーズンになるのは確実で、実は今回は正念場のはずだ。

志々目は地力抜群。「いつか投げれる」というような乱取りまがいの試合を繰り広げてしまったため学生体重別は落としたが、実力は疑いなく、この大会で捲土重来を期す。川端は負傷続き、そのせいか怖いもの知らずの元気の良さが売りのこの選手が、今年はおとなしい試合が続いている。春以降はインパクトのある戦いが出来ておらず、キャリアの中で国際クラスの成績を残したのは結局11年11月からの数ヶ月のみ。上位戦線に残り続けることができるかどうか今大会が分水嶺だ。

この階級は山本を始めとする若手全員の失速がベテラン平岡のロンドン五輪出場決定を後押しした感があり、五輪ブレイク前に勢いに乗っている選手はいなかった。平岡がいったん離脱し階級の序列が再構成される今大会は誰にとっても正念場。抜け出すのは誰か、非常に面白い階級だ。

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写真:昨年旋風を巻き起こした高藤。
このまま走り抜けるのか、
階級内の序列に収まるのか勝負の大会
■組み合わせ

【Aブロック・Bブロック】
Aブロックは山本の山。山本は2回戦で西尾亨祐(天理大4年)、準々決勝でジュニア王者の大島優磨(国士舘高3年)の挑戦を受ける。

逆側のBブロックは石川と志々目が準々決勝で激突。いずれが勝ち上がっても山本との相性は悪くなく、準決勝は激戦必死。注目だ。

【Cブロック・Dブロック】
Cブロックの高藤は初戦で島達人(筑波大3年)か澤田涼(国士舘大3年)という学生の強豪と対戦、3回戦は廣瀬裕一(兵庫県警)と戦うことが有力だがここは問題なく勝ち上がりと思われる。

Dブロックの川端は3回戦で山場。学生体重別2連覇の木戸慎二(日体大4年)と矢野大地(パーク24)の勝者との対戦が待ち受ける。

【準決勝-決勝】
上側の山は山本と、石川もしくは志々目の対戦が予想される。山本にとってはどちらも難敵だが実績を考慮すれば事前予想は山本か。ただし、選抜誰が勝ってもおかしくはないところである。実業個人を獲った石川、学生2位の志々目はここまで試合を積んできておりある程度パフォーマンスの予想がつくが、選抜体重別以降のオリンピックブレイク期間で試合をしていない山本の出来がどうか、上積みはあるのか。このあたりからハッキリしてきそうな気配である。

下側の山は高藤と川端と予想されるが、川端のパフォーマンスは未知数。木戸、矢野ともに好選手でまずはここまで辿り付けるかどうか。今期の川端の不安定さを考慮してここは高藤の勝利の可能性が高い。

決勝は上側の山から誰があがってくるかが大きく試合を分ける。山本ならば勝利の可能性濃厚、石川、志々目であれば高藤にチャンスが生まれてくるだろう。


優勝圏内に強豪ミッシリの混戦階級、森下は国内初制覇目指す
66㎏級

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写真:10年世界選手権優勝の森下純平。
まだ国内シニア大会を制した経験はない
■有力選手×概況

ロンドン五輪銅メダリストで世界団体選手権でも3試合に出場と皆勤の海老沼匡(パーク24)は出場免除。

10年東京世界選手権王者の森下純平(筑波大4年)が第1シードで優勝候補筆頭。昨年グランドスラム東京を制した高上智史(日体大3年)が第2シードに入っており、対抗ということになる。

この階級は男子きっての人材密集階級。60kg級で10年世界選手権代表を務めたベテラン福岡政章(ALSOK)に小倉武蔵(了徳寺学園職)、今期学生王者で10年に講道館杯を制している小寺将史(筑波大4年)、国際大会でも活躍する吉田惟人(神奈川県警察)、10年選抜体重別2位の前野将吾(旭化成)までは十分優勝圏内。

若手ではインターハイ2度優勝の大物・橋口祐葵(延岡学園高3年)、清水健登(山梨学院大3年)らに上位進出の期待が掛かる。

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写真:昨年グランドスラム東京を
制した高上
■組み合わせ

【Aブロック】
森下の初戦(2回戦)は今期実業個人を制している浅野大輔(自衛隊体育学校)という厳しい組み合わせ。相手を封殺する組み手と一発を繰り出す勝負どころの見極めが巧みな浅野はオープニングゲームの相手としては非常に厄介なはずだ。森下は先の学生体重別団体優勝大会で高上を内股透「一本」で下す技の切れ味を見せながら本間大地(東海大)に「指導2」で敗退するなど相変わらずの不安定さを払拭できていない。まずここをしっかり勝ちあがりたいところ。

下側の山は11年ジュニア王者の竪山将(鹿屋体育大1年)と本間大地が戦い、勝者と清水が戦うという学生の強者3人によるマッチレース。順当であれば清水が準々決勝で森下に挑むことになる。

【Bブロック】
吉田の山。順当なら準々決勝進出まではまずまず堅い。
逆側の山では小倉が2回戦でジュニア王者丸山城志郎(天理大1年)の挑戦を受けるが、ここは小倉が問題なく勝ち上がるのではないだろうか。準々決勝は吉田-小倉。強者同士の対決だが間断なく攻撃を仕掛けられる小倉にやや分があるのではないかと見る。

【Cブロック】
シードの高上は面子からして順当に準々決勝勝ち上がりを決めるはず。
逆側の山では2回戦で前野と橋口という好取り組みがある。順当なら前野だが、どこからでも一発の飛び出す橋口は面白い試合をしてくれそうだ。

【Dブロック】
シード選手は福岡。逆側の山は大激戦で小寺が一回戦で青木勇介(パーク24)と対戦、勝者は高市賢悟(東海大1年)と警察王者の三原弘士(警視庁)のいずれかと戦うという激戦区。誰が勝ちあがってもこの時点での消耗は必至だ。
実績と実力の最高到達点から考えれば最有力は福岡だが、小寺はかつてに比べて体捌きのレベルがあがり、学生体重別を制して勢いに乗っている。順当なら世界団体でも活躍した福岡だが、増した地力と勢いを買ってここは小寺を推しておきたい。

【準決勝-決勝】
森下-小倉(吉田)、高上-小寺という顔合わせが有力。

全員が飛び道具を持つ、一瞬も気を抜けない選手が揃った。
唯一の内股系である森下と、担ぎ技のバリエーションの数で一歩勝る高上は展開に変化をつけられる存在でやはり面白い。
誰が勝ってもおかしくない戦い、一度の判断ミスが即「一本」につながる選手ばかりで準決勝以降はいずれの試合も見逃せない緊迫した試合になるだろう。


大野ら若手に存在感、2番手グループの世代交代なるか
73㎏級

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写真:選抜体重別2位の大野将平
■有力選手×概況

秋本啓之(了徳寺学園職)と中矢力(ALSOK)の両世界王者は出場せず。2番手グループによる次代の主導権争いとなる。

昨年の世界ジュニア選手権王者で今期の選抜体重別2位の大野将平(天理大3年)が第1シード。1番手グループはこの大野に10年世界選手権銅メダリストで11年の選抜体重別王者粟野靖浩(了徳寺学園職)、西山雄希(筑波大3年)、昨年王者の大束匡彦(旭化成)に中村剛教(山梨学院大4年)。これに絡むのが今期実業王者の西岡和志(京葉ガス)、六郷雄平(明治大3年)、齋藤涼(旭化成)、昨年2位で今春は無差別の全日本柔道選手権に出場を果たした榎本収(新田高教)、昨年3位で今期は学生体重別を制した太田慶一(東海大4年)ら。挙がる選手の名前の多さでわかる通り、この階級も大混戦だ。

国際大会で抜擢を受け続けた大野はここで国内シニアのタイトルを獲得して新強化体制下でも地固めをしたいところだが、倒すべき敵はあまりにも多い。

階級全体としては、大野を軸に、同学年でかつてはロンドン候補と騒がれた西山、ライバルの六郷、学生きっての強者で国際大会でも実績を残sしている中村、これら強者を抑えて学生体重別を制した太田など大学生グループの存在感が非常に増している。百戦錬磨の粟野に実業で揉まれている斉藤や西岡、昨年復活なった榎本らのベテラン勢がこれを再び叩き潰すのか、世代交代の流れは進行するのか、このあたりが興味深い。

ニューカマーでは全日本ジュニアを制した佐藤慎太郎(桐蔭横浜大2年)、インターハイを制した磯田範仁(国士舘高2年)にも注目。

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写真:11年選抜体重別優勝の粟野。
負傷続きだが今大会で捲土重来を期す
■組み合わせ

【Aブロック】
大野の山。2回戦の六郷雄平戦が最初の山場。
逆側はベテラン榎本に、ジュニア王者の新鋭佐藤が挑み、準々決勝での大野への挑戦権を掛ける。

【Bブロック】
準々決勝は西山雄希と斎藤涼の一騎打ち。西山は美しい内股を武器に3年前からホープの扱いを受けてきたが線の細さを払拭できず未だブレイクに至らず。勝負どころを心得た百戦錬磨の斎藤の前に今回はどのような試合を見せるか。優勝を占う意味でも見逃せない一戦。

【Cブロック】
シード位置は粟野。ここ2年と負傷に苦しんできた粟野の初戦は実業個人決勝で西岡和志を相手に再三「跳び十字」を仕掛けた曲者・丸山兼矢(東芝プラントシステム)。逆側の山からは太田慶一の勝ち上がりがほぼ確実、11年インターハイ王者の星光(國學院大1年)は田村和也(パーク24)と初戦を戦い、2回戦での太田との対決を目指す。

【Dブロック】
シード位置には大束。
逆側の山は中村剛教が配されたが、いきなり橋本壮市(東海大3年)と初戦を戦うという厳しい組み合わせ。さらに勝ち上がると西岡和志との潰しあいが待ち受ける。
この山にはインターハイ王者の磯田も配されているが、初戦がおそらく西岡。高校2年生の磯田には少々荷が重い印象だ。

【準決勝-決勝】
準決勝は大野(六郷)-西山(斎藤)、粟野-大束ということになる可能性が高いが、選抜体重別以降試合を行っている選手が少なく予想は非常に難しい。

パワーは大野、技は西山、地力と安定感は斉藤、最高到達点の高さでは粟野、経験は大束とそれぞれにストロングポイントがある。
今後のこの階級を考えると大野、六郷、西山ら若手に頑張ってもらいたいところだがどの選手も比較的好不調の波が激しくムラ気。試合巧者のベテラン勢を突破するには勢いに乗ってここまで勝ち上がってくることが必須、ここまでの「勝ち方」でかなり試合の様相が見えてくるのではないだろうか。

V争いは川上が軸、永瀬と小原のジュニア世代2人に注目集まる
81㎏級

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写真:グランドスラム東京を制し、
一時はロンドン五輪候補一番手と
評された川上
■有力選手×概況

優勝争いの軸は11年グランドスラム東京王者の川上智弘(國學院大職)と、川上と昨年激しいマッチレースを繰り広げた長島啓太(日本中央競馬会)、実力者花本隆二(京葉ガス)の3人。これに実業王者で4月の全日本選手権にも出場を果たした平尾譲一(パーク24)、試合技術が売りの春山友紀(国士舘大4年)、選手間の評判の高い海老泰博(旭化成)、垣田恭平(旭化成)、学生の期待枠として大辻康太(埼玉大4年)、中川裕喜(日本大4年)が絡むというのがこの階級の展望ということになる。
が、優勝争い以上にこの階級は全日本ジュニア決勝で合間見えた永瀬貴規(筑波大1年)と小原拳哉(東海大相模高3年)の大物ルーキー2人の活躍が大きなみどころ。
ともに現在は伸び盛り、畳に姿を現すたびにメキメキ力をつけている印象で、特に永瀬は10月末に行われた学生体重別団体優勝大会では無敵と形容したいほどの強さを見せた。ともに組み合わせは楽ではないが、「狙っている」ことは間違いない。シニアの強豪を相手にどのような試合を見せてくれるのか、初戦からこの2人には大注目だ。

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写真:昨年同大会優勝の長島。
連覇で序列から抜け出すか
■組み合わせ

【Aブロック】
第1シードの川上の山。1回戦で小出満(警視庁)、2回戦で松本雄史(兵庫県警)と対戦するという油断のならない組み合わせ。
逆側の山には小原が配されたが、1回戦の相手は学生きっての強豪中川裕喜、勝つと平尾譲一(パーク24)が待ち受けるというこの上なく厳しい組み合わせ。いかに小原が伸び盛りでも、高校生がこの2人を突破して勝ち上がることは非常に難しい。

準々決勝は順当なら川上-平尾。勝ち上がりは技が切れ、平尾のフィールドである泥臭い試合も厭わない川上と見るのが妥当だろう。
ただし今期まだほとんど試合をしていない川上に対し、全日本選手権以降実業団体に個人と泥沼の試合を勝ちあがってきた平尾は上り調子。揉める要素は十分だ。

【Bブロック】
シード位置は春山。準々決勝までの勝ち上がりはまずまず堅い。
逆側の山には11年ジュニア王者の丸山剛毅(天理大2年)、こちらは垣田恭平との2回戦が勝負どころ。この試合は拮抗と見るが、ガップリ持つことを志向する垣田の場合は春山の組み手の好餌。丸山の場合も組み手のロジック、手順の途中で攻める技種も春山のほうがやや上か。勝ち上がりは春山と見る。

【Cブロック】
1回戦で長島と花本が激突するという過酷な組み合わせ。勝利したほうが準決勝までそのまま勝ちあがる可能性が非常に高い。ともに正統派で技が切れるタイプだが、やや線の細い花本に対して長島が主導権を取る試合になるのではないだろうか。実力拮抗だが昨年からの実績を考慮すると長島が勝ち上がる可能性が高い。

【Dブロック】
永瀬が1回戦で学生王者の大辻とマッチアップ。目の離せない注目対決だ。
勝者は準々決勝で海老との対戦の可能性が大。
とにかく今の永瀬には勢いがある。まだ大学1年生であるが、準決勝まで勝ち進んでも全くおかしくはないだろう。

【準決勝-決勝】
川上-春山、長島-永瀬の対戦を予想する。

川上は本来のパフォーマンスを発揮すれば決勝への勝ち上がりは濃厚。
長島も永瀬の爆発力に慌てずに試合が出来れば決勝進出の可能性が高い。ケンカ四つでもあり、長島がソリッドな展開を志向すればアクシデントの起こる可能性は低いのではないだろうか。

川上-長島の決勝が実現するならば昨年とカードは同一。このときはGS延長戦の大内刈「有効」で長島が勝利している。
昨年の対決は川上、長島ともに五輪への出場の可能性があるということで調整十分、キレキレの状態で戦った攻め合いだった。ともにすでにシニアでの優勝経験がある2人が現時点でどれだけのモチベーションを持って大会に臨めているか、これが最後に勝負を分けるのではないだろうか。


加藤、吉田にベイカー、旬の役者が揃い踏みの最注目階級
90㎏級

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写真:全日本選手権と全日本選抜体重別と
最高峰大会を2つ制した加藤博剛
■有力選手×概況

まず、全日本選手権と選抜体重別を制した加藤博剛(千葉県警)がどのような勝ち方を見せるか。
次に、旭化成入社後明らかにパフォーマンスの上がっている吉田優也の戦いぶり。
そして階級最大、ひょっとすると今大会でもっとも大きなトピックが高校世代のモンスター、ベイカー茉秋(東海大浦安高3年)のシニアデビューだ。

春に国内最高峰の2大会を制した加藤はこの時点でまさしく無敵の強さ。が、直後のグランドスラムモスクワではチョリエフ(ウズベキスタン)の前に初戦で一本負け、9月のワールドカップタシケントでも優勝ならず、国際大会で勝てないという評価を未だに払拭できていない。世界選手権を狙うには国内で勝ち続け、なおかつグランドスラム東京から始まる国際大会シリーズで力を見せるしかない。勝ちぶりはもちろん、今大会はまず優勝という結果で国内最強の地歩をしっかり固めたいところだ。

吉田優也は大学時代本格ブレイクするには至らなかったが、6月の実業団体ではこれまでとは段違いの鋭い動きを披露、決勝では世界選手権無差別覇者上川大樹(京葉ガス)から体落で「一本」を奪ってチームの優勝に貢献、9月のワールドカップタシケントでも加藤博剛を同じく体落「一本」で屠り優勝を果たしている。これが一過性のものなのか、高校時代天才とうたわれた吉田についに訪れた本格ブレイクなのか、この講道館杯で見えてくるはずだ。

そしてベイカー。高校選手権と金鷲旗、そしてインターハイと団体・個人とも全ての試合を圧勝、しかも「一本」を奪えなかったのは1試合のみと高校カテゴリでは向かうところ敵なし。体調不良で臨んだ全日本ジュニアでは予選で一本勝ちしている小林悠輔(筑波大1年)の内股に嵌って敗退したが、アクシデントに近い一発だったこともありいまだその強さのスケールは測れていない。
この全日本ジュニア、そして10月の国体とややパフォーマンスを落としており、精神面にもブレの見られる試合が散見されたが、ここに来て再び絶好調との事前情報。春の段階からフォーカスしていたこの講道館杯でどこまでやれるか、いよいよベイカーの実力の現在地が規定される場だ。

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写真:いまだ底の見えない
モンスター高校生、ベイカー
■組み合わせ

【Aブロック】
加藤の山。初戦(2回戦)は斎藤俊(新日本製鐵)。
そして逆側にベイカーが配された。ベイカーは門脇直生(埼玉大3年)と1回戦を戦った後、階級を上げてきた高松正裕(桐蔭学園高教)と中西努(神奈川県警)の勝者と対戦、勝ち上がれば早くも3回戦で加藤と激突する。

様相は想像し難い。どちらも向こうっ気の強さが売り、パワーを生かすためなら肩越しのクロスに脇差しと変則組み手も厭わない。
加藤も高校生ながら実業団の有力選手を稽古で屠り続けているベイカーの評判は聞いているであろう。試合が縺れるようなら「壊しにいく」ことすら厭わないのではと一種の緊張感漂うカードだ。外野席のファンとしては大番狂わせに期待したいところだが、事前予想は穏当に加藤を推しておく。ただし、現在のベイカーであればたとえ相手が全日本覇者でも何かを起こしてくれる可能性、皆無ではない。

【Bブロック】
11年選抜体重別の覇者穴井亮平(了徳寺学園職)の山。
逆サイドには山本宣秀(日本中央競馬会)がいる。山本は6月に手指の開放骨折という大怪我を負っているが、回復が順調であればここは穴井と山本が準々決勝を争うことがほぼ確実。相手の良いところを消しながら戦える穴井が勝ち上がる可能性が高い。

【Cブロック】
吉田の山。初戦は、北野裕一(國學院大4年)と長尾翔太(兵庫県警)という階級きっての曲者同士の勝者と対戦する。北野には学生時代に団体戦で引き分けられた履歴があるが、現在の吉田であればどちらが来てもまず問題なく勝ち上がりそうな気配だ。
準々決勝は池田賢生(日本中央競馬会)が相手か。新卒の池田は実業団体で存在感を見せ、8月の実業個人を全試合「一本」で制したばかり。吉田にとってはまさに関門、この試合が正念場だ。

【Dブ゛ロック】
スケール感ある柔道で学生体重別を制した長身選手・下和田翔平(日体大4年)の山。初戦の森田晃弘(警視庁)戦に勝利すればベスト4進出は現実的だ。

逆側の山は巧さと強さを兼ね備えた穴井航史(東海大4年)がジュニア王者大町隆雄(大牟田高3年)の挑戦を受ける。穴井の勝ちは動かないと見るが、強者相手にも一発もぐりこむ質の担ぎ技がある大町がどこまでやれるかが見ものだ。

【準決勝-決勝】
加藤(ベイカー)-穴井亮平、吉田優也-下和田というカードが予想される。
誰が出てきても面白い。五輪代表西山将士の不在を超えて、今後数年の階級の様相が決定づけられる2戦と言えるだろう。


国際級は欠場でやや寂しい顔ぶれ、V争いは実業王者の熊代が軸
100㎏級

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写真:実業王者の熊代佑輔が
第1シードに座る
■有力選手×概況

ロンドン五輪代表の穴井隆将(天理大職)は欠場、後釜を張るべき高木海帆(東海大4年)に羽賀龍之介(東海大3年)も負傷のためエントリーせず、この階級の顔ぶれはいささか寂しい。

優勝争いは8月の実業個人を圧勝で制した熊代佑輔(ALSOK)が軸。
これに3月の東京選手権で高木海帆、5月の選抜体重別で羽賀龍之介に勝利している浅沼拓海(国士舘大2年)、内股職人小林大輔(ALSOK)、九州無差別1位の増渕樹(旭化成)らが絡むという様相だ。

ほか有力選手は階級を上げて参戦のベテラン小野卓志(了徳寺学園職)、学生では羽沢頼誠(国士舘大4年)、制野龍太郎(日本大4年)、選抜体重別で増渕を破った七戸虎(福岡大4年)、ジュニア世代では小川竜昂(国士舘大1年)と石内裕貴(天理大1年)、出場最年少の田崎健祐(国士舘高2年)に注目。

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写真:春先は出色のパフォーマンスを
見せていた浅沼拓海
■組み合わせ

【Aブロック】
熊代の山。準々決勝までは無風と見る。
逆側の山は階級アップの小野卓志が上げ潮の制野龍太郎と初戦で対戦。小野が100kg級でどれくらいやれるのか、伸び盛りの制野の破壊力が小野に通じるのか、非常に興味深い対戦。この対戦の勝者が小川竜昂戦を経て、熊代と戦うことになる。

【Bブロック】
浅沼の山。初戦から後小路裕朗(福岡県警)と金子亮平(筑波大3年)の勝者というなかなかに厳しい組み合わせ。
浅沼はこのところパフォーマンスを落としているが、春先に見せた地力と大胆さが出てくれば、勝ち抜けは現実的と見る。
逆側の山は七戸、田崎、沼田貴廣(センコー)の争い。ここから七戸が抜け出し、浅沼が勝利して準決勝進出と予想したい。

【Cブロック】
小林大輔の山。この山に学生王者の羽沢、実業2位の野田嘉明(旭化成)がセットされており、逆側は谷井大輝(東海大2年)、宮崎賢司(桐蔭横浜大4年)のうるさい学生2人に新鋭石内、木下泰成(兵庫県警)という組み合わせ。小林か野田の勝ち上がりの可能性が高い。

【Dブロック】
増渕の山。初戦は団体戦で存在感を示してきた学生の強豪小林督之(天理大4年)、3回戦は藤原浩司(筑波大4年)、準々決勝は寺島克興(京葉ガス)との対戦が予想される。相手の良いところを消しながら攻めてくる寺島はやりにくい相手だが、ここは順当に増渕の勝利を予想する。

【準決勝-決勝】
熊代-浅沼、小林-増渕というのが最も現実的なカードと見る。
いずれも強豪だが、それぞれの直近の試合のパフォーマンスを観察(時期は選手によって大きくずれるが)すると熊代が抜け出す可能性が高そうだ。

試される七戸の完成度、若手は学生王者の原沢に注目
100㎏超級

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写真:選抜体重別を圧倒的な
パフォーマンスで制した七戸龍
■有力選手×概況

ロンドン五輪代表の上川大樹(京葉ガス)は出場せず、昨年王者で全日本選手権準優勝のホープ石井竜太(日本中央競馬会)もエントリーを回避した。
優勝争いの軸は選抜体重別王者の七戸龍(九州電力)。これに挑むのがシニア強化選手百瀬優(旭化成)、実業個人王者の西潟健太(旭化成)、世界ジュニア王者王子谷剛志(東海大2年)、10年全日本選手権王者の高橋和彦(新日鐵住金)、そして原沢久喜(日本大2年)ということになる。

このうち次代のトップを担う素材として注目を集めるのは七戸、原沢、王子谷。

圧倒的なポテンシャルの高さを見せて選抜体重別を制した七戸龍は以降、実業団体で所属の九州電力を二部優勝に導き、10月末の世界団体選手権では強豪サイドフ(ウズベキスタン)を大外刈「一本」に屠るなど、活躍の舞台は少ないものの力はしっかり見せ続けてきた。次のステージは明らかに国際大会の舞台を数多くこなすことで、この講道館杯はその「枠」を勝ち取るための最終試験と位置づけられる。これまで数々の大会でポテンシャルの高さを見せ付けてきた七戸は今回は第1シード位置から「狙って勝つ」ミッションが求められる。結果が絶対という点では、現時点で、ポテンシャルだけでなくどこまでの完成度を見せることができるかが求められると言えるかもしれない。

原沢は今期の学生王者、全日本学生優勝大会で2位と躍進した日大の象徴的存在だ。190cmの長身を利して、パワーと技の切れで勝負する正統派重量級タイプ、ケレン味のない技の組み立てだけで2年生にして学生体重別を圧勝と評して良い内容で制している。
素材は間違いなくA級。現在は長身を生かして戦っているが、巨漢揃いの国際大会でこれが通用するか。少しでも早く海外戦を経験させておきたい、この時点で是非その権利を獲ってもらいたい選手である。

王子谷は原沢と同学年、インターハイにジュニアと原沢の頭を潰し続けてきたライバルだ。今回は第2シード位置に座り、虎視眈々と初優勝を目指す。

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写真:大物感溢れる柔道でホープ候補に
名乗りをあげる原沢
■組み合わせ

【Aブロック】
七戸の山。
逆側の山はジュニア王者の飯田健伍(山梨学院大1年)に遠藤翼(国士舘大1年)、辻玄太(旭化成)という顔ぶれで、まずまず七戸の勝ち上がりは堅い。

【Bブロック】
高橋和彦の山。
逆側の山には原沢が配され、村上拓(国士舘大2年)と初戦、上田轄麻(明治大1年)-赤迫健太(早稲田大4年)の勝者と戦い、準々決勝で高橋に挑戦する。

190cmの長身の原沢だが、高橋も187cmの巨漢。原沢の現在位置を把握するにはこの上ないカードで、ここはトーナメント全体を通じた大きな山場。必見である。

【Cブロック】
王子谷の山。シード漏れした西潟が直下におり、初戦での対戦はほぼ確実。
かつては100kg級が主戦場だった西潟だがウエイトトレニーングで増量しいまや120kgオーバー。193cmの「長身選手」が「巨漢選手」に転身を果たし、その膂力の強さは並々ではない。担ぎ技もある王子谷ではあるが、もし西潟に頭を下げられるようだと非常に苦しい展開が待っている。どちらが勝ってもおかしくない好カードだ。

逆側の山では高校2冠の横山尭世(国学院栃木高3年)がシニアデビュー。初戦で住谷秀貴(関西大4年)、3回戦で岩尾敬太(国士舘大4年)に挑戦する。

【Dブロック】
百瀬の山。2回戦で奥村達郎(東海大3年)、準々決勝では藤井岳(慶応義塾大3年)、児玉雄一(明治大4年)、井上貴裕(国士舘大2年)、ベテランのかん沢優太(富山県警)の勝者と対戦するが、現時点の百瀬の地力と技術を持ってすれば敗退は考えにくい。勝ち上がりは百瀬だ。

【準決勝-決勝】
七戸-高橋(原沢)、王子谷(西潟)-百瀬で準決勝を争い、おそらく七戸と百瀬が決勝を戦うことになるだろう。

典型的な「二本持ちさえすれば」という選手である七戸にとって、組み手がイコール攻撃として組み立てられている百瀬のような選手はもっともやりにくいはず。普通に考えれば、パワーをバックグランドに組み手で嵌め、ひたすら一方的に優位な状況を作り上げながら鉈を振るってくる百瀬が展開上は有利だ。

七戸が、これを突破する論理、イコール海外勢のパワーに対抗しうる技術があるかどうか。嵌れば誰でも吹き飛ばす技の威力を持つ七戸、試合中必ず1度はチャンスが訪れると思うが、それを決めることができるか、そして結果以上にそのチャンスが、偶然ではなく、パワーなり組み立てなりで七戸が自ら作り上げたものであるかどうか。七戸の可能性を探るべく、ここに注目して試合をみつめたい。




※eJudo携帯版「e柔道」11月8、9日掲載記事より転載・編集しています。

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