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【eJudo's EYE】井上康生氏が男子監督就任、難局に敢えて飛び込む使命感に拍手

(2012年11月8日)


※eJudo携帯版「e柔道」11月7日掲載記事より転載・編集しています。

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【eJudo's EYE】井上康生氏が男子監督就任、難局に敢えて飛び込む使命感に拍手

まずは「良くぞ受けてくれた」とその勇気に感謝したい。オファーを決断した全日本柔道連盟の英断はもちろんだが、それ以上にこの難局に飛び込んでくれる覚悟を決め、それを受諾した井上康生氏にいち柔道人として拍手を送りたい。我々はもう一度日本柔道に希望を持つことが出来る。感謝、涙、拍手だ。

全日本柔道連盟は5日、井上康生氏の全日本男子新監督就任を発表した。もと強化委員長にして新設の強化担当理事である吉村和郎委員長の「(続投は)当然そうだ。」という発言もあり、篠原信一監督の留任が規定路線と見られていた情勢下、サプライズと言って良い人事となった。

就任記者会見に臨む井上康生氏
写真:就任会見に臨む井上新監督
ロンドン以後、沸騰する篠原監督批判の中で、では派閥や人間関係、序列といった現実的な情勢をまったく抜きに、誰が新監督になったら柔道界が活性化するか、という質問を柔道人に行ったとしたらおそらく圧倒的多数が「井上康生」と答えたであろう。少なくとも筆者の狭い交友関係の中では、100%に近い人間がその名前を挙げていた。それは井上の評価と人望を物語るとともに、逆説的にはそれが人間関係や序列を考えれば実現の可能性が低い「ドリーム」であったことを示している。

篠原監督の評価、そしてその留任辞任の是非はさておき、一般社会の目には柔道界は手詰まり状態にあると映っていたはずだ。実際に、競技成績の不調のみならず、止まらない競技人口の減少に柔道事故、国際舞台での発言力低下と柔道界にはかつてないほどの閉塞感が漂う。強化だけを考えれば(正当な検証を行った上でのという条件節を加えたいが)篠原監督留任、または他の人物の起用という手も十分あり得たとは思う。が、ここで敢えて若い井上氏を抜擢したこと、そして監督を代えるという行為自体で社会に対して「柔道は変わる」「五輪の金メダルゼロを容認しない」というメッセージを発したことの意義は大きい。この点、新旧両監督の資質とは別の次元で連盟の意思を高く評価する。柔道は現状に甘んじない。少なくともこの意思は社会に十分伝わったはずだ。

さて、五輪以外は柔道競技を見ないという向きの方にここで言っておきたいのは、井上新監督の就任は「順送り人事」では全くないということである。現時点での男子代表監督就任は明らかに火中の栗を拾う行為であり、井上自身もおそらくはそのリスクをはっきり意識して、それでも、なおかつ敢えてこれを受けたということである。柔道界以外では「なぜ誰それでないのか」「全日本覇者でないと監督になれないのか」というようないささか意外な評もあるようなので、ここでこの見解はハッキリ申し述べておきたい。井上は自己犠牲的な使命感を持って、全日本監督就任のオファーを受諾したという構図が今回の就任劇の捉え方としては妥当ではないだろうか。

ただでさえ日本代表監督という仕事は、勝って当たり前、負ければ圧倒的な批判に晒されるという過酷な仕事である。そしてご存知の通り、全日本男子はロンドン五輪で史上初の金メダルゼロという結果に終わったばかり、間違いなく未曾有の難局にある。状況は悪い。「これ以上落ちることはないから後は上がるだけ」というような暢気な局面では全くない。

井上は圧倒的な強さと実績、そして何より万人を魅了する美しい投技で世界に君臨した希代のスターである。おそらく代表監督という泥に塗れる仕事を請けなければ、このまま死ぬまでスターであり続けられる存在であろう。
この状況での受諾は、井上の人生だけを考えれば控えめに言っても得とはいえない。さらに年齢的な立ち位置で考えれば井上は「次」を一回挟んだ後に代表監督になるべき存在、ここで固辞したとしてもなんら不思議ではないし、実際に打診された段階で断った(それはそれで健全な判断だが)人物もいると聞いている。

しかしそれでも、井上は敢えて受けた。本人が「覚悟して受けた」としか語っていない現状ではその心中は推測するしかないが、現監督が留任を固辞し、候補と噂された人物も打診の段階で回避。五輪の検証も公開されず強化体制へのバッシングは増すばかり。社会が、そして一般の柔道人が希望を失いつつあるこの状況で、前倒ししてでも自分が受けなければもう日本柔道は持たないという危機感、使命感があったのではないか。

全柔連にはその「英断」、井上に対しては「敢えて火中の栗を拾う使命感と勇気」と両者を称えて、今回の新監督就任劇の評としたい。

さて、前述の通り、井上は文字通り柔道界の切り札。今のところ、井上-鈴木世代の下にこれを上回るような、一般社会へのインパクトを持つカリスマヒーローは誰もいない。柔道界としては、本来であれば確実にそのミッションを成功させるべく相応のビッグネームを1人挟んで屋台骨を立て直した後に、満を持して登場させたい人材であったはずである。この時点で、本来4年後、8年後に繰り出すべき最強カードを前倒して切ってしまった柔道界はもはや失敗するわけにはいかない。本人のみならず、日本柔道界にとってもまさしく背水の陣である。

井上新監督には、とにかくやりたいことを遠慮なく思い切りやってもらいたい。
そしてこの「背水の陣」であることを前提に、連盟、そして全ての柔道人に渾身のバックアップをお願いしたい。
選手の信望厚い井上と、若い選手たちが織り成す日本柔道の復活劇、そしてその波及強化による柔道自体の地位向上に大いに期待する次第だ。 まだまだ柔道は、面白くなりそうだ。

最後に一つだけ。「ゴング格闘技」誌での編集長対談記事も含め、eJudoはファンとしての立場から一貫して五輪に向けた取り組みの報告と結果の検証、詳細レポートの明示を求めてきた。高い精度での検証が行われ、その結果と対策が公開されることが強化体制継続の条件であるべきだと主張してきた。それは日本柔道の「現在地」を多くの愛好家に知らしめてその理解を仰ぐことが柔道を復活させる、柔道を応援し続けてもらえる第一条件と考えたからである。井上康生という人気と実力を兼ね備えたスター監督の登場というインパクトの大きいイベントでこの点がうやむやになってしまうのであれば日本柔道の巻き返し、そのそもそものスタート地点は半歩後退である。精度の高い検証は井上、園田両監督とも立て直しの絶対必要条件に挙げている事項でもある。改めて、検証レポートの公開を強く求めたい。

文責:古田英毅



※eJudo携帯版「e柔道」11月7日掲載記事より転載・編集しています。

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