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全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート 決勝

(2012年9月12日)


※eJudo携帯版「e柔道」7月12日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート 決勝
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東海大は7年連続の決勝進出。第1シードながら昨年同様厳しい組み合わせだったが、2回戦で近畿大を6-1、3回戦で國學院大を5-0、準々決勝で筑波大を3-1と難敵をしっかり降し、準々決勝では東京予選で苦杯を喫した明治大を2-1で振り切って勝利。上水研一朗監督就任以来この優勝大会は4連覇、この決勝で61回の歴史の中でただの1チームも成し遂げたことのない5連覇に挑む。4年生の大黒柱・高木海帆を怪我で欠き、エースの羽賀龍之介も負傷明けとチームは完璧な状態ではないが、戦力の厚さはやはり他を圧するものがある。

一方の日本大はまさに今大会の台風の目。
1回戦で関東学園大を7-0、2回戦で順天堂大を5-1、3回戦で福岡大を5-2といずれも高得点で降すと準々決勝は強豪天理大を大将戦で振り切って3-2で勝利、準決勝は本命の呼び声高かった国士舘大も食って見事19年ぶりの決勝に駒を進めた。勝ち負けに沸き起こるベンチとスタンドのリアクション、そして時には強気に、時には歯を食いしばって敵に噛み付く選手の表情からは高い団結が感じられチーム作りの成功は明らか。劇的勝利を重ねた勢い、そしてこれを利することの出来るチームのまとまりの良さとまさに波に乗って平成9年大会の優勝時以来の決勝進出を決めてきた。

開示されたオーダー順は下記。

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写真:開始の声を待つ東海大、
切り込み役を任された3人
東海大 - 日本大
(先)渡邉勇人 - 原沢久喜
(次)王皓 - 古園井新成
(五)豊田竜太 - 中川裕喜
(中)穴井航史 - 片岡仁
(三)王子谷剛志 - 制野孝二郎
(副)長澤憲大 - 稲田基
(大)羽賀龍之介 - 制野龍太郎

東海大は中盤から後ろ重心、日本大は軸足を前に置き、信頼のおける制野龍太郎を後詰めに配する布陣。

東海大はやや意外なオーダー。
同大の戦力を団体戦の取り味で色分けすると、大駒が羽賀と王子谷の2枚、派手な勝ちもないが試合を間違わない安定感のある駒が穴井と1年生の長澤、そして攻撃力はあるが穴もあるという勝負の駒が王、豊田、渡邉の3枚。

そのうち、「攻撃力もあるが穴もある」3枚を先鋒から五将まで3人連続で並べてきた。それぞれの長所を挙げればイケイケでチームを鼓舞することが出来る渡邉と圧殺しながら得点を狙える王、豊田ということになるが、逆に弱点を挙げれば「やや経験不足で体重も軽い渡邉、体格と裏腹のもろさを併せ持つ王、豊田」ということになる。軽重量級で安定感のある駒である野村幸汰と奥村達郎を下げ、軽量の渡邉に小回りの効かない王に豊田とリスクのある選手をこれだけ並べてくるのはそれぞれの長所を買った「性善説オーダー」とも言えるだろう。

しかしこの3枚の後にもっとも安定感のある穴井を置く手当ても見せており、後半戦へのつなぎは意識している。選手1人の能力、前半後半のブロックごとで完結させるのではなく、7人全体の並び順でリスク管理をしたという体のオーダー。先行が大前提であるはずの団体戦で前3人に不安定な選手を並べるというのは一見異様、それだけ後半の4枚に高い信頼を置いているという見方も出来るが、高木を欠いた上に野村と奥村の重量級2枚の調子が上がらない状態では他にオーダーの仕様がないとも言える。層の厚さが売りの東海大だが見方によってはカツカツとも言えるオーダー順だ。

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写真:決勝開始、
先鋒に起用された2年生エースの原沢
一方の日本大は、準決勝でレイズカヨルが負傷しこれも苦しい布陣。薄くなった前線をオーダー順でカバーすべく先鋒に原沢久喜、次いで前2戦で大活躍した古園井新成と中川裕喜と乗っている選手を3枚前に持ってきた。

ここまでの2試合は7戦トータルで噛み付き続けて消化試合を作らせず常に畳上の一戦を「勝負」のステージに置くことで相手を疲弊させ、辛抱勝ちしてきた同大だが、この試合は先行して点を重ねて、リードを前提に試合を終わらせるというプランか。劇的勝利を重ねてきた日本大は会場の空気を完全に味方につけており、前重心はひとつの考え方として非常に面白い。大駒・原沢の勝利がまず必須、そこからどう試合を展開していくかが見もの。

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写真:東海大・渡邉勇人が
先んじて攻め続ける
先鋒戦は東海大・渡邉勇人と日本大・原沢久喜がマッチアップ。
渡邉左、原沢は右組みのケンカ四つ。
100kg超級の本格派原沢に対して81kg級の渡邉は前傾して構え、組み際の左体落に巴投、ここから繋いでの腕挫十字固と攻める。この十字固は原沢が持ち上げて後腰よろしく渡邊を落として「待て」。

以後も渡邉は釣り手一本の左背負投、右一本背負投と組み際の技を先に仕掛け続ける。捕まえたい原沢、その前に技を仕掛けて展開を切る渡邉という構図が続く。渡邉が釣り手一本の左背負投から朽木倒と繋いだ2分39秒、原沢に「指導1」。

奮起した原沢、釣り手のみの右内股で渡邉を跳ね上げる。追い込みが深くあわやという技だったが高く上がった渡邉なんとか伏せて「待て」。

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写真:原沢、ついに
うるさい渡邉を捕まえて
大内刈「一本」
前に出てきた原沢に対し渡邉やや苦しくなり過程を飛ばした左大腰、しかしこれは釣り手の差込みが浅く効かず。
引き手で袖を得て次いで奥襟と完璧な手順で組めるようになってきた原沢に対し危機を感じた渡邉は左払巻込に潰れ、次の展開も原沢の組み手が完成するなり巴投を仕掛けて腕挫十字固と繋いで展開を切る。形として攻めているのは渡邉だが、原沢の圧が効き始めやや手詰まり。

ここで渡邉再び釣り手を浅く脇に差し入れての左大腰、しかし手が利かないまま半端に腰を入れようとした瞬間、先んじて体を入れてこれを呼び込んだ原沢は容易に、そして深くその腰を捕まえる。振り向きざまの右大内刈が豪快に決まって「一本」。日本大、プラン通りの一点奪取、王者東海大を相手に見事先制点を挙げた。

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写真:ミッション達成で
拳を握り締める原沢
組み合うことを嫌った渡邉、過程を飛ばして大腰を仕掛けようとしたはいいが、浅く差した釣り手が致命傷。大型選手相手に決してやってはいけない中途半端な攻撃だった。才能豊かだがムラ気で強気と弱気の同居する渡邉、その「裏面」を引っ張り出した原沢の圧力の強さの際立つ試合だった。
日本大はプラン通りの1点リード、王者のビハインドとこの試合も止まらない日本大の勢いに日本武道館はどよめく。

次鋒戦は東海大が193cmの巨人・王皓、日本大は古園井新成が畳上に。
王は左、古園井は右組みのケンカ四つ。

王は奥襟をひっ掴んで圧を掛け、古園井は苦しい体勢。王はジックリ圧を掛けての左内股、古園井は強気にこれをいなしながら左の背負投、30秒すぎには左の小内巻込を仕掛けるが王はワンハンドでこれを弾き返し、古園井は伏せる。場内は互いが技を仕掛けるたびに爆発のような歓声と悲鳴。

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写真:古園井は王の圧を
逃がしながら試合を進める
なんとか圧力を逃がしながら試合を進めた古園井だが、1分27秒、背中を掴んだ王が腰を切って攻撃を晒した場面で思わず伏せてしまい、「指導1」を受ける。

王、さらに引き手で襟、釣り手で背中を掴んで圧を掛け、左内股で古園井を伏せさせること2度。2分35秒、古園井に「指導2」が宣告される。これまでの試合で中盤以降極端なスタミナ切れを見せていた王だが、この時点では未だ集中切れず。
奮起した古園井、左一本背負投に飛び込み、さらに左背負投を連発、王の股中にもぐりこむ。王はこれを耐え切ったが3分7秒、王にも「指導1」。これで流れが変わり始める。

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写真:古園井の巴投
釣り手一本でも試合を動かせる古園井、両方を持たないと圧を掛けられない王という構図に加えて試合に慣れてきた古園井と王の体力低下がクロス、このあたりから試合は古園井ペースに移行する。強気に王の釣り手をいなしながら2分30秒には鋭い横巴投、王はこれに体が乗り、相手を乗り越えて場外に伏せる。

ここで古園井が口から出血、ドクターを呼んで試合はしばし中断。息を整える間を得た王が片手の内股で古園井を二度振り回して伏せさせ再び流れが変わったかに見えたが、直後の展開で古園井が左小内巻込に飛び込む。王が返し、どちらが取ってもおかしくないこの攻防はもろとも伏せて収束。主審は一旦王の「有効」を宣言するがこれは取り消し。

しかしこの一撃により肩で息をする王は既に病める巨艦、装甲のないところに一発打ち込めば古園井にも十分チャンスのあることが証明されて明らかに場は荒れ始める。日本大にとっては願ってもない展開。

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写真:残り時間僅か、
古園井の背負投が「技有」
一気に調子付いた古園井は王を釣り手で振り回すと一本背負投、しかし直後の展開は先に釣り手で高い位置を得た王が逆に振り返す。

残り時間は15秒を切る。再開の声。王が先に奥襟を叩いて装甲を固めれば試合はほぼ終了、古園井が先に襟を得て懐に潜ればチャンスあり、というこの大賭場に勝利したのは追いかける立場の古園井。やや弱気のクロージングに走った王の左襟を両手で握って左背負投、押し込もうとしたところを王に立ち上がられたが、再び股中に大きく潜りなおすと王は耐え切れずに転がって「有効」。これでスコアはタイ。

そしてこれだけでは終わらないのが今年の日本大。古園井、再開直後再び左襟を両手で握って渾身の左背負投に座り込めば王の巨体ガクリと転がって「技有」。古園井はそのまま袈裟固に移行。主審の「抑え込み」宣告、終了ブザー鳴動、場外で王が逃れる、と逆転の余韻を残したままスローモーションのようにシーンは流れて試合終了。古園井が殊勲の大逆転、「技有」による優勢勝ちを果たした。

巨漢を相手にしのぎ続け、体力勝負となった後半戦に懐にもぐりこんで首を刈り取る。まさしく無差別、団体戦の妙味を出し尽くした古園井の素晴らしい戦いぶりで日本大は先頭2人で早くも2-0と大きくリード。

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写真:中川(左)-豊田の中堅戦
五将戦は東海大が豊田竜太、日本大は準々決勝、準決勝と殊勲の一本勝ちを挙げて乗りに乗っている中川裕喜という顔合わせ。

身長188cm、体重120kgの豊田、173cm、81kgの中川はともに左組みの相四つ。
引き手で襟を掴んだ豊田、圧倒的な体格を利して引き落とし回し、中川は伏せて「待て」。

豊田再び引き手で中川の左襟を掴み、応じた中川は左手で左片襟を差して引き手を手繰ろうと画策、豊田は釣り手を頭上から叩きいれる動作で幾度もこれをはじき返す。中川は両袖の背負投でなんとか展開を保つが、応じた豊田の左払巻込で崩れ伏せ、序盤1分は豊田のペース。

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写真:中川、体格差を
ものともせずに
思い切った左大内刈
しかし組み手に慎重な豊田は距離を取りながら一手目の掴みどころにこだわり、中川に駆け引きを許してしまう。中川はクロスの組み手から手繰って引き手で左袖を絞り、組み手を完成させるや否や僅かに前技のフェイントを入れながら思い切り左の大内刈。体格差をものともしない超強気のこの技に豊田は一瞬踏みとどまり力比べ。中川は体をねじって決めに掛かるが、豊田は僅かに下がって隙間を作り、中川が力を込めたタイミングに合わせて前に弾き返す。しかし小兵中川の明らかに「投げにいった」この技に場内は大歓声。「日大はまだいくのか」と観客席はざわめきが止まらない。直後の1分35秒、豊田に「指導1」。

豊田は間合いを詰めたいところだが、中川の駆け引きの巧みさに常にどちらか一本が不十分。焦れた豊田が回り込んだ中川を追いかけようと踏み込んだところに中川は鋭い右送足払。豊田は滑り落ちるように崩れ、見る角度によっては十分「有効」、しかし辛うじて伏せてノーポイント。場内に拍手と怒号うずまく。

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写真:中川の左背負投に
豊田が抜け落ちる
中川、右引き手で相手の左襟裾を持ち、これを高く挙げて豊田の右ひじに引っ掛けることで組み手の橋頭堡を確保。前に出てこれを保持しつつ釣手を争う。焦れた豊田は片手で中川を振り回すが、あくまで食いついて襟を放さない中川、左手で左袖を得ると右手の襟を高い位置に持ち換えて変則の左背負投に食いつく。豊田、中川の頭の真上から抜け落ち伏せる。伏せた豊田の後ろ襟を中川が持って上下にあおったところで「待て」、そしてついに豊田に「指導2」宣告。経過時間2分33秒、残り時間は2分27秒。

ポイント奪取後の大事なシークエンス、やや悄然と前に出てきた豊田に対し中川は右引き手で左襟を掴むと、左手で豊田の左袖を叩き落しながら時計回りに回転。豊田の足がついてきたところを呼び込んでまたもや左大内刈。引っかかるとみるや前に飛び出て体を捨てに掛かり、豊田すんでのところで這いつくばって逃れる。試合は完全な中川ペース。

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写真:豊田の左払巻込が「有効」
しかし豊田もくぐって来た修羅場の数が違う。再開後、中川が再び左襟に伸ばしてきた右手を右手で捕まえて保持すると、釣り手で左肩を叩いて体を寄せる。中川が対処に手間取り密着が保持できると見るやそのまま左払巻込。巨体の豊田が放った思い切りの良い技に中川は両手で袖を絞った姿勢のまま引きずり転がされこれは「有効」。豊田、ここまでの劣勢を一発で取り返してスコアはタイ。残り時間は1分55秒。

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写真:豊田が痛恨の掛け潰れ、
これに「指導」が与えられる
以後の約1分は、前に出て捕まえに掛かる豊田、片襟から手繰って朽木倒を狙う中川と主導権の取り合い。勝敗の針が激しく双方に振れては戻る勝負どころであったが、ここを制したのはまたしても中川。息詰まる組み手争いの中、中川の我慢強い組み手に場外際で辛抱できなくなったなった豊田が払巻込に自ら潰れてしまう。歓声、嘆声、怒号渦巻く中主審は迷わず偽装攻撃の「指導3」を宣告。

再開後、中川冷静に袖を殺して小内巻込。ポイント失陥の衝撃抜け切らぬ豊田はやや淡白にこれを潰して寝技で時間を消費。豊田は引き手で袖を握ったまま相手の左足を内側から再三蹴って中川を崩し、なんとか釣り手を得ようとするが心得た中川は粘り強く組み手を展開し、豊田の足技に合わせて袖を持ち替え絞るこの駆け引きから豊田が抜け出せないまま終了ブザー。中川の「指導3」による優勢勝ち、日本大はなんと前3人で3点を確保して3-0という大差のリード。

沸き起こる大歓声、観客席も完全に味方につけて日本武道館はまさに日大劇場と化した感。


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※eJudo携帯版「e柔道」7月12日掲載記事より転載・編集しています。

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