PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【eJudo's EYE 】序盤戦の傾向を読み解く4題・ロンドン五輪第2日評

(2012年7月31日)


※eJudo携帯版「e柔道」7月30日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


「試合に出ない」ことが最大の防御? 情報なき選手たちの勝ちあがり続く

2日目を終えたロンドン五輪柔道競技はここまで男女ともに大荒れ。第1シードの選手はことごとく敗退、世界選手権2連覇中の60kg級ソビロフ(ウズベキスタン)、世界選手権王者48kg級福見友子、52kg級中村美里と「鉄板」と目された王者がまったく勝てず、66kg級に至ってはシード選手のほとんどが予選ラウンドを勝ちあがれずに壊滅。大会全体として先が読めない展開となっている。

4階級終わったところで気付くのは、3位以上の面子が所謂「ワールドツアー」と呼ばれる国際大会のそれとかなり異なること。下位選手、そして「終わったはず」のベテランが名前を連ねる傾向にあるが、共通するのは彼らがいったいに「試合に出ていない」もしくは「出場試合を極端に絞っている」選手であること。

52kg級で決勝を争った選手がともに社会主義国家所属のヤネト・ベルモイ(キューバ)とアン・クンメ(北朝鮮)であることが象徴的。ベルモイは出場試合僅少で「五輪の出場権さえ確保しておけばいい」とばかりにそのパフォーマンスの出来不出来はバラバラ。アンに至ってはこの3年間ほとんど国際試合に出ておらず、五輪イヤーの今年も出場したのは1大会のみ、それも欧州国際ツアーが閉じた後の最終戦、注目度の低いワールドカップ・ワルシャワというマイナー大会で、手の内をほとんど見せないままに優勝を飾っている。66kg級で金メダル獲得のシャフダトゥアシビリ(グルジア)に至ってはジュニア選手で世界大会の出場はこれが初めて、シニアカテゴリでの国際大会もほとんど出場歴のない無印中の無印である。

彼らには、情報が、ない。

シャフダトゥアシビリが釣り手で背中を叩き、攻防の中で帯をつかんで隅返を繰り出すという、「嵌った時には桁外れに強いがおそろしく単純な組み立て」で優勝を飾ったことにそれは端的。「わかっていればやられない」この単純な組み立てで優勝まで辿り付けてしまったのは、明らかにシャフダトゥアシビリがノーマークの選手だったからだ。

翻って例えば福見。生命線の釣り手が良い位置で持てず、かつ「持たされた」場面では肩口を抑えられて打開策としての逆技も打てず。強いがゆえに研究されたのは明らか、あまりに襟が持てないその苦労ぶりに筆者は「新柔道衣の襟が持ちにくいのか?」「相手が襟に細工をしているのではないのか?」と無用の危惧を抱いてしまったくらいである。ソビロフも(フィジカルに問題があった様子ではあるが)全く自分の間合いで柔道が出来ず、自らの支配する狭い空間に相手を固定し、嵌めていく彼の柔道の真骨頂は最後まで見られなかった。
各国ともライバル研究の精度はまことに高い。先ほど「彼らには情報がない」と書いたばかりだが、シャフダトゥアシビリやアン・クンメに情報がないということではなく、この状況は「トップ選手の情報があり過ぎる」と表現すべきなのかもしれない。

ワールドツアー制度と世界選手権毎年開催の実施で絶対的な試合数が増えたのはもちろんだが、誤解を恐れずに率直に言えば、youtubeの存在がこの状況を後押ししているというのはおそらく的を射た観測だ。日本のように国際大会にビデオ班を送り込むような資金的余裕と情熱がなくても、近い程度の情報は容易に手に入ってしまうのだ。

では対策は?
いまのところは、ない。勝った選手に学べと言うのならば「試合に出ないこと」が最大の防衛策であるのは明らかだが、これは非現実的な選択であろう。

ただ少なくとも、試合に出る限りは集中的な研究にさらされる、世界中に映像が露出しまくるというリスクははっきり意識して、今後の強化策は組み立てられるべきである。出る試合を絞るでも良いし、戦略的に技術的な「上積み」の期間を半年、1年というスパンで考えるでも良い。少なくとも「研究されても、練習してそれを乗り越えればいいんだ」などという、選手が表向き逆らいにくい、しかし本質を無視したお題目だけは二度と唱えてはならない。


終わったはずのベテランたちが大健闘、 五輪合わせの調整の妙を検証せよ

前のお題と重複するトピックになってしまうが、上位進出者を見ると前回の五輪と同様の面子、ベテラン勢の健闘が顕著である。年1回の世界選手権とそれに至るワールドツアーというスパンで繰り返される密度の高い現在のスケジュールの中では選手の入れ代わりは当然激しく、その感覚で言えば2年前はひと昔、3年前は大昔、4年前となるとちょっとその時代のトップ選手を思い起こすことが難しくなるほどのちょっとした「太古」だ。

その中で、48kg級銀メダルのドゥミトル(ルーマニア)、52kg級金メダルのアン・クンメ(北朝鮮)に銀メダルのベルモイ(キューバ)らは、この3年世界大会のステージでは完全に「死んだふり」をしていた選手である。女子とは比べ物にならないくらい選手交代のスパンが早い男子でも66kg級でミクロス・ウングバリ(ハンガリー)が銀メダル、ウリアルテ(スペイン)が5位入賞。いずれも世界選手権ではもはや上位入賞の「圏外」扱い、ほぼ相手にされていなかった選手である。

なぜ彼らは「五輪合わせ」での活躍が可能なのか。3年スパンでの「死んだふり」を経てなぜしっかり競技人生のスケジュールをあわせてこれるのか。伝統的に、世界選手権では勝つが五輪では勝てないという選手を生み出しがちな日本、彼ら「復活枠」の選手の検証はひとつ大きなヒントになるのではないだろうか。
そういえば08年の北京五輪で金メダルを獲得した谷本歩実と内芝正人も2年近い「死んだふり」を経た選手であった。望むと望まざるに関わらずIJFの過密スケジュールから選手を守らざるを得なくなくなった現在の状況、日本の「死んだふり」選手研究の必要性を訴えたい。


「ダイナミック柔道」は完成したか? IJFの施策の成果はいかに

「足取り禁止」「ベアハグ禁止」「タップリした新柔道衣の採用」「場内外に関する新規定の採用(危険地帯の廃止)」、これは全て北京五輪以降にIJFが採用した新ルール。同大会を双手刈ひとつで勝ち上がったツブシンバヤル・ナイダンに代表されるタックル柔道(今となってはまことに懐かしい表現だ)を廃し、しっかり組み合って「一本」を狙う、柔道の面白さ、「投げ」の魅力とダイナミックさを追求するというのがその目的であった。

各種国際大会と世界選手権を見る限り、「勝負をつける」という面では一定の成果を挙げつつあると思われたこの施策だが、残念ながらこのロンドン五輪の序盤戦にダイナミックな「一本」のイメージは、ない。行き過ぎた相互研究の結果か、切り合い、潰しあい、先手での掛け潰れが非常に多く、思い切った技も組み際のものばかりで、組み合って投げを試みる攻防の妙味が見られる試合は非常に少ない印象だ。

もちろん、軽量級からスタートするという日程からしてこれは柔道の質の階級特性によるものだと考えることも出来るし、上記も統計的にデータを検証したわけではなくあくまでも印象批評。断言できる筋のものではない。

ただ、これから始まる中量級、重量級の試合を見る際に、「柔道はこの4年間、組み合って『一本』を狙う試合を生み出すべくルール改革を重ねてきた」という視点はひとつみどころになるはずだ。頭の隅にこの事実をおきながら、今後の試合を見守ってもらいたい。


世界選手権なら勝てる国、日本の「相似」フランスの後半戦に注目

昨年のパリ世界選手権、強豪国はどこかという視点から観察すると女子の傾向はハッキリしていた。前半の軽量3階級では日本が圧倒的優勢、63kg級から始まる中量級ではフランスが他国を凌駕したのである。

48kg級には浅見八瑠奈と福見友子、52kg級には中村美里と西田優香、57kg級には佐藤愛子と松本薫。そして63kg級にはエマヌとアグベニュー、70kg級にはデコスとパスケ、78kg級にはチュメオとルブラン。両国に共通するのは同階級に2人の水準以上の強豪を配し、その厚みで勝ち上がったという点である。代表1人枠で行われた北京五輪の日本の金メダルは「2」、フランスは「0」、同じく1人制で行われた09年ロッテルダム世界選手権は日本が「3」、フランスが「1」。もちろん時代によって戦力構成は異なるので一概には言えないが、パリ世界選手権の両国「3」という結果を見る限り、両国はストロングポイントの階級の戦力が厚く、「代表2人制では勝てる国」と規定することがひとつ可能だ。

さて、代表1人制で争われるこのロンドン五輪、2人の絶対的な強豪を持つ48kg級、52kg級で日本は惨敗。もし第3日の松本が金メダルを獲得しても、日本の皮算用はすでに大きく狂っているといわざるを得ない。

今度の注目は、後半戦に圧倒的な強豪を送り込んで金メダルに挑むフランスの出来である。なぜ五輪では勝てないのか。なぜ実力通りの成績が残せないのか。フランスが勝っても負けても、日本と似た「2人の強豪を国内に持つ」構成のこの国の出来は今後の強化の方針を考える上で、注目である。

文責:古田英毅


※eJudo携帯版「e柔道」7月30日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る


supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.