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ロンドン五輪57kg級プレビュー×組み合わせ展望

(2012年7月30日)


※eJudo携帯版「e柔道」7月29日掲載記事より転載・編集しています。

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松本を王者たらしめた「殺戮本能」、
五輪の舞台でも発揮できるか
ロンドン五輪57kg級プレビュー×組み合わせ展望


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絶対の優勝候補として臨む
日本の「三の矢」松本
初日、2日目で絶対と言われた優勝候補の福見友子、中村美里を送り込みながらいずれもメダルなしという信じがたい結果に終わり、この3日目は男女ともにまさしく正念場。
女子はここで松本が獲らないと「史上最強チーム」どころか悪夢のメダルゼロに終わる可能性すら出てくる。山場である。

日本代表選手:松本薫
年齢:24歳
所属:フォーリーフジャパン

松本の柔道の特徴はと問われて誰もが挙げるキーワードは「野性味」「ワイルドさ」「気迫」と言ったところだろう。「始め」の声が掛かるや腰を溜めて低く構え、獲物を狙う猛禽類よろしく相手を睨みつける。IJFのweb中継班が「アサシン」と名づける相手を威嚇するこのファイティングポーズはたしかに松本の戦闘スタイルをよく表していると言える。

では、その性格や気迫、「ワイルドさ」と言った曖昧な語による評価を廃して、松本の柔道を松本たらしめているものは何か。そう問われると答えに窮する人は意外と多いのではないか。大外刈に出色の切れ味があるわけでなく、袖釣込腰も無理な体勢から強引に決めるので派手には見えるが技自体で松本を頂点に引っ張っていくほどのものではない。組み手もある程度セオリーを踏むようになったことで以前ほどの意外性があるわけではないし、受けはむしろ国内でのポカ負けが多い松本の弱点である。

純戦術的に言えばこの人はパワーをベースにしたオールラウンダーであり、前後左右にポイントを取れるだけの威力のある技を持ち、優位な体勢で寝技に持ち込んでこれを取り切る、言ってしまえば実は寝技の選手である。この字面にすると手堅い、凡庸とも言える当たり前のシナリオで戦う松本を、世界の舞台で「松本に勝てる選手はいない」と断言できるだけの位相に引っ張りあげているものは何か。ここで議論は最初に戻り、結論はやはりその「野性味」「強気」ということになるのだ。強気に出ることそれ自体で相手を窮させ、下げ、隙を作らせ、見逃さずにその急所を刺す。マクロにも、そして攻防のディティールや次の出足の一歩の早さというミクロなところまでにも行き渡ったこの強気こそが凡庸なシナリオで戦う松本をチャンピオンたらしめているものだ。

10年グランドスラム東京準決勝で松本を良く知る連(台湾)に食いつかれた泥試合、連が見せた一瞬の隙を躊躇なく関節を捻り上げて「一本」を取った試合。同年の世界選手権決勝で唯一のライバル・モンテイロが松本の寝技を嫌がり這いずって場外に逃げるのを帯を持ってひきずり入れた試合。相手の弱点を発見するや逆の内股まで仕掛けて殺しにかかる殺戮本能を見せた佐藤愛子戦。言語化しにくい「強気」ゆえに勝利した試合は枚挙に暇がない。
手詰まりになるとメンタルにエンストを起こし、相手の状況の良し悪しに関わらず自分の得意技を連発して自滅するような選手も多い女子にあって、手が詰まるとみるや膠着することなくすぐに攻め口を変えて相手を崩しにかかり、たとえ短い時間であっても試合の流れを渡さない松本のメンタルタフネスはやはり異常だ。

素質にセンス、一発の得意技がある選手は大勢いるが、松本はそのいずれをも持ちながら、さらに勝ち続けるための「何か」を持っていると言わざるを得ず、その「何か」によってのみ松本は世界王者の座に君臨し続けているのである。

よってこの五輪での唯一のポイントは、その言語化できない殺戮本能、松本を松本たらしめているアイデンティティの中核である「強気」をこの大舞台で発揮できるかどうかである。誰にも負けない世界一の強気があるからこそ、誰にも追いつけない、唯一無二の位置に座る松本。弱点である受けの脆さまで覆い隠すほどの、松本の強気な柔道に期待したい。

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唯一のライバルと
目されるモンテイロ
■有力選手

松本に1度勝ったことがあるというだけではあるが、唯一対抗し得るライバルという箱に入れられるのがモンテイロ(ポルトガル)である。右組みからの大腰、内股に巴投、松本とやるときには組み際の一本背負投を織り交ぜてくる。10年東京世界選手権、そして11年1月のワールドマスターズと松本に攻められ続けて「腹ばい逃げ」を繰り返したモンテイロであるが、後者の試合ではその一本背負投で挙げた「技有」を持ち逃げする形で優勝を果たしてもいる。その対戦以外は松本に全敗中の選手であるが、とにもかくにも松本に勝ったという手ごたえを持っているのは少々厄介だ。

他選手は大きく落ちる。パリ世界選手権王者佐藤愛子に2連勝したパヴィア(フランス)は柔道がオーソドックスに過ぎ、奥襟ファイターとして松本を脅かすにはやや線が細い。若さによる成長込みでのダークホースと言ったところ。

シルバ(ブラジル)もまだまだ安定感がなく成長度込みでのダークホース。

カプリオリウ(ルーマニア)、フィルツモザー(オーストリア)、クインタバレ(イタリア)、カラカス(ハンガリー)も旬は過ぎ去っている印象。名前のある選手はいるが、この階級はやや人材難、モンテイロと松本の一騎打ちという感がある。

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長身痩躯のパヴィア。
前任者の09年世界選手権王者リボーを
完全に退けての五輪参加
■組み合わせ

全体に選手の密度が薄い。松本の力を持ってすればよほどのトラブルがない限り金メダルは現実的だ。

→57kg級組み合わせ

【プールA】

第1シードの松本の山。2回戦でガシモワ(アゼルバイジャン)、準々決勝はキム・ジャンディ(韓国)とクインタバレの勝者だが、松本を脅かすには至らないと見る。

【プールB】

パヴィアの山で、対抗に置かれたのがフィルツモザー。
パヴィ゛ィアは初戦で地元のクラーク(イギリス)との試合があるがまず問題なく勝ち上がってくるだろう。

【プールC】

モンテイロの山。準々決勝で東京世界選手権3位のボウコウバラ(ギリシャ)と曲者要素のあるルペティ(キューバ)と対戦するが事前予想の段階でアップセットを考えるには役者不足。モンテイロが勝ち上がるだろう。

【プールD】

シルバの山だが、ここはベロリン(スペイン)、カラカス(ハンガリー)、カプリオリウと拮抗しており誰が勝ち上がるかどうか予想が難しい。平均値ならカプリオリウ、最高到達点の高さならシルバ。

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ダークホースのシルバ
【準決勝-決勝】

松本-パヴィアの準決勝。右相四つ。奥襟の叩きあいになっても松本には分があるが、思い切りが良く巻き込み変化への判断が早いパヴィアに自由にやらせては思わぬ一発を食うこともある。しっかり相手の釣り手を殺した上で勝負に行きたい。

逆側の山は試合の様相に関わらずモンテイロが勝ち上がると予想して準備しておくべきだろう。

モンテイロとの決勝。切りあい、組み際の潰れ合いに活路を見出したいモンテイロは泥沼勝負を挑んでくるだろう。これを許さず、首を決めて、早い段階で「指導1」を奪ってその意図を挫いてしまうことが肝要だ。モンテイロは以後松本がすばやく寝技に移行してくることも織り込んで潰れてくるはずで、「指導」積み上げまでは寝技も付き合い過ぎないほうが良いと見る。今は殺すべきときか、まだ機は熟していないのか。松本の闘争本能の発露による、状況の見極めに期待。


※eJudo携帯版「e柔道」7月29日掲載記事より転載・編集しています。

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