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【eJudo's EYE】結果以上に不可解な福見の「内容」・ロンドン五輪48kg級評

(2012年7月29日)


※eJudo携帯版「e柔道」7月29日掲載記事より転載・編集しています。

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福見は明らかに動きが悪く、本調子ではなかった。コインの裏表で言うとパリ世界選手権の勝ち上がりの過程で見せた、動きが重く取り味の遅い「裏の福見」が出たと評されて仕方のないところだろう。

ドゥミトルに放ち、そして返された左大外刈は完全な技の選択ミス。体勢の良い相手に対して遠い間合いから片足を揚げるリスクを犯しての散発、腰高、そしてドゥミトルのパワーをまともに食うはずの密着。「自信がありすぎたから雑な技で取ろうとしたのでは」とこれを油断と評する向きもあるが、ここまでの福見の出来はあまりに悪く、それでも地力で保ってきた拮抗がここに至って決壊したと見るべきだろう。返し合いになる技ではなくリスクのない担ぎ技に活路を見出すべきだったと考えられるが、本来技の選択の上手い福見からそのストロングポイントである冷静さを奪うほど、それまでの展開が空回りしていたということだろう。

組み立ての段で嵌っていた。ケンカ四つの相手に奥襟を叩かれ、頭が下がる。実は奥襟ではなく釣り手で肩口を押さえられているために逆方向(右)の一本背負投に入ることが出来ず、仕掛けるべき技は左技に限定される。

世界のトップ選手の実力差は実は僅か。しかし競技成績に圧倒的な差がつくのにはやはり理由がある。福見の場合その根拠は、鋭い足技と連携して飛んでくる組み手の巧みさ、組み手争いと足技の複合体としてこれに織り交ぜて放たれる大技、そして何より実は外国人選手に力負けしない体幹の強さ。

しかしこの日の福見は全てのベースとなるべき持ち前の体幹の力が感じられず、崩し技の足技も出ない。よって視野狭窄のまま仕掛ける座り込みの左背負投は浅く、左小内刈は届かない。
組み勝てない、力負けを感じるために動きが硬くなる、ために崩しの足技が出なくなる、散発で技を仕掛ける、しかし方向が限定されるために技は捌かれる、繰り返すうちに投げる自信が揺らぐ、調子に左右されないはずのストロングポイントである寝技に活路を見出すが取りきれず時間と体力を消費する。典型的な負のスパイラル、「嵌り」である。

何しろ福見はこの日の5試合で1度も投げによるポイントを奪っていない。いかに戦前自信があろうとも、この状態で冷静さを保ち続けるのは至難の業だ。たとえ無意識にでも福見の精神に影響がなかったわけはなく、肉体的な出来の悪さが、最後はその精神までも蝕んだというのが今回の敗戦ではないだろうか。

どうしても検証してもらいたいのは2点。

まずは、好調が伝えられていたはずの福見がなぜほとんどの選手に力負けするような状態で畳にあがったのかという部分。ドゥミトルとの攻防はおそらく4年に1度しか柔道を見ないという一般ファンが見ても福見が一発投げる予感の「漂わない」力関係になっていたはずだ。勝負師ドゥミトルがいかに上手くコンディションを持ってきたとしても北京後の3年の相対的な力関係からしてここまでの差がつくとは考えにくい。メンタル的な問題なのか、フィジカル上の調整ミスなのか。それともトップ選手たちの「五輪あわせ」での最高到達点を首脳陣が見誤っていたのか。

もう一つは、これは同日畳に上がった平岡拓晃も含めてだが、ひたすら釣り手で奥襟(背中)を叩いてくるケンカ四つの相手に対し、あまりにもあっさり後手に回り過ぎてしまったことに対する検証である。時にはクロスグリップの形で圧殺のみを志向するこの組み手に福見と平岡は「いいようにやられた」と表現して差し支えない状態。起こっている現象は「単純な圧殺組み手に代表選手が対応できていない」である。ディティールの仔細はあろうが、いやむしろあるならばそれをしっかりと言葉にして、きちんと技術的な検証を行って欲しい。現状が続くならば、指導陣は「これまで何をやっていたんだ」と責められてしかるべきところである。

北京五輪以後、過去3回の世界選手権で福見は海外選手に1度たりとも負けていない。それがこの日だけで2敗。「これが五輪なんだなと思いました」と繰り返した福見の言葉は、重い。五輪というものの厳しさを語れるのは、五輪に出た者だけである。敗退という事実はまだしも、ここまで福見が力を発揮できなかった、その内容の悪さを看過してはならない。後に続く選手たちのためにも、福見自身が、そして指導陣が率直に、そして精度高くこの日の敗戦を検証してくれることを願ってやまない。

この階級では優勝したメネゼス(ブラジル)が素晴らしい柔道を見せていた。弊サイトはメネゼスの世界ジュニア制覇、そして初のグランドスラム東京来日となった2009年から逸材としてメネゼスを紹介し続けてきたが、正直近年のメネゼスは先手の技を志向するあまり柔道が小さくなり、スケールダウンの感があった。日本勢にあまりにも負け続けたこともこの一因だったのではないかと思われるが、それが一転、この大会では豊かなスピードと多彩な足技を駆使して大ブレイク。世界ジュニア制覇時を彷彿とさせる伸びやかな柔道で一気に最高峰を極めた。今後も非常に楽しみな選手である。

最後に第1日の評として、審判団に対するジュリー、ひいてはバルコス審判理事の過干渉に対する危惧を表明しておきたい。技の評価は本来試合場の3審に委ねられており、本来ジュリーからの異見表明が頻繁に行われる筋合いのものではないはずだ。
ただし、この日の判定を見る限り、その修正が妥当なものと思われるケースが多々あったあたりはなんとも微妙だ。2つ目の「指導」が遅い審判傾向と合わせて、継続してウォッチする必要があるだろう。

文責:古田英毅



※eJudo携帯版「e柔道」7月29日掲載記事より転載・編集しています。

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