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ロンドン五輪66kg級プレビュー×組み合わせ展望

(2012年7月29日)


※eJudo携帯版「e柔道」7月28日掲載記事より転載・編集しています。

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上位4名は差のない混戦
海老沼は金メダルの可能性十分
ロンドン五輪66kg級プレビュー×組み合わせ展望


海老沼匡
昨季パリ世界選手権
を制した海老沼匡
日本代表選手:海老沼匡
年齢:22歳
所属:パーク24

パワー、バランス、体幹、運動能力、そういった一般的なアスリートに必要とされる能力を超えた「人を投げる才能」というものは確実に存在する。例えば、野球において「速いタマを投げる」という才能が天性のもので後天的に補完できることが実はごく僅かであると言われるように、このジャンルには刈り、跳ね、担ぎ、捨て、と技の種別や特性を超えて、この競技のベースである「人を投げる」というすぐれて非日常的な行為に特化した才能が確実に存在するようだ。

そしてジャンルを問わず、そのような才能が後天的な努力だけでは得がたいものである、と人は無意識下に理解する。それゆえにそれを持つ人間を圧倒的に尊敬することとなるのではないか。(よって我々のジャンルには結果を残すことで支持される選手と、技自体の美しさで圧倒的に尊敬される人間がいるわけである)

形を超えた「投げる」才能。
海老沼匡を見ているとそのことに思いを馳せないわけにはいかない。

海老沼はジュニア時代、大学2年生の時点で完全な捨身技ファイター、肩車という飛び道具に頼る選手としてほぼ完成しており、09年8月にはこのスタイルでユニバーシアードまで制している。しかし同年9月からはルール変更で足取り禁止、肩車も事実上封印されて、この9月の全日本ジュニアを海老沼はほとんど全く技を仕掛けることが出来ないまま2連敗、入賞なしで終えているのだ。

通常、若くして肩車一辺倒、この技のみで相手を投げまくるような選手は「技のない選手」。まともに組んで投げる技が練れていないから奇襲技に頼る、と思われたしてもまず文句の言えないところだ。
よってその肩車を封じられた海老沼は終わった、こう評されてしかるべき状況だったが「これからは内股や背負投、昔やっていた基本に返るだけ」と開き直った海老沼は僅か2ヶ月後の講道館杯全日本体重別選手権で、当時五輪2連覇者としてこの階級に君臨していた内柴正人を内股で放り投げるなど「一本」連発で優勝、これを認められて派遣されたグランプリ・アブダビでも投技で「一本」を取り捲り、IJFのビゼール会長に「あれが柔道だ」と言わしめ、現地の王族からMVPに当たる「一本賞」を贈られるまでの活躍を見せたのだ。
捨身技ファイターじゃなかったのか。いや、海老沼は相手の弱い方向に投げを打つ、一番効果的な技を選択していたに過ぎない、肩車の投げは海老沼の「投げる」才能の一表現に過ぎなかった、今となってはこう考えるしかないだろう。

もともと、古賀稔彦、吉田秀彦、瀧本誠らまさしく「投げ」の魅力で一世を風靡した金メダリストの先輩ひしめく講道学舎の出身である。
世界選手権王者にまで上り詰めた海老沼、いまやその思い切りの良い投げ技は彼の代名詞だ。前述の09年講道館杯での内柴正人戦、五輪選出が掛かった12年全日本選抜体重別決勝の森下純平戦と勝負どころを「一本」で勝ち上がるあたりには先輩達に連なるスター性もにおう。

柔道関係者だけではなく、社会全体の注目を浴びる五輪という場。海老沼には柔道というジャンルの魅力自体を日本中に伝えるような豪快な「一本」を期待したい。

ツァガンバータル
09年ロッテルダム世界選手権王者
のツァガンバータル
■有力選手

11年パリ世界選手権王者の海老沼は間違いなく第1グループにいるが、この階級は上位陣に決定的な力の差はなく混戦と言って良い。

その中で実力者として挙げられるのが09年ロッテルダム世界選手権王者のツァガンバータル・ハッシュバータル(モンゴル)、そしてパリ世界選手権3位、昨冬のグランドスラム東京では海老沼を一本背負投「一本」で下してもいる(2位)モグシコフ(ロシア)の2人。

ツァガンバータルは体幹の強さが持ち味。ルールの変更や技のトレンドの変化に合わせて掬投や両脇を差しての小外刈と得意技にも若干のモデルチェンジは見られるものの、密着して体幹の力を生かすという方向性はブレない。スタミナもあり、メンタルも強い。10年東京世界選手権準々決勝で森下純平が挑み、GS延長まで技を仕掛け合うことで勝利したような大消耗戦を覚悟する必要があるだろう。

モグシコフ
昨年より上げ潮にあるモグシコフ。
今大会は第1シード
モグシコフはパワーを背景にした組み手の出し入れがうまく、強引に背中を持ったときの強さは出色。足も効く。海老沼はパリ世界選手権では勝利しているがグランドスラム東京では足で崩され、組み手で圧倒され、最後は投げられるという完敗だった。オールラウンダーで身体能力が高い。

以降は混戦だが、世界選手権で2大会連続の銀メダルを獲得してケナ(ブラジル)は有力候補だろう。東京世界選手権では当時話題となったいた「足を取らない肩車」(横落)で海老沼を屠り去った前歴もある。この一階層下のクラスタにチョ・ジュンホ(韓国)、リム(カザフスタン)、ウリアルテ(スペイン)、ドラスシック(スロベニア)らがひしめく。後者2人は大物食いのないタイプだが、リムとチョ・ジュンホは爆発力を秘めており要警戒だ。

■組み合わせ

ケナ(ブラジル)
常に上位に顔を出すケナ。
奇襲技も巧み
優勝候補4人の山が別れ、それぞれのブロックに配される中堅選手の質が焦点。決勝ラウンドに向けてどれだけ体力が残せるか、また乗っていけるか。

→66kg級組み合わせ

【プールA】

第1シードのモグシコフの山。初戦はカリモフ(アゼルバイジャン)、準々決勝はおそらくウリアルテ(スペイン)だが、実力的にはやはりモグシコフが抜けている。欧州で勝ったり負けたりを繰り返し続けているウリアルテがどれだけコンディションを合わせてくるかがひとつの焦点。決して最高到達点が低い選手ではない。

【プールB】
ケナの山。初戦(2回戦)からザグロドニック(ポーランド)、準々決勝はドラスシック、バルデラマ(ベネズエラ)、M・ウングバリ(ハンガリー)の勝者との対戦となる。ここも意外性のある選手はいないが、ウングバリは時折国際大会で爆発的な力を出す。ケナも勝利のロジックがガッチリあるタイプではなく、混戦と評して良い筈だ。

【プールC】

第2シードのツァガンバータルの山。ここは選手の密度が薄く、3回戦で地元イギリスのオアテス、準々決勝の相手もラロス(フランス)が濃厚。戦い易いブロックであり、ツァガンバータルは体力的にも精神的にもある程度の余裕を持って準決勝にあがってくるだろう。

【プールD】

第3シードの海老沼のブロック。準々決勝で対戦するであろうチョ・ジュンホ戦が山になるが、前段の3回戦に控えるリム(カザフスタン)は昨年のグランドスラム東京で森下純平に一本勝ちしている選手。この時は森下の内股を透かして一本背負投で勝利した、いわばカウンターでの勝利でそれまでは森下が圧倒的に主導権を握っていた。力関係的には問題なし、油断せずに最後まで戦いぬきたい。

【準決勝-決勝】

順当に進めばモグシコフ-ケナ、ツァガンバータル-海老沼という組み合わせとなる可能性が一番高い。

パワーファイターのツァガンバータルに対して海老沼がどう戦うか。距離をとっての粘り強い試合展開と機を見ての一気の詰めということになるだろう。一つ気がかりな情報は、海老沼の大きな武器である肩越しに背中(帯)を持っての釣腰、この際に必須の「肩越しに背中を持つ」組み手に対する反則を厳しく取るという事前情報が流れた時期があることだ。

第1日の審判傾向を見る限り、「指導2が遅い」「場内外の判定にシビア(外に出た場合はすぐに「待て」)」「寝技をじっくり見る」「技の判定に際し、畳外からの異見が多い」(気を抜いてはいけない)などの共通傾向は見られるものの、肩越しの圧殺に関しては特に変化は感じなかった。しかし、相手の手を封じての一方的攻撃、強気なシークエンスを作るアクセントとしての肩越し×背中が封じられるようだと少々苦しい。このあたり予選ラウンドでしっかり見極めていくべきであろう。

森下純平を投げた支釣込足は海老沼の新境地。あれだけ派手に勝った以上もちろん研究されてはいるだろうが、正方向の「逆」であり崩し技としても効きの良い支釣込足は警戒してもらえること自体が事を有利に運ぶ。世界タイトル奪取後明らかな技術的上積みはここ、「支え」をどう使うかにも注目したい。


※eJudo携帯版「e柔道」7月28日掲載記事より転載・編集しています。

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