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全日本選抜柔道体重別選手権女子マッチレポート 48㎏級、52㎏級、57㎏級

2012年5月31日


※eJudo携帯版「e柔道」5月20日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本選抜柔道体重別選手権女子マッチレポート
48㎏級、52㎏級、57㎏級 1/4


48kg級(上)
福見優勝で逆転五輪選出!浅見は1回戦で高校生岡本に敗退


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写真:1回戦、福見友子が
開始早々の左小内刈で山崎珠美から
「技有」を奪う
五輪代表候補は世界選手権2連覇者の浅見八瑠奈(コマツ)とロッテルダム世界選手権金メダリストの福見友子(了徳寺学園職)の2人。

直接対決で3連勝、12月のグランドスラム東京ではついに「一本」を取って勝利した浅見が頭ひとつリード、1月のワールドマスターズで「指導2」による優勢勝ちでリベンジを果たし浅見に当確ランプが点るのをなんとか阻止した福見がこの選抜体重別の直接対決に最後の望みを掛ける、というのが代表レースのここまで。

福見には講道館杯2位の新大学生山崎珠美(山梨学院大1年)、浅見には高校選手権を制したばかりの高校生・岡本理帆(藤枝順心高3年)と1回戦は両者いずれにも若手の期待株が配された。

眼光鋭く畳上に現れた福見の頬は削げ、体の線は鋭角。触れれば切れそうに気持ちが巻き上がっている印象。
その福見、開始早々の17秒に電光石火の左小内刈で「技有」を奪取。1分半過ぎの崩上四方固は「有効」に留まったが、結局は3分28秒に袈裟固に切って落とし「一本」。48kg級には珍しいパワーファイトで名を馳せた奥襟ファイター山崎を相手に粘られる場面もあったが集中力を切らすことなくまずはしっかり初戦を突破した。

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写真:1回戦、岡本理帆が
リーチを利して左奥襟を叩く
一方の浅見の試合は縺れる。

浅見右、岡本左組みのケンカ四つ。リーチのある岡本はムチのように釣り手を撓らせて浅見の首裏、背中を高空から叩く。パワーでは明らかに岡本有利。
圧を受けたときこそ前に出るのが真骨頂の浅見、右大内刈を橋頭堡に前進を試みるがこれを岡本思い切った左内股に切り返し、ならばと浅見が右体落を仕掛け潰れる場面もことごとく自身の鉈を振るうような左内股に切り返して展開を吸収。

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写真:岡本再三の左内股で
展開を引っ張り、浅見は明らかに苦戦
2分30秒には前に出た浅見が右体落に潰れたところを左内股、さらに組み際の右体落を引きずり立たせて左内股、小外刈で前に出たところを左内股2連発、続く3分25秒に大外刈から内股、首を抱えて左内股と繋いだあたりで会場に不穏な空気が漂い始める。いつ自ら転ぶかわからない不安定さは漂わせるものの、ここまでは明らかに岡本が優勢。
3分40秒には岡本の左内股に浅見が裏投で食いつくが、岡本は逆にこれを前に引きずり落として伏せさせる。浅見は膝車、右大内刈、左一本背負投からの三角絞と対抗するものの、むしろそれは劣勢の中技を打ち返してなんとか崩壊を防ぐという印象で、展開の打開、構造として岡本の技を封じるところまでは至らない。

岡本が試合を引っ張り、対抗した浅見が打って出ようとするところを岡本が内股でことごとく自身の攻勢に変える、というこのストーリー構成に変わりがないままお互いポイントなく本戦は終了。試合はGS延長戦へ。

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写真:浅見「抑え込み」の宣告を
得るが6秒で解ける
岡本延長戦も集中力切れず青ざめた顔でやや淡々と、しかしラッシュの勢いは留まるところなく左内股を連発、浅見強気に右内股で切り返すが岡本はこれもさらに左内股に切り返しなおし、全く展開を譲らない。

岡本の左内股に浅見が伏せ、浅見の右大内刈を岡本が左体落に切り返したGS43秒、ついに浅見に「指導1」が宣告され会場どよめくがこれは副審2人のアピールで即座に取り消し。

1分を過ぎ、浅見は右払腰から畳に膝を着いて体落、さらに巻き込んで岡本を伏せさせるとすかさず上に被って横三角を選択。ここから崩上四方固に連絡すると主審は「抑え込み」を宣告。ようやくこの熱戦に幕かと会場が一息ついたその瞬間、岡本足を絡んで「解けた」。抑え込み時間は僅か6秒でポイントの加算はなく、場内さらに不穏な雰囲気に包まれる。

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写真:岡本の左内股、
浅見大きく浮いて辛くも転がり伏せる
そのまま長い寝技の展開を経て「待て」。残り時間は58秒。「抑え込み」の宣告という事実、そしてその後の寝技で長い時間浅見が攻めっぱなしであったことで会場にはやや弛緩があったが、岡本は再開するなり奥襟を叩いて思い切った左内股。浅見の体は頭を下に巻き込まれて横倒しに倒れ、会場はどよめき。これはほとんど「有効」相当のポイントかと思われたが主審はスルー。観客席には「岡本が勝つのではないか」とざわめきが響き始め、報道席の記者も万が一の事態に備えて椅子を立ち、ミックスゾーンに近い位置に移動を始める者多々。典型的なアップセットの前兆だ。

もう攻めるしかない浅見は小外刈で前に出るが岡本は腰を入れて腹を出して左大腰、浅見は思わず浮いてしまい劣勢は覆せず。そのまま試合は終了。

浅見には延長戦での「抑え込み」宣告という大きなポイントがある。しかし終始主導権を握り手数でも攻勢、そして延長2分2秒にほとんど「有効」という内股を放っている岡本を凌ぐだけの評価がそこに与えられるのかどうか。

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写真:旗判定の結果、
僅差2-1で岡本が勝利
会場固唾を呑んで見守る中、運命の旗は坂本道人主審と岡田保彦副審の2人が白・岡本、大迫明伸副審がひとり赤・浅見を支持。会場には歓声と悲鳴が交錯する。

敗戦に思わず両手で顔を覆う浅見。今大会最大とも言える大アップセット、世界選手権2連覇者の浅見、なんと1回戦で、それも高校生に負けて畳を去ることとなってしまった。

試合直後、インタビューに応えた浅見は言葉に詰まりながらも冷静な語り口。
試合については「いつも通りの入り方」と語ったものの「1週間前から眠ってもすぐに起きてしまうことが続いた」「焦るというよりもいつの間にか時間が経ってしまっていたという感じ」「前に出ても技を掛けることを躊躇する気持ちがあった」と続くコメントからはプレッシャーの影響が明らか。「こんなに情けないと思った日はない」と無念そうに畳を後にした。

浅見八瑠奈選手のコメント
「たくさんの方に応援してもらったのに本当に申し訳ない。1週間くらい前から眠ってもなかなか寝付けない状態だった。緊張はしていましたがそれは当たり前、その中で勝たないといけない。こんなに情けないと思った日はない。試合では『あまり組めないな』とは思いましたが、組み手が厳しい相手だというのもわかっていたこと。抑え込んだ時にしっかり試合を決めるべきでした。いつも通りの気持ちで試合に入れたとは思う。焦るというよりもいつの間にか時間が経っていた。前に出ても技を躊躇する気持ちになってしまっていた。自分の中で世界選手権2連覇はオリンピックのためだったのに、これで意味がなくなってしまった。オリンピックに対する気持ちが消えたわけではないが、自分が甘かったというしかない。」

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写真:福見-山岸の準決勝。
昨年は僅差で山岸が勝利している
福見の次戦は準決勝、山岸絵美(三井住友海上)との大一番。山岸は選抜体重別を制すること3度、いままでに世界チャンピオンになっていないことが不思議な福見の最大のライバルだ。
浅見の敗退により五輪代表の目が出てきた福見だが、優勝が絶対条件であることには変化なし。この試合がきょう最大の難関、敗退はイコールすべてを失うことを意味する。

福見、山岸ともに左組みの相四つ。
福見が奥襟を叩いて圧をかけると山岸は回り伏せて「待て」。
福見は左小外掛から両襟の巴投に連絡、山岸は回りこんでこれを防ぐが、1分過ぎにも福見は釣手を激しく振っておいての巴投を見せる。山岸はこれも被って寝技に選択、引き込んだ福見が山岸の胴を足で挟んで「待て」となるが、ここで山岸に「指導」が与えられる。経過時間は1分8秒。

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写真:福見が大外刈から
左一本背負投、山岸が振り返そうとして
体勢拮抗
1分26秒、山岸が両袖を絞るが膠着気配を感じた福見はいち早く右背負投に座り込んで試合を動かす。
1分40秒、福見釣り手を掴みながらの左大内刈、さらに左小内刈、出足払と繋ぐ連続攻撃。山岸も左小内刈を打ち返して前に出、左大外刈から右袖釣込腰と繋ぐが福見はこれをガッチリキャッチして潰す。

2分16秒、山岸は両袖、福見は釣り手を山岸の左腕の上に乗せて絞りあう睨みあいの形を福見が一本背負投崩れの左大外刈、さらに座り込みの左一本背負投に繋いでブレイク。返そうとした山岸とその体勢で拮抗したまま数秒粘りあい、お互い崩れて「待て」。

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写真:福見、伏せた山岸を
めくって横四方固「一本」
組み手争いの中から山岸は出足払、福見は引き出しの左小内刈、左背負投と繰り出して試合は予断を許さず。

1分58秒、福見は両袖を握りながら鋭い動きで左大内刈、対応が遅れた山岸は福見の突進をまともに受け、下がりながら膝をついて崩れ伏せる。

これに被った福見、一旦国士舘返を狙う形で山岸の左側からその体の下に足を突っ込んで隙間を作ると、左手で山岸の左裾を握ってその腹を包む。そのまま時計回りに相手の体を乗り越えて変則の肩固、山岸が足を絡んで耐えると見るや相手に足を与えておき、頭に体重を掛けて上体を決めなおし、相手の右側に足を抜いて横四方固へと移行する。
「抑え込み」の声を聞いた山岸必死に抗うが福見はこの山岸の動きに乗じて左手を持ち替えて左肩を抱え制し万全の形。ここまで形を進められてはさしもの山岸も抵抗できず「一本」。福見、最大の難関を一本勝ちという最高の結果で乗り越えて見事決勝進出を決めた。

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写真:積年のライバルである2人、
五輪前の最後の対戦は福見の
「一本」で決着した
山岸は、控えめに見積もっても、少なくとも08年~11年までの4年間は世界女王になるだけの実力を持っていた最強選手。常に世界一の実力者と呼ばれながら、そして谷亮子、福見、浅見と3人の世界王者に度々勝利しながらも勝敗の間合いが合わず、ついにこの五輪最終選考会は代表挑戦の権利なく迎えることとなってしまった。昨年の大熱戦を考えるにつけ(僅差2-1で山岸の勝利)、「一本」決着は少々意外な結果、この日初の五輪に挑む福見とのモチベーションの差が勝敗を分けたと評されて妥当なところだろう。

五輪とタイマーが合わなかった、「縁」がなかったとしか言いようのない最強選手・山岸の無念はいかばかりか。 積年のライバル福見と「礼」を交わして淡々と畳を後にする山岸の姿に、勝負の厳しさを改めて感じないものはいなかったであろう。

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