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全日本柔道選手権マッチレポート 準決勝~決勝

2012年5月18日


※eJudo携帯版「e柔道」5月3日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本柔道選手権マッチレポート
準決勝~決勝 1/2


準決勝

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写真:開始早々、加藤は会心の巴投。
百瀬大きく宙を舞って「技有」
準決勝第1試合はともに国士舘大出身の2人、加藤博剛と百瀬優がマッチアップ。

加藤は左、百瀬は右組みのケンカ四つ。
加藤、釣り手を争うと見せてまず左手で右袖、ついで手繰って右手にこれを持ち替え、先んじて引き手で袖を得る。引き手万全で釣り手を持つと、百瀬は仕方なく上からこれに応じる。加藤の組み手は完璧。

加藤、百瀬の前進を横への力に変えて右に移動しながらいきなり仕掛ける。左小内刈を空振りしておいて着地、足を入れ換えると流れるような動作で右足を百瀬の足の付け根に当てて巴投。この小内刈からの入りはトラディッショナルスタイル、典型的な柏崎克彦式横巴。これが教科書のようにスムーズに決まり百瀬の体は大きく浮き、加藤最後は両足を上げて真裏に決めに掛かる。百瀬の巨体ドウと背中から畳に落ちて「技有」。経過時間22秒。

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写真:加藤の左朽木倒
この大きなビハインドに毒気を抜かれたか、以降百瀬はなかなか技が出ず主導権は加藤。1分10秒には再び小内刈から巴投を見せ、組み手では先に引き手を絞り、あるいは切って引き手を争いながら釣り手一本で突き、百瀬に的を絞らせない。
序盤から中盤の百瀬の技で攻撃意図を持ったもの2分過ぎに放った片手の大内刈のみ。2分半を過ぎて百瀬がしっかり組み合える場面もあったがここは加藤が引き出しの小内刈で展開を切り、3分を過ぎたところでは加藤が釣り手で脇を差してそのまま巴投の形で体を捨てて寝技に引き込み、嫌った百瀬の立ち上がり際に左小内刈、朽木倒と攻める。直後の3分19秒、百瀬に「指導1」。

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写真:中盤は百瀬が組み手を支配、
加藤は凌ぐ展開が続く
奮起した百瀬が前に出始め、ここから約2分は百瀬が大外刈と払腰で攻めて、加藤は左一本背負投、さらに百瀬が掛けつぶれたところを狙った寝技で凌ぐ展開。巨漢の百瀬をいなし続けるのは重労働、4分半を過ぎるとさすがにタフな加藤にも疲労が目立ち始める。残り48秒では百瀬の右内股に加藤は大きく浮き、反撃の左一本背負投も明らかに掛け潰れ志向で加藤はやや手詰まり。

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写真:試合終了直前、百瀬が掛け潰れを志向。
加藤はここから左周りに体を捨てて
百瀬をめくり「有効」を追加
しかし加藤は残り30秒を過ぎて突如復活。百瀬の前進に下がりながら釣り手を突いて距離を出し入れしながら、ツイと釣り手を百瀬の腰に回して誘う。応じた百瀬が右内股、さらに右体落を掛け潰れようとしたところを見極め、一旦百瀬が畳に伏せたところから百瀬の釣り手側に体を捨ててめくりまわす。体を残す材料が残っていない百瀬は加藤の全体重を受けてゆらりと回って背中までつき、これは「有効」。

試合はそのまま終了となり、「技有」による優勢勝ちで加藤が初の決勝進出。

加藤博剛○優勢[技有・巴投]△百瀬優

加藤は巨漢の百瀬に対しこれしかないという捨身技でまず先制、中盤は相手の力を封じながらしのぎきって我慢、最後は前に出てくる相手の技を返して追加点という完璧な試合。後輩相手に勝負師の風格を見せ付けて見事決勝進出を決めた。

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写真:石井、鈴木を相手に両襟ながら
ほぼ万全の組み手を作り
内股を仕掛ける
第2試合はまさに昇竜の勢いにあるホープ・石井竜太を王者・鈴木桂治が迎え撃つ。
試合開始直前のたまり、石井は軽く体を動かしながら顔を叩いてやや緊張、一方の鈴木は畳前で中空を見据え、武道館の空気を吸い寄せるような物凄い集中ぶり。

鈴木左、石井は右組のケンカ四つ。
石井、おもむろに前へ。前戦の高橋戦同様、釣り手を争うと見せながらまず長い左手をスッと伸ばして引き手で鈴木の右襟を得てこれを引き寄せる。応じた鈴木は釣り手で石井の前襟を握り、脇を突いて距離をキープしようとするが石井は委細かまわず釣り手でその外周から鈴木の肩裏を掴む。あっという間に石井の組み手が完成。組んでいるだけで鈴木の右肩がやや下がる、石井有利の体勢だ。

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写真:石井のパワー溢れる右内股、
鈴木叩きつけられて「技有」
石井間髪置かず右内股。ケンケンで斜めに追うと鈴木は釣り手を離して腰を抱いて対応しようとしたがこれは判断ミス、石井の突進の早さと激しさに鈴木の右方向への崩れは止まらない。腰に手を回したことで却って石井のパワーをまともに食った鈴木は回転しながらグシャリと畳に落ち、これは「技有」。ここまで開始から僅か17秒。場内には地鳴りのようなどよめき。

そのまま袈裟固を狙う石井に鈴木が足を絡めて「待て」。
石井は自信満々に開始線に戻るがここで異変。鈴木が倒れたまま立ち上がれない。主審に促され、左手で体を支えて起き上がり正座した鈴木、立ち上がって歩き始めるがその右腕はダラリと垂れ下がって明らかに異常。

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写真:鈴木、石井の圧を受けると
激痛に思わず崩れる。
二度目の「指導」
気丈に「始め」の声を聞いた鈴木だが、やはりその右腕は垂れ下がったまま動く気配なし。石井の周囲を回ること一合、石井が手順どおりに引き手を伸ばして鈴木の右襟を掴むと、鈴木激痛に弾かれたように動きを停止。石井も思わず両手を離し、主審は「待て」。

石井が触ったのは袖ではなく、襟である。この鈴木のリアクションと投げられた状況から見て負傷は明らかに右肩。鈴木は立ったまま体を折って激痛に耐える。

開始線に戻った鈴木に、主審はこの一連の試合中断動作を受けて「指導1」を宣告。
鈴木、左構えで右肩を遠ざけて石井を迎え撃つ。石井はまたも引き手で襟、次いで釣り手で奥襟という手順で鈴木を捕まえるが、鈴木今度は心の準備が出来ていたか痛みに耐えて試合は中断せず。しかしその右腕はやはり垂れ下がったままだ。

さすがにやりにくそうな石井の右大外刈は空振り。鈴木はもはや勝利よりも無事に畳から降りることを考えたほうが良い状況だが、ここでなんとその右引き手で石井の袖を持っての左大外刈。これは石井が腰を切るとすぐに振り戻ってしまい、石井は浅く右内股を仕掛けて鈴木を場外に出す。

再開後、石井は引き手で右襟、ついで今度は釣り手で背中を握って圧を掛けると鈴木激痛のためまたもや膝を畳について崩れ折れてしまう。主審再び「指導」を宣告。経過時間は57秒。

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写真:石井の大内刈に鈴木は尻餅、
この直後3度目の「指導」が宣せられる
さすがにやややりにくそうな石井、再び背中を持ち、腰を切って右内股に入ろうとするがその出篭手を鈴木が鋭い左小外刈に捉える。石井の体勢大きく崩れる。しかし鈴木にこれを決めきるだけの力が残っておらず、石井は辛うじて崩れ伏せる。

崩れた瞬間はポイント失陥級と思われた鋭い一撃、この絶望的な状況でさすがは鈴木というところだが、両者伏せたこの展開の後、鈴木は場外でうずくまりなかなか立ち上がれない。経過時間は1分8秒。

早く試合を終わらせねば思わぬ展開があるかもしれない。この一撃で意を決したか、石井再開と同時に前に出て奥襟を叩いて圧力。鈴木は痛みに耐えかねて再び伏せてしまい「待て」。

石井さらに背中を叩いての右大外刈で鈴木を場外にはたきだし「待て」。
再開後、石井万全の組み手から右大内刈。たたらを踏んだ鈴木、場外際でドンと尻餅をついて倒れる。

この大内刈は「有効」相当のポイントかと思われたが、岡田弘隆主審は技の効果を宣告せずに副審を集めて合議。

結果、鈴木に無常の「指導3」が宣告されて試合は終了。石井竜太が総合勝ちで初の決勝へと駒を進めることとなった。鈴木桂治の連覇の夢は潰え、この時点で100kg超五輪代表候補は全て敗退となった。

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写真:不本意な結末に鈴木は無念の表情
石井竜太○総合勝(1:32)△鈴木桂治

圧倒的とすら言える石井の強さは勿論だが、この試合最大のトピックはなんといっても鈴木の負傷。勝ち負けを超えた結果以上に、五輪最終選考会を2週間後に控えた強化陣、そして鈴木にとっては悪夢という他はない。

篠原信一監督は「怪我で思うような試合が出来なかったと評価する人もいるかもしれないが、鈴木の怪我は投げられてのもの。そもそも投げられなければ怪我もしないし、この意味は重い」と厳しいコメントを発した。まさしくその通りであるが、本稿では負傷をものともせず、再度の投げを許さず最後まで畳に残った鈴木の気迫とプライド、全日本選手権という場に見せた敬意を高く買いたい。負傷の衝撃と評価はともかくとして、最後まで残った鈴木の気迫に打たれなかった観客はいないはずだ。

そして投げられた場面。石井の桁外れのパワーと組み手、その実力は高く評価されるべきだが、鈴木は前戦で羽賀龍之介と死力を尽くした試合を戦ったばかり、鈴木-羽賀戦は準々決勝の最終戦ということもありこの試合までの回復時間はほとんどなく、おそらく腕はパンパンに張り、力はほとんど残っていなかったのではないだろうか。
歴代の全日本選手権ホルダーが異口同音に優勝の条件として挙げるのは序盤戦の勝ちあがり方と組み合わせ。最高レベルの選手と5試合、ことによると6試合を戦わねばならない全日本選手権では序盤戦を「一本」で終われるかどうか、終盤戦にしっかり力を残せるかどうかが大きなカギになる。この点2回戦で増渕樹、3回戦で生田秀和、そして準々決勝で羽賀龍之介といずれもベスト4を伺うレベルの強豪と戦わねばならなかった鈴木に、今大会は風が吹いていなかったと見ることもできよう。この点、若く、しかもこれまで高橋和彦戦を含む3試合をいずれも秒殺と言って良い試合時間で「一本」を奪ってきた石井とは大きな差があったことはひとつ勘案しておきたい材料だ。

病院直行となった鈴木の負傷は右肩鎖関節脱臼。通常であれば2週間後の全日本選抜体重別選手権の出場は不可能だが、現時点(5/2)で、既に相当回復、本人も「五輪を目指す」と意気軒昂との情報がある。選抜体重別でその雄姿が再び見られることを切に願う。

結果決まった決勝カードは、

加藤博剛 - 石井竜太

となった。いずれも初の決勝進出である。


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※eJudo携帯版「e柔道」5月3日掲載記事より転載・編集しています。

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