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ワールドマスターズ各階級詳細×概況

2012年1月25日


※eJudo携帯版「e柔道」1月15~21日掲載記事より転載・編集しています。

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ワールドマスターズ各階級詳細×概況 1/2

60㎏級
ガルスチャン大ブレイク!山本、平岡、ソビロフ連続撃破で初優勝


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写真:優勝のガルスチャン。
グランドスラム東京では初戦で川端龍に一本負けだった
※写真は11年グランドスラム東京時
【入賞者】
1.GALSTYAN, Arsen(RUS)
2.SOBIROV, Rishod(UZB)
3.HIRAOKA, Hiroaki(JPN)
3.MUDRANOV, Beslan(RUS)
5.CHOI, Gwang-Hyeon(KOR)
5.KITADAI, Felipe(BRA)
5.KOSSAYEV, Yerkebulan(KAZ)
5.MILOUS, Sofiane(FRA)

ガルスチャン(ロシア・WR6位)が大ブレイク。初戦でシード選手の山本浩史(日体大4年)に大外巻込「技有」で勝利すると準々決勝もキタダイ(ブラジル・WR16位)に一本勝ち、準決勝は平岡拓晃(了徳寺学園職・WR3位)から左体落「技有」で勝ち抜けて決勝のソビロフ戦を迎えた。

決勝はソビロフ右、ガルスチャンが左組のケンカ四つ。
ガルスチャンは序盤の組み際に左の片襟背負投から左小内刈、朽木倒と3段変化でソビロフを投げきり「技有」奪取。以後もソビロフの背負投を腕挫十字固に切り返すなど引かずに試合を続け、ソビロフは焦りがたまって行く。2分29秒、ガップリ組まれたガルスチャンが腰を引いて守勢となると、ソビロフは一瞬背筋を伸ばして左側に踏み込み、そこから得意の「回し右足車」を放たんと足を伸ばして後ろを見せる。これを誘っていたガルスチャン、待ち構えたかのように小外掛でこれを捨て返すと「技有」となり試合は決着。平岡戦と同じく、研究の成果とコンディション調整の巧みさが透けて見える内容でガルスチャンがビッグタイトルを手にすることとなった。

ソビロフはここまで全試合一本勝ちながらも動きに精彩を欠き、準々決勝では技を仕掛けようと前に足を継いだところをコサエフ(カザフスタン・WR19位)に朽木倒で弾き返され「技有」失陥という場面も。数十秒後の試合継続後にこれが足取りの反則と判断されて突如試合は突如試合は終了、反則勝ちでなんとか命拾いしたが、ブツ切りにしかパワーを発揮できず、受けの粘りのなさが目立つ大会だった。

グランドスラム東京でのザンタライア陥落、そしてこの日のソビロフの敗戦と、ガルスチャンのあまりに良い動き。北京以降2強鉄板の感が強かったこの階級、ひょっとして五輪直前のこのタイミングでの戦力図再編成もあるのでは?と一抹感じさせる結果でもあった。

平岡拓晃は初戦は動き悪くダフチャン(アルメニア・WR14位)に僅差3-0だったが、準々決勝は打って変わった俊敏さでチョ・ガンヘン(韓国・WR9位)を相手に右側からの「韓国背負い」でもぐりこんで大腿を内から持ち上げ落として一本勝ち。展望が開けたかに見えたが、準決勝はガルスチャンの振り回すような左体落に動き出しがカチあってしまい1分36秒「技有」失陥。むしろ一本でなくて命拾いしたという技だったが、以降の追撃はあきらかに追い詰めるロジックを欠いて巴投を中心の散発に終わる。講道館杯、グランドスラム東京に続くミッション失敗で非常に厳しい状況となってしまった。

厳しさと言えば、日本人でこの日唯一決勝ラウンドに進めなかった山本浩史は平岡以上に厳しい状況。1回戦でガルスチャンを相手に、残り1分となったところで組み際の左大外巻込で「技有」を失ってしまう。以降人が変わったように攻め、左内股を連発して残り29秒で「指導1」奪取。さらに左小内刈を連発して15秒を切ったところで「指導2」を得たが反撃もここまで。最後まで攻め続けてあと一歩でタイスコアだったこの試合は明らかにエンジンを掛けるのが遅かった。序盤のあまりにも淡々とした試合展開が非常に悔やまれる。

準決勝以降の結果、日本人選手全試合成績は下記。

【準決勝】
ガルスチャン(ロシア・WR6位)○優勢[技有・体落]△平岡拓晃(了徳寺学園職・WR3位)

ソビロフ(ウズベキスタン・WR1位)○小外掛(3:36)△ムラドノフ(ロシア・WR8位)

【決勝】
ガルスチャン○合技[朽木倒・小外刈](2:43)△ソビロフ

【日本選手勝ち上がり】
平岡拓晃(了徳寺学園職・WR3位)
成績:3位
[1回戦]
平岡拓晃○GS僅差3-0△ダフチャン(アルメニア・WR14位)
[準々決勝]
平岡拓晃○背負投(3:28)△チョ・ガンヘン(韓国・WR9位)
[準決勝]
平岡拓晃△優勢[技有・体落]○ガルスチャン(ロシア・WR6位)

山本浩史(日体大4年・WR2位)
成績:1回戦敗退
[1回戦]
山本浩史△優勢[技有・大外巻込]○ガルスチャン(ロシア・WR6位)

66㎏級
モンゴル勢が技術革新で再浮上の気配、森下と海老沼はいずれも準決勝で敗れる


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写真:得意の横落からめくりかえす
ミラグチャ・サンジャスレン
※写真は11年グランドスラム東京時
【入賞者】
1.SANJAASUREN, Miyaragchaa(MGL)
2.KHASHBAATAR, Tsagaanbaatar(MGL)
3.EBINUMA, Masashi(JPN)
3.MORISHITA, Jumpei(JPN)
5.GADANOV, Alim(RUS)
5.KOWALSKI, Tomasz(POL)
5.MOGUSHKOV, Musa

決勝を争ったのはロッテルダム世界選手権王者ツァガンバータル・ハッシュバータル(WR3位)と、ミラグチャ・サンジャスレン(WR9位)のモンゴル勢2人。いずれも準決勝で日本人を倒して勝ちあがった。

準決勝第1試合はミラグチャが森下純平(筑波大3年・WR5位)を相手にまず2分50秒、横落が崩れたところから森下の内腿を掬い、高々と持ち上げて前に走って叩きつけ「有効」。3分51秒には後がなくなった森下が左内股に入ろうと腰を切ったその戻りに合わせて再び横落を放って「一本」奪取で勝利。第1シードのモグシコフ(ロシア・WR1位)を破った(朽木倒で技有を奪い、横落で一本勝ち)実力を見せ付けた。

第2試合はツァガンバータルが海老沼匡(明治大4年・WR6位)を相手に開始早々に横落を放ち、力が拮抗したままスロースピードで海老沼が畳にめくられ落ちたこの技は「有効」。海老沼はツァガンバータルの連続攻撃の前にこれを取り返せず、残り1分では逆に横四方固に抑え込まれる(数秒で解ける)大苦戦。残り1秒で相手の足をパスして横四方固の形に入るが、主審は足を絡まれていると誤認したかこれはスルーされ、このまま敗退となった。

モンゴル勢同士の対決となった決勝は意外な結果。ツァガンバータルの引込返に合わせてミラグチャが右小内刈。コントロールの有無は微妙だったが小内刈の足の絡みがあまりに深く高く、これが技の意思表示とみなされた形で宣告は「一本」。ミラグチャはついに同国のエース・ツァガンバータルを倒して2年ぶり2度目のワールドマスターズ制覇を成し遂げた。

海老沼が投げられた瞬間、IJFのアナウンサーが「同じ技術でまた投げた」と思わず漏らしたようにこの横落(肩車の形の時も、谷落と呼びたい場合もある)は明らかにモンゴル勢が狙って磨いてきたテクニック。ほかにも、連続技、誘っての切り返しなど2段、3段と明らかにプログラムされた動きで試合を挑んできたモンゴル勢の技術的完成度は非常に高かった。
もともと、掬投に特化していたところが09年に足取りが禁止となり、ならばともろ差しの技術を磨きに磨いたところで10年にこれが禁止となったという経緯でもわかるようにモンゴル勢の技術開発能力は非常に高い。ほぼ反則の「ネタ」が出尽くした感のある現行ルールで行われる五輪に向け、モンゴル勢の再浮上は非常に不気味だ。

海老沼は1回戦でラロス(フランス・WR12位)を頭を抱えた内股で一蹴、準々決勝も強敵のガダノフ(ロシア・WR2位)からあっという間に大腰「技有」、焦ったガダノフの帯を持っての内股をめくり返して「技有」と連続一本勝ち。調子が悪くなかっただけにモンゴル勢の強さが際立った。

森下は初戦のドレボット(ウクライナ・WR17位)から大外刈と掬投で2つの「有効」を奪ったが途中「指導2」で追いつかれる場面があり、早々に内股「技有」(「一本」級の技ではあったが)を奪ったコワルスキ戦も相手の背負投に思い切り乗ってしまい「有効」(これは森下が身体能力で凌いだがなぜ「技有」でないのが不思議であった)を失う場面があるなど不安定な試合振り。同じ3位だが評価を上げたのは海老沼のほう、という大会であった。

【準決勝】
ミラグチャ(モンゴル・WR9位)○横落(3:51)△森下純平(筑波大3年・WR5位)

ツァガンバータル(モンゴル・WR3位)○優勢[有効・横落]△海老沼匡(明治大4年・WR6位)

【決勝】
ミラグチャ○小内刈(1:55)△ツァガンバータル

【日本選手勝ち上がり】
森下純平(筑波大3年・WR5位)
成績:3位
[1回戦]
森下純平○優勢[有効・大外刈]△ドレボット(ウクライナ・WR17位)
[準々決勝]
森下純平○優勢[技有・内股]△コワルスキ(ポーランド・WR18位)
[準決勝]
森下純平△横落(3:51)○ミラグチャ(モンゴル・WR9位)

海老沼匡(明治大4年・WR6位)
成績:3位
[1回戦]
海老沼匡○内股(3:46)△ラロス(フランス・WR12位)
[準々決勝]
海老沼匡○合技[大腰・小外掛])△ガダノフ(ロシア・WR2位)
[準決勝]
海老沼匡△優勢[有効・横落]○ツァガンバータル(モンゴル・WR3位)

73㎏級
ワンキチュン辛くも優勝、中矢-秋本の世界王者対決は僅差で中矢に軍配


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写真:優勝したワン・キチュン
※写真は東京世界選手権時
【入賞者】
1.WANG, Ki-Chun(KOR)
2.NAKAYA, Riki(JPN)
3.AKIMOTO, Hiroyuki(JPN)
3.ISAEV, Mansur(RUS)
5.ADAMIEC, Tomasz(POL)
5.JURAKOBILOV, Navruz(UZB)
5.SOROKA, Volodymyr(UKR)
5.VAN TICHELT, Dirk(BEL)

優勝はワン・キチュン(韓国・WR2位)。決勝では中矢力(東海大4年・WR1位)を相手に3分「指導1」を失ったものの以後は奥襟を叩いての小外刈、大内刈に右一本背負投と良く攻める。中矢も良く技を打ち返したが寝技志向もあってかどうしても後手に回り延長戦の序盤から中盤はワンが山場を作る。残り20秒を切ってからはギアを上げたワンが両手で片襟を握って煽りまくって自分の形のまま終了。旗は2本がワン、1本が中矢に上がり、GS僅差2-1でワンが優勝を決めた。

勝ち上がりの内容は圧倒的とは言いがたく、かつての攻略しがたいまでの力強さには程遠い状態だが、試合を見極める勘どころの良さ、クロージングの巧みさはさすが。GS東京を休んで休養十分、ターゲットにしていたはずのこの大会でスケジュール完遂といったところだ。

大会最大の注目どころであった中矢-秋本啓之(了徳寺学園職・WR4位)の準決勝はグランドスラム東京(秋本が一方的に攻めて背負投で一本勝ち)とかなり様相が異なり、奥襟、片襟、片袖とどこからでも攻め込む中矢が秋本に手数と技出しで先行。投技、固技とも攻防は常に中矢ペースで、GS僅差3-0で中矢が勝利している。秋本は「中矢の執念が上回った」とコメント、中矢は研究熱心さが売りの努力派金メダリストの面目躍如。
ランキング上位の中矢は組み合わせにも恵まれこの日は一貫して好調。準決勝までの2戦は相手に柔道をさせず連続の一本勝ちだった。

一方の秋本は初戦のコドゾコフ(ロシア・WR11位)戦から苦戦。奥襟を叩かれ続けてなかなか突破口を見つけられなかったこの試合は組み際、相手の一瞬の隙をついての左袖釣込腰「技有」で切り抜け、大山場のファンティシェル(ベルギー・WR8位)も左背負投「有効」、大内刈「有効」で乗り切ったが、得点シーン以外は我慢する形での膠着が多く、出来はいまひとつの印象だった。
中矢はこれで五輪代表戦線に復帰の気配。

ただし、スクランブルの掛かる延長戦でも投技一発で勝負を決める予感が薄かった中矢は、「代表一枠」を託すには攻撃力の点でやや物足りなさも感じさせた。状況と力関係を覆すだけの技があるタイプではなく展開を積み上げて勝利する選手だけに、先行された場合の試合展開にどうしても不安が残る。投技の多彩さにもうひとつ上積みが必要な印象。

一方の秋本は技一発の魅力は十分だが、逆にパワーファイター相手に受身で展開をスタートすることも多く、確実に状況を積み上げるだけのパワーに一抹不安が残る。グランドスラム東京で見せただけの力強い展開力がコンスタントに発揮できるかがカギ。

そして世界王者3人が互いに大苦戦し、かつ、直近で新しいバリエーションの技で勝ったばかりの秋本が早くも完封されたという事実に、現状の大会スケジュールの厳しさ、戦いぶりを晒し続けることの厳しさを感じないわけにはいかない。五輪に向け、いったいいつまで選手の手のうちを海外勢に見せ続けるのか、いったい、大事なのは代表選考自体なのか本大会での勝利なのか。欧州遠征のメンバー発表で観察できるであろう、首脳陣の戦略に大いに注目したい。

【日本選手勝ち上がり】
秋本啓之(了徳寺学園職・WR4位)
成績:3位
[1回戦]
秋本啓之○GS技有・袖釣込腰(GS1:37)△コドゾコフ(ロシア・WR11位)
[準々決勝]
秋本啓之○優勢[有効・背負投]△ファンティシェル(ベルギー・WR8位)
[準決勝]
秋本啓之△GS僅差3-0○中矢力

中矢力(東海大4年・WR1位)
成績:3位
[1回戦]
中矢力○合技[巴投・内股](4:35)△ダルベレ(フランス・WR13位)
[準々決勝]
中矢力○縦四方固(2:28)△ジュラコビロフ(ウズベキスタン・WR7位)
[準決勝]
中矢力○GS僅差3-0△秋本啓之
[決勝]
中矢力△GS僅差1-2○ワン・キチュン(韓国・WR2位)

81㎏級
中井ワールド全開、マゴメドフ倒して意地の銀メダル獲得


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写真:81kg級を制したママドリ
※写真は11年グランドスラム東京時
【入賞者】
1.MAMMADLI, Elnur(AZE)
2.NAKAI, Takahiro(JPN)
3.BURTON, Euan(GBR)
3.MAGOMEDOV, Sirazhudin(RUS)
5.BRUYERE, Francesco(ITA)
5.NIFONTOV, Ivan(RUS)
5.SCHMITT, Alain(FRA)
5.TOMA, Sergiu(MDA)

第2シードに配された日本の中井貴裕(流通経済大3年・WR5位)が決勝進出。
初戦はケンカ四つのエルモント(オランダ・WR8位)を組み手で追い詰め「指導1」奪取、焦った相手が仕掛けた隅返に透かしかぶって横四方固で一本勝ち。
準々決勝はトーマ(モルドバ・WR13位)に試合をさせず攻め続け、窮した相手が偽装攻撃を犯して「指導2」で勝ち抜け。
準決勝の大山場、マゴメドフ戦は左四つの相手と巻き合い、返しあいの様相で拮抗したまま試合を進めたが、3分4秒、左小内巻込を仕掛けたところに足を抜かれ、縦に掬投で放られ「有効」を失ってしまう。しかし残り43秒、跳ねるように左外巻込に飛びつき、返しを狙ったマゴメドフが食いついたところを強引に投げきって「有効」。さらに残り3秒、左小内巻込から自ら前に転がってこれを回しきり「技有」奪取。見事決勝進出を決めた。

決勝は第1シードのママドリ(アゼルバイジャン・WR3位)と対戦。この試合も相手の横から接近して奥襟を叩き、1分半にはこのプレッシャーに屈したママドリが膝車で距離を取り、払腰で展開を切ろうとしたところに食いつき、めくり返して1回転させる。完全な「一本」だったがこれは両者場外に出てからの技でノーポイント。
強豪相手に優勢の中井だが、ここに落とし穴があった。2分15秒、中井が前に出たところにママドリが右小外掛、引っかかるとみるや横に体を捨てる浮技に変化。中井、逃げ切れず「技有」を失う。

これで中井は完全にペースが狂った。直後、走る勢いで仕掛けた左払腰を狙われ、ママドリは右小外掛から足を思い切り上げながら体を真裏に捨てる。中井とママドリはひとつの物体となって後方に思い切り転がり「一本」。中井は惜しくも2位に留まった。

しかし、講道館杯とグランドスラム東京を落とした中井にとってこのハイレベル大会での2位が持つ意味はまことに大きい。川上智弘(國学院大4年)に長島啓太(日本中央競馬会)と投技の評価が高い正統派の2人がそれぞれグランドスラム東京優勝、グランプリ青島優勝と猛追中、変形タイプで柔道の評価が割れる中井としては実績でライバルを抑え付けていくしかない状況だったが、ワールドマスターズで2位、しかもマゴメドフに一本勝ちしての決勝進出はミッションとしては大成功と言ってよいだろう。組み手と小外刈、外巻込という従来の戦い方に、小内巻込からの展開が上積みされて来ていることも買いだ。「巻きまくる」「返しまくる」中井のスタイルに強豪が戸惑う今大会の戦いぶりは中井の真骨頂だった。

階級全体の様相だが、キム・ジェブン(韓国・WR1位)、ギヘイロ(ブラジル・WR2位)と世界選手権で2大会連続決勝を争っている2人のいない中、第1シードのママドリと第2シードの中井が決勝を争い、第3シードのマゴメドフが3位とトーナメントの結果はまずまず妥当。

第4シードのニフォントフ(ロシア・WR7位)は準々決勝でバートン(イギリス・WR14位)に食われて5位。各階級でロシア勢の躍進が目立つ中、このところ元気のない柔道が続いている。
北京五輪金メダルのビショフ(ドイツ)は初戦でマゴメドフと戦い、両者疲労困憊の消耗戦。最後は右大内刈を透かされ、切り返したマゴメドフの左内股「一本」に沈んで初戦敗退。近年上位進出がなく、五輪代表はマレシュ(ドイツ・WR9位)となる目も出てきた。

【日本選手勝ち上がり】
中井貴裕(流通経済大3年・WR5位)
成績:2位
[1回戦]
中井貴裕○横四方固(3:33)△ELMONT(オランダ・WR8位)
[準々決勝]
中井貴裕○優勢[指導2]△TOMA(モルドバ・WR13位)
[準決勝]
中井貴裕○優勢[技有・小内巻込]△MAGOMEDOV(ロシア・WR6位)
[決勝]
中井貴裕○谷落(2:35)○MAMMADLI(アゼルバイジャン・WR3位)

【準決勝】
中井貴裕○優勢[技有・小内巻込]△MAGOMEDOV(ロシア・WR6位)
MAMMADLI(アゼルバイジャン・WR3位)○優勢[指導2]△BURTON(イギリス・WR14位)

【決勝】
中井貴裕△谷落(2:35)○MAMMADL

90㎏級
西山将士がイリアディス倒す快挙で初優勝、五輪代表に名乗り


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写真:優勝の西山将士
※写真は11年グランドスラム東京時
【入賞者】
1.NISHIYAMA, Masashi(JPN)
2.VOPROSOV, Kirill(RUS)
3.CAMILO, Tiago(BRA)
3.PESSANHA, Hugo(BRA)
5.ILIADIS, Ilias(GRE)
5.MAMMADOV, Elkhan(AZE)
5.NISHIYAMA, Daiki(JPN)
5.ONO, Takashi(JPN)

講道館杯全日本体重別、グランドスラム東京と連続優勝の西山将士(新日本製鐵・WR8位)がついにワールドマスターズも制覇、一躍この階級の代表争いの主役に躍り出た。

西山は初戦で強豪のデニソフ(ロシア・WR7位)に大外刈「一本」で勝利。そして準々決勝の大山場、世界選手権2大会連続優勝中のイリアディス(ギリシャ・WR1位)戦を迎える。この試合はケンカ四つのイリアディスを相手に引き手の手繰り合いの中から粘り強く攻め続けて1分57秒「指導1」を奪取、以後も組み手で戸惑うイリアディスを前に両袖の内股、両襟の内股と攻めて2分34秒ついに「指導2」を奪う。焦ったイリアディスが釣り手で帯を持って西山の膝をつかせ、ようやく「指導1」を得たときにはすでに残り時間僅か17秒。イリアディスは尚も奥襟を叩いて猛ラッシュを掛けるが、西山は左背負投を仕掛けてこれを止め、そのまま時間。西山「指導2」による優勢勝ちで難敵イリアディス超えを果たした。

西山は準決勝も元世界王者カミロを組み手で封殺、1分54秒に大外刈から大外巻込に変化して「技有」を奪取して快勝。決勝もヴォプロソフ(ロシア・WR14位)の迫力満点の攻めを組み手のうまさでしのぎ、残り55秒で左大外刈で引っ掛けておいての右小外刈で相手を転び伏せさせると、これで感触を得たか勝負大詰めの残り5秒、ステップを切っての左大外刈からポンと右小外刈に変化して「有効」を奪取。見事優勝を成し遂げた。

もともと組み手の引き出しが豊富な選手でもあり、自在な組み手と連動しての技でイリアディスを圧倒した準々決勝は真骨頂と言って良い出来だったが、興味深かったのは準決勝のカミロ戦。カミロを組み手で封殺、あとは具体的にポイントを奪取する技があるか、勝負を仕掛ける度胸があるかどうかという中盤、奥襟を持った状態の西山は完全守勢のカミロを相手に「ではいきますか」と言わんばかりに満を持しての左大外刈、これを決め切って「技有」奪取。
カミロほどの強豪を相手に地力で勝っているという自覚があったことはもちろん、隙をうかがうことが逆に難しいはずの一方的な組み手から躊躇なく「取りにいった」この瞬間には、このところ、売りである安定感の上に「投技の威力」を盛りつつある西山が、世界の一線を投げつけるまでに力を得たこと、選手として確実にステージを一段上がったと感じさせるだけの凄みがあった。

国内には小野卓志(了徳寺学園職・WR2位)、世界選手権2大会連続銀メダリストの西山大希(筑波大3年・WR3位)がいるが、なにしろ90kg級の日本人選手でイリアディスに勝利したのは全盛期の泉浩以来、現役選手では誰もいないという状況である。安定感があり、しかも難攻不落と言われたイリアディスに日本人で唯一勝利し、そしてもともと圧倒的な国内での成績と揃えば、控えめに見ても代表争いでは「頭ひとつ抜けた」と評しても良いだろう。

09年秋の講道館杯に優勝するもグランドスラム東京代表に選出されず「むごい。(ポイントを稼いで)ワールドマスターズに出たかった」と絶句していた西山。あれから2年を経てそのワールドマスターズに優勝、五輪代表すらもいまや十分手の届く位置にある。

小野卓志は準々決勝で惜敗。ヴォプロソフに序盤内股で「有効」を奪われたもののその後は内股、体落に一本背負投に小外掛と猛然と攻め続けるが、主審は中断の度に眠そうな顔で「始め」のコールを繰り返すのみ。少なく見積もっても2度の「指導」ポイントをスルーした末に残り39秒にようやく「指導1」を宣するが、危機を悟ったヴォプロソフは直後の小野の背負投、大内刈をいずれも伏せて逃れると、右一本背負投を掛け逃げて小野を寝技に引き込む。抱きついたまま、「攻防継続」アピールのためだけにローリングを繰り返すヴォプロソフが巧みに時間を消費、そのまま優勢勝ちを果たした。ポイント失陥という事実もあり一切言い訳をしなかった小野であったが、なんとも気の毒な試合であった。

西山大希は初戦でニマン(スウェーデン・WR16位)から「指導3」を奪って準々決勝進出。その準々決勝はペッソナ(ブラジル・WR10位)が相手という比較的恵まれた組み合わせだったが、3分23秒、ペッソナが右内股。変化の気配を感じた西山が大内返の形で後ろに踏ん張るが、その瞬間ペッソナは右小内刈に連絡、西山たまらず転がってしまい「有効」失陥。時間いっぱい追ったがついにこれを取り返せず、失意の5位に終わった。
初戦から動きの冴えなかった西山、首脳陣の潜在能力に対する評価は高く、かつ世界選手権2大会連続の銀メダルという実績は圧倒的だが、グランドスラム東京でのメロニ(イタリア・WR16位)戦に続く中堅選手相手の2連敗という事実は重い。実績ゆえに相当研究もされている印象で、五輪代表戦線に生き残るには欧州シリーズでその包囲網を突破する力を見せ付ける必要がありそうだ。

【日本選手勝ち上がり】
西山将士(新日本製鐵・WR8位)
成績:優勝
[2回戦]
西山将士○大外刈(4:10)△DENISOV(ロシア・WR7位)
[準々決勝]
西山将士○優勢[指導2]△ILIADIS(ギリシャ・WR1位)
[準決勝]
西山将士○優勢[技有・大外刈]△CAMILO(ブラジル・WR4位)
[決勝]
西山将士○優勢[有効・大外刈]△VOPROSOV(ロシア・WR14位)

小野卓志(了徳寺学園職・WR2位)
[2回戦]
小野卓志○優勢[指導2]△CHORIEV(ウズベキスタン・WR9位)
[準々決勝]
小野卓志△優勢[有効・内股]○VOPROSOV(ロシア・WR9位)

西山大希(筑波大3年・WR3位)
[2回戦]
西山大希○優勢[指導3]△NYMAN(スウェーデン・WR16位)
[準々決勝]
西山大希△優勢[有効・小内刈]○PESSONA(BRA・WR10位)

【準決勝】
西山将士○優勢[技有・大外刈]△CAMILO(ブラジル・WR4位)
VOPRPSOV(ロシア・WR14位)○優勢[有効・小外刈]△PESSANHA(ブラジル・WR10位)

【決勝】
西山将士○優勢[有効・大外刈]△VOPROSOV(ロシア・WR14位)

100㎏級
穴井またも「ポカ負け」、ラコフが地元の利生かして優勝飾る


120114-15WM_RAKOV.jpg
写真:優勝のラコフ
※写真は10年ワールドマスターズ時
【入賞者】
1.RAKOV, Maxim(KAZ)
2.GROL, Henk(NED)
3.ANAI, Takamasa(JPN)
3.SAMOILOVICH, Sergei(RUS)
5.DARWISH, Ramadan(EGY)
5.NAIDAN, Tuvshinbayar(MGL)
5.ZEEVI, Ariel(ISR)
5.ZHORZHOLIANI, Levan(GEO)

東アジアシリーズで暴れまくった曲者ファン・ヒーテ(韓国・WR6位)は出場せず、優勝争いは穴井とグランドスラム東京王者サモイロビッチ(ロシア・WR2位)、グロル(オランダ・WR3位)、ラコフ(カザフスタン・WR4位)のランキング上位4人に絞られる。

穴井は初戦のボロダフコ(ラトビア・WR15位)に粘られたものの、GS延長戦の開始早々に圧力を掛けるとボロダフコ思わず足を持って防御しダイレクト反則負け。準々決勝はゼービ(イスラエル・WR11位)から「指導2」を奪った末に右背負投を潰して首を抱え極め、縦四方固で一本勝ちで準決勝へ。他のシード選手3人も順当にベスト4へと進出した。

穴井はここで地元カザフスタンの大声援を浴びるラコフと対戦。相四つのラコフから引き手を得るとこれを切らせずに追い込み、釣り手で奥襟を得て一方的に攻めるが、これを左一本背負投からの「足取り」で切ったラコフは以後は持っては切り離すことの連続でまともに組み合う時間がほとんどない。2分には完全な偽装攻撃の左背負投、さらに穴井の釣り手を切って両袖に持ち込んでは、これが崩れるとみるや自ら両手を切って離れる有様。3分にはこの膠着からまたも完全に投げる気のない左背負投にへたりこむが、ところがこの直後、穴井にのみ意外な「指導1」。穴井は猛然と前に出て引き手を相手の腹側に織り込んでおいてからの内股を2連発、大外刈に背負投まで繰り出して残り39秒、どうやら「指導1」を確保してタイスコア。以後はラコフが穴井の猛攻を耐え切り試合はGS延長戦に突入。
延長戦も穴井がまず引き手で袖、次いで釣り手を挙げて奥襟を争いながら前へ出、左内股を仕掛けて一方的な展開。ところが守勢一方のラコフ、釣り手で穴井の左片襟を握りながらこれに耐え、右手で穴井の右袖を得るとこの右引き手を穴井の腹側に織り込んで右送足払。上から叩く展開が続いたせいかやや腰が高くなっていた穴井は完全に一歩下げられて重心が浮いてしまい、バウンドする勢いで畳に叩きつけられてしまう。もちろん判定は文句なしの「一本」。大アップセットに会場は大歓声、穴井は大の字になったまましばし起き上がれず。伏兵ラコフに敗れた穴井、思わぬミッション失敗で3位に終わってしまった。

耐えに耐えたラコフも見事、さらに地元判定の利があったこともこの大番狂わせを後押しした形ではあるが、ポカ負けが2試合連続で続いた穴井は無理やりにでもその原因を探らなければいけないところだろう。

一つ気になるシーンは、露骨な地元判定で「指導」を受けた穴井が明らかに怒り、それを露にして走りよった場面。穴井が若い頃から数々の「ポカ負け」を演じてきた選手ということもあり、「まずいな」と思ったファン、関係者も多かったのではないだろうか。冷静さを欠いた試合ぶりが逆にラコフにチャンスを与えたと考えることはひとつ可能だ。
そして穴井が実際に冷静さを欠いていたかどうかはともかく、このようなシーン、そして実際にその後起こった「一本」失陥という事実は海外選手にデータとして確実に蓄積されていく。穴井は前月のグランドスラム東京で、ファン・ヒーテに張り手2発を食らい、その張り手を晒しての組み手争いから一発食って、圧倒的優勢のはずの試合を落としたばかりである。気の利いたスカウティングをしてくる国なら、穴井をイラつかせる「持久戦」を挑んでくることは間違いない。組み手で粘り、泥臭い一撃を狙ってくる相手の対策は穴井の積年の課題、早い組み手と足技に活路を見出し一定の対策が見えつつあったところではあるが、さらなる研鑽に期待したい。

そして、10年東京世界選手権優勝以後、国際大会では同年のグランドスラム東京、11年のグランドスラムリオに優勝している穴井だが、逆に言えばこれ以外の大会は全てタイトルを逸しているということで、かつての圧倒的な勝ちぶりは明らかに鳴りを潜めつつある。五輪は4年に1度という長い周期の舞台ゆえ、そこに全盛期、伸び盛りがカチ合う選手とそうでない選手がどうしても出てきてしまう。北京五輪直後に「ホープ」として船出した穴井が後者でないことを、ただひたすら祈る気持ちである。

決勝はラコフとグロルが対戦。試合は膠着もグロルがやや攻勢。ラコフの技は一本背負投、巴投とも偽装攻撃の気配が濃く有効打と呼べるのはGS1分23秒に放った右背負投一撃のみ、グロルは本戦4分47秒にラコフの左背負投を思い切り返して背中をつかせる場面(なんとスルーされてしまった)、GS延長戦にも右大外刈を中心の波状攻撃で明らかな山場が少なくとも2回あったが、8分間を戦った末の旗判定は3-0でラコフ。会場は地元選手の優勝に大盛り上がりであったが、グロルにはなんとも気の毒な試合であった。

【日本選手勝ち上がり】
穴井隆将(天理大職・WR1位)
成績:3位
[1回戦]
穴井隆将(○GS反則(GS0:35)△BORODAVKO(ラトビア・WR15位)
[準々決勝]
穴井隆将○縦四方固(4:41)△ZEEVI(イスラエル・WR11位)
[準決勝]
穴井隆将△GS送足払(GS0:30)○RAKOV(カザフスタン・WR4位)

【準決勝】
穴井隆将△GS送足払(GS0:30)○RAKOV(カザフスタン・WR4位)
GROL(オランダ・WR3位)○優勢[技有・内股透]△SAMOILOVICH(ロシア・WR2位)

【決勝】
RAKOV○GS僅差3-0△GROL

100㎏超級
リネール欠場、上川は2位入賞も煮えきらぬ試合ぶりで評価分かれる


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写真:優勝のシルバ
※写真は11年グランドスラム東京時
【入賞者】
1.SILVA, Rafael(BRA)
2.KAMIKAWA, Daiki(JPN)
3.EL SHEHABY, Islam(EGY)
3.TOELZER, Andreas(GER)
5.BOR, Barna(HUN)
5.MIKHAYLIN, Alexander(RUS)
5.SHYNKEYEV, Yerzhan(KAZ)
5.TAKAHASHI, Kazuhiko(JPN)

大本命のリネール(フランス・WR1位)が直前で出場を回避。優勝候補筆頭となった第1シードのテルツァー(ドイツ・WR2位)は準決勝で第4シードのシルバ(ブラジル・WR6位)に残り43秒、大外刈で追われてのけぞり転んでしまい「有効」失陥、これを取り返せずに決勝にはシルバが進出。

もう片側の山から勝ち上がったのは上川大樹(明治大4年・WR19位)。1回戦はパスケビシャス(ラトビア・WR16位)に大外刈を仕掛けて、1回抜かれたものの押し込み切って「一本」、準々決勝はケンカ四つのボル(ハンガリー・WR5位)とGS延長戦に縺れ込む接戦、最後はボルが右背負投に座り込んだところを無理やり振り返して背中をつかせ「有効」を奪って勝利。準決勝は苦手の相四つ、長身の強豪エルシャハビ(エジプト・WR3位)の右大外刈を捕まえて思い切り持ち上げると、腰を切って移腰で叩きつける。エルシャハビが思わず前に手をついてこれを耐えてしまい負傷、棄権勝ちで決勝進出を決めた。

決勝は上川、巨漢のシルバともに右の相四つ。上川は自分より大きい相四つの選手に釣り手で奥襟を叩かれるのが大の苦手だが、シルバは両手で前襟、あるいは横襟を握って上川に下向きの圧を掛け続けるという明らかな作戦ミス。上川は下がりながらも攻撃、1分には思いきり軸足を回しての右内股、これはシルバが股中で透かし回して受けきり上川は潰れてしまうが、直後も右内股、支釣込足と仕掛けて手数でジリジリと攻勢。2分を過ぎてシルバが両襟から仕掛けた右大外刈も後ろ回り捌きで右内股に切り返して膝をつかせ、以後も小内刈の形で相手の右足を払いつつ、支釣込足を放って間合いを探る。3分8秒、シルバに「指導1」。

ところが再開後、シルバはやにわに釣り手で奥襟を持つ。これは上川しっかり落とすが、続く展開でもシルバの手は上川の後襟に伸び続け、作戦変更は明らか。
当然ながらここからいきなり展開が変わり、シルバは右大外刈を連発し、上川は危ない場面が2度、3度と続く。残り11秒にはついに上川に「指導1」。さらにシルバ奥襟を叩き、上川がこれを落としきれないままタイムアップのブザーが鳴り響き、試合はGS延長戦へ。

延長戦もシルバは釣り手で奥襟を叩き、嫌った上川は必死で切るがシルバはしつこく奥襟を叩いては右大外刈を仕掛けて試合はもはや一方的展開。GS38秒には奥襟を叩いたシルバが頭を下げた上川を前に引き落とすと上川は両膝を屈してしまいもはや為す術なし。再開後も簡単に奥襟を得るシルバは大外刈、小内刈、さらに小内刈で上川を場外にはたきだしてやりたい放題。ここで審判団が合議し、当然のように上川に「指導2」が与えられ試合終了。ワールドマスターズ制覇の栄誉はダークホース、シルバの頭上に輝いた。

決勝、上川はシルバが作戦ミスを続けていた3分半の間になんとしても勝負をつけるべきだった。両襟は防御の姿勢であり、距離を詰められた状態からの攻撃が難しいこともわかるが、常と変わらず足技からゆったりと間合いを探る上川の攻撃にはここで決めなければという切迫感、焦燥感はほとんど見られず。出場権のないところからの繰上げ出場、そしてこれ以上ないと思われる絶好の組み合わせ配置に準決勝の相手の棄権、さらにこの決勝での相手の作戦ミスとここまでお膳だてされた復活のシナリオをあっさり蹴ってしまい、これまで気まぐれに上川を愛し続けてきた勝利の神様もさすがに愛想を尽かしすのではと思わず心配になってしまう、なんとも勿体無い試合だった。

と、決勝のあまりの不甲斐なさにマイナス面ばかりが目立ってしまう形にはなったが、負傷明けで調子の出ない中、またそもそも出場権のない中で決勝まで進出して240点という高ポイントを獲得したことはポジティブに捉えるべきだろう。講道館杯では全く柔道が出来る状態でなかった上川が最高位大会で4試合を戦い得た点もこれ自体が朗報。エルシャハビ戦で相手を持ち上げてからの移腰という選択は返し技ファイター、巻き込みファイターが跋扈する超級にあって出色のセンスを感じさせてくれた。しかしやはりなんとも評価の難しい、この点だけは非常に上川らしいワールドマスターズではあった。

高橋和彦は初戦で世界無差別選手権王者タングリエフ(ウズベキスタン・WR7位)が得意の返技で待ち受ける中、力比べに勝って払腰「有効」で勝利。残念ながらしベスト8ではテルツァーに「指導2」で敗れたが一定の力は見せた
グランドスラム東京王者のミハイリン(ロシア・WR9位)は準々決勝でエルシャハビに僅差判定の惜敗、5位に終わっている。

上川は2位入賞だが日本の超級にいまだ光は見えず。現状、五輪代表は「悪い選手を切る」消去法でしか選択のしようがないのではないかと思われる。欧州シリーズでの巻き返しに期待したい。

【日本選手勝ち上がり】
高橋和彦(新日本製鐵・WR14位)
成績:5位
[1回戦]
高橋和彦○優勢[有効・払腰]△TANGRIEV(ウズベキスタン・WR7位)
[準々決勝]
高橋和彦△優勢[指導2]○TOELZER(ドイツ・WR2位)

上川大樹(明治大4年・WR19位)
成績:2位
[1回戦]
上川大樹○大外刈(4:12)△PASKEVICIUS(ラトビア・WR16位)
[準々決勝]
上川大樹○GS隅落(GS1:34)△BOR(ハンガリー・WR5位)
[準決勝]
上川大樹○GS隅落(GS1:34)△EL SHEHABY(エジプト・WR3位)
[決勝]
上川大樹○GS指導2(GS0:48)△SILVA(ブラジル・WR6位)

【準決勝】
上川大樹○GS隅落(GS1:34)△EL SHEHABY(エジプト・WR3位)
SILVA(ブラジル・WR6位)○GS隅落(GS1:34)△TOELZER(ドイツ・WR2位)

【決勝】
上川大樹○GS指導2(GS0:48)△SILVA(ブラジル・WR6位)


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※eJudo携帯版「e柔道」1月15~21日掲載記事より転載・編集しています。

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