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グランドスラム東京マッチレポート 最終日(100㎏、100㎏超、70㎏、78kg、78kg超級)

2012年1月12日


※eJudo携帯版「e柔道」12月26日掲載記事より転載・編集しています。

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グランドスラム東京マッチレポート
最終日(100㎏、100㎏超、70㎏、78kg、78kg超級) 
1/5


100㎏級
穴井と羽賀はファンヒーテの老練さに苦杯
優勝は「棚ボタ」のサモイロビッチ


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写真:穴井、準々決勝で強敵ツブシンバヤル
を相手に美しい送足払で「一本」
【日本人出場選手】
穴井隆将(天理大職)
羽賀龍之介(東海大2年)
増渕樹(旭化成)
熊代佑輔(日本中央競馬会)

第1シードの穴井隆将は順調に予選ラウンドを通過。1回戦は曲者タイプのヒガシ(アメリカ)がとにかく1秒でも長く試合を続けることを志向して底意地の悪い試合を挑んできたが終始冷静に対処して全く相手にせず、2分5秒の小内刈一閃で一本勝ち。2回戦はピータース(ドイツ・WR24位)に「指導2」と内股「有効」で勝利、そして山場の準々決勝、北京五輪王者ツブシンバヤル・ナイダン戦は相手の小内巻込で「技有」を失いビハインド、さらに背負投の侵入を許し続けて雲行きが危なくなってきた1分3秒に送足払が炸裂。形のような見事な「一本」で準決勝進出を決めた。

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写真:準々決勝、ファンヒーテを
攻めまくって攻勢の羽賀龍之介
日本期待の若手、講道館杯2連覇の羽賀龍之介(東海大2年)は初戦から元世界王者コヘア(ブラジル・WR17位)という大変な組み合わせだったがここを「指導2」で乗り切り、さらに2回戦は強敵バンデギースト(ベルギー・WR17位)を大内刈「一本」に仕留める快勝。準々決勝で山場のファン・ヒーテ(韓国・WR6位)との試合を迎えた。

羽賀は右、ファンは右組みのケンカ四つ。羽賀が柔らかく組んで動かしながら圧をかけるとプレッシャーを感じたファンは早々に左一本背負投で掛け潰れて展開を切る。羽賀は組み際に左内股、ファンは羽賀のアクションに合わせての右背負落、座り込みの左一本背負投で反撃。
2分を過ぎたところで羽賀が組み付くなり小外刈、さらに左大外刈、左内股と繋ぐ波状攻撃。劣勢のファンは頭を下げて小さくなってしまい、苦し紛れの巴投で展開を切る。主審これを見逃さず、すかさずファンに偽装攻撃の「指導1」を宣告、2分46秒。
あと一つの「指導」でポイントを失ってしまうファン、必死に左一本背負投を2度繰り出すが、羽賀は一発目は振り戻して返しかけ、2発目は立って受けたまま完全に潰す。そしてファンの攻撃が止んだ3分半、釣り手を畳んでの左内股。ファン大きく崩れて浮くが驚異的なバランスでなんとか伏せてノーポイント。

試合の流れは完全に羽賀。あとは具体的なポイントを挙げるだけだが、ファンは老練そのもの。掛け潰れスレスレの担ぎ技をしかけて主審の「指導」宣告のタイミングをその都度回避し、4分の羽賀の大外刈は場外に逃れ、残り50秒の内股は足を持って耐える。残り12秒、羽賀が引き手で袖、釣り手で背中と完璧な組み手を作るがこれも中途半端につきあうことはせず、自ら巧みに伏せてしまい「待て」。
さらに羽賀が上から釣り手を持って大内刈、大外刈と攻め込んだところで本戦終了。なんとか本戦をしのぎきったファン、主審のGS延長戦再開の声を待たずに勝手に帯を解いてこれを締め直し、羽賀を焦らす間を作る。

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写真:羽賀、ファンの背負投を抱えてしまい、
そのまま上に乗られて「有効」を失う
延長開始早々、疲労困憊のはずのファンがいきなりトップギア。左背負投を仕掛け、羽賀が返そうとした瞬間、身を翻して右一本背負投に潜り込む。ここで羽賀はポイント奪取を焦ったか、潰すのではなく抱えて返そうとして左腕をファンの横腹にまわして密着してしまう。ファンこれを回し切ると羽賀耐え切れずに体側を畳に着けてしまい「有効」。ファンの勝ち上がり決定。

九分九厘試合をコントロールして攻勢だった羽賀、ファンの老練さに屈してベスト8敗退となった。サドンデスの延長戦は経験値豊かで「目の前の結果」に特化した技術を磨きに磨いているファンのフィールド。羽賀は圧倒的攻勢の本戦のうちに勝負をつけたかった試合だった。

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写真:穴井は腰を引くファンを
引きずり出して技を仕掛ける
このファン・ヒーテと穴井が合間見えたのが準決勝第1試合。

穴井左、ファンは右組みのケンカ四つ。
始まるなり穴井は釣り手で横襟、引き手で襟を捕まえてファンを引き摺るように横移動し送足払で攻める。20秒近く、頭を下げて腰を引いた格好でこれに耐え続けたファン、苦し紛れの右背負投につぶれて展開を切り「待て」。

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写真:ファンの「張り手」が穴井の顔面を
直撃
直後の25秒、組み手争いの際にファンがいきなり右手で穴井の顔面に張り手を一発見舞う。主審は即座に「待て」。不可解な軌道で故意の可能性が高いと思われたがしかし主審はこれに注意せず、穴井も冷静に対処して試合再開。再開と同時にファン左一本背負投に座り込むが穴井しっかり捌く。

再開後穴井は足技に絡ませてスッと横襟を持ち、ファンはこれに全く反応できず。スピードとセンスはファンとはかなり段が違う印象。腰を引いて守備を志向するしかないファンは左一本背負投、穴井の釣手を切って両袖の体勢を作ってからの右一本背負投と、穴井が良い組み手になる度に泥臭く担ぎ技で展開を切る。そんな中でも穴井はこれに左内股を合わせて攻撃、ファンは明らかな劣勢だが主審は「指導」のカードを切らず。1分30秒の座り込みの左一本背負投も穴井立ったまま潰し、展開は完全に穴井有利。

組み手の一手目、そして二手目に足技を絡めてくる穴井にファンは組み手で後手を踏み続ける。2分30秒にも組もうとした瞬間穴井の出足払に崩されてしまい、的が絞れない。
ところがこの直後、ファンは組み手のジャブに混ぜてまたもや右手で穴井の顔面をヒット。慌てた主審即座に「待て」を宣告するがファンは平然。

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写真:ファンの左背負投。
穴井は右に逃れ伏せるが強引にめくられ
「技有」
穴井に仲直りの握手を求めたファンは再開後、右引き手を掴み、これをあたかも自らの釣り手で切り離すかのような動作の後、その釣り手で片襟を握った左背負投。「ジャブ」への警戒が頭にあったか穴井やや反応が遅れたものの釣り手側に移動して伏せるが、ファンは肘を脇に突っ込んで固定したままこれを回しきり「技有」。穴井、余裕の試合展開のはずが思わぬポイント失陥。

この後ファンは一旦攻めの姿勢を見せることで試合を落ち着かせにかかるが、穴井は猛然と追いかける。3分30秒、釣り手で奥襟を持ち引き手袖を織り込むとファンはすかさず左背負投で掛け逃げ。3分35秒にも足払で牽制しながら引き手袖を一方的に持って押し込むがファンは勝手に切って伏せてしまい「待て」、主審は序盤戦で「指導」を出せなかったことで宣告のペースが狂ったのか、なぜかこの場面でも「指導」のカードを切らず。残り1分を過ぎ、穴井が奥襟を持つと頭を下げて腰を引いたファンは場外へ。穴井あおりながら場内へ引きずり込むが結局逃がして「待て」。

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写真:穴井が引き手を織り込んだ大外刈で
有無を言わさずファンを投げつける
この再開直後、穴井は引き手でファンの左袖を掴んで織り込むと、釣り手で片襟を握って反時計回りにファンを呼び込んで左大外刈。引き手を内に入れることで下がる相手を絶対に逃がさないという意気込みで深く入った技、ファンは強烈に畳に叩きつけられるがまたも驚異的なバランスで背中をつかず。主審はノーゼスチャーだが副審2人が即座に「有効」をアピールしこの技は「有効」となる。

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写真:残り2秒の穴井の内股も
ファンに伏せられてしまいタイムアップ
ファンはもはやなりふり構わず逃げ、穴井が持ったなり自ら伏せ潰れた残り11秒、さすがに主審も「指導1」を宣告。
猛然と飛び掛る穴井に対し、ファンはまたも腰を引いて頭を下げ徹底防御。穴井、これを左内股で引きずり出す。ファンの体は前に伸びあわやというところだったが、ファンが顔から畳につぶれたところで終了ブザー。即座に立ち上がったファン、ガッツポーズで飛び上がらんばかりの喜びよう。穴井、まさかの準決勝敗退となった。

実力的に一段上の羽賀、穴井を連破したファンは見事、超現実主義とでもいうべき練れた戦術とそれを実行するメンタルの強さは特筆もので大いに見習うべきところがある。

日本人にとっては90kg級時代からの馴染み深い、かつやりがいのある「敵役」であるが、しかしこの準決勝で見せた穴井への「張り手」2発はどうにもいただけない。特に、絶対劣勢の中で放った一発目の軌道は全く不可解、故意と判断されても仕方のないものだった。
そもそも運動能力も技術も高いこのレベルの選手同士の戦いで組み手を顔面に、それも連続で入れてしまうような場面はまずありえない。張り手を見舞ったのはいずれも右手、直後に放った技はいずれもそれを防ぐべき穴井の左側への技だったという事実を考えるに、果たしてこれを偶然と片付けてしまっても良いのだろうか。
90kg級時代の2005年、ファンはカイロ世界選手権で泉浩に反則の脇固(で体重を掛ける)を仕掛けて反則負けとなっている。近年は勤勉なベテランというイメージのファンだが、ひさびさこれを思い出させてしまう場面だった。
穴井をはじめ選手は決して言い訳をしないだろうが、選手ではなくここは審判が物申すべきところだろう。現代の国際審判は研究熱心で強豪選手の個々の癖、ジャッジに影響を与えるような振る舞いには実に敏感だ。ファンの「顔面ヒット」はこの試合だけではなかった。考え過ぎであることに期待したいが、もし続くようであればかならず国際舞台で大きなしっぺ返しを食うことになるだろう。

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写真:決勝、
ファンヒーテが右背負投「技有」で先制
決勝に進出し、ファンと合間見えたのは第3シードのサモイロビッチ。1回戦はホン(台湾)を内股透(1:32)、2回戦はレイテ(ブラジル)をGS延長戦の末に送足払「技有」で片付け、準々決勝はクリパレク(チェコ・WR8位)をGS僅差2-1で降し、大一番となるはずの準決勝はチレギゼ(グルジア・WR22位)の棄権で戦わぬまま勝利。決勝へと駒を進めた。

決勝はファンが右、サモイロビッチは左組みのケンカ四つ。
開始早々の38秒、ファンは両襟を握って煽ると、上に振り返しての右背負投で「技有」を奪取。
以後しばらく慎重な組み手争いが続き、サモイロビッチはまともに組ませてもらえない。ファンは間隙を縫って浮技、左の片襟背負投などで手数を稼ぐ。

時間が経過し、サモイロビッチは前に出始めるが、パワーファイターで組み手が強引なサモイロビッチはファンにはおいしい相手。3分37秒には袖釣込腰で「有効」追加、残り時間19秒で奥襟を叩かれた場面では思わず伏せてしまい「指導」を失うが大差をバックに余裕を持ってゴールにたどり着くはずだった。

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写真:左組みのサモイロビッチに奥襟を叩かれ、
ファンは思わず足取りの反則を犯す
しかし慢心か、直前の「指導」失陥で動揺したか、残り8秒で奥襟を叩かれ、潜り込んだ先にあった相手の右足を直接捕まえてしまう。即座に主審は副審を招集して合議、結果、ファンの一発反則負けが宣告された。

サモイロビッチは準決勝を棄権勝ち、決勝を相手の反則で勝利と棚からぼた餅のグランドスラム制覇。「最初は運が感じられなかった大会だが、最後は日本が自分を受け入れてくれた」とニッコリ。日本語で「アリガトウゴザイマス」と一声発してインタビューを終えた。

日本勢は増渕樹(旭化成)が1回戦棄権勝ちの後、2回戦でチレギゼに大内刈「一本」で敗退。国際のハイレベル大会復帰戦の相手がチレギゼとは不運だが、前週のワールドカップ済州での3回戦敗退(相手はファン・ヒーテ)と合わせて国際大会2連敗という結果は結果。今後の国際大会派遣は難しい情勢だ。

熊代佑輔(日本中央競馬会)は初戦敗退。GS延長戦突入直前の残り1秒、まさかの一本背負投を食い、「一本」でレイテ(ブラジル)の前に屈した。

11年12月9~11日グランドスラム東京・100㎏級・優勝・サモイロビッチ選手
写真:優勝のサモイロビッチ選手
【入賞者】 (エントリー32名)
1.SAMOILOVICH, Sergei(RUS)
2.HWANG, Hee-Tae(KOR)
3.ANAI, Takamasa(JPN)
3.TSIREKIDZE, Irakli(GEO)
5.HAGA, Ryunosuke(JPN)
5.KRPALEK, Lukas(CZE)
5.NAIDAN, Tuvshinbayar(MGL)
5.SAYIDOV, Ramziddin(UZB)

【準決勝】
穴井隆将△優勢[技有・一本背負投]○ファン・ヒーテ(韓国)
サモイロビッチ(ロシア)○棄権△チレギゼ(グルジア)

【決勝】
サモイロビッチ○反則(4:52)△ファンヒーテ(韓国)

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写真:100㎏級入賞者。左から
ファン、サモイロビッチ、穴井、チレクギゼ
サモイロビッチ選手のコメント
「1年の最後を締めくくるために上位進出を狙っていました。1日通して運が感じられない日だったが、最後は日本が自分を受け入れてくれたということではないかと思います。うれしいですね。観客も応援してくれてとても力になりました。ありがとうございます。国歌吹奏の際に、誤って旧ソビエト国歌が流れてしまった。歌えないし、表彰台を降りる訳にもいかずに困っていたら穴井選手が小声で謝ってくれました(笑)。」

穴井隆将選手のコメント
「オリンピックを控えた大事な試合なのに負けてしまって非常に情けない結果です。全日本王者の奪回、世界選手権の連覇と目標に掲げた2つを達成できず厳しい1年でした。体調は100%ではないですが、心技体合わせれば勝てないコンディションではなかったと思います。もっとしっかり稽古をして、オリンピックでは金メダルを獲りたいと思います」

羽賀龍之介選手のコメント
「結果が全てだと思います。1試合1試合全力を出し切ろうと思っていましたが、もう1つ勝ちきれませんでした。(元世界王者2人を撃破したが?)そのことよりも反省のほうが大きいです。誰を相手にどう勝ったかというよりも、今回の自分の課題はランキングを上げることだったはずなので結果は全てです。ああいうところで投げられるのは情けないです。来週ワールドカップ青島がありますので、振り返るとかどうこうではなく、しっかり勝ちたいです。(五輪代表については?)日本人選手は五輪に出るからには絶対に金メダルを獲らなければならない。自分にはまだそんな実力はありません。チャンスを頂いているので、それをモノにするために頑張るだけです」


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※eJudo携帯版「e柔道」12月26日掲載記事より転載・編集しています。

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