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グランドスラム東京マッチレポート 第2日(73㎏、81㎏、90㎏、57kg、63kg級)

2012年1月1日


※eJudo携帯版「e柔道」12月19日掲載記事より転載・編集しています。

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グランドスラム東京マッチレポート
第2日(73㎏、81㎏、90㎏、57kg、63kg級) 1/5


73㎏級
秋本啓之完全復活
中矢力から「一本」奪い初優勝


【日本人出場選手】
中矢力(東海大4年)
秋本啓之(了徳寺学園職)
齋藤涼(新日本製鐵)
大束匡彦(旭化成)

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・準々決勝・中矢力
写真:準々決勝、中矢力は得意の
腕挫十字固でコトゾコフから「一本」を奪う
パリ世界選手権王者中矢力(東海大4年・WR1位)と東京世界選手権王者秋本啓之(了徳寺学園職・WR7位)の日本が誇る両金メダリスト、加えてエルモント(オランダ・WR3位)、ファンティシエル(オランダ・WR10位)、イサエフ(ロシア・WR6位)らが参加する非常にレベルの高いトーナメント。前週のワールドカップ済州で優勝したばかりのワン・キチュン(韓国・WR2位)は出場を回避したが世界選手権並みと言って良い陣容が揃う豪華な顔ぶれとなった。

そしてこれだけのメンバーが揃ったトーナメントの中でも、日本の、そして世界の注目は中矢と秋本による世界王者同士の直接対決という一点に絞られる。この対決は準決勝で実現した。

両者ともここまでの勝ち上がりは極めて順調。第1シードの中矢は2回戦でソコロトフ(モルドバ)を横四方固(2:21)、3回戦でシャリポフ(ウズベキスタン・WR23位)を小外刈「技有」で沈めると、準々決勝はコドゾコフ(ロシア)を相手に3分51秒、得意の腕挫十字固「一本」で勝利。全戦通じて危ない場面なく準決勝進出。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・準々決勝・秋本啓之
写真:準々決勝、
秋本は得意の崩袈裟固で一本勝ち
一方の秋本は第4シード。
2回戦はフォエルク(ドイツ)に「指導2」を奪って攻めまくり、残り11秒で右背負投を押し込んで「有効」を追加して勝利。3回戦長身選手のはナーティ(ガーナ)の股中に潜り込み、背負投で高々と放り投げて一本勝ち、準々決勝はうるさいジュラコビロフ(ウズベキスタン・WR8位)を背負投「有効」から得意の「秋本返し」でめくって崩袈裟固で一本勝ち(4:22)。線の細い試合が続いた今年の試合が嘘のように、常に主導権を取り続けて相手を追い詰める、好内容での準決勝進出。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・準決勝・秋本啓之の左袖釣込腰
写真:準決勝、秋本が左袖釣込腰。
組み手の巧さと担ぎ技のバリエーションの豊かさで
中矢に隙を与えない
中矢、秋本ともに右組みの相四つ。
秋本、中矢の右斜め前から接近し、釣り手で右片襟を持って相手の右足への支釣込足を放って中矢を崩し、左袖釣込腰に繋いで中矢を伏せさせるとすかさず「秋本返し」を狙う。中矢さすがにこれは予期して伏せたまま動かず「待て」。
再開後、秋本はまたもや左袖釣込腰から再び「秋本返し」の形を作るがこれも中矢は足を絡んでしっかり防ぎ「待て」。

1分が経過するが秋本さらに一方的に攻め続け、片襟の右小内刈から右襟を両手で掴んだ左背負投を放ち攻勢。1分24秒にはこの右襟を掴んでの左背負投を2連発すると、1分34秒ついに中矢に「指導1」。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・準決勝・秋本啓之の一本勝
写真:秋本が中矢を右背負投「一本」に仕留める
再開直後、秋本釣り手を振りながら中矢の右前隅に立ち位置を変えると、右背負投。ほとんど中矢の右側面に背中をつけ、横90度に向かって掛けたこの技に対し中矢は釣り手側に体重を逃がして耐え、一旦は畳に伏せる。が、ハナから270度回って技を掛け切る覚悟があったのか大きく体を回した秋本は伏せた中矢の下に入り込んでおり、中矢は秋本の首上を横断する形で秋本の体に乗ってしまう。秋本そのまま回転を続けると、一旦伏せたはずの中矢の体は下から突き上げられねじり回されて背中から落ちる。主審一瞬の沈黙の後勢いよく「一本」のゼスチャー。1分53秒。

秋本の一方的な試合、中矢は試合中技をかけることすらほとんど出来ず。久々、天才・秋本がその凄みを発揮した試合だった。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・準決勝・イサエフの一本勝
写真:準決勝、イサエフ(青)が逆転の
小外掛「一本」。裏投のように体を捻り捨て、
ファンティシエルは反応の暇がなかった
準決勝第2試合は、2回戦で齋藤涼(新日本製鐵)を「有効」優勢、準々決勝で第2シードのエルモント(オランダ・WR3位)を送襟絞「一本」で破ったファンティシェル(ベルギー・WR10位)とここまで全試合「一本」で勝ち上がっている第3シードのイサエフ(ロシア・WR6位)の対戦。

ファンティシエル左、イサエフ右組みのケンカ四つ。1分55秒にファンティシエルが相手の右方向への隅返で「技有」を奪い優位に試合を進める。

イサエフは中盤からスタミナ切れを起こしファンティシエルの勝ち上がり濃厚と思われたが、終盤試合は逆転。イサエフが相手の左側から接近し、奥襟を叩いたファンティシエルの右釣り手を腕挫腕固の形で内側に捻って切り離す。嫌ったファンティシテルが離れた釣り手を戻そうとした一瞬、イサエフは横腰に食いついて右小外刈。戻す動作と技のタイミングを合わされてしまったファンティシエル、耐える間もなく鋭角に畳に落ちて「一本」。イサエフが決勝進出を決めた。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・決勝・秋本啓之のペース
写真:決勝。
秋本は左背負投でペースを掴む
決勝は秋本、イサエフともに右組みの相四つ。
イサエフは右払巻込、秋元は左袖釣腰をそれぞれ仕掛けて幕が開ける。
パワーのあるイサエフ、釣り手を激しく振っての右内股で攻め、一方の秋元は右一本背負投、右片襟を両手で握った左背負投で攻め返す。

1分20秒、秋本が右小内刈で相手を崩すと右背負投。イサエフこれを跨いでしまい股中からカチ上げた秋本は前に走ってこれを決めに掛かるが場外に出てしまいこれはノーポイント。
このあたりから秋本が右背負投、右小内刈で相手を崩しての左背負投と攻め続け、中盤はジワジワと秋本優勢。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・決勝・秋本返
写真:秋本「秋本返」で寝技に食いつくが
イサエフ立ってこらえる
2分35秒には秋本右片襟を握った右背負投、イサエフが伏せると秋本流れるような動作で上からかぶさり「秋本返」。しかしイサエフ秋本に抱えられたまま必死に立ち「待て」。
ペースは秋本だが、ここでイサエフが釣り手で背中の帯を握るとまともに圧を受けた秋元伏せて耐えてしまう。3分53秒にはイサエフが右小内刈から左出足払と繋いで秋本を伏せさせ、4分4秒は秋本が右小内刈から右背負投と絶妙のタイミングで仕掛けた連続技を跨いで落ちながら腕挫十字固を狙いあわやという場面を作り出し、一歩も引かない。

試合は以後も右、左と担ぎ技の止まらない秋本ペース、しかし着実に技を打ち返すイサエフの粘りで本戦は互いにひとつの「指導」もないまま終了。試合はGS延長戦に突入した。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・決勝・技有
写真:秋本の左背負投が「技有」。
肘を捻じ込んで相手の腕を制し、
相手が抜け落ちることを許さなかった
延長開始早々、釣り手で右片襟を握って接近する秋本。イサエフはこの秋本の釣り手を切り離すが、秋本切り離された手でそのままイサエフの袖を握り、両袖のまま左背負投。イサエフが逆側に抜け落ち伏せて技は止まったかに見えたが、秋本の左釣り手の肘がイサエフの脇下にしっかり突っ込まれ、イサエフは腕を制された形になっている。秋本このブロックを手がかりに押し込んで相手の脇をこじ上げめくると、イサエフの体は一回転して背中から落ちる。秋本が胸を合わせ、その腕を制して抑え込みへの動作に移ったところで主審は「技有」を宣告。秋本のグランドスラム東京初制覇が決まった。

互いに「礼」の後、歩み寄ったイサエフは秋本の肩を抱いて健闘を称えあう。それだけの熱戦、激戦となった決勝戦だった。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・決勝・インタビューに向かう秋本啓之
写真:大歓声と打ち振られる日の丸の中を
勝利者インタビューに向かう秋本
73kg級の五輪代表戦線はこれで秋本が一歩確実に抜け出したと言っていい。
今季は元気のない試合が続き、一方でメキメキ頭角を現してきた中矢がいきなり世界選手権を制したことで素人目には中矢優勢と思われても仕方のない情勢だったが、さすがは秋本。篠原信一男子監督は戦前「この階級はまだ五分と五分。秋本はまだまだ自分の方が強いという稽古をしている。」と秋本の充実振りを買う発言をしていたが、まさしくその目は正しかった。中矢に全く何もさせないまま勝利したこの日の戦いぶりはまさに「格上」。単なる勝利以上のインパクトを残した大会だった。

秋本がこの日見せた担ぎ技のバリエーションの豊かさはベテラン世代の軽中量級選手としては珍しい。片襟から逆、右袖から左、両袖から逆、抜け落ちる相手には270度回って投げきる。得意の形にしさえすれば一本という担ぎ技ファイターの典型である秋本が、得意の形に至る「手順」ではなく「形」自体を増やし、どの形からでも仕掛けられるようにモデルチェンジを進めている印象だ。バリエーションが多いところまではひと世代下の軽量級選手のトレンドであるが、見せ技ではなくどの技も「一本」取りきる威力があるというこの恐怖感は秋本が切り開いた軽中量級の新しい地平だろう。特に、逆に抜け落ちさせておいてから決めきるという準決勝、決勝で見せた形は斬新だった。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・2回戦・大束匡彦
写真:初戦、大束匡彦は
攻め込みながらも理不尽な敗戦
ほか、日本勢では実業個人王者の齋藤涼(新日本製鐵)が初戦でファンティシェルとマッチアップする不運。中盤を過ぎた3分8秒に肩車「技有」を奪われて敗戦。
大束匡彦(旭化成)は初戦を勝ち上がったが、2回戦のレグランド(フランス・WR9位)を相手に自ら体を捨てて仕掛けた技を相手の「有効」と判定される不運。残念ながら両者ともまたも国際舞台での活躍は叶わず、畳を後にすることとなった。

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・優勝・秋本啓之選手
写真:優勝の秋本啓之選手
【入賞者】
1.AKIMOTO, Hiroyuki(JPN)
2.ISAEV, Mansur(RUS)
3.NAKAYA, Riki(JPN)
3.VAN TICHELT, Dirk(BEL)
5.ELMONT, Dex(NED)
5.JURAKOBILOV, Navruz(UZB)
5.KODZOKOV, Murat(RUS)
5.LEGRAND, Ugo(FRA)

【準決勝】
秋本啓之○背負投(1:53)△中矢力
イサエフ(ロシア)○小外刈(4:14)△ファンティシェル(ベルギー)

【決勝】
秋本啓之○GS技有・背負投(GS0:19)△イサエフ(ロシア)

11年12月9~11日グランドスラム東京・73㎏級・入賞者
写真:入賞者。左から
イサエフ、秋本、中矢、ファンティシェル
秋本啓之選手のコメント
「なかなか勝てない時期がありましたが今回勝てて少し自信が取り戻せました。最初から自分の柔道、先に攻める柔道をやろうと思っていました。決勝は前に対戦したときよりも研究されているなという感じがしましたけど、どんどん攻めていけたのが良かった。背負投の形が崩れて悩んでいましたので、掛かって自信になりました。中矢選手との試合は本当に紙一重。たまたまタイミングが良かっただけで、ズレていたら返されていたと思います。五輪への戦いは始まったばかり、先を見ずに一つ一つ、与えられたチャンスを掴んで生きたいです」

中矢力選手のコメント
「このままではロンドン五輪は厳しいです。良い調子できたのに、寝技に頼りすぎていたのかもしれません。正直、何が起こったかわからない状態です。帰って試合のビデオを見て、反省点を見つけて次に繋げていきたいです」


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