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講道館杯全日本柔道体重別選手権大会展望 初日

2011年11月11日


※eJudo携帯版「e柔道」11月8日~10日掲載記事より転載・編集しています。

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講道館杯全日本柔道体重別選手権大会展望 初日
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平成23年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会は11月12日、13日の両日に千葉ポートアリーナ(千葉市)で行われる。
ロンドン五輪の第一次選考会となる今大会には、パリ世界選手権出場者である「ナショナル」強化選手も金メダリスト以外は出場が義務づけられ、大量18人がエントリーを行っている。

勤続疲労と海外選手による徹底的な分析に晒され、世界選手権での日本選手の連覇者は浅見八瑠奈(コマツ)のみ。特にベテラン選手は過密な試合スケジュール、年間通して事実上試合のための調整しか出来ないという強行日程の是非が問われる状況となったが、これだけハッキリした結果が出た中でも強化陣の方針は変わらず。「ロンドンに出たければまず講道館杯に出ろ」と再度選手たちに強いメッセージを発して今大会を迎えることとなった。

派遣大会での負傷により公傷が認められた選手もいるが、一部の選手は負傷を申請したものの「出ないとグランドスラム選出はない」ことを示唆され、一転出場を決意したケースもあると伝え聞く。

「選手を休ませる決断を下す勇気がないのではないか」「出来ることは全てやったというエクスキューズ作りではないか」という邪推も飛び交う、そしてそれも無理からぬ状況ではあるが、事の評価はともあれ、強化陣の発言から一貫してにおい立つのは「普通に戦ったのでは五輪では勝てない」という強い危機感である。提唱する方法論は違えど、この一点においては、ファン、強化陣、選手ともに思いはひとつであろう。

結果、今大会は世界選手権レベルのナショナル強化選手、実力者のシニア強化選手とシニアカテゴリに初挑戦するレベルの若手、と五輪前年にふさわしい密度の高いメンバーが揃った。各階級を、五輪代表レースに絡む有望選手と期待の若手という2点を中心に展望してみたい。

81㎏級
唯一「下克上」の可能の激戦階級、川上、花本らの奮闘に期待


【有力選手×階級概況】

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写真:現在五輪代表最右翼の中井
日本が現在大苦戦を強いられている弱点階級。
高松正裕(桐蔭学園高教)、中井貴裕(流通経済大2年)という東京、パリと2つの世界選手権で代表を務めた2名がそれぞれ第1、第2シードに配された。

東京世界選手権3位の高松は1月-3月の冬季欧州国際大会シリーズで絶不調。再度の世界選手権代表選出は非常に厳しい状況だったが、4月の選抜体重別で好内容で優勝、一発回答で代表権を手にした。しかしその世界選手権は初戦敗退。ベテラン、かつ、五輪に向けたプロテクトが必要と判断されるだけの成績も残していないだけに、五輪出場にはもはや一大会も落とすわけにはいかない。今大会は最低でも決勝進出が至上命題だろう。

一方の中井はここ2年、(負傷していた今年度の一時期を除いて)81kg級では唯一国際大会で安定した成績を残している。コンスタントに3回戦、4回戦まで勝ち上がるレベルから、10月に行われたグランプリ・アブダビでは優勝を飾るところまでスローステップながら着実に実力を蓄えており、目下五輪代表には一番近い選手。ただし、首脳陣が中井には物足りなさを覚えているとの情報もあり、今大会から4月までのアピールが非常に重要になってくる。

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写真:もう1試合も負けられない状況の高松
五輪争いという観点で言うと、今夏のパリ世界選手権代表以外からの代表選出が唯一現実的なのがこの階級。
権利者候補としてクローズアップされているのが90kg級で実業個人を獲り、国体でも千葉の優勝に貢献した花本隆司(京葉ガス)だ。本格派タイプで稽古量もこなし、首脳陣の評価も上々。稽古での抜群の強さで選手間ではその存在感もかなりのものだ。ただしパワーに頼るタイプということもあり、五輪レースに絡むにはそのスタイルがパワーファイターがギッシリの国際大会81kg級戦線で通用することを証明することが必須。そのためにはまずこの講道館杯で勝って国際大会への出場権を得たいところ。

もう1人、今期ユニバーシアード優勝の川上智弘(國學院大4年)も忘れてはならない。抜群の技の切れの一方で線の細さも併せ持つ選手だったがここ1年でタフさが増した。4月の選抜体重別では昨季講道館杯優勝のベテラン河原正太(京葉ガス)を大外刈「一本」で一蹴しており、ナショナルレベルでのブレイクの予感も十分。9月のワールドカップ・タシケントでは中堅選手のスティーブンス(アメリカ)に敗れて2位に留まり、これからの成長は必須だが、この講道館杯を獲るようだと一気に代表争いの最前線に出てくるだろう。

これに春山友紀(国士舘大3年)を加えたところまでが「権利者」。ただし後述の3名はいずれも優勝、そして国際大会の連勝という「一本橋」のシナリオを渡る以外に道はなく、ナショナル強化の2名を入れた5名までが総コケの場合は相対的に中井選出の可能性が上がり続けるという状況と見てよいだろう。高松、中井のいずれかが優勝した時点で、この2人以外のロンドンの可能性はほぼなくなる。

トーナメントを見ればわかる通り、この階級はベテランに曲者、若手の新鋭と面白い選手が相当数揃っている。この切磋琢磨が国際大会での勝利につながることを祈りたい。

【トーナメント】

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写真:首脳陣の期待が大きい花本
[Aブロック]
シード選手は高松。ここには吉井健(明治大4年)、長島啓太(日本中央競馬会)、佐藤雄哉(国士舘大2年)、10年世界ジュニア覇者豊田純(日体大1年)と若手の面白い選手が揃った。垣田恭兵(旭化成)も配されている。
ここは高松の巧さと一発で乗り切りそうな気配。パワーのある垣田を相手にしても、担ぎを中心に「持った側」から攻撃を仕掛けられる高松の柔道的な相性が悪いとは思えない。高松は初戦で山邊章平(東海大3年)、次戦で吉井-内門卓也(大阪府警)の勝者、準々決勝で長島、佐藤、豊田、垣田の勝者と矛を交える。

[Bブロック]
昨季王者の「門番」河原正太に、3回戦でインターハイ王者永瀬貴規(長崎日大高3年)、準々決勝で春山が挑む。春山の山場は3回戦、武藤力也(神奈川県警)との一戦か。

[Cブロック]
この階級序盤戦最大の山場が、準々決勝の中井貴裕-花本隆司戦。花本にとってはは五輪に挑むためには必ず乗り越えなければならない対戦、中井としては、五輪までに自分に迫る可能性があり首脳陣の評価を高い花本を直接潰すチャンスだ。中井は宇都宮光樹(筑波大1年)に海老泰博(旭化成)と好選手との連戦、花本も3回戦で松本雄史(兵庫県警)というヤマを超えての対戦となる。
変則の中井は組み手、展開から勝利への道筋が描ける選手でありとにかく負けの可能性を減殺し続けながら試合を運ぶ。オーソドックスタイプの花本がこれにどう対処するか見もの。

[Dブロック]
川上智弘の勝ち上がりが濃厚。しかしその道のりは3回戦で小林雅司(日体大4年)-西岡和志の勝者と対戦、準々決勝で塘内将彦(旭化成)と対戦という厳しいものだ。
その塘内も初戦が田中康介(ALSOK)、3回戦が野村洋治(神奈川県警)、平尾譲一(パーク24)、丸山剛毅(天理大1年)の勝者と気は抜けない。世界ジュニア王者の丸山は初戦で平尾、2戦目で野村といずれも実力者との対戦。さすがにこれは難しいだろう。

90㎏級
西山vs小野、五輪めぐる「第1ラウンド」の様相は必見


【有力選手×階級概況】

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写真:世界選手権2大会連続
銀メダルの西山大希
ナショナル強化選手の2人、東京・パリ世界選手権銀メダリストの西山大希(筑波大3年)とパリ世界選手権銅メダリスト小野卓志(了徳寺学園職)が第1、第2シードでエントリー。
五輪代表争いに権利を持つのは間違いなくこの2人のみ。五輪代表選出まで直接対決の可能性があるのは今大会とグランドスラム東京、ワールドマスターズ、選抜体重別の4度あるが、世界選手権準決勝で西山に敗れたばかりの小野にとっては、今大会は単なる「一次選考会」以上の意味を持つ。

この階級はイリアディス(ギリシャ)が頭一つも二つも抜けている階級だが、一発勝負の五輪では何が起こるかわからず、大事なのはしっかり二番手につけて決勝進出を狙うこと。そういう意味では国際大会の実績も大事になってくるがこの点では世界選手権で2大会連続決勝進出の西山の評価は高いはず。一方の小野も、年齢上負傷の可能性は危惧されているもののその抜群の稽古量、実績に対する首脳陣の評価は非常に高い。なんのかんのでこの階級は「勝ったもの」を選ばざるを得ない可能性がいまのところ非常に高く、畢竟この第一ラウンドの持つ意味も大きい。

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写真:世界選手権で意地の
銅メダルを獲得した小野卓志
10歳年下の筑波大の後輩・西山をこれまで余裕を持って退けたきた小野は今夏の世界選手権、一転慎重な姿勢で試合に臨んで西山の攻勢を許してしまい「指導2」で敗退。ゆえに今大会で直接対決があるとすれば注目は試合の入り。力関係的に、どちらが出て、どちらが受けて立つ形になるのか。小野はガンガン攻めて西山を圧倒しようとするのか、ジックリチャンスを伺うのか。膠着に陥りやすいケンカ四つではあるが、組み手の段階からこの試合は目が離せない。

今春有力な代表候補に浮上した時期もある西山将士(新日本製鉄)をはじめ、他選手は潜在能力はともかく五輪代表に絡むことは難しい。今大会は来年以降を見越した若手のグランドスラム東京進出なるかが争点だろう。

選抜体重別優勝で着実に階段を登りつつある穴井亮平(了徳寺学園職)がマークを受けてどのような試合を見せるか、大学4年間学生個人タイトルなしに終わった吉田優也(東海大4年)の巻き返しは楽しみだ。有力選手としては国際大会には興味薄の様子ながら毎回上位進出で会場を沸かす寝技師・加藤博剛(千葉県警)、実業の実力者山本宣秀(日本中央競馬会)らが挙げられる。

若手世代でぜひとも試合を見て欲しいのは81kg級から転向した引込返ファイターの北野裕一(國學院大3年)、世界ジュニア代表の長倉友樹(修徳高3年)、そしてカデ世代からエントリーが許された田崎健祐(国士舘高1年)。現時点で実力的に上位進出が現実的なのは最近スケールアップした観が著しい北野だ。北野に学生選手権で勝っている下和田翔平(日体大3年)も面白い存在。

【トーナメント】

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写真:81kg級から転向した北野裕一
[Aブロック]
第1シードの西山が配されている。3回戦は樋口涼(福岡大1年)と鈴木明大(龍谷大)の勝者との対戦でここまでは全く問題なし。準々決勝で山本宣秀(日本中央競馬会)と曲者・長尾翔太(兵庫県警察)の勝者と対戦する。山本は波があるもののポテンシャルは十分で、この試合がこの日の西山の出来を見る最初の基準になるだろう。

[Bブロック]
シード位置には穴井亮平。
3回戦で対戦する隣の山組みは長倉友樹と齋藤俊(新日本製鐵)。長倉にとってはいきなりの強豪で少々厳しい組み合わせ。
穴井と準々決勝で対戦するのは加藤博剛と西田泰悟(旭化成)、森田晃弘(警視庁)、中西努(神奈川県警察)の山からあがってきた選手。初戦から加藤-西田、森田-中西が激突するという非常にレベルの高いブロックだ。

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写真:吉田は巻き返しをはかれるか
[Cブロック]
小野卓志のシードブロック。2戦目(3回戦)で穴井航史(東海大3年)、準々決勝で下和田翔平と北野裕一の勝者と対戦する。実力どおりなら小野の勝ち抜けは堅いが、独自のスタイルで一発を狙える北野との対戦は、実現すれば非常に面白いカードだ。

[Dブロック]
3回戦で西山将士と岩田勝博(兵庫県警)という好カードが実現濃厚。オーソドックスタイプの岩田に対して、相手のいいところを消しながら攻め続けられる西山が相性的には有利か。

反対側からは吉田優也の勝ち上がりが濃厚。吉田-西山戦は国際大会ベスト4レベルの顔合わせ。来年から社会人となる吉田の今後を占う試合になるだろう。
田崎健祐は初戦が近藤拓也(筑波大2年)、隣に萩本貴晃(警視庁)という位置に配された。普段力関係で勝る試合が多い田崎がどのような展開で試合を進めるかが楽しみ。

[準決勝-決勝]
以上、ベスト4の予想カードは西山-穴井(亮)、小野-西山(将)もしくは吉田(優)ということになる。
選抜体重別で総合力の高さを見せた穴井を相手にする西山にはここで大きく負荷がかかる。
一方の小野も、西山が上がってくるようだと消耗戦が予想されるが、比較的圧力が掛かりやすい吉田は決してやりにくい相手ではないはず。ここでの対戦相手が吉田か西山か、が決勝に影響を及ぼす可能性は大きい。

100㎏級
第1シードは高木、羽賀と増渕の内股対決にも期待


【有力選手×階級概況】

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写真:2連覇の期待が掛かる
羽賀龍之介
第一人者の東京世界選手権王者穴井隆将(天理大職)が手指の骨折で欠場。
100kg級は穴井を擁して世界の頂点を狙える階級のはずだが、穴井が欠けたトーナメント表を俯瞰すると一気に顔ぶれは寂しくなり次を担う世代の人材払底は顕著だ。

そんな中、階級最大の興味は昨年優勝を飾った若手の新星、羽賀龍之介(東海大2年)の2連覇なるかだ。昨年はベストコンディションとはほど遠い状態ながら地力の強さとバランスの良さ、勝負どころを見極める一瞬のカンの良さを利して弱冠19歳での戴冠となったが、今期の学生大会では本来の技のキレを見せ始めており、今回は内容も含めた柔道の出来が焦点。相変わらず怪我が治り切らず、シニアレベルで戦うには線の細さが否めないが投げのセンスは抜群で、面白い試合を見せてくれそうだ。

第1シードは東京・パリ世界選手権代表高木海帆(東海大3年)だが、惨敗に近い形で敗退した世界選手権も含め最近の試合はいまひとつピリっとしない。長期的な柔道スタイルの修正中で現在は組み手を根本から作り直しているという情報もあり、今秋は我慢のしどころなのかもしれない。

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写真:階級を上げ、
実業個人を圧勝した増渕
ダークホースは90kg級から階級を上げ、8月の実業個人を圧倒的な強さで制した増渕樹(旭化成)。同大会ででは「ダークホース」という扱いにするのが勿体無いほどの強さを見せ付けており、07年に選抜体重別を制し、嘉納杯でイリアディス(ギリシャ)との移腰対決に応じて投げを打ち合った全盛期を彷彿とさせる迫力があった。間違いなく今大会の主役候補の一角である。どう転んでも、少なくともグランドスラム東京出場枠に絡んでくるのは間違いない。

昨年2位の熊代佑輔(ALSOK)もシード扱い。着実に力をつけていくタイプなので、今年も勝ちあがって国際大会の出場権を確保し続けたいところ。

若手で関係者の評価が高いのは学生体重別2位の制野龍太郎(日本大3年)。学生体重別団体優勝大会で高木相手に善戦し大いに株を上げたばかり。立て続けに行われる今大会を出世のきっかけに出来るか注目したい。

【トーナメント】

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写真:世界選手権で2大会連続
代表を務めた高木海帆
[Aブロック]
第1シードの高木が準々決勝でいきなり増渕と対戦するという激戦ブロック。
増渕は初戦でインターハイ王者石内裕貴(高水高3年)、2回戦で学生王者寺島克興(国士舘大4年)-小林督之(天理大3年)の勝者と若い世代の強豪相手の対戦が続くが、力関係からしてここは間違いなく勝ちあがるだろう。組み手に長けた寺島をどう突破するかは見もの。
そして高木-増渕戦はファン必見。90kg級時代には組み手に焦れて試合を壊すことも多かった増渕、一方高木は組み手で粘りながらの一発も得意で普通に考えれば代表経験のある高木優位だが、現在の増渕の勢い、そして柔道を再構築中でパフォーマンスに波がある近頃の高木の状態を考えると増渕が得意の内股に高木を掴まえることも十分あり得る。増渕やや有利か。

[Bブロック]
シード位置には西潟健太(旭化成)。
ここは竹谷知記(警視庁)、小林大輔(ALSOK)らが配された。この3名いずれかの勝ち上がりと見て間違いないだろう。長身の西潟、小型ながら内股のキレ抜群の小林、そしてこの2人を相手に十分立ち向かえる地力のある竹谷といずれも実力者でここの予想はなかなか難しい。直接対決の回数で西潟やや有利か。

[Cブロック]
シード選手は羽賀。初戦は村岡大潤(天理大3年)と宮崎賢司(桐蔭横浜大3年)という学生の実力者対決の勝者と戦い、準々決勝は後小路裕朗(福岡県警)と実業2位の野田嘉明(旭化成)の勝者とぶつかる。油断のならない相手が続くが、この連戦の突破の仕方で今年の羽賀の出来、そしてポテンシャルを再度見極めたいところ。

[Dブロック]
シード選手は熊代。このブロックは金子亮平(筑波大3年)、出口雄樹(旭化成)という実力者に若手の制野、世界ジュニア代表の浅沼拓海(国士舘大1年)が配された。熊代やや有利と見る。

[準決勝-決勝]
羽賀の準決勝は東海大の先輩熊代か売り出し中の制野が相手。いずれと当たっても油断がならない相手ではあるが、羽賀とAブロックの勝者(増渕-高木)が決勝を争うと見てほぼ間違いないだろう。
ファンとしての無責任な視点から言えば、見たいのは同門対決の高木-羽賀よりも増渕-羽賀。それもガンガン掛け合う内股対決だ。人材の層が薄い今大会の100kg級にあって、実現すれば第1日随一の魅力的な決勝戦となるだろう。

100㎏超級
人材払底も若手に期待、負傷抱える上川の汚名挽回なるか


【有力選手×階級概況】

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写真:肩に負傷を抱えパフォーマンスの
上がりきらない上川
パリ世界選手権代表、世界無差別選手権で唯一メダル(銅)を獲得した鈴木桂治(国士舘大教)は負傷のため欠場。
ナショナル強化選手からはパリ代表の上川大樹(明治大4年)と高橋和彦(新日本製鐵)がエントリー、ほか、立山広喜(日本中央競馬会)、昨年優勝の百瀬優(国士舘大4年)、佐藤武尊(了徳寺学園職)らのシニア強化選手、引退も噂されていた大ベテランの棟田康幸と高井洋平も出場するが上川は深刻な肩の負傷を抱えて本調子にはほど遠く、続く勢力も今大会の優勝占いではなく、「世界に通じる」かどうかという観測単位で測った場合、人材払底ぶりは否定しようがない。

徳俵に足の掛かっている上川の戦いぶりは勿論だが、近い将来ナショナルレベルに駆け上がってくる可能性がある新鋭、さらにはジュニア世代の有望株をウォッチするのが正しい今大会の楽しみ方と言えそうだ。

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写真:七戸龍はポテンシャルへの評価を
「実力」に変えることができるか
まずは全日本選手権で切れ味鋭い投技を連発、優勝した鈴木桂治にも善戦して大きなインパクトを残した七戸龍(九州電力)。
シニア強化選手入りし、6月の東アジア選手権で優勝、首脳陣の期待も大きかったが、以後は8月の実業個人で試合巧者の大鋸新(旭化成)に一発食って4回戦敗退、10月のグランプリ・アブダビでは初戦敗退とピリっとしない。稽古環境やディティールの粗さを差し引いても「大物」その身体能力と柔道のスケールを買われ続けた七戸だが、そろそろ体重別でしっかり結果を残しておかないとナショナルレベルには届かない選手と評価を確定されかねない時期に来ている。選手人生の分水嶺が近い印象。

石井竜太(日本中央競馬会)もポテンシャルを買われ続けている選手の1人。8月の実業個人では伸びやかな柔道をそのままに優勝、相手の良いところを消すことは不得手だがよくも悪くも大味さを残したまま結果を残せるようになりつつあり、今大会は楽しみ。

既にシニア強化入り、昨年は生田秀和(ALSOK)を投げて3位入賞した王子谷剛志(東海大1年)は世界ジュニア選手権を連覇して今年も着実に成長している。力関係を覆すような切れ味のある技があるわけではなく、その成長ぶりも柔道も実直、ひたすら地力を上げ続けるという印象のこの選手が、4月の全日本選手権(3回戦で鈴木桂治に敗退)以来のシニアカテゴリ参戦となる今大会で、相手を組みとめておいて動かす本来の柔道ができるかどうか。ナショナル強化選手を食うような活躍を見せてのグランドスラム進出に期待したい。

高校世代では、古風な真っ向勝負スタイルでインターハイを制した飯田健伍(崇徳高3年)に注目。ノウハウと場合分けの溜め込みで成績を残す選手も多い現代の高校柔道の中、ひたすら投技の威力を磨いた印象の飯田の勝ちぶりは非常な将来性を感じさせた。全日本ジュニアでは王子谷との打ち合いに「有効」「技有」「一本」と立て続けに取られて破れたが、シニアカテゴリに挑戦する今回もガンガン攻める高校生らしい試合を期待したい。

【トーナメント】

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写真:世界ジュニアを
2連覇した王子谷剛志
[Aブロック]
第1シードは上川。負傷を抱える中、初戦から岩尾敬太(国士舘大3年)とやや厄介な相手と対戦、2回戦は問題なさそうだが準々決勝は佐藤、須藤紘司(京葉ガス)、猪又秀和(東京学館新潟高教)との対戦が予想される。須藤は10月の国民体育大会決勝で鈴木桂治に一本勝ちしたばかりで乗っている。組み手にうるさく、懐に入り込んで担ぎ続けるスタイルが売りで上川にとってははっきり嫌なタイプだろう。普通に考えれば上川の勝ち抜けだがまったく予断を許さない対戦だ。

[Bブロック]
シード位置には百瀬。津田賢一(天理大4年)、高嶋昌史(茨城県警)、藤井岳(慶応義塾大2年)といるが準々決勝までは問題ないだろう。藤井-百瀬戦の実現に期待。
逆側の山は王子谷と棟田が配された。棟田は井上貴裕(国士舘大1年)、王子谷は辻玄太(旭化成)を突破して3回戦で激突。これは見逃せないカード。棟田は後の先を狙い過ぎるとと王子谷の圧力の前に嵌って展開を失う可能性もある。逆に棟田が攻めあう選択をすれば試合は大いに盛り上がるだろう。

[Cブロック]
シード位置に高橋和彦。2回戦で白本周太郎(神奈川県警)、3回戦は飯田と村上拓(国士舘大1年)の勝者と対戦する。飯田は近い世代の選手との初戦でやや残念。高橋の胸を借りるところまで勝ち上がって、成果を持って帰りたいところ。
逆側の山には石井竜太がおり高橋との対戦は非常に楽しみだが、3回戦で高井洋平という大きな壁がある。高井にとっては石井タイプは比較的やりやすいはずで、石井にとってはやや苦しい組み合わせ。一戦集中、まずこの試合をなんとしても突破しなくてはナショナル強化への道は開けない。

[Dブロック]
シード位置に立山。準々決勝の七戸龍と対戦予定。
長身痩躯の七戸、全日本選手権ではここまでの大型選手を相手にしたことはなかった。果敢に仕掛ける地力があるか、はたまた立山が組みとめて七戸の爆発力を殺すか。このブロックはこの試合が唯一最大の大きな見所。

[準決勝-決勝]
上川の不調、高橋と立山の低調で正直エキサイテキングな試合を想像するのは難しい状況。
しかし王子谷、七戸がこれに挑むという構図が実現すればこれは大きな見所。弾き返せば「やはりナショナルはモノが違う」と改めてレベルの差を感じさせることになるだろうし、善戦、あわよくば勝利すれば新勢力誕生ということになる。B、Dブロックの出来が大会の趨勢を決めるということだ。石井を含めた新勢力の台頭に期待したい。
軒並みシニアのベテランが上位を占めるようであれば、今大会は数年越しの強化スケジュールというマクロな視点で見れば単に「超級の体重別大会を1つこなした」ということにしかならない。若手の台頭、またはこれを叩き潰す代表勢という「あるべき姿」を大いに期待したい階級だ。


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