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【eJudo's EYE】 世界選手権最終日・評

2011年8月31日

※eJudo携帯版「e柔道」8月30日掲載記事より転載・編集しています。

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【eJudo's EYE】 世界選手権最終日・評

かばえない上川の敗戦

男子は準決勝でフランスと対戦。
2-2で迎えた大将戦で、フランスの2番手選手に上川大樹が敗れて無念の敗退となった。

通常通り団体戦のセオリーに則って考えれば先鋒の66kg級海老沼匡の負けがもっとも痛い、ただ負けただけでなく団体戦では決してやってはいけない「逆転負け」を犯してしまい、全体の様相を波乱含み、「取って取られて」というステージに持ち込んでしまったということになるのだろうが、それを差し引いてもやはり上川の試合振りが悪すぎた。

こちらが格上、相手は凌いでくる試合を仕掛けてくることは確実、そして相手はホームタウンディシジョンを頭に入れて粘ってくることが濃厚な地元選手とこれだけ状況が揃えば、例えば開始からラッシュを掛け続けて、言い訳を許さない「指導2」、もしくは投技でのポイントを奪ってしまってから試合をスタートすべきであったがこの序盤戦で取りきれず奥襟を許す場面も多々。開始56秒で上川自身が組むなりいきなり掛け潰れた瞬間、試合は「上川余裕の勝利」から「バタイユ粘ってワンチャンスを生かす」というシナリオに大きく位相を移した。最大の武器である支釣込足も、序盤に大きく相手を崩しながら取りきれなかったことで相手を慣れさせることとなり、ポイントを得るところまでは決まらず。結局肩ごしに釣り手を持たれたところから支釣込足で脱出を試みたところを大外巻込に巻かれ「有効」を失った。

たしかにひどい地元贔屓の連続ではあったが、それをもさらに差し引いても、上川の出来は悪すぎた。コンディション、状況に応じた試合の組み立てなど指摘されるべきところは多々あろうが、多くのファンにとってはそんなことは些事。彼らの主張は「日本のエースがやる試合じゃない」という不満、その一事に尽きるだろう。

5日目評で女子超級について「塚田や薪谷の血の染み付いた階級」と書いたが、日本の男子超級はまさにかつての聖域。それが個人戦どころか、国を背負って戦う、仲間が襷をつないだ団体戦で、しかも2番手選手を相手に国家代表がこの試合ぶり。「頼りにならない奴を大将に据えてしまった」という脱力感、「日本柔道ここまで落ちたか」という虚脱感は、心の準備が出来ていた「超級の金メダル獲得失敗」(実際にはもっと悪い結果だったが)以上のものがある。篠原信一監督の「俺が出たほうが早い」というセリフもむべなるかな、だ。

上川は日本のエースだ。
確かに実績通りに上川を切っていけば「まだ全日本は獲っていない」「エースと認められる安定した成績を残していない」という向きもあろうし、強化サイドもメディアも公平性という観点からか「エース」としての扱いをしているわけではない。
団体戦の負けっぷりのあまりの不甲斐なさには、技、力を超えて、そして、精神面の「不安定さ」というような生易しい評価を超えて、競技者として、人間としての決定的な欠落すら感じさせる部分すらあった。
しかし強化陣の潜在的な評価と同様、ファンは上川を単なる重量級の有力選手、その世代世代で現れては消える単なる強豪選手としてはみていない。しっかり組んで、左右に「一本」を取りきれる美しい投技があって、足技が切れ、巨漢の海外勢を相手にしても凌ぐ試合でなく堂々とこれを受け止めて、かつ勝ちにいけるポテンシャル。メンタルに明らかに抱える問題はともかく、これはかつて日本が「日本の王者はこうだ」と胸を張った柔道、間違いなく上川は日本のエースの系譜に連なる男なのである。

だからこそ、上川にはこの試合を噛み締めてもらいたい。
柔道ファンの期待以上に、一般の柔道を知らないファン、世界選手権と五輪の時だけがテレビを見て何を求めるか。熱いドラマは勿論だが、彼らは溜飲を下げたいのだ。巨漢の海外勢を美しい技で蹴散らす日本柔道は、かつて、だから、一般スポーツファンの支持を集め、尊敬を集めた。だから五輪は「柔道」の注目度が高いのだ。
この高すぎる要求、そんなことが出来る人間はそうはいない。
上川には出来る可能性がある。

いいところがない、どころではなかった最悪の出来の今大会を、何年か後に上川が「転機だった」と振り返るようなきっかけにしてもらうしか、このフランス大会参戦の価値はないであろう。

「国別団体戦」はキラーコンテンツ足りうるか?

女子団体戦は、日本は決勝進出を決めこちらもフランスと対戦。5ポジションに世界王者が6人(中村、佐藤、上野、エマヌ、デコス、杉本)というハイレベルの戦いをフランスが制して、男子とのアベック優勝という最高の形で地元大会を終えた。
この試合は佐藤が中堅選手のパヴィアを相手に落とした試合が痛かったが、日本の大将に絶対の大駒である杉本が座っていることが盤面全体に効き、最後まで非常に緊迫した好試合であった。
この試合に関しては、印象的なシーンは試合中ではなく、試合後だった。日本の地上波放送でもわざわざこのシーンを抜いて放送していたのでご覧になった方も多いと思うが、出場選手とともに円陣を組んだ園田隆二監督が、泣きじゃくる女子選手を前に「お前たちは勝てる!」と励まし続けた場面である。
この、個人戦ではまずお目にかかれないシーンを見て直感的に思ったのは、「国別団体戦」はコンテンツとして一般ファンの好みに嵌るということだ。

なでしこジャパンに女子バレー、サッカーにWBCを持ち出すまでもでなく「国家一丸」(×女子)は現代の人気スポーツを括るキーワードの一つである。チームスポーツ大好きな日本人、そしてなんのかんので五輪では国技として日本人がそのアイデンティを寄せて注目度が増す柔道、ここに現在の世界チャンピオンをズラリと並べるだけでなく、「弱点」(が頑張って勝利に貢献する)というドラマの要素も混在する日本女子代表を押し立てた「国別団体戦」は柔道ファン以外も巻き込めるだけの光を放つ可能性があるのではないか。

しかしどうせやるのであれば面白くなければ意味がない。
そもそも同階級個人戦トーナメント用に特化されたIJFルールで団体戦の面白さが引き出せるかのという疑問もあるが、ここは団体戦先進国の日本が、団体戦の妙味をとっくりレクチャーしてあげるべきであろう。

駒の使い方、配置、単に戦力をそろえるだけでは勝てないという「ゆがみ」のプロデュースまで含めてできればガッチリレギュレーションを精査してもらいたい。精査することで団体戦の魅力を言語化する作業がなされれば、当然それはなんらかの形で外に開示されることとなり一般向けのテレビ解説も充実していくはずだ。チームの特性、選手の特徴、相手との力関係、そして戦略と、個人戦以上に「情報」の有無が面白さを決定付ける団体戦、これをどんどん電波に乗っけて、いい意味での「にわかマニア」を増やしてもらいたい。勝負は、レギュレーションだ。

これは関係諸氏の見識と努力にゆだねるしかないがファンの立場で勝手にいくつか考えればまず少なくとも「引き分け」は絶対に必要。エマヌと上野の試合に引き分けがないという双方にとってため息の出る状況に益があるとは思えない。軍鶏のケンカを5試合並べれば良いというものではないのだ。団体戦の醍醐味は引き分けだ。

今大会のように階級ごとのオーダー順は固定しておくべきだろう(一般マスコミにも戦略が解説しやすい)し、できれば「体重無差別×オーダー順固定」「引き分けあり」「足取りあり」というところまで踏み込みたいが、これは現実性を欠くか。ビジュアルを考えた場合無差別よりは可憐な軽量選手と頼もしい重量選手がタッグを組んだほうがいいかもだし。
ああ。ちょっと前なら、無差別男子の枠は、篠原・井上・棟田・鈴木・泉とか、時代下って石井慧を入れてとかか超強力メンバーが組めたのになあ。

と妄想が長くなったが、団体戦の魅力を引き出すのはなんといってもレギュレーション。現在のそれは団体戦のうまみを十分引き出しているとは到底言いがたい。ノウハウを持つ日本が、「面白くするため」の提案を積極的に、かつ明確に言語化してIJFを引っ張っていくことを切望する。疲弊しきった選手同士による個人戦を5つ並べただけというような、それこそ柔道をはじめてみるファンを失望させるような事態だけは、あってはならない。

文責:古田英毅(eJudo)


※eJudo携帯版「e柔道」8月30日掲載記事より転載・編集しています。

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