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【eJudo's EYE】 世界選手権第4日・評

2011年8月29日

※eJudo携帯版「e柔道」8月27日掲載記事より転載・編集しています。

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【eJudo's EYE】 世界選手権第4日・評

■90㎏級
強すぎるイリアディス、途方に暮れるライバルたち


イリアディスに明け、暮れ、そしてイリアディスに終わった90kg級。やはりイリアディスは強かった。
決勝、西山大希はまるで昨年の再現ビデオを見るかのようにイリアディスに押しつぶされた。深々と入った釣腰で西山が腰に乗ってきたとみるや、さらに体落に繋げて「一本」。GS延長戦まで縺れ込んだ昨年の対戦より時間的には早い結末ではあったが、西山は研究の成果を生かしてよく頑張った。ただし、その内容は昨年以上にイリアディスの圧倒的な強さを示すものだった。

イリアディスと言えば、「釣り手で背中か帯を持って引き付けて、腰の力で投げる」このフィニッシュに終始して勝ち続ける選手だ。これを十分知る西山は相手の釣り手をずらし、いなし、距離を取った位置から対抗。しかし結局は3分すぎ、肩越しにガッチリ帯を握られ、イリアディス得意の釣腰を浴びる結果となった。

最終的に起きる現象は前述の通りだが、決して手足の長い選手ではないイリアディスが90kg級という重量階級で釣り手で背中を叩くというのは並大抵のことではない。イリアディスは力任せにこの形を作っているわけではなく、その「出口」に至るパターンをしっかり作り上げてきている。この日に見せた、釣り手を相手の肩裏に巻きつけて固定する、脇下裏を握る、脇を差す、相手の引き手を織り込んで距離を詰める、相手を誘って深く奥襟を持たせる、これらの一手目の他にもおそらく種々多彩な「嵌め手」を練り上げてきているに違いない。

西山は柔道衣をずらし、距離を取って対抗。
しかし序盤にイリアディスのケンケンの大内刈を支釣込足で大きく崩した場面以外に効果のあったこと、イリアディス攻略のヒントになったことと言えば「寄せられても、安易に技に行かず(移腰と返し技があるので)に一旦脱出を図る」という守備的アプローチのみ。中盤以降、何をやっても最終的には引き付けられてしまうという形になった西山は完全に手詰まりで、次の一手を打つ目が盤上に残されていなかった。
もはや残された出口は、腰に乗って一本負けすることしかなかったのではないかと思うほどで、展開だけで見ればこの「一本」はボクシングでいうところの「嫌倒れ」にひとしい。西山にとってはある意味、秒殺、突如綺麗過ぎる技を一発食っての敗退以上に屈辱的な負け方だったのではないか。

先ほど、肩越しに帯を持つ最終形態に至る「道」の存在について書いたが、これはもちろん図抜けた地力と実力という前提条件があるから出来ることであることを忘れてはならない。決して大きい選手ではないイリアディスがあらゆる試合をこの形で決め、かつ連続してチャンピオンとして君臨しているというのは異次元の事態だ。イリアディスは強すぎる。

思い返せば、トップコンディションのイリアディスとまともにやりあえた選手は05年カイロ世界選手権決勝で合間見えた、全盛期の泉浩だけだ。(調整期に行われる嘉納杯は除外)
この頃の泉は無差別の最高峰大会である全日本選手権で120kg、130kg代の選手と互角以上に戦い翌年はベスト4に進んでいる。ひょっとするともう同階級の選手ではイリアディスのパワーは手に負えないのかもしれない。

60kg級のソビロフもそうだが、イリアディスの同階級選手に対する戦略は完全な「上から目線」。両者とも、この大会で歴史的な選手への一歩を踏み出した感がある。
イリアディス攻略には、力を出させる前に「一本」で勝負を終わらせるしかあるまい。絶対の優勝候補としてイリアディスが乗り込んでくる五輪、日本勢がどう対抗するかに注目したい。

小野の「入り方」が試合に落とした陰影

小野の銅メダル獲得には心から拍手を送りたい。イ・ギュウオンを相手にした逆転の内股一発は、「一本」獲れる技を磨き続けた小野の信念、厳しい稽古で養った精神力の賜物だろう。苦労人・小野の金メダル獲得というシナリオに個人的に入れあげていた筆者も思わず涙する素晴らしい場面であった。同時代にイリアディスという図抜けた選手の存在がなければ小野、西山とも間違いなく金メダルクオリティの選手だ。

その小野と西山の日本人対決は2分57秒両者に「指導1」、そして4分7秒に小野にのみ「指導2」が与えられて決着。2つ目の指導はいささか早く日本人の感覚では勝負はこれからというところ、昨年の48kg級決勝の浅見八瑠奈-福見友子の決勝同様「余計な茶々を入れるな」と思うファンもいたかもしれないが、少なくとも小野は「指導」が来る可能性を頭に入れて戦うべき場面ではあった。たとえGS延長戦に至ってもこの2人らしい投技による決着を見たかったというのがファンの本音ではあろうが、ここは前に出続けた西山を評価すべきところだろう。

本稿で触れたいのは小野のこの試合への「入り方」、アプローチである。開始早々に、不十分な組み手、釣り手一本しか得ていない状態からでも右内股を連発、攻勢を取った小野。明らかに手数を意識したこの入り方は是か、非か。

この大舞台で何が何でも勝つ、という積極性、小野の気合の表れとして取るという見方が一つ。
反面、小野はこの行動で、10歳年下の西山を対等、または格上という前提で試合を組み立てていることを西山に知らしめたという見方も成り立つ。
これまで西山の挑戦を悠々「一本」で跳ね返してきた小野が、「指導」狙いと言える掛け数志向を前面に押し出して試合に入ったときに、西山が「小野先輩は、オレが強くなったと認めているな」と肌で感じた可能性は決して低くはない。もしそうであれば西山は自分の実力に裏づけを与えられた形、かえって勢いづく結果になったかもしれない。

互いに与えられた「指導」のあと、西山はジワリと前に出続け、一方の小野はこれをいなしながら技数で対抗。この格好が約1分続いたが、結果「指導」を与えられたのは小野だった。
序盤の「技数志向」という小野の選択が正しかったかどうかはわからない。見方は三者三様だろうし、「指導」は西山の地力の強さの賜物ではあろう。
しかし、この試合に限らず、掛け数志向の技の連発というシークエンスは、必ず相手のリアクション行動を引き起こしてしまうものである。掛け数での対抗、組み手手順のチェンジ、圧力志向での一発狙い。対処の仕方は種々であろうが、相手に「腹を決めさせる」きっかけとなるのは間違いない。

この序盤のアプローチが試合と両者の力関係に微妙な陰影を落とした可能性はある、そう思わせる試合の入り方と、決着だった。

■70㎏級
國原は銅メダル確保も、評価覆すに至らず


國原頼子は2大会連続の銅メダル確保。3位決定戦ではリードした後に受けに回る悪い癖が顔を出してしまってはいたが、安定感という自らの売りを証明する形で、最低限の仕事は果たした。

ただし本人は勿論不満だろう。銅メダルの力があることは証明済み、昨年初出場で銅メダルを獲得しながら「これでは五輪の金は厳しい。若手を鍛えるという選択もある」という園田隆二監督の厳しいコメントを浴びた國原にとってはデコス、メサロシュ、そしてボッシュという「金メダルクラス」狩りが今大会の至上命題だったからだ。
本人にとっては、銅メダル獲得の喜びよりもメサロシュに勝てなかった悔しさが強いはずだ。この國原の意識の高さが、次の大会に繋がることを信じたい。

田知本遥は、コルテス(キューバ)に敗北。國原がそのコルテスに勝って3位入賞という少々苦い結果の世界選手権初挑戦だった。

■78㎏級
緒方敗北も収穫十分の「銀」


緒方亜香里は決勝で本命・チュメオ(フランス)に敗退。奥襟を叩きにいったところをチュメオがいなし、同時に送足払。膝が伸びていた緒方の体は抗せず一回転。「一本」で緒方今大会は銀メダルに終わった。

しかしこの日の緒方は好内容。勝ち上がりの良さはもちろん、組み手の面での成長に光明が見えた。かつての緒方は、闇雲に奥襟を叩き、「一見奥襟は持っているが効いていない」状態で柔道を続けてしまったり、巻き込みの形に腕を流しながら一発の機会をうかがう弱気な組み手も散見されたがこの日は手順、持ち方とも様相一変。肘をこじあげさえすれば相手の頭が極まる、という位置でしっかり釣り手を持ち、チュメオに圧力を掛けていた。

もともと、自分の形が作れさえすれば力の出る緒方。この日の勝ち上がりでその「力」は証明したわけで今後には多いに期待が持てる。銀メダル獲得のこの段に至ってもまだまだ良い意味での粗さがある点も伸びしろとして買いだ。

このチュメオとの対戦では中盤に最大のチャンスがあった。唯一、自分だけが引き手袖を持ち奥襟を叩く完璧な形の時間帯。しかしチュメオは自身を場外、緒方だけを場内に置く位置で防御姿勢を定め、技の方向を限定。場内に引っ張り込まれると早々に掛けつぶれて一旦展開を切った。63kg級エマヌ、70kg級デコス、そしてこの78kg級のチュメオとフランス勢はまことに戦略性が高く、状況ごとの選択肢をハッキリさせて試合に臨んでいる。次の対決に向け、このあたりもしっかり対策してほしいところだ。

池田ひとみは地元選手ロウテ(フランス)戦を乗り切って2勝を上げたがハリソン(アメリカ)、ウォラート(ドイツ)どという一線級には連敗して敗退。池田なりに階段を上っている印象だが、これを首脳陣がどう評価するか、池田がどう次につなげるかだ。

文責:古田英毅(eJudo)


※eJudo携帯版「e柔道」8月27日掲載記事より転載・編集しています。

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