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グランドスラム東京・70kg級、78kg級、78kg超級マッチレポート

2010年12月19日

※eJudo携帯版「e柔道」12月14日掲載記事より転載・編集しています。

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[GS東京70kg級マッチレポート]
期待の田知本遥ついに優勝!渡邉は先の見えない大スランプ


【日本人出場選手】
國原頼子(自衛隊体育学校)
渡辺美奈(コマツ)
田知本遥(東海大2年)
谷口亜弥(山梨学院大4年)


この階級は東京世界選手権で日本代表を務めた2人が相次いで初戦敗退という波乱の幕開け。
まず、ロッテルダム世界選手権3位の渡邉美奈。初戦でランキング21位のシエレ(ドイツ)と対戦、ケンカ四つでパワーに勝る相手に先手を取って試合を進めたいところだが、開始早々の27秒に大内刈「有効」を失う最悪の展開。以降4分に渡って追いかけるものの攻撃はそれぞれが散発で作戦としての一貫性がなく、反撃のきっかけが全く掴めない。残り0秒、遮二無二走って組みついたところをその勢いのまま回され返して(公式記録は大外返)一本負け。完敗という言葉だけでは括りきれない試合だった。

試合後は「自分の立ち戻る柔道がわからなくなっている。相手がどうこうではない」と涙を浮かべた渡邉。世界選手権の惨敗に続き、世界団体選手権、アジア大会とこのところ良いところがなく柔道人生最大のスランプにあえいでいる。
1月にはワールドマスターズが控えるが、目先にとらわれずジックリ自分の柔道をみつめなおした上での復調を期待したい。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg・國原頼子
(写真:終了ブザーを聞いて呆然の國原)

続いて東京世界選手権3位の國原頼子も敗退。ギボンス(イギリス・WR39位)に「指導1」をリードしていたが2分に大外刈で「有効」を奪われ、これを取り返すことができなかった。
こちらは「袖を殺してくるのはわかっていたが、組み手の手順を変えたことが敗因。自分の組み手でやるべきだったのが反省点」と自己分析。「まずはマスターズでしっかり優勝することを考えます」と早くも次を見据え、下を向くことはなかった。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg準決勝・田知本遥
(写真:準決勝、田知本はスラカから大内刈「技有」を奪う)

決勝に進出したのは、日本期待の新鋭田知本遥(東海大3年)と、長身の強豪ボッシュ(オランダ・WR6位)。
田知本は初戦で優勝候補の一角、アルベール(コロンビア・WR18位)から隅返「有効」で勝利。準々決勝のギボンス戦は「指導2」に大内刈「有効」を奪って完勝すると、準決勝は東京世界選手権3位のスラカ(スロベニア・WR5位)を大内刈「技有」、続いて小外掛「有効」を奪いそのまま横四方固に移行。諦めたスラカが「参った」を申告し、文句なしの一本勝ちで決勝進出を決めた。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg準決勝・ボッシュ-ファン・イスル
(写真:ボッシュ-ファン・イスルの準決勝)

対するボッシュはコンウェイ(イギリス・WR23位)を大内刈「技有」、シエレを「指導2」の優勢勝ちで降すと、ファン・イスル(韓国・WR6位)との準決勝はGS延長戦にもつれ込む持久戦を粘り強く戦い抜いて僅差2-1で勝利。決勝へと駒を進めた。

決勝はボッシュ、田知本ともに左組みの相四つ。
183cmの長身ボッシュは田知本の左側に立つ横変形。リーチが長いためにこれにつきあうと田知本の釣手が伸びてしまうが、田知本心得て回り捌きなら小内刈を飛ばして相手を崩す。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg決勝・田知本遥-ボッシュ
(写真:田知本-ボッシュの決勝戦)

40秒、ボッシュが飛び込みの左体落。良く耐えた田知本、これを潰して得意の横三角に相手をロックするがボッシュの体が伸びきらず、回すことまでは出来ずに「待て」。
以降、田知本は前に出続けるがリーチの長いボッシュの釣手のディフェンスに阻まれなかなか攻撃の効く距離に入っていけない。2分30秒には組み手争いのさなかに、ボッシュが釣手を離して払巻込。田知本この侵入を許したもののなんとかこらえて倒れず。以後も粘り強く足技で攻め続ける。

2分8秒、田知本の圧力で場外に逃れたボッシュに対し、自ら場外の逃れたとの判断で「指導1」。
田知本は小内刈に、相手の左足へ内側からの足払と細かい足技で崩し、相手の釣手を下げておいての大外刈。ボッシュは組み際の内股に大外巻込で攻める。3分40秒、ボッシュの大外巻込がスッポ抜けたところに田知本体を浴びせるがポイントはなく、試合はそのままGS延長戦へ。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg決勝・田知本遥の大内刈
(写真:延長戦、大内刈で攻める田知本)

延長はジリジリと前に出ながら田知本が左内股、小内刈に左大外刈で攻勢。
16秒に早くも審判団はボッシュへの「指導」の是非を協議するがこの場面はスルー。
以降は田知本が足技で主導権を握り、ボッシュが散発の大技でこれに対抗するという展開が続くが、2分57秒、田知本が左小内刈、左大内刈のコンビネーションでボッシュを場外に押し出した場面で審判団が再協議。ボッシュに「指導2」が与えられ、田知本の勝利が決まった。

苦しい戦い、一歩間違えば一気に相手に流れが転がりかねない激しいつば競り合いを制した田知本の精神力は見事。かねがね世界一を狙える人材として首脳陣が言及してきた期待のホープが、ついにグランドスラムという大舞台で優勝という結果を残した形だ。
この日はスラカ、ボッシュという強豪を連破しており、これだけでも世界で戦えるという感触は十分。欧州国際大会シリーズでデコス、メサロシュと対戦して一定の成果を残せば、世界選手権代表のみならず一気にメダル獲得という絵も描けるのではないだろうか。

ロッテルダム3位の渡邉が先の見えないスランプに落ち込んでいることもあり、現時点では世界選手権代表2枠にピッタリ嵌る可能性が高い。早くから期待されながらシニアではなかなか結果が出なかった田知本だが、ここに来ていよいよ花開く予感。パワーアップ、取りきる技の開発にディフェンスの安定感とまだまだ課題は多いが、計算できる國原に加えてブレイクの近そうな田知本。日本のウィークポイントのひとつである70kg級に光が見えてきた。

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg入賞者
(写真:70kg級入賞者。左からボッシュ、田知本、
スラカ、ファン)

日本代表のもう1人、谷口亜弥は2回戦敗退。初戦はマルゾック(ドイツ)に袈裟固で一本勝ちしたが、ズパンシック(カナダ・WR11位)に袖釣込腰「有効」を先生しながらも、払巻込「技有」から抑え込まれて逆転負けを喫した。

【準決勝】
ボッシュ(ドイツ)○GS僅差2-1△ファン・イスル(韓国)
田知本遥○合技(2:03)△スラカ(スロベニア)

【決勝】
田知本遥○GS指導2(5:57)△ボッシュ(ドイツ)

10年12月13日GS東京柔道大会・70kg・田知本遥
(写真:70kg級優勝の田知本遥)

田知本遥選手のコメント
「決勝は本当に苦しい試合だった。それまでの試合も内容は良くなかったが、優勝を目指していたので嬉しいです。結果は残しましたが、中身をもっとちゃんとしないと、本当に目標のオリンピックでは勝てないと思います。これからもがんばります」

渡邉美奈選手のコメント
「気持ちを切り替えて試合に臨んだつもりですが、自分のやりたいことが1%もできませんでした。胸を張ってどんどん前に出て、相手が攻める隙がないくらい技を出してその中でチャンスを見つけるのが自分のスタイルですが、足が前に出ず、技を掛けるどころか普通に持つこともできなかった。相手がどうではなく自分自身の問題です。いままでもスランプはありましたが、今回はなかなか打開できない。ナショナル強化からも落ち、這い上がるしかないのはわかっているし代表は取られたくないですが、今は自分の柔道を体で思い出すので精一杯。来年のことはまだ考えたくありません」

國原頼子選手のコメント
「(疲れがあるか?)絶好調というわけではないですが、いつもそんなもの。苦しくても最初の試合が大事だとわかっていたので悔しい。(渡邉選手の敗退に動揺があった?)渡邉があってやってきたという部分もあって、気になってしまう自分はいた。課題は相手とは何回か試合をしたことがあって袖を殺してくるのもわかっていましたが、敗因は組み手の手順を変えたこと。自分の形で組みにいくべきでした。ここが反省点です。組み手を磨くこと、足技から崩すことが課題。マスターズ優勝のことだけを考えてまた頑張ります」


[GS東京78kg級マッチレポート]
「ブラックパワー」でフランス・チュメオが圧勝、緒方は動き冴えず準決勝敗退


10年12月13日GS東京柔道大会・78kg準々決勝
(写真:準々決勝、緒方亜香里が穴井さやか
を内股「一本」に仕留め逆転勝ち)



【日本人出場選手】
緒方亜香里(筑波大学2年)
平岡麻美(平成国際柔道クラブ)
柴野亜希(北関東警備保障(株))
穴井さやか((株)ミキハウス)


序盤の注目は準々決勝で実現した緒方亜香里-穴井さやかの日本人対決。
緒方左、穴井は右組みのケンカ四つ。1分14秒、穴井、刈り足を引っ掛けておいてから外に回す左大内刈を仕掛け、足の開いた緒方ドスンと畳に落ち、これに穴井が浴びせて「技有」。穴井序盤で大きくリード。
これに対し、緒方、2分すぎに上から釣手で穴井の背中を叩く強気の組み手。前にひきずり出しながら、長身の穴井の頭が十分に下がったところで大内刈で追っておいての左内股。穴井耐えられず1回転し文句なしの「一本」。

長身の穴井に対し遮二無二仕掛けるのではなく、内股が効くところまでジックリ頭を下げさせて仕掛けた緒方の冷静さが光る試合だった。一方の穴井は、攻撃力の高さと相反する受けの弱さという2つの特徴を見せ、一本勝ちも多いが一本負けもまた多い穴井らしいと言えば穴井らしい試合。安定感が今後の課題だ。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg準決勝
(写真:準決勝、緒方はジャークに足を掬われ敗退)

この試合に勝利した緒方はしかし次戦の準決勝で敗退。序盤、左相四つのジャークとガップリ組みあったところから、緒方の大内刈のあとを受けてジャークが絡みつくような右小外掛。これを緒方が足を挙げて逃れようとした刹那、ジャークは足を取って前に出ながら緒方を持ちあげ、掬投の形で体を浴びせると文句なしの「一本」。
緒方は連戦の疲労か初戦から動きが緩慢で腰にキレがなく、不調が明らか。1月にはすぐワールドマスターズが控えるが、同大会での復調に期待したい。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg決勝・チュメオ
(写真:決勝、チュメオは一方的に攻めまくる)

決勝は緒方に勝利したジャークと、フランスのチュメオ(WR9位)の顔合わせ。
右組みのチュメオ、奥襟を叩き、時計まわりに相手を引き出し崩しながら右大外刈、小内刈、小内刈と大内刈の連携から内股と攻めまくり、約1分に渡って一方的な攻撃が続く。
苦しくなったチュメオ、真捨身技を仕掛けて展開を切ろうとするがチュメオこれにも反応して逆に体を浴びせ返す(ノーポイント)。
以後も同様の展開で、ジャークが一度も自分の形で組めないままチュメオが攻め続けて1分21秒、ジャークに「指導1」。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg決勝・チュメオの一本勝ち
(写真:決勝はチュメオが「一本」で圧勝)

チュメオ、時計まわりに振り崩しての技を継続し、1分41秒、根負けしたジャークの右膝の外側を右大外刈で捉えて固定。機と見てそのまま払い上げれば逃げ場を失ったジャーク宙を舞い、払腰「一本」。尻あがりに調子を上げたチュメオ、準々決勝以降の3試合を全て投げ技「一本」で決め、見事優勝を飾った。

釣手側に相手をまわして崩すという基本の組みたてだけでここまで一方的に試合を作るチュメオのパワーは素晴らしい。63kg級のアグベニュー、エマヌ、70kg級はデコス、78kg級にはこのチュメオを加え、パリ世界選手権を控えたフランス女子のラインナップは強力。パリ世界選手権では地元の利もあり、日本勢はパワーファイター対策が急務だ。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg準決勝・チュメオの大内刈
(写真:準決勝、チュメオの大内刈。ここから場外まで押し込んで「一本」を奪取した)

日本勢、講道館杯決勝進出で抜擢された平岡麻美と柴野亜希はいずれも初戦敗退。平岡は強豪アギアール(ブラジル・WR8位)に内股で一本負け(1:30)、柴野も東京世界選手権王者ハリソン(アメリカ・WR3位)に一本背負投「技有」を奪われてサプライズを起すには至らなかった。
また、東京世界選手権で突如頭角を現し優勝をさらったハリソンは、前述の通り1回戦は柴野に優勢勝ちしたが、2回戦でハイゼ(ドイツ・WR37位)の谷落を食って僅か21秒の一本負け。実力を示すことはできなかった。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg入賞者
(写真:78kg級入賞者。左からジャーク、チュメオ、
ヤン、緒方)
【準決勝】
ジャーク(ベルギー)○朽木倒(1:01)△緒方亜香里
チュメオ(フランス)○大内刈(1:30)△ヤン・シュウリ(中国)

【決勝】
チュメオ(フランス)○大外刈(1:41)△ジャーク(ベルギー)

チュメオ選手のコメント
「今はすごくうれしいが、オリンピックにもぜひ出たいし、まだ努力を続けなければいけない。(フランスが2階級制覇、強さの原因は?)ブラックパワーです(笑)。」

緒方亜香里選手のコメント
「攻めの力を出し切れなかった。初戦から相手に取られてから取り返す展開で、いつもと違うと思っていた。未熟者です。ロンドン五輪に向けてもうすこし経験を積まなくてはと思います」


[GS東京78kg超級マッチレポート]
田知本愛が姉妹同時優勝達成、杉本美香は山部佳苗に不覚


10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超級・杉本美香
(写真:山部は杉本の一発を狙い澄まして返しを狙う)


【日本人出場選手】
杉本美香(コマツ)
田知本愛(東海大4年)
山部佳苗(山梨学院大2年)
石山麻弥(丸順)

東京世界選手権で78kg超級、無差別の2階級を制した杉本美香が、初戦の2回戦(準々決勝)大学生の山部佳苗に敗戦。
2分11秒、杉本が右払巻込に入ろうとしたところを、山部は狙い澄まして体を捨てて返し「有効」。
追いかける杉本は、残り14秒となったところでステップを切って回りこみの右内股を試みるが、これも待ちかまえて釣手側に体重を預けた山部に返されて「有効」。為す術なく試合を終えた。

「最悪です。技も掛けていないし、狙い過ぎ。足から崩していかないといけないのに、昔からわかっていたことを繰り返してしまった」と試合後に杉本自身が語った通り、この試合は典型的な杉本の負けパターン。
投げ技の切れ味がクローズアップされることの多い杉本だが、超級の選手としては小柄な杉本の生命線はやはり崩しと足技。相手を動かして崩しておくからこそ投技が効くし、返しを恐れずに思い切って踏み込むことができる。巨漢選手のように強いからといって無造作に技に入ることは禁物で、普段杉本は投げるためにもちろん相応の手順を踏んでいる。

この日の杉本は単発傾向な上、大きい相手が杉本を格上と見て守備をベースにジックリと返すチャンスを狙っているという嵌りパターン。
世界チャンピオンとして臨む国際大会には当然同様の作戦で望む相手が出てくるだろう。いつもの杉本らしさを忘れずに今後もしっかり頑張ってもらいたいところだ。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超準決勝・山部佳苗
(写真:準決勝、オルディズが山部を左大腰に捉える)

山部は試合場裏で後輩とハイタッチ。この一戦は会心の試合だったが、次戦の準決勝ではオルティズ(キューバ・WR5位)に無念の敗退。右相四つのオルディスは下がり続け、不利とみると袖釣込腰、一本背負投で先に掛け潰れるのみの柔道だがこれを捕まえ切れず逆に「指導」を貰う悪い展開。
残り時間僅か、追いかけようと奥襟を叩いたところで、その下から腕をまわしたオルティズの逆方向への大腰に転がってしまう。主審が宣告した「有効」が妥当かどうかは微妙なところだったが、伏せて畳に落ちた山部は相手に襟を持たれたまま肩があがってしまいこれが致命傷。この隙間に体を押し込まれて、抑え込まれ万事休す。一本負けで畳を去ることとなった。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超準決勝・田知本愛
(写真:準決勝、モンディエレから小内刈で「技有」を奪う田知本)

決勝に進んだのはこのオルティズと日本の田知本愛。
田知本は初戦で石山麻弥にGSの末「指導2」で競り勝つと、2回戦はロッテルダム世界選手権2位のブライアント(イギリス・WR20位)に「指導3」で勝利。準決勝のモンディエレ(フランス・WR30位)は小内刈「技有」から横四方固の合技で一本勝ち。堂々の決勝進出だ。

田知本は左、オルティズは右組みのケンカ四つ。
田知本が組みにいくと、オルティズのっけから頭を下げて防御の姿勢。
ここから相手が出てきたところで低い一本背負投を仕掛けるのがオルティズ得意のやり口。
田知本、その手には乗らじと支釣込足に送足払と相手を細かく崩すが、オルティズは苦しくなるとペタリと両膝をついて背負投に掛け潰れる。ほとんど偽装攻撃と言っていい技だが、田知本が乗りかかるように見える場面もあり、1分24秒田知本に「指導1」。試合をコントロールしていながら主審が手数を支持する良くない展開。

奮起した田知本、支釣込足に左大外刈、左内股と攻勢に出るがオルティズ早々に崩れ伏してしまい取りきれず。田知本さらに両襟を握っての内股で攻めるが、オルテイズは場外に向かっての背負投に掛け逃げこれも取りきれず。田知本やや出足が鈍く、投げる間、形を整える間にオルディズの技が先に出てしまう。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超決勝・オルディズ
(写真:決勝、オルディズは組み負けると低い背負投に潰れて手数を稼ぐ)

2分32秒、主審なんと田知本とオルティズの両者に「指導」を宣告。2つ目の指導となった田知本はポイントのビハインドを背負うことになる。
いよいよ逃げの姿勢で試合を進めるオルティズ、組むなり場外際に向かって下がり、さらに場外に向かってペタンと背負投を仕掛けて試合を切るという展開を続ける。
田知本がこれを支釣込足、大外刈で追い、オルティズの座り込み背負投を顔をロックする勢いで止めた直後の3分10秒、極端な防御姿勢を取ったという判断でオルティズに「指導2」。

田知本さらに相手を上下にあおっての大内刈に内股、大内刈で攻めるが、場外際にまっすぐ下がるオルティズを場内に連れてこれず、いずれも取りきる前に相手が場外に逃れ「待て」が掛かる。残り28秒でオルティズに「指導3」。
攻めるしかないはずのオルティズだが、もはや疲労で息も絶え絶え。最後まで場外際に逃げ、「一本」だけは取られなかったという体のままタイムアップ。田知本が優勢勝ちで優勝を決めた。70kg級では妹の田知本遥が優勝を決めており、姉妹同時優勝は国際大会初の快挙。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超決勝・田知本愛
(写真:オルディズの場外際の背負投を潰す田知本)

この試合は田知本の出来よりはオルティズの柔道の見苦しさ、このような選手がハイレベル国際大会で決勝まで進出できてしまうという超級の現状の情けなさに言及しないわけにはいかない。
まっすぐ下がって場外に向かって掛け潰れ、相手が背中に乗った時だけこれを決めに掛かる。巨体をもてあまし2分も過ぎれば肩で息を始めほとんどまともに動けない。この程度の選手が世界選手権で2大会連続3位とは聞いて呆れる。武道家としてはもちろん、アスリートとして位相が低すぎる。

普段は柔道と接点のない一般視聴者がテレビでこの試合を見て「柔道ってこんなもの」と思ったとしたらやりきれないばかりだ。
オルティズの柔道の醜悪さは本人の責任ではない。確かに女子超級は層の薄い階級ではあるが、こういう選手に上位進出を許す回りが情けないということだ。

出来得れば田知本にはしっかり「一本」でオルティズに引導を渡し、テレビで見ている一般ファンの溜飲を下げさせて欲しかった。まだ若い田知本としては結果を残すことが第一ではあろうし、曲者相手に試合を渡さずしっかり優勝したのは素晴らしいことだが、日本代表選手には、柔道というジャンルを背負う覚悟も必要。一般人の目に触れる前に一蹴するくらいの差を見せつけて、柔道とはこういうものだとアピールして欲しかった。

日本には世界選手権2冠の女王・杉本がいるが、地元開催の大会でオルティズのような選手が決勝に進出するというのはいかにも残念。
また、まっすぐ下がって場外に掛け逃げるスタイルは、場内規定の変更(危険地帯の撤廃)で「場外」の反則が取られにくくなっている現状を利用しているとも見ることが出来る。70kg級の決勝でも同様の展開があったが、折角の「技で勝負をつけさせて柔道を面白くしよう」という試みがこのような柔道の横行で考え直されるとなれば情けない限りである。

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超入賞者
(写真:78kg超級入賞者。左からオルティズ、田知本、
山部、モンディエレ)

【準決勝】
田知本愛○合技(1:04)△モンディエレ(フランス)
オルティズ(キューバ)○横四方固(4:10)△山部佳苗

【決勝】
チュメオ(フランス)○大外刈(1:41)△ジャーク(ベルギー)

10年12月13日GS東京柔道大会・78kg超田知本愛
(写真:78kg超級優勝の田知本愛選手)
田知本愛選手のコメント
「うれしいです。妹(70kg級優勝の田知本遥)の試合は自分の試合で一杯一杯で見ていませんでしたが、結果はプレッシャーでした(笑)。妹の優勝に力を貰いました。アジア大会でいい試合が出来なかったので今回は勝ちたかった。オリンピックに出るために一つ一つしっかりこなしていきたい。」

杉本美香選手のコメント
「今日は最悪です。技も掛けていないし、一発を狙い過ぎ。掛け切れていないし、もっと足から崩していかないといけない。相手がどうこうではなく自分自身の問題。一からやりなおしてマスターズの優勝を目指します。波がある選手と言われないよう、『こいつを使ったら勝てる』と思ってもらえるようになりたいです」


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