PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

グランドスラム東京・57kg級、63kg級マッチレポート

2010年12月19日

※eJudo携帯版「e柔道」12月11日~12日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


[GS東京57kg級マッチレポート]
松本薫、戦闘力の高さ見せて接戦を制す、階級変更の平井希は大躍進の2位


【日本人出場選手】
松本薫(フォーリーフジャパン)
佐藤愛子(了徳寺学園職)
牧志津香(筑波大3年)
平井希(自衛隊体育学校)


決勝に進出したのは松本薫と平井希。48kg級、52kg級に続き日本勢同士の決勝戦となった。
松本は1回戦のカーマイクル(アメリカ)を崩袈裟固(1:27)、2回戦のフランセン(オランダ・WR32位)には小外刈「技有」を奪って優勢勝ち、準々決勝の佐藤愛子戦をGS僅差2-1で乗り切ると、準決勝は山梨学院大で稽古を積む連珍羚(台湾)を延長戦に縺れこむ激戦の末に崩袈裟固(6:57)で降しての決勝進出。徹底マークを受け、派手な一本勝ちこそ出来ていないが、むしろその戦闘力、競った試合を確実にモノにしてくる強さにはさらに凄みが出た印象。

10年12月12日GS東京柔道大会・57kg準決勝・松本薫
(写真:準決勝、松本は伏せた連(台湾)の首を抱えてめくり起し、抑込に移行)

一方の平井は、63kg級からの転向後これが国際大会初参戦。
初戦でマーロイ(アメリカ・WR15位)に「指導3」、2回戦でシルバ(ブラジル・WR25位)を延長戦の末「指導2」で勝利して準々決勝に進出。ロッテルダム世界選手権王者のリボー(フランス)を、送襟絞(3:47)で粉砕すると、準決勝はガシモワ(アゼルバイジャン・WR31位)を僅か1分3秒の左体落で一蹴。足を継いで踏み込む基本通りの美しい技で会場に「強い!」とのどよめきを起してみせ、見事決勝に駒を進めた。

10年12月12日GS東京柔道大会・57kg準決勝・平井希の体落
(写真:準決勝、体落を見事に決める平井)

ともに後輩の大声援を受けての決勝は松本が右、平井が左のケンカ四つ。
平井、長い手足を生かして組み手争いを有利に運びながら折を見ては奥襟を叩き、思うように距離をコントロールできない松本は自分の組み手が作れない。

10年12月12日GS東京柔道大会・57kg決勝・平井希
(写真:決勝、平井が松本をいなし崩す)

松本、2度左の一本背負投を試みるが体が回る前に平井に止められ果たせず。
お互いなかなか攻撃のきっかけが作れない中、1分11秒に両手を離した状態の平井の小内刈に松本がぐらついて伏せるなど、印象で勝っているのはむしろ平井。
3分20秒すぎから松本前に出て小内刈を連発するがバランスの良い平井崩れず。3分48秒、両者に「指導1」。
直後、平井が右袖釣込腰から右小内刈につなぎ松本大きく崩れる。
以後も組み手争いの中、時おり平井が松本を崩すという展開で、大きく試合の動くことがないまま本戦は終了。試合はGS延長戦へ。

開始早々、松本小外刈で相手を崩しすかさず横三角に移行と寝技勝負を挑む。頭をロックしてほとんどこれは決まりかかるが、平井これもしっかり守り抑え込みの宣告には至らずノーポイント。
平井、46秒には左小外刈で松本を伏せさせるなど流れを松本に渡さず、試合は互角。

10年12月13日GS東京柔道大会・57kg決勝・松本薫の横四方固
(写真:松本、平井の腕を抱えながらの横四方固)

55秒、松本、釣手で右奥襟を叩くことに成功。すかさず前にあおると平井このプレッシャーに思わず両膝を畳について伏せる。松本この機を逃さず平井の左腕を引っ張り出しながら相手の後ろにつく。一瞬対応が遅れ左腕を背中で極められた平井、その腕を抱えてめくりにかかる松本に抗えず、松本はガッチリとこの腕を抱えて横四方固。平井激しく抵抗するが体勢の不利は如何ともしがたく「一本」。松本が苦しい試合を制して見事優勝を勝ち取った。

10年12月12日GS東京柔道大会・57kg優勝を決めた松本薫
(写真:優勝を決め天を仰ぐ松本)

とかく気持ちの強さだけが強調されがちな松本の柔道だが、特筆すべきは試合展開の見切りの早さ、冷静さ。
女子には「取れない」となると相手の状況に関係なく自分の得意技を連発し自滅するような選手も多い中、手が詰まるとなると膠着することなくすぐに攻め口を変えて相手を崩しにかかり、たとえ短い時間であっても試合の流れを渡さない。この日の佐藤愛子戦などは、右組みの松本が、佐藤が釣手を与えないとみるやなんと左奥襟を叩いて思い切り左内股を見せる場面まであり、弱点を探すセンスと度胸、常識にとらわれない発想には舌を巻く。崩せば取れるという寝技があるのも強みだ。

素質にセンス、一発の得意技がある選手は大勢いるが、松本はそのいずれをも持ちながら、さらに勝ち続けるための「何か」を持っている。今後もこの選手の試合からは目が離せない。

10年12月12日GS東京柔道大会・57kg・平井希
(写真:大活躍で57kg級の代表戦線に名乗りを上げた平井)

また、63kg級から転向した平井希の活躍も目を引いた。
自分の骨格を考えると57kg級が適正とで転向を決意したそうだが、手足の長さ、懐の深さを利して戦ったこの日の勝ち上がり内容は抜群。普通に食事をしても60kgくらいとのことでもあり、少なくとも現時点では階級変更大成功。63kg級時代の柔道と比較しても、「こんなに上手い、切れる選手だったか?」と思わせるだけの活躍だった。松本の一人勝ち状態になりかけているこの階級にあって、今後注目の人材である。

佐藤愛子はベロリン(スペイン・WR17位)を横四方固で破るなど2勝を挙げたが、前述の通り松本に敗退。スコアこそ僅差2-1であったが、試合はやはり松本優勢で、投げられこそしなかったものの勝利につながる予感の薄い展開の8分間だった。
学生柔道界期待の牧志津香は組み合わせに恵まれず、初戦でフィルツモザー(オーストリア・WR3位)の小外刈(1:24)で敗戦。今大会は何も出来なかった。

【準決勝】
松本薫○GS横四方固(7:03)△連(台湾)
平井希○体落(1:03)△ガシモワ(アゼルバイジャン)

【決勝】
松本薫○崩上四方固(4:26)△平井希

10年12月13日GS東京柔道大会・57kg・入賞者
(写真:57kg級入賞者。左から平井、松本、
ガシモワ、連)
松本薫選手のコメント
「平井さんと初めて試合をしましたが、自分が劣っていて、実際は負けていたと思います。(抑え込んでいるときはどんなことを考えましたか?)『逃げないでくれ』。(連勝記録が続きますが?)普通です。(今、何をしたいですか?)組み手の練習をやりなおして、足技から攻めていく自分の柔道ができるようにしたいです。来年の世界選手権は確実に優勝できるように一つ一つ大事にやっていきます」

[GS東京63kg級マッチレポート]
新星アグベニューとエマヌでフランス勢が金銀独占、世界王者上野は精彩欠いて2回戦敗退


10年12月13日GS東京柔道大会・63kg・上野順恵
(写真:上野はケンカ四つの相手に組み手を制され、しっかり技に入れない)

【日本人出場選手】
上野順恵(三井住友海上)
田中美衣(ぎふ柔道クラブ24)
谷本育実(コマツ)
阿部香菜(三井住友海上)


東京世界選手権で1、2位を独占したこの階級だが、準決勝を待たずに日本代表4人は全滅。
衝撃的だったのは上野順恵の敗戦。2回戦のベデティ(スロベニア)戦は、ケンカ四つで奥襟を持ってくる相手のプレッシャーに対応が遅れ、体落を掛け潰れるというかつての上野の「嵌りパターン」。「指導1」のビハインドを負ったまま臨んだ延長戦は、ベデティが釣手で背中、引き手で近い袖を抱える「隅返の組み手」のまま見せ技の内股を掛け続ける「指導」狙い。上野はこの柔道を止められず、二つ目の「指導」を受けて畳を去ることとなった。

試合後、「疲れてしまっていた。勝ち続けなければという思いが自分を苦しめた面もある」と苦しい心情を吐露した上野。ワールドマスターズで立て直してくれることを信じるが、世界選手権連覇しながらもなお休息が許されないこの過密日程では肉体、精神面で疲弊するのは必然。上野のみならず、今後チーム全体として考えるべき課題のひとつだろう。

10年12月13日GS東京柔道大会・63kg準決勝・アグベニュー
(写真:アグベニューが準決勝でウィルボーダスを畳に叩きつける)

上野が去ったグランドスラムの舞台で、フランスから無印の新星が登場した。2番手出場、ランキングなしのアグベニュー(フランス)だ。
初戦で世界選手権2位の田中美衣を掬投「一本」で屠った時点から強者の匂いを漂わせてはいたが、圧巻はこの後。コワル(ロシア・WR13位)を腕挫十字固(2:04)、強豪マルザン(ドイツ)を払巻込「技有」に大内刈「一本」とボコボコと言っていいほどに投げつけると、準決勝ではなんとウィルボーダス(オランダ・WR2位)を「1、2の3」の払巻込で畳に叩きつけて一本勝ち。会場を唖然とさせて決勝進出を決めた。

10年12月13日GS東京柔道大会・63kg決勝戦
(写真:アグベニュー(白)とエマヌの決勝戦)

決勝でアグベニューに対するのは、もと70kg級、現在はフランスの63kg級の第一人者である同タイプのエマヌ。
エマヌは右、アグベニューは左のケンカ四つ。
開始からアグベニューが勢いよく前に出て圧力を掛けるが、エマヌはこれをいなしがら、試合を組み手争い、引き手争いという駆け引きのステージに持ち込んでいく。
しかしアグベニューの圧力がジワジワとかかり、左小外刈でエマヌが崩れる場面も多くなる。パワーファイターとしては、新人のアグベニューがどうやら格上。
エマヌ、右一本背負投に袖釣込腰で対抗せんとするがいずれも下がりながらの技で展開は切れず。1分50秒、2分55秒と立て続けにエマヌに「指導」が与えられ、そのままアグベニューが優勢勝ち。フランスの2番手選手が見事ビッグタイトルを獲得した。

アグベニューは粗削りなパワーファイターに見えるが、エマヌ戦を見る限りでは組み手の基本はしっかりしているし、どうやら試合を組み立てる頭脳もある。技自体はやはり粗いが、そうであればむしろそれは伸びしろと捉えておくべきだろう。
このところ63kg級の上位選手は日本人を除くといったいに小粒で圧倒的な存在が見当たらなかったが、久々に面白い選手が出現したという印象。上野がどうこれを捌いて倒してくれるか、今から非常に楽しみだ。

10年12月13日GS東京柔道大会・63kg1回戦・田中美衣
(写真:1回戦、アグベニューが田中を持ちあげ掬投「一本」)

それにしても、エマヌといいアグベニューといい、上野ら日本勢と比べると「本当に同じ階級?」と言いたくなる体格の良さとパワー。東京世界選手権は日本勢がワンツーフィニッシュを飾ったが、地元パリでの世界選手権開催に向けて気合を入れているフランスの2人には警戒を怠ってはいけない。

日本勢、田中美衣は前述の通りアグベニューに敗戦。
阿部香菜は2回戦で強豪ゾルニール(スロベニア・WR7位)に、有効2つを失った末に大内刈で敗退。
谷本育実は、エマヌを相手に、開始早々に背負投「技有」を失い、さらに腕挫十字固で極められ(谷本が「参った」をせずに粘り切って試合続行)、払巻込で頭から畳に落とされ(ノーポイント)、優勢負け。負けよりも頭を打ってフラつきながらも5分戦い切ったことを称賛したくなるほど、エマヌは強かった。
また、上野と世界選手権で激戦を繰り広げたファンエムデン(オランダ・WR4位)は初戦でピットマン(イギリス)の一本背負投であっさり敗退。調整不足なのかアクシデントなのかすら判然とせず、その実力の片鱗すら見せずに大会を終えた。

【準決勝】
エマヌ(フランス)○GS技有・裏投(5:40)△ジョン・ダウン(韓国)
アグベニュー(フランス)○外巻込(1:23)△ウィルボーダス(オランダ)

【決勝】
アグベニュー(フランス)○優勢[指導2]△エマヌ(フランス)

10年12月13日GS東京柔道大会・63kg入賞者
(写真:63kg級入賞者。左からエマヌ、
アグベニュー、ウィルボーダス、
ジョン・ダウン)
アグベニュー選手のコメント
「最高の気分です。頭の中をまっしろにして勝つことだけを考えた、それが優勝の要因だと思います。来年はパリ、その後はオリンピックを目指して頑張っていきたいです」

上野順恵選手のコメント
「疲れていました。アジア大会が終わってすぐの大会で競った練習ができなかったのもあるし、組み手を嫌がる相手にしっかり対応できなかった。工夫が足りませんでした。勝ち続けるのは苦しい、と思いこんでしまっていたし、正直、自分の柔道が小さくなった、守りに入っているという思いもある。このままの柔道では勝てないと実感しているので、組み方を工夫してマスターズをしっかり勝ちたい」


※eJudo携帯版「e柔道」12月11日~12日掲載記事より転載・編集しています。

ドコモ版QRコード KDDI版QRコード
 docomo版QRコード    au版QRコード


→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る



supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.