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[eJudo'S EYE]なぜ「指導」はなかったのか?レベルアップ゚する要求と審判技術のギャップ・世界選手権東京大会

(2010年10月7日)

※eJudo携帯版「e柔道」9月18日掲載記事より転載・編集しています。

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世界柔道選手権東京大会57kg級決勝 松本薫-モンテイロ
(写真:57kg級決勝、形勢不利のモンテイロは場外に這って逃れる)

世界選手権東京大会、メディア席では大会中盤から「IJF審判委員会が、『決勝ラウンドでは指導をなるべく取らない』との方針を通達した」旨の未確認情報が飛び交っていた。

57kg級決勝、松本薫に対して守りに守り、挙句場外に自ら這って逃れるという醜態を見せたモンテイロ(ポルトガル)を延長戦残り数秒まで延命させ、かつまた、最終日の無差別男子決勝、組み手で不利の上川大樹に延長戦を戦う権利を与え、スタミナの切れたリネール相手の支釣込足3連発(ポイントではなかったが)のチャンスをもたらしたあの「指導なしで試合を進める」判断はそれが原因であろう、と解釈されていた。少なくとも何らかの意思の働きなくしてあの不可解な判断はありえない、と皆が思ったからである。

真偽のほど定かならぬこの噂について、日本の審判員の最高責任者、川口孝夫全日本柔道連盟審判委員長に話をお聞きした。

答えは半分マル、半分は誤解である。

以下は筆者が、川口委員長始め関係者からの話を総合した概略である。

そもそものことの起こりは、初日の重量級の試合(100kg超級、100kg級)。
試合をビデオ分析した結果、「機械的に反則を取るのであればここで『指導』を与えて試合を中断させるべき」という場面で、敢えて試合を続行させた結果、見事な「一本」で決まった試合が相当数あったという。

もともと、機械的に反則を取るのではなく、講道館柔道的な、一見動きが少ないように見える「技を掛けるための間合いの探り合い、チャンスを生むための探り合い」にも理解があるというバルコス審判理事は、審判会議でビデオを見せ、この素晴らしい「一本」を生んだ経緯を称賛したという。(この際、IJFには、柔道を面白く、ダイナミックなものにしようとする意図があることを忘れてはならない)

ところが、この微妙なニュアンスが、審判員32名に英語、ポルトガル語、フランス語の3ヶ国語に翻訳して伝えられるという状況の中で、全員に正確に伝わったかどうかには疑問が残る。まして今回の審判員には新人も多い。機械的に「なるべく指導を取らないようにするのだな」と思った人間が多数いたとしても不思議ではない。(というよりも、この経緯で発せられたステートメントを審判員が汲むのであれば当然そのように考えるであろう)

かくて、今大会のジャッジには「なるべく指導を取らない」という大きな流れが生まれてしまった。

柔道ファンを安心させるために付け加えると、あの57kg級決勝の翌日、審判会議では、バルコス審判理事がモンテイロの振る舞いに対し「この試合はモンテイロへの『指導』で決着がつくべきであった」と明言したそうである。IJFは無策であったわけではないのだ。

しかし一旦出来あがってしまった審判傾向は大きな流れとなってしまっており、大会の中でそれを完全には修正するに至らなかった、というのが大枠の事情だ。
(蛇足ながら、73kg級準決勝、ひとつの「指導」もなかった秋本啓之-ワン・キチュンの名勝負はこの方針が生み出したものと言っていい。これはその審判傾向が良い方向に作用した例である)

誤解と言ってしまえばそれまでだが、ここで考えさせられることがいくつかある。
ひとつは、IJFが、理想として、日本の伝統的な考え方に寄った、比較的受け入れやすい(好感のもてる)審判方針を掲げているという安心感。かつてならばこれほど高いレベルの要求がIJFから国際審判員に対して為されるということは考えられなかっただろう。

そしてもうひとつは、その見識と方針を実現できるほど、現場のジャッジは習熟してはいないのではないかという率直な疑問である。

IJFの審判レベルはいったいに上がっている。かつてのような「白が黒になる」ような理不尽極まりないジャッジはもはやほとんど見られないと言っていい。
しかし、「指導を取るべき場面なのかどうか、試合の流れ、競技者の意図を汲んで、それが投げるための準備行動であるのであれば、闇雲に反則を取るのではなく、試合を続けさせるように」。この指示ははっきりいって難しい。日本国内の最高レベル、全日本柔道選手権を捌くような審判員でなければ、柔道家が納得するレベルでこれを捌くことは不可能であろう。

柔道の妙味を理解した審判が出来るか、ということでは、52kg級決勝の結果に落胆を覚えるファンも多いだろう。手数に徹した西田か、試合をコントロールし続け有効打を繰り出した中村か。西田の優勝の価値を貶めるつもりは全くなくむしろ勝負に徹した戦いぶりを称賛したいくらいであるが、少なくとも「柔道を面白く」というIJFが大方針として掲げる観点でジャッジをすれば、旗は中村にあがるべきだったのではないか。

IJF審判委員会からのジャッジへの要求のレベルが上がっていること、それが「柔道を面白く」という観点で為されていること。

他方、全体的にレベルがあがってきたとされるIJF国際審判員がそれを咀嚼するに至らなかったこと、高すぎる要求にジャッジがむしろチグハグになってしまったこと。

安心と不安が同居する、東京世界選手権の「指導を取らない」審判ぶりであった。

(eJudo編集部・古田英毅)


※eJudo携帯版「e柔道」9月18日掲載記事より転載・編集しています。

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