全国高校柔道選手権マッチレポート・女子団体戦(2010年4月13日)
※eJudo携帯版「e柔道」3月23日掲載記事より転載・編集しています。 ![]() docomo版QRコード au版QRコード ―女子団体戦・第1シードの敬愛が総合力の高さ見せつけ初優勝― (写真:優勝を決め喜ぶ敬愛陣営) 昨年、埼玉栄(埼玉)が女子では史上初の"高校三冠"を達成したが、今年は昨年ほどのずば抜けた強さはなく、他のチームを見ても、圧倒的な力を持つチームがないのが今年の特徴。そのため初戦から目の離せない接戦が続いた。 第一シードの敬愛(福岡)、新田(愛媛)、埼玉栄、淑徳(東京)の4校は順当にベスト8入り。 第二シードの4校のうち、藤枝順心(静岡)、東大阪敬愛(大阪)、宮崎商(宮崎)は3回戦を勝ち上がったが、山形中央(山形)は3回戦の奈良育英(奈良)に0-1で敗退、姿を消した。 敬愛は松商学園(長野)を3-0、旭川大高(北海道)を2-0で降してベスト8入り。中堅木村輝美、前日の個人戦で70kg級を制した大将結城久美子のポイントゲッター2人に加え、先鋒難波英里も2試合連続の勝利で評判通りの総合力の高さ。 (写真:3回戦、敬愛・結城久美子が旭川大・廣海共美から大内刈「技有」を奪う) 新田は、2回戦で大宮工を3-0で一蹴すると、3回戦で比叡山高(滋賀)と対戦。先鋒魚山莉央が48kg級世界カデ王者の遠藤宏美に小外掛で一本勝ちすると、中堅石本麻奈は09年インターハイ52kg級3位の中西悠と引分け。大将戦では大黒柱・井上愛美が払巻込で岡本美咲に一本勝ちして2-0の快勝。軽量級に好選手を揃える比叡山だが、レギュレーション(先鋒52kg級、中堅63kg級、大将無差別)上、1階級ずつ下のカテゴリの選手を配する形となり、強豪・新田の壁を突破することはできなかった。 (写真:魚山-遠藤の対戦は魚山が小外掛で見事な一本勝ち) 前日の個人戦63kg級王者・太田晴奈を中堅に配する淑徳は高松商(香川)を2-0、國學院栃木(栃木)を1-0で降してベスト8へ。太田は初戦を大内刈(22秒)、2回戦を内股(1分22秒)と快調な立ち上がり。 昨年優勝の埼玉栄は、大会直前にキャプテンの畠中唯里が靭帯を負傷し2試合目以降を欠場したためメンバー全員が1年生。それでも2回戦の富山商(富山)を代表戦にもつれながらも前日の個人戦2位(63kg級)の福島萌衣が崩袈裟固で庄司真菜に勝利して1-1で勝利。 3回戦の長崎明誠(長崎)戦では先鋒太田千鶴が「指導3」で挙げた1点を、中堅福島萌衣が引分け、大将井上美咲が九州70kg級王者の松延祐里の反撃を「有効」ひとつに抑えて準々決勝へ進出。前年王者の底力を見せてベスト8に名乗りを挙げた。 (写真:埼玉栄は大将・井上が果敢に攻め込んで守りきる) 【準々決勝】 準々決勝はいずれも1点を争う大接戦の連続となった。 優勝候補筆頭の敬愛は、先鋒戦引き分けのあと、次鋒戦で木村輝美が内股で藤枝順心・小川莉歩に一本勝ちし1-0とリード。続く大将戦で、結城久美子が体重で35kg上回る藤枝順心の中村優に「技有」を取られて敗れる誤算はあったものの、内容差で辛うじて勝利。準決勝へ駒を進めた。 敬愛高 ①-1 藤枝順心高 (先)難波英里×引分×伊藤美麗 (中)木村輝美○内股△小川莉歩 (大)結城久美子△優勢[技有]△中村優 また、淑徳と宮崎商の試合も熾烈な試合となった。 先鋒戦で宮崎商・黒木美晴が「指導2」で長澤葵に優勢勝ちして宮崎商が先行するも、中堅戦は淑徳・太田晴奈が宮崎商・黒木和世に、逆に「指導2」で優勢勝ちして振り出し。 大将戦が引き分けとなり、太田―黒木和、中堅同士による代表戦となった。前日の個人戦から実に3度目の対戦。個人戦では僅差、中堅戦では「指導2」といずれも接戦で太田が勝利している。 この試合もGSにもつれる接戦となったが、地力に勝る太田が、組み手でいなしてくる黒木が大外刈に足を伸ばした一瞬のチャンスを生かし、これを返して大外返「有効」を奪い優勢勝ち。淑徳が準決勝進出を果たした。 淑徳高 ①代-1 宮崎商高 (先)長澤葵△優勢[指導2]○黒木美晴 (中)太田晴奈○優勢[指導2]△黒木和世 (大)齊藤麻緒×引分×谷川有美 (代)太田晴奈○GS有効△黒木和世 新田-奈良育英の対戦は、大将の井上がしっかり仕事を果たした新田が1-0で勝利。スコア上は大きな差がつかなかったが、大将に大駒を配する新田としては盤石と言っていい無失点試合だった。奈良育英は09年全日本ジュニア楠智恵を中心に前半で勝負を賭けたいところだっが、新田は魚山、石本と好選手を揃え隙を見せなかった。 新田高 1-0 奈良育英高 (先)魚山莉央×引分×楠智恵 (中)石本麻奈×引分×酒井美紅 (大)井上愛美○総合勝△喜多京子 埼玉栄と東大阪大敬愛の試合は、埼玉栄がまたも1-0の辛勝。 中堅福島萌衣が挙げた「有効」優勢勝ちの1点を守りきって、1年生3人でついにベスト4までたどり着いた。 埼玉栄高 1-0 東大阪大敬愛高 (先)太田千鶴×引分×高松静香 (中)福島萌衣○優勢[有効]△平山皐月 (大)井上美咲×引分×木山美咲 【準決勝】 敬愛と埼玉栄の準決勝は、先鋒の敬愛・難波英里と埼玉栄・太田千鶴の試合が引き分けのあと、敬愛・中堅の木村輝美が前日の個人戦2位の埼玉栄・福島萌衣を内股で一蹴して先行。 さらに敬愛・大将の結城久美子も、前日の個人戦70kg級優勝の実力を見せ付け、埼玉栄・井上美咲に内股で一本勝ちして2-0と快勝。敬愛が初の決勝進出を果たした。 敬愛高 2-0 埼玉栄高 (先)難波英里×引分×太田千鶴 (中)木村輝美○内股×福島萌衣 (大)結城久美子○内股×井上美咲 別ブロックの準決勝は淑徳と新田が対戦。 淑徳は中堅の太田晴奈、新田は大将の井上愛美とそれぞれ絶対的な駒を1枚持ち、この2人の出来が勝敗のカギを握る。 試合は予想通り大接戦。 長澤葵(淑徳)と魚山莉央(新田)の先鋒戦は引き分け。 中堅戦は、淑徳のエース、前日の個人戦63kg級を制した太田晴奈がきちんと期待に応え、石本麻奈を右内股で一蹴。1-0で淑徳が先取点を奪った。 大将戦。新田は個人戦無差別チャンピオンの井上愛美の一本勝ちで追いつき代表戦に持ち込みたいところだったが、淑徳・大将の齋藤麻緒が井上の攻撃を必死に耐えて「指導3」負けにこれを抑えきり、淑徳が1-1の内容で新田に辛勝。決勝へ駒を進めた。 先鋒戦が引き分けに終わったことで大将に井上を擁する新田がやや有利と思われたが、淑徳は太田がしっかりと一本勝ちして自分の役目を全うし、大将・齋藤も一本負けを防がんと必死に食らいついてまさに執念の勝利。 代表戦になれば個人戦王者対決となり、体重で約50kg重い井上が優位と思われていただけに、齋藤の最後まで諦めない気持ちが勝利を呼び込んだ形だ。 淑徳高 ①(内容)1 新田高 (先)長澤葵×引分×魚山莉央 (中)太田晴奈○内股×石本麻奈 (大)齋藤麻緒×優勢(指導3)○井上愛美 【決勝】 敬愛・難波英里と淑徳・長澤葵の先鋒戦。 ともに右組みの相四つ。序盤から大内刈、小内刈、背負投、左袖釣込腰と果敢に攻める長澤に対し、難波も左一本背負投、右大外刈、右内股、左袖釣込腰で応戦。 終盤、やや守勢となった難波に「指導」が与えられると、その直後、長澤の一本背負投をつぶした難波が後襟を握って掬投のような形で返すと「有効」が宣告される。しかし、これは寝姿勢からの技と判定され取り消し。そのまま4分が終了し引き分けとなった。 (写真:先鋒・難波の掬投「有効」は寝姿勢との判断で取り消し) 中堅戦。淑徳とすればエース・太田晴奈の一本勝ちが是非とも必要な場面。 しかし、準決勝で個人戦準優勝の埼玉栄・福島に一本勝ちして勢いに乗る木村もそれは十分心得ている。 太田は序盤から組み勝って右内股で攻め込み、木村の「指導」を誘う。さらに木村の厳しい組み手をうまく制して小外掛、右袖釣込腰、背負投と攻め込んで攻勢。 (写真:太田-木村、勝負のカギを握る中堅戦) 中盤、攻撃が止まった両者に「指導」(木村は2回目)。ポイントを取られた木村は右内股、大外刈、太田はさらに一本勝ちを狙って組み際の大外刈、内股、払巻込で休みなく攻め合うも、その後はお互いにポイントのないままタイムアップ。太田が「指導2」の優勢勝ちで淑徳が1点を先取した。 大将戦は、敬愛のポイントゲッター・結城久美子と淑徳・齋藤麻緒の対戦。 結城は70kg、対する齋藤は91kg。 体格では齋藤が勝るものの、結城は個人戦70kg級を制している実力者。この大会に向け対大型選手の練習をみっちり積んできており、自信を持って試合に臨んでいた。 結城左、齋藤右のケンカ四つ。 齋藤の右大内刈をさばいた結城が思い切りのいい左大内刈に入りそこから追いうちの小内刈に変化すると齋藤の身体が大きく崩れて「技有」、36秒。 ポイントを先行され後のなくなった齋藤、一本勝ちしかないと場外際で内股を掛けると、結城は落ち着いてこれを股の間で透かす。頭を下げてバランスの崩れた斎藤、背中から畳に落ちて「技有」、52秒。合技で斎藤の一本勝ちとなり敬愛の初優勝が決まった。 (左:結城が小内刈で「技有」を先行) (写真:結城が斎藤の内股を股中で回して「技有」を追加して勝負あり) 「とくに私は何もしていないです。相手が勝手に飛んでしまっただけ」と投げた結城は照れ笑いしていたが、瞬間的な体さばきのよさが生んだ「技有」であり、立派な技。 大きい相手にも動じないハートの強さも大したもの。個性的なショートカットで、話すと「ちょっと天然?」と感じさせるユニークなキャラクター。チームの明るい雰囲気を作り出しているようだ。 敬愛高 ①(内容)1 淑徳高 (先)難波英里×引分×長澤葵 (中)木村輝美△優勢[指導2]○太田晴奈 (大)結城久美子○合技△齋藤麻緒 (写真:優勝旗を受け取る結城) 終わってみれば、優勝候補筆頭の呼び声が高かった敬愛が優勝したわけだが、敬愛は昨年の埼玉栄のような個々が圧倒的な力を持ったチームというわけではなく、総合力で勝利を重ねた結果が初優勝につながった。 本来57kg級の選手ながら、この大会に向け52kg級に絞って出場した難波英里。 個人戦では結果を出せなかったが、準決勝の埼玉栄戦では個人戦2位の福島に内股で一本勝ちし、チームに勢いをもたらした木村輝美。個人戦チャンピオンではあるものの、大将(無差別)のなかでは小さい165cm、70kgの身体でチームを引っ張った結城久美子。 それぞれの選手がお互いを信頼し、自分の役割を確実に果たしたのが敬愛優勝の一番の勝因、まさにチームワークの勝利といっていいだろう。 今大会、紙一重で涙を飲んだチームもたくさんある。 結果だけ見れば第一シードのチームが順当に4強に勝ち上がってはいるが、一つひとつの対戦を見るとそれほど簡単に勝利しているわけではない。有力校には有力校の「勝つ」秘訣はあるだろうが、それも決して覆せない差ではないと思われる。各校とも4月には1年生を迎え新チームとなる。夏までにどのチームがどんな成長を遂げているのか――。大いに期待したい。 (写真:優勝の敬愛高) 敬愛高・吉元幸洋監督のコメント 「優勝は狙っていましたけど、不安もありました。選手の身体が小さいですからね。でも、必ずやってくれると信じていました。選手には一戦一戦が決勝のつもりでやれと言ってきました。卒業生を含め、周囲の協力があったからこそ日本一になれたと思います。選手は本当によく頑張ってくれた、言うことはありません。本当にうれしいです」 【入賞者】 優勝:敬愛高(福岡) 準優勝:淑徳高(東京) 第3位:新田高(愛媛)、埼玉栄高(埼玉) 第5位:藤枝順心高(静岡)、東大阪敬愛高(大阪)、奈良育英高(奈良)、宮崎商高(宮崎) 最優秀選手賞: 結城久美子(敬愛高) 優秀選手賞: 木村輝美(敬愛高)、太田晴奈(淑徳高)、井上愛美(新田高)、太田千鶴(埼玉栄高) (写真:最優秀選手の結城) (写真:準優勝の淑徳高) (写真:第3位の新田高(左)、埼玉栄高) 【1回戦】 松商学園(長野) 2-1 紀央館(和歌山) 旭川大高(北海道) 2-1 甲府工(山梨) 兵庫商(兵庫) 2-1 岡豊(高知) 阿蘇(熊本) 2-0 三浦学苑(神奈川) 富山商(富山) 2-0 八頭(鳥取) 鴬谷(岐阜) ①代-1 盛岡中央(岩手) 本荘(秋田) 2-0 新潟第一(新潟) 鳳凰(鹿児島) 1-0 徳島商(徳島) 大宮工(埼玉) 2-0 田村(福島) 金沢学院東(石川) 2-0 小城(佐賀) 沖縄尚学(沖縄) 1-0 同朋(愛知) 奈良育英(奈良) ①-1 西京(山口) 高松商(香川) 1-0 名張(三重) 國學院栃木(栃木) 2-1 おかやま山陽(岡山) 清水ヶ丘(広島) 2-1 光星学院(青森) 福井工大福井(福井) 0○代-0 水戸葵陵(茨城) 【2回戦】 敬愛(福岡) 3-0 松商学園 旭川大高 3-0 小牛田農林(宮城) 藤枝順心(静岡) 3-0 兵庫商(兵庫) 阿蘇 2-1 出雲西(島根) 埼玉栄(埼玉) 1代-1 富山商 長崎明誠(長崎) ①-1 鴬谷(岐阜) 東大阪大敬愛(大阪) 2-1 本荘 八千代(千葉) 2-0 鳳凰 新田(愛媛) 3-0 大宮工 比叡山(滋賀) ①-1 金沢学院東 山形中央(山形) 2-1 沖縄尚学 奈良育英 3-0 利根商(群馬) 淑徳 2-0 高松商 國學院栃木 3-0 明豊(大分) 宮崎商 2-1 清水ヶ丘(広島) 福井工大福井 ①-1 立命館宇治(京都) 【3回戦】 敬愛 2-0 旭川大高 藤枝順心 1-0 阿蘇 埼玉栄 ①-1 長崎明誠 東大阪大敬愛 1-0 八千代 新田 2-0 比叡山 奈良育英 1-0 山形中央 淑徳 1-0 國學院栃木 宮崎商 3-0 福井工大福井 ※eJudo携帯版「e柔道」3月23日掲載記事より転載・編集しています。 ![]() docomo版QRコード au版QRコード 【docomo版アクセス方法】 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