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マスターズ・スウォンマッチレポート①60kg級、66kg級、73kg級

(2010年2月12日)

※eJudo携帯版「e柔道」1月20日掲載記事より転載・編集しています。

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2009年ワールドランキング上位16名のみが参加可能なトップレベルトーナメント、「IJFワールドマスターズ・スウォン」は、1月16日に韓国・スウォンのスウォン・ギムナジウムで開幕。
初日は男子60kg級、66kg級、73kg級の3階級、女子は48kg級、52kg級、57kg級、63kg級の4階級の競技が行われ、初の「年間世界王座」を目指し熱い戦いが繰り広げられた。

■【60kg級】復調気配の平岡、アクシデントを乗り越えられず惜しくも2位

2010年IJFマスターズ60kg級決勝・平岡拓晃-ソビロフ
(写真:決勝戦、上から釣手を叩いて平岡を制するソビロフ)

【日本人出場選手】

平岡拓晃(了徳寺学園・WR2位)
福岡政章(綜合警備保障・WR5位)

世界選手権1位、ランキング1位のザンタライア(ウクライナ)は12月のグランドスラム東京に続いてまたも不調。抜群の動きを披露したロッテルダムに比べて動きが重く、初戦(準々決勝)でチョイ・ガンヘン(韓国・WR14位)を相手に大外刈「有効」を先行したものの、チョイの思い切りのいい一本背負投に抗しきれず一本負けを喫した。

北京五輪2位、ロッテルダム3位のペイシャー(オーストリア・WR3位)の出来もいまひとつ。初戦はペトリコフ(チェコ・WR11位)から膝車「有効」を奪って勝利したものの、ガルスチャン(ロシア・WR9位)との準々決勝は相手のパワーに抗しきれず、26秒に一本背負投「有効」、1分40秒には巴投「技有」と立て続けにポイントを失い、巴投からの展開の袈裟固で一本負けした。

ロッテルダム3位のベルデ(イタリア・WR8位)も初戦でソビロフに一本負けと優勝候補が次々と姿を消す中、決勝に進出したのは、そのソビロフ(ウズベキスタン・WR7位)と日本の第一人者・平岡拓晃(WR2位)。

ソビロフは調整がうまくいったのか初戦から体の強さが際立ち好調。前述の通りベルデに肩車と袈裟固の合技「一本」、準々決勝ではグランドスラム東京王者福岡政章から「指導1」、隅返「技有」、支釣込足「技有」と立て続けに奪って一本勝ち、準決勝ではチョ・ガンヘンに背負投「有効」を先行されたが組み手で圧倒し続け「指導3」まで奪っての勝利。見事決勝に駒を進めた。

2010年IJFマスターズ60kg級準決勝・ソビロフ-チョガンヘン
(写真:ソビロフとチョの準決勝)

一方の平岡は初戦で中国のヘを相手に抜群の動きを披露。序盤こそ相手の守りの堅さに手を焼いたが、右背負投、巴投に小内刈と鋭い技を掛け続けると、ヘが根負けして落城。2分24秒の右背負投は釣手の手首が回りきらず一旦は止められたが強引に技を継続して「有効」。3分51秒には左背負投で担ぎあげ、空中で相手が右に逃れようとするや即座に右の担ぎに切り替えて「有効」、さらに右の背負投を逆側に抜き落して「有効」、残り9秒で小外刈り「技有」を奪取して圧勝。時間が経てば経つほど動きが良くなる印象で、平岡復活を予感させる試合だった。

2010年IJFマスターズ60kg級1回戦・平岡拓晃-ヘ
(写真:1回戦、動きの良さを見せ背負投「有効」で先行する平岡)

ところが、この試合で、肘の負傷の癒えを感じ「いける」と背負投を軸に戦った平岡は動きが良い分だけ無理がかかり、今度は手術した部位ではなく、肘の靱帯を痛めてしまう。

それでも平岡は落ち着いて戦いを続け、準々決勝のドラジン(フランス)戦は、「指導2」と内股返「有効」を先行した後、ドラジンが手の甲で相手の足を高く払い上げるような担ぎ技。これが審判の死角だったか、「足取り」と判断されドラジンの一発反則負け。

準決勝はガルスチャン(ロシア・WR9位)に大苦戦。技自体はしっかり捌くものの、前に出て先手先手で攻め込んでくるガルスチャンの前に苦しみ、59秒「指導1」、1分17秒には組み手を嫌って掛けた巴投が掛け逃げと判断され「指導2」、2分35秒には「指導3」と後がなくなってしまった。しかしここから地力を発揮した平岡は3分4秒、押し込んで片襟を握りながらの左小内刈で見事な「一本」。怪我をしている分、「大技で投げるのではなく、勝つなら足技」との読みがしっかりあたり、逆転で決勝進出を決めた。

決勝は平岡右、ソビロフ左のケンカ四つ。
リーチの長いソビロフが奥襟を叩いてくるのを平岡が捌く展開の序盤。篠原監督の「先やぞ!」「釣手の位置!」の檄が会場に響く。

開始早々、ソビロフが奥襟を叩くが平岡、これをかい潜る得意のパターン、これをソビロフが隅返に変化するが平岡動ぜず。
40秒、ソビロフの左払巻込は平岡しっかり潰し、ローリングで抑え込みを狙うが「待て」。
なかなか引き手の取れない平岡だが、54秒、引き手を持ち、かつ釣手は下から高い位置を握る最高の形。平岡この機を逃さず釣手を振り外しながら右背負投。技は一旦止まりかけたが平岡引き手を引きずりこむように粘ってこれを回しきり「技有」。大きくリードを奪った。

2010年IJFマスターズ60kg級決勝・平岡拓晃-ソビロフ
(写真:決勝戦、背負投で平岡が「技有」をリード)

以後、手足の長いソビロフの組み手を、平岡かいくぐりながら釣手の捌きで応戦。
1分30秒、平岡の小内巻込はソビロフの懐に届かず。1分45秒にはソビロフが組際の背負投、左大外刈で攻め込む。
2分7秒、上から奥襟を持ったソビロフに応じて平岡下から釣手を背中に回して大腰を狙うが差込が浅く、体だけが先に前に倒れてしまう。
再び会場には篠原監督の「強気!」の檄。
しかし、徐々にソビロフの圧力がかかり始め、2分27秒、ソビロフの隅返は掛け逃げと判断され「指導」が与えられるものの、ジワジワと試合はソビロフのペースに。

2分20秒過ぎからソビロフが奥襟を上からガッチリ持って組み勝ち続ける。2分37秒、ソビロフがこのまま圧力をかけて前に押し込めば、苦しい体勢の平岡、これを切り返そうと下がりながらの右内股。
ところがソビロフが前に出てきている分、平岡が体を回すだけの隙間がなかった。ソビロフ、平岡が回転しきる前にしっかり体重を逆側に捨てて内股返。軸足側に重心が残り体勢を崩した平岡、抗しきれずに背中から落ち文句なしの「一本」。逆転でソビロフが優勝を決めた。

2010年IJFマスターズ60kg級決勝・平岡拓晃-ソビロフ
(写真:平岡を「一本」で破ったソビロフ)

平岡はロッテルダム世界選手権、グランドスラム東京に続いてまたも2位で、優勝には届かなかった。
篠原監督の「強気やぞ!」の声は、平岡がリードしてからの方がむしろ頻繁に聞かれていた。
捌きだけでは展開を失う、先に攻めて主導権を握り続けろという指示だったわけだが、平岡は初戦での肘負傷というアクシデントの影響か、これを貫くことができなかった。
下がりながらの技を返されるという、自らの「強気」の檄とは反対の形の一本負けに篠原監督は厳しい表情。「お前がいつも決勝で負けるから、野村(忠宏)にまだやると言わせてしまうんだ!」と激しい言葉で平岡に気合を入れ直していた。

日本人もう1人の出場者、グランドスラム東京王者の福岡政章は前述の通りソビロフに合技で敗退。2大会続けてのビッグタイトル獲得とはならなかった。

2010年IJFマスターズ60kg級2位・平岡拓晃
(写真:準優勝に終わった平岡)

平岡拓晃選手のコメント
「勝ちたかったです。アジア大会から2位や3位ばかりだし、同じ負け方でショックの方が大きいです。(決勝は)途中までは自分が思うようにできていたのですが、あと一つということを考えると体が勝手に前にいってしまうんですね。惜しい試合だけに悔しいです。戒めとしてもう同じことは繰り返さない。気持ちの面で弱気になって抑えるのか攻めるのかハッキリできない。そこは課題だと思っています。」

【入賞者】

優勝:ソビロフ(ウズベキスタン)
準優勝:平岡拓晃(了徳寺学園職)
第3位:チョ・ガンヘン(韓国)
第3位:ガルスチャン(ロシア)

【準決勝】
平岡拓晃○小内刈△ガルスチャン(ロシア)
ソビロフ○優勢[指導3]△

【決勝】
ソビロフ○内股返△平岡拓晃

2010年IJFマスターズ60kg級入賞者
(写真:60kg級入賞者、左から平岡、ソビロフ、ガルスチャン、チョ)

※日本人選手勝ち上がり※

【1回戦】
平岡拓晃○優勢[技有・一本背負投]△ヘ(中国)

福岡政晃○GS指導2△ムーレン(オランダ)

【準々決勝】
平岡拓晃○反則勝(足取り)△ドラジン(フランス)

福岡政晃○小内刈△ソビロフ(ウズベキスタン)

【準決勝】

平岡拓晃○大内刈△ガルスチャン(ロシア)

【決勝】

平岡拓晃△内股返○ソビロフ

■【66kg級】またもモンゴル!海老沼を破った新鋭ミラグチャが優勝浚う

【日本人出場選手】

海老沼匡(明治大学2年・WR4位)
江種辰明(警視庁・WR12位)

2010年IJFマスターズ66kg級1位ミラグチャ・サンジャスーレン(モンゴル)
(写真:優勝を決めて客席の声援に応えるミラグチャ)

優勝候補はロッテルダム世界選手権王者でランキング1位のツァガンバータル(モンゴル)に、秋口から急成長を見せグランドスラム東京に優勝したばかりの海老沼匡(WR4位)。
これにロッテルダム2位のウリエルテ(スペイン・WR2位)が続き、ガダノフ(ロシア・WR5位)、ロッテルダム3位のアン・ジュンファン(WR6位)、ラローズ(フランス・WR9位)といった中堅どころが絡む展開と見られていたが、「足取り禁止」からのモデルチェンジにもがくツァガンバータルは12月のグランドスラム東京に続いて低調。初戦(準々決勝)でラローズに「指導3」と小外掛の合技でいいところなく敗退した。

ウリアルテの出来も安定感を欠いた。グランドスラム東京2位、地元のキム・ジョジンとの初戦は「指導3」で勝ちぬいたものの、準々決勝で伏兵のモグシコフ(ロシア・WR16位)に小外掛「技有」で敗退。アンジュンファンも初戦でガダノフに払腰であっさり敗退し、この階級は混戦模様となった。

日本期待の大学2年生、海老沼匡は、初戦のドレボット(ウクライナ・WR10位)戦を僅か9秒、豪快な背負投で片づけて準々決勝進出。

2010年IJFマスターズ66kg級1回戦・海老沼匡-ドレボット
(写真:1回戦、海老沼が背負投で一本勝ち)

準々決勝は、開始早々海老沼がケンカ四つのミラグチャ(モンゴル・WR11位)を相手に絶好の組み手。機とみた海老沼、ためらうことなく思い切り腰車を仕掛けるが、待ちかまえていたミラグチャはこれを体を捨てて右側に返す。海老沼はブリッジの形で耐え主審は「技有」を宣告したが副審2人は「一本」を支持、海老沼の敗戦が決まった。海老沼の掛け始めには既にミラグチャの体が動き出しており、完全に狙われた一発だった。

海老沼は「以前(08年青島国際)にも大腰を返された相手。絶好の形だと思いましたが、誘っていたのだと思います。」と試合を分析。自分から積極的に攻撃した結果でもあり、吉村和郎強化委員長には「気にするな」と言葉を掛けられたそうだが、「同じ失敗を繰り返していたらダメ。返されてるとわかっていても出てしまうのはそういう練習をしていないから。練習不足です。」と反省しきりだった。

日本代表のもう1人、08年嘉納杯王者の江種辰明は、1回戦でザグロドニック(ポーランド・WR15位)に体落「技有」で先制したがジワジワと展開を失い、残り15秒「指導4」まで貰って逆転負け。篠原信一・男子監督から「論外」と厳しい評価を受けてしまった。

2010年IJFマスターズ66kg級1回戦、江種辰明-ザグロドニック
(写真:1回戦、江種が背負投「技有」でリードを奪う)

決勝に進出したのはガダノフ(ロシア・WR5位)と、ミラグチャ(モンゴル・WR11位)の2人。

ガダノフは初戦でアン・ジュンファンを払腰「一本」で片づけると、準々決勝はザグロドニック(ポーランド・WR15位)に合技で勝利。準決勝ではラローズ(フランス・WR9位)に大外刈「有効」で先制されたが、1分53秒、ラローズが足取りの反則を犯し、反則勝ち。混戦を勝ち上がって決勝進出を決めた。

ミラグチャは前述の通り準々決勝で海老沼匡の腰車を返して一本勝ち。準決勝ではモグシコフ(ロシア・WR16位)を体落「一本」に仕留めての決勝進出。

2010年IJFマスターズ66kg級準決勝・ミラグチャ-モグシコフ
(写真:ミラグチャが準決勝を体落「一本」で勝利)

決勝はミラグチャ、ガダノフともに右の相四つ。

ともにパワーファイターの2人だが、身体能力に勝るミラグチャが組み勝ってやや優勢に試合を進め、34秒、ガダノフに「指導1」。
ミラグチャは片襟を両手で握って相手を振り崩し、体勢の崩れたガダノフの肩をドンと突くとガダノフ後方に転がるがこれは「待て」の後でポイントなし。

40秒過ぎからともに距離を取って、遠い間合いからの切り合いが続く。1分10秒、両者に「指導」。(ガダノフは「指導2」、ミラグチャは「指導1」)
以降膠着を嫌った両者、ガダノフは奥襟を叩き、ミラグチャは右片襟を握ってのあおりを再三にわたって見せる。
3分すぎ、釣手で奥襟を叩いたガダノフ、ミラグチャの頭を下げさせるとそのまま釣手を滑らせて深く帯を握る。ここから踏ん張って引込返の形で力を込めるとミラグチャ空中に持ち上がりかかる。
ガダノフ後は体を捨てて決めるだけと相手の太股を下から蹴り上げようとするが、ミラグチャこれをかい潜りつつ、お腹を相手に寄せて頭を上げ、腰で相手を持ち上げる。下から突き上げられたガダノフの腰が完全に浮いたところでミラグチャの右小外掛。ガダノフは手を畳について必死に耐えるが、ミラグチャ釣手をしっかり効かせて相手を回しつつ、体を浴びせて文句なしの「一本」。

2010年IJFマスターズ66kg級決勝・ミラグチャ-ガダノフ 2010年IJFマスターズ66kg級決勝・ミラグチャ-ガダノフ
(写真:ミラグチャが掬投くずれの小外掛で一本勝ち)

グランドスラム東京で同僚のツァガンバータルも見せていた、いわば、足を取らない掬投とでもいったところか。

パワーに加えて抜群の身の軽さでビッグタイトルを手にしたミラグチャは、「礼」が終わると派手に宙返りを決めて、観客席の声に応えてみせた。

2010年IJFマスターズ66kg級1位、ミラグチャ・サンジャスーレン
(写真:「礼」の後に宙返りでアピールするミラグチャ)

それにしてもモンゴルは良い選手を作る。腰の強さ、スピード、そして何より反射神経の良さと身の軽さ。同じモンゴルの第一人者のツァガンバータルと同じような特徴を持っている。
モンゴルの66kg級は08年秋からツァガンバータルが台頭。グランドスラム・モスクワ1位、グランドスラム・リオ2位とツァガンバータルが主要国際大会で勝ち続ける一方、ミラグチャは出場大会自体が少なく、アジア選手権3位、グランプリ青島で優勝と完全に2番手扱いだった。

ツァガンバータルが2大会続けて不調という中での優勝でもあり、今後はモンゴルの一番手として主要大会に出場してくる可能性も大。日本選手はこのミラグチャも強敵としてマークする必要があるだろう。

2010年IJFマスターズ66kg級入賞者
(写真:66kg級入賞者。左からガダノフ、ミラグチャ、モグシコフ、ラローズ)

【入賞者】

優勝:ミラグチャ(モンゴル)
準優勝:ガダノフ(ロシア)
第3位:ラローズ(フランス)
第3位:モグシコフ(ロシア)

【準決勝】

ガダノフ○反則勝△ラローズ

ミラグチャ○体落△モグシコフ

【決勝】

ミラグチャ○小外掛△ガダノフ

海老沼匡選手のコメント
「(負けたミラグチャとは)1回試合したことがありますが、さっきの技で同じように返されました。相手は最初から返しを狙っていたのだと思います。誘っていたんだと思いますが、絶好の形だったのでいけると思ってしまいました。返されると分かってても出てしまうのは練習でそういうことをやっていないから。練習不足です。
(連戦続きだが?)正月にしっかり休みが取れたので特に影響はありません。ただ、体重を管理していたつもりなのに今回は落としづらかったです。2週間で7kgの減量でした。体重のことばかり気にしていて練習がしっかりできなかった面がありました。」

※日本人選手勝ち上がり※

【1回戦】

海老沼匡○背負投△ドレボット(ウクライナ)

ザグロドニック(ポーランド)○反則勝(指導4)△江種辰明

【準々決勝】

ミラグチャ(モンゴル)○小外掛△海老沼匡

■【73kg級】粟野、ワンを破る金星も優勝ならず、地元韓国のバン・ギーマンが戴冠

12010年IJFマスターズ73kg級1位、バン・ギーマン
(写真:73kg級入賞者、左からボンフーム、バン、イサエフ、粟野)

【日本人出場選手】

粟野靖浩(筑波大学3年・WR13位)

大本命のロッテルダム王者ワン・キチュン(韓国・WR1位)に欧州勢が挑む図式。ファンティシェル(オランダ・WR2位)、イサエフ(ロシア・WR3位)、バン・ギーマン(韓国・WR4位)、ソロカ(ウクライナ・WR5位)とランキングトップ5が全員参加し層の厚い階級となった。

日本で出場権を持つのは粟野靖浩1名のみ。強豪揃うマスターズは厳しい大会ではあるが、ロッテルダム代表の大束正彦、年下の中矢力、西山雄希らのライバルたちに実績で大きく差をつけるチャンスでもある。

粟野の初戦(準々決勝)はいきなり世界王者ワン・キチュン。
粟野、ワンともに右の相四つ。
開始から袖の絞り合い、厳しい組み手争いが続く。粟野は慎重に試合を進め、散発の巴投も見せるが試合はワンがコントロールしている印象で、1分59秒粟野に「指導1」。
2分20秒のワンの巴投、同じく2分39秒の左一本背負投に粟野大きく浮いて体勢を崩すがなんとか凌ぐ。
良く粘ってはいる粟野だが攻撃の糸口が掴めず防御に終始。展開を変えるのは難しいかと思われた3分20秒、ワンが一瞬スピードを上げて前に出てきたところに、粟野が腕を一本背負投の形に抱えて右大外落。前に呼び込んでの大外刈の形になり、ワンはほとんど無抵抗でストンと背中から落ち粟野の「一本」。
思わぬ展開にワンはしばし立ちあがれず呆然。

過去2度の対戦は、朽木倒「一本」、腕挫十字固「一本」といずれも早い時間の敗退でほとんど試合をさせてもらっていない粟野だが、負けるわけにはいかない3度目の対戦は、攻めに攻められながらもあきらめずに良く粘る我慢の試合。一瞬のチャンスを見事に生かして準決勝に進出した。

粟野の準決勝の相手は韓国2番手のバン・ギーマン(WR4位)。
粟野右、バンは左のケンカ四つ。
バンは釣手で奥襟を叩いて主導権を握り内股を中心に攻撃。粟野は下からこの釣手をかいくぐって体落に内股透、大腰で対抗するという展開。

2010年IJFマスターズ73kg級準決勝、粟野靖浩-バン・ギーマン
(写真:バン・ギーマンの組み手に手を焼く粟野)

1分15秒、奥を取られた粟野が巴投に飛び込むが体勢不十分で偽装攻撃とみなされ、粟野に「指導1」。
以後も粟野、バンに奥襟を叩かれてやや苦しい展開ではあるが、ほぼ互角に試合を進める。 ところが1分50秒、粟野にやや不可解な「指導2」。

試合の勝敗に直結するポイントを奪われてしまった粟野、引き手が持てないながらも両襟の右小内刈、細かくステップを切っての足技で追いかけるが、3分5秒、またもやや不可解な判定で掛け逃げ「指導3」を宣告されてしまう。

粟野は体落に出足払、内股に両襟を握っての背負投で必死に攻めるが、リードを持ったバンは焦ることなく距離を取って、うまく試合を終わらせようという態勢。
粟野が小外刈を放ったところで試合終了。「指導3」でバンの勝利となった。

粟野は奥襟を先に叩かれる組み手の不利を打開できないまま終戦。やや不可解な判定ではあったが、かといって決して粟野の勝ち試合でもなかった。

粟野は、世界王者ワンを倒すという大金星を挙げたが、韓国の2番手に敗退して優勝ならずという非常に微妙な結果。厳しい組み合わせから勝ち上がって評価を上げた一方、国内のライバルたちに大きな差をつけるには至らなかった。

決勝はそのバン・ギーマンにボンフーム(フランス)がマッチアップ。
バンは左、ボンフームは右のケンカ四つ。
1分45秒、バンが釣手で背中を持ち、引き手をしっかり握って自分の組み手になるとボンフームはプレッシャーに屈して自ら膝をついてしまい、パワーではバンが上の印象

。 1分10秒、ボンフーム一か八かの横落に体を捨てるが、バン余裕を持って一歩さがりこれを透かして「有効」。

3分半すぎ、ボンフーム釣手を大きく振ったところからうまく体をつけて双手刈に飛び込み、バンはドスンと畳に落ちる。これはポイントかと思われたが、相手を制していないとみたか、主審はポイントを宣告せず。

バン、なおも釣手で背中をおさえて内股を連発。押し込まれるボンフームは右小外刈で対抗するがこれも左内股に切り返され、手詰まり感は否めず。
3分57秒、バンが釣手で背中を取ると、これを嫌ったボンフームは背中を外しながら前に回り込もうとする。
バン、その回転に合わせて大腰を放てば、ボンフーム大きく宙を舞ってバンの「一本」。この大会、地元韓国勢初の優勝を飾った。

2010年IJFマスターズ73kg級決勝、バン・ギーマン-ボンフーム
(写真:バン・ギーマンが大腰「一本」で勝負を決める)

【入賞者】

優勝:バン・ギーマン(韓国)
準優勝:ボンフーム(フランス)
第3位:粟野靖浩(筑波大3年)
第3位:イサエフ(ロシア)

【準決勝】

バン・ギーマン○優勢[指導3]△粟野靖浩

ボンフーム○優勢[有効]△イサエフ

【決勝】

バン・ギーマン○大腰△ボンフーム

粟野靖浩選手のコメント
「これまで、ワンには攻め急いで2回負けて(08年嘉納杯、09年グランドスラム東京)しまっていた。今日は先輩の小野さんが後ろから指示出してくれて、その通りにしたら偶然はまったという感じです、去年一昨年と負けてて今年はもう負けられないと思っていた。ワン選手に勝ったが、こういう結果だったので情けない。東京世界選手権で代表になるために、しっかり勝ちきりたかったです。」

2010年IJFマスターズ73kg級入賞者
(写真:73kg級入賞者、左からボンフーム、バン、イサエフ、粟野)

※日本人選手勝ち上がり※

【準々決勝】

粟野靖浩○大外巻込△ワン・ギチュン(韓国)

【準決勝】

バン・ギーマン○優勢[指導3]△粟野靖浩


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