ジュニアのための考える柔道

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網羅的少年指導書として活字化された「春日のノウハウ」
著者:向井幹博・山口香
対象者:指導者、少年、初心者
出版社:東京書店
出版年:2007年
ページ数:159
定価:\1200+税
Book Review
著者名に向井幹博氏の名前があることで、多くの人が、「強豪・春日柔道クラブのノウハウ公開」という文脈でこの本を手にするのではないだろうか。
その期待に違わず、本書は2つの性格を帯びている。
ひとつは「網羅的でスタンダードな少年指導書」であり、もうひとつはその「春日柔道クラブが積み上げたノウハウ公開」。両者が良いバランスで影響しあった良書であるといえよう。
後者の観点からは、第5章の「トレーニング」および投技・固技解説に挿入される「考える柔道のポイント」、それに加え第4章「固技」が特に注目。
「トレーニング」の「基礎体力養成トレーニング」の項では、アニマル・カンガルー・キョンシー・忍者などのバランス系を鍛える一連の運動が紹介されている。
いままで各種講習会などでも広く伝えられてきたが、活字化されたものはなく、eJudo掲示板で「載っている本はないのか?」との議論があったようにマニュアル化が切望されていた。
相前後して「近代柔道」2007年4月号で取り上げられたが、本書が本邦初公開、待ちに待った初の書籍掲載である。
「考える柔道のポイント」では、例えば「背負投の練習法」として「回転のスピードをつける練習」「回転したときしっかり重なって相手を背負う練習」などを紹介。ほか、各種講習会などで伝えられてきた「ゆさぶり」も詳説されている。
どれも「どの動きが必要か」「どの感覚を身につけるべきか」という目的から帰納して考えられた論理的な練習で、表現教育系ワークショップの課題のような明確さを感じる。ここに示された「目的からの帰納」という考え方で、独自の練習を考えつく指導者も多いのではないだろうか。
「固技」内、「抑え込み技の攻め方」はどの指導者も、少年世代に教える手順、選択に非常に迷う部分。
限られた時間の中、どの状況に有用などの技術を選択し、どういう順番で教えていくのか、寝技というトレンドが技術の実効性を大きく左右するジャンルで現在の少年指導では何を教えるべきか、悩んでいる選手・指導者は意外に多いはず。
そんな中、現状に即した、決して難しすぎず有用な技術のみ、それも今後につながる寝技の基礎的な動きをマスターできるもののみをピックアップしたこの章は非常に質が高い。
90年代前半の流行以来初心者指導のスタンダードとなっている筑波大発祥の「酒井返し」なども初掲載。
また、これも各種講習会などで公開されてきた講道館発の寝技打込「世界一周」も詳説されている。「世界一周」は今後少年世代の固技練習の標準となっていくであろう稽古方式で、選手・指導者とも必見である。
投技解説も、現場のノウハウをフィードバックしつつ、「正しい技、かつ実効性のある解説」という姿勢が貫かれている。
通り一遍の実施手順でなく、技の成立に必要な条件、実際に少年世代が陥りがちな過ちなどに必要最小限の言葉でズバズバと切り込む解説文の精度には感心させられた。
この本の最大の利点は、これが実際に少年柔道で成果を挙げているチーム・指導者のノウハウであるという背景から、ここに掲載されている所謂「正しい技」が、有用な技・あるべき方法論として「信じられる」ところにあるかもしれない。
少年指導に携わる人間が少年指導書を著する今回の図式、ぜひ柔道界全体に波及して欲しいところだ。
講道館指導部は、当然、全国の少年柔道・指導レベルを引き上げるという使命を帯びるべきである。
春日柔道クラブという強豪チームを育てるだけでなく、いわばこれを実験室として積み上げた効果的な指導ノウハウをこのような形で柔道界全体にフィードバックしてくれるのであれば、全国の少年、指導者にとってこれほどありがたいこともない。その点、本書は講道館指導部の存在意義を大きく上げた。
講道館の面目躍如といったところではないだろうか。
トレーニングの章などに特に濃いが、全体を通して単に技の解説書というよりも、魅力的な授業としての稽古の組み立て方という観点の言及が多く、選手よりも、指導者へのメッセージがより強く感じられる。
全ての漢字にルビを振り「ジュニアのための指導書」と謳われている本書はもちろん選手にとっても有用な一冊であるが、実はこの本をもっとも有効に活用できるのは少年指導者ではないだろうか。
指導者にとっては必携。選手にとっても手元にぜひ置きたい書であり、この先色々な指導書を揃えるのであっても、その軸に据えていい一冊である。
投稿者:運営者
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■内容■
【第1章】 柔道とは
・ 柔道の歴史 ・柔道場 ・柔道衣 ・礼法
【第2章】 基本動作
・ 姿勢と掛け方
・ 移動のしかたと体さばき
・ 崩し・つくりと掛け
・ 受身
「コラム」 実践で役立つ受身の練習法
【第3章】 投げ技
◇ 足技
膝車
支え釣り込み足
○ 考える柔道のポイント 膝車・支え釣り込み足の練習法
出足払い
送り足払い
○ 考える柔道のポイント 足払いの練習法
小内刈り
大内刈り
○ 考える柔道のポイント 小内刈り・大内刈りの練習法
小外刈り
大外刈り
内股
◇ 手技
背負い投げ
一本背負い投げ
○ 考える柔道のポイント 背負い投げの練習法
体落とし
朽ち木倒し
コラム 少年大会で最近良く使用される技①
すくい投げ
コラム 少年大会で最近良く使用される技②
◇ 腰技
大腰
払い腰
釣り込み腰
袖釣り込み腰
コラム 腰技の工夫
◇ 技の連絡変化
体落とし→体落とし(二段の体落とし)
支え釣り込み足→大外刈り
小内刈り→背負い投げ
小外刈り→体落とし
大内刈り←→内股
◇ 相手の技への応じかた
大内返し・大外返し
体落とし・背負い投げへの対応
払い腰への対応
内股への対応
◇ 考える柔道のポイント ゆさぶりかたの練習法
◇ 考える柔道のポイント ゆさぶりを使った技への入りかた
コラム 選手インタビュー 鈴木桂治
【第4章】 固め技
◇ 抑え込み技
袈裟固め・崩れ袈裟固めと逃げ方
横四方固めと逃げ方
肩固めと逃げ方
上四方固め・崩れ上四方固めと逃げ方
縦四方固めと逃げ方
◇ 固め技の練習
固め技の練習法1 単独練習①
固め技の練習法2 単独練習②
◇ 抑え込み技の攻め方
考える柔道のポイント 上からの攻め方
考える柔道のポイント 下からの攻め方1
考える柔道のポイント 下からの攻め方2
考える柔道のポイント うつ伏せの攻め方1
考える柔道のポイント うつ伏せの攻め方2
考える柔道のポイント うつ伏せの攻め方3
考える柔道のポイント うつ伏せの返し方1
考える柔道のポイント うつ伏せの返し方2
投げ技→固め技
◇ 抑え込み技の連絡
世界一周
コラム 選手インタビュー 阿武教子
【第5章】 トレーニング
準備運動と整理運動
ゲーム
基礎体力養成トレーニング
サーキットトレーニング1
サーキットトレーニング2
打ち込みサーキット
打ちこみ(かかり練習)と投げ込み(約束練習)
乱取り(自由練習)
【第6章】 試合のルール
試合中に使われることば
判定基準 技の効果の判定
禁止・反則内容
柔道衣の着かた・帯の結び方
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